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33話『心癒すのはいつだって純粋な気持ちって話』

 

 こんにちはキアーラ・カサッツァです。

 なんか王虎がありえない提案をしてきました。

 馬から落馬したかのように、頭痛が痛くて危険が危ない可能性が全然有ります。

 もしやこれは訃報のお知らせでは?



 ……不思議と頭がいたい。

 まるで硬いものに何度も頭を叩きつけたかの様だ。

 言語中枢もどこかに行ってしまったかのようだ。


 これ、大丈夫だよね?

 頭割れてないよね?

 物理的にも精神的にも頭がイタイイタイなのです。


 俺が額に手を当て首を振っていると、後ろから声が上がった。


「こっ……! この変態め!

 俺のキキは渡さないんだぜ!

 嫌がっているじゃないか!」


 振り向くと同時に俺は後ろから抱え上げられて王虎から遠ざけられる。

 ソニー兄さんだ。


 ……何度も言っていますがソニー兄さんのものではありません。


「最後の方はなんだかついていけなかったが、ようやく魂胆がわかったんだぜ!

 弱っているところを見せてキキの母性本能をくすぐり、キキのママみを堪能する作戦だったんだな?!」


 頭上からこれでもかというくらいのでかい声でソニー兄さんが叫ぶ。


 ……よくわかっていなかったのか。

 そしてどこをどう取ったらそういう結論になるんだろうか?


 俺はひたすら王虎をどついていたと思うんだが、母性とは一体……。


「そうしてキキの優しさにつけこんで!

 けっ、結婚をしようと! 一緒にやってもらうだと?!

 何をだッッ! 人生をかッッ!

 プロポーズなのかッ! 許さないんだぜッッ!」


 そう叫びながらソニー兄さんは俺をグイグイと自分の懐に隠そうとする。


 兄さん。いくら幼女でもそんなにはコンパクトにはなりません。痛いっす。

 今までの流れを断ち切る突然の奇行だが、多分兄さんのキャパをオーバーしちゃったんだろうな。やむなし。


 妹がマフィアのボスに一方的に暴力を振るいだしたら頭真っ白になるよね。


 ともすれば無礼とも取られかねないソニー兄さんの行動に王虎はキョトンとするとおもむろに笑い出した。


「うぁあっはっは! け、結婚!

 こ、こんなチミっ子と! うはっ! ふはぁっ!」


 捧腹絶倒とはこの事かと感心するほどの大笑い。


 おい。俺が女の子だったら傷ついていたところだぞ。


 しかし王虎の笑い声は、今までの殷々鬱々とした空気を吹き飛ばすかの様だ。

 困難に直面し挫折感を味わいながらも直ぐに笑い飛ばすことができる。

 まぁ、本当に強いやつだ。

 俺のアドバイス(物理)が立ち直りの一助になったのであれば嬉しい限りだ。


「ないっ! それは無いぞキアーラの兄!」


「誰が義理兄(おにいさん)だ!」


 そんなことは言っていないぞソニー兄さん。


「なんだか大変そうで、頑張っているんだなぁ何か手伝えないかなぁと思ったけどキキを狙うなら話は別なんだぜ! 居ねだぜ!」



 どうにもトンチンカンな事を言う兄さん。

 若さゆえ過ちだろうか?


 兄さんも学があるわけではないからな。森に手を出すヤバさはわかっていても、どうヤバイのかなんで敵が増えるのかはわからなかったんだろう。


 ついていけなくなっている中で王虎と俺のやりとりを見て混乱してしまったとみた。

 仕方ないね。混乱、現実逃避は我が家のお家芸だから!


 しかし___そうか。

 それでも兄さんは手伝おうと思ったのか。

 兄さんは昔から少しおバカだが困っている人がいたら手を差し伸べる事ができる人だ。

 そこに打算や韜晦はない。

 見返りを求めず全力を出す。

 かといって滅私ではないのだ。ただ自分がやりたいからやる。

 なぜなら___


「なるほど……俺は頑張ってたか。そう見えたか?」


 俺が兄さんのことを考えていると、馬鹿笑いをやめた王虎が兄さんにたずねる。


「当たり前なんだぜ。頑張っているからキキがアドバイスをしたんだぜ。

 キキは基本的に意地悪で嫌な奴には薄情なところもあるけれど、頑張っている奴は応援してくれるんだぜ」


 なぜか鼻息荒く自慢げに言うソニー兄さん。

 妹自慢のつもりだと思いますが褒めてませんよソレ。

 あと鼻息が頭にかかってくすぐったいです。


「それに俺だって人を見る目はあるんだぜ。

 あんたは最上級頑張っている奴だぜ。お兄ちゃんパワーを強く感じるんだぜ」


 余人にはわからぬ根拠によって自信満々に言う兄さん。


「だからアンタも幸せになっていいんだぜ。

 母さんが言ってたんだぜ。頑張っている人には幸せになる権利があるって。

 そのために手伝ってやるのが最強のお兄ちゃんであるこのサンティノ・カサッツアの役目なんだぜ!」


 兄さんが手を差し伸べるの理由の一つは母さんの教えを真実にするため。

 兄さんだって新移民だ。世の中の不条理は体験してきている。

 その上で母さんの言葉を真実だと強く信じている。


 不条理など知ったことかと俺がやってやるんだと吼えている。

 兄さんは昭和ライダー並みに熱い漢なんだぜ?

 本人には言わないが自慢の兄さんだ。


 兄さんの話を聞いていた王虎はふいに表情を引き締めた。


「……頑張ってたら幸せになれるのか?」


 ……過去の仲間のことを思っているのだろうか?

 頑張っていたのに幸せになれなかった者たちの事を。


 ちと、綺麗事が過ぎたか?そう思った俺が介入しようと口を開きかけたとき兄さんがそれよりも早く答えた。


「そうだぜ。だけど注意が必要なんだぜ。

 権利だからちゃんと行使しないとダメなんだぜ。ちゃんと申請するんだぜ。

 そうしないとすぐ不幸が割り振られるんだぜ。世の中そんなに甘くないんだぜ」


 真理を説明するかのごとく王虎に説く兄さん。


「誰に申請するんだ?」


「人それぞれなんだぜ。弟や妹の幸せが俺の幸せなんだぜ。

 だから俺は父さんと母さんに申請したんだぜ。

 でも自分が幸せじゃないと誰かを幸せにするのは無理なんだぜ。

 だから弟と妹に宣言したんだぜ! 幸せになるため最強お兄ちゃんになると!

 そのための最強お兄ちゃんパワーなんだぜ!」


 これがもう一つの理由。最強お兄ちゃんは困っている人を助けるのが当然だから助ける。

 破綻しているようで兄さんの中では確固とした理由。


 兄さんが人助けをするのは俺たち兄妹の為なんだ。

 ちょっと理解しがたいが、これが兄さんなりの家族愛ってやつなんだろうね。

 なんだか嬉しいものだ。


 嬉しいから少しサービスしよう。そう思って兄さんをギュッとハグしてみる。


「にゅう?! ど、どうした!

 キキがハグを! ぐふふぅほほっ!」


 なんかキモい声が上からするので兄さんを突き飛ばす。

 体重差でむしろ俺が飛ばされたけど。

 案の定兄さんのにやけヅラが目に入る。


 うーん。イケメン台無し。


「ふふっ」


 後ろから笑い声が聞こえたので振り向くと王虎が微笑をたたえていた。

 先ほどの馬鹿笑いとは違う優しい笑みだ。


「そうか。自分が幸せじゃないとダメか。

 申請も必要だったとは知らなかった。

 ……幸せそうなお前たちを見るに間違いではないんだろうな」


 穏やかな声で王虎がいう。

 強面のはずだがまるで陽だまりにいる猫のような顔だ。


「そうなんだぜ。結構みんな知らないんだぜ。

 アンタも申請しておいたほうがいいんだぜ。

 アンタなら申請も通りやすいんだぜ。頑張ったからな」


 偉そうに言う兄さんに嬉しそうに王虎が答える。


「そうか! 通りやすいか!

 俺頑張ったもんな! よし、申請しよう!

 誰にしたらいいと思う?」


 そう聞かれたソニー兄さんはピタリと止まるとうんうんと唸りだした。

 そこでパッと答えられるともっとかっこいいのに。

 そう言うところだぞソニー兄さん。


 俺が仕方なく助け舟を出す。

 王虎の目を見て真摯に。


「うさぎの彼と幼馴染の彼女に」


 そう伝える。


 ___そうか。


 そう頷くと王虎が叫ぶ。


「お前たちッッ!! 俺は幸せになるぞッッ!

 そして他の奴らも幸せにするぞッ!」


 王虎が言い切ると同時に___


「申請は受理されました!!

 これより幸せライフをお楽しみくださいなんだぜ!」


 即座にそう叫んだソニー兄さん。


 それを聞いた王虎はひまわりが咲いたように笑顔になると、先ほどの絶望でもついぞ溢れなかった物がハラリとこぼれた気がしたが、まぁ見なかったことにしよう。


 日本男児には武士の情けってものがあるからね。


 拙者にも情けをかけてマフィアのボスになる件を無かったことにできないでござろうか?




お読みいただき誠にありがとうございます!


自分で書いててなんですが、お気に入りは王虎とソニー兄さんです。

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