24話 『虎男はビックリ発言しかしないのか?の話』
どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。
落とし前をつけると申しますが、本来の使い方はテキ屋が顧客と値段交渉をする際に、適当な値段まで上手に落とすことから来ているそうです。
つまりビジネス用語な訳です。
ビジネスですビジネス。
ビジネスなら何も怖くありませんね。
さぁさぁただ今、王虎さんと茶をしばいておりますが、その正体はここらを仕切っているマフィア「バンビーニ」のボスであらせられるらしい。
まぁ俺は知ってたけどね。
バンビーニに虎の獣人はボスの王虎しかいないはずだし。
しかし、そのボスがなにやら思いつめたお顔で落とし前をつけるとの事。
これ、もしかして頭下げるくらいではすまない落とし前を考えてるんじゃない?
俺としては、すまなかったなとか言葉だけですませて、頭も下げないみたいのを想像していたんだけど。
じつは俺氏。わかってますよ風に振舞っていましたが、絶賛混乱中ですよ?
頭下げるのも破格の事のはずだよな?
俺もそんなにマフィアとか詳しくないけどさ。
なんかボスとかそんなに簡単に頭下げちゃダメとかないの?
さっきも言ったけど、他のマフィアになめられちゃうよ?
バンビーニのところは腕力でマフィア世界をのし上がってるから、そう言うの困っちゃうでしょ?
おかしいな……なんか俺が思ってたんと違う。
俺の完全にて流麗な計画に立ち込める暗雲。
なぜ王虎が落とし前を??
いや、わかるよ? 子供に手を出したからだよね?
『別の意味に聞こえてしまうね?』
王虎が子供を守りたいのはわかっていた。
だがそれはあくまで個人の信条だと思っていた。
だがどうやらバンビーニ一家の信条だったらしい。
だからボスの王虎が落とし前をつけると……。
落とし前をつけるのはこちらではなく??
ウチらオタクの構成員ぶっ飛ばしましたし、みかじめ料ネコババしてましたよ??
いや、王虎の生い立ちからスラムの子供たちに肩入れしているだろうとは思ったけど、ここまで思い詰めるとは思わなかった。
構成員が子供を殴ったくらいで過剰すぎないか?
組織名が子供だからってそんなことあるのか?
いやいや、俺も不条理に殴ってくるわ、新移民の新規参入を妨害したりするわで、マフィアにはムカついているし、ぶっ殺したいと思っている。
だがこいつらマフィアは暴力で金を稼いでいるところもあるのだから、本来なら謝罪などせず脅迫してくる場面の筈だ。
そこから交渉が始まると思っていたのに……。
俺が今回狼男を誘い込んだのも、王虎が出てくればいいなと思いから、ビンゴはそこそこの金が動くよ?って言う情報をリークしたわけだし。
王虎が出てこなくても話ができる幹部が出てくるだろうくらいに思ってた。
『曖昧なところが、君らしくなんとも頼りないところだね?』
……王虎は子供に甘いみたいだから、ワンチャンあるかなと。
『完璧で流麗な計画からは程遠いよ』
因みにルナは俺の頭の上に寝ている。
幼女の頭上で涅槃のポーズ。
重くないんだけどウザい。
こいつ周りに男が多いと俺の頭の上に来るんだよな。
「終わらせるってなんだよ?」
沈黙が続いたことに耐えられなくなったのか、ソニー兄さんがブッ込んでくる。
あぁ、考えがまとまってないからもうちょっと待って……。
俺の心の声は残念ながら届かず、よく通る重低音の渋めの声が続く。
「ファミリーを終わらせると言いたいところだが、それじゃぁ家族を見捨てることになる。家族を見捨てるのもやっちゃならねぇ」
あ、良かった。ファミリーは無くならないんだ。
無くなっちゃったら、バンビーニご利用計画が不意になるところだった。
『ご利用計画とは不穏な響きだね?』
不穏じゃない! 穏当を得るための計画だ!
そう! 俺が今回狙ったのは、暴力機構こと戦力の拡充!
つまり獲物は王虎だったんだよ!!!
『な、なんだってー』
計画はこうだ。
1、狼男を大金でさそいだす。
2、大金が動くのと、子供が相手だから王虎が付いてくる。
3、王虎の前で狼男が暴走する。
4、か弱い子供を演出。
5、狼男に手酷く暴力を振るわれたことをネタに王虎に交渉。
そんでその上で、今回のビンゴ大会をこちら側の落とし前として献上する形にして、そのままスラムの子供達を使って継続的に開催することで、ビジネスパートナーという形でどうでしょうか? と言う流れに持って行こうとした俺ガイル。
『ガバガバだね。どこから指摘していけば良いものだろうか?
とりあえず4番目と5番目が現実と激しい乖離を見せているよ?』
いや、勝算はあったんだよ。スラムで情報収集してたら、ここらをバンビーニがまとめるようになってから、子供の人身売買も無くなってきたし、麻薬の売買も無くなってきたし、これでも子供の餓死者が減ったらしいし。
どっちかっていうとアメリカンギャングっていうより、シチリアンマフィアっぽい感じ?
地域密着型のマフィアなんじゃないかと思ったわけよ。
だから子供達のためなら動いてくれるんじゃないかなぁと。
この間0,5秒の高速思考会話をルナとかわしていると王虎がさらに口を開く。
「だから俺がボスを降りる」
「なっ! なんだってー!!!」
大声を張り上げる俺に、周りの皆がビクリとしてこちらを見る。
嫌な予感はしてたんだよ! そうだよなぁ、それが一番誠意としては伝わりやすいよねぇ!
どこかの国の政治家は不祥事起こしても辞職しないけど!
マフィアのボスは辞職しちゃうんだ!!
「ど、どうしたんだキキ。雷に打たれたような顔をして大声をだして」
どうしたもこうしたも、王虎がボスじゃなくなったらバンビーニを後ろ盾として利用できなくなっちゃうでしょ!!
そう思った俺は説得に入ることにした。
「いや、王虎さん。辞職も一つの責任の取り方だと思いますが、職務を続け引き続き皆さんのお力になっていくことも、また一つの責任の取り方なのかと私は愚考する次第であります」
俺の誠意100%の説得に、王虎は苦虫を噛み潰したような表情をする。
「なんだその政治家みたいな喋り方は。狐どもみたいで気持ち悪いぜ」
などとのたまいました。
そうか。この世界でも政治家は同じか……。
異世界でもブレない政治家という職はある意味すごいのでは……。
「俺が筋を通すのはお前にだ。キアーラ・カサッツァ」
突如俺の名前を出した王虎にソニー兄さんとゴロッリオが俄かに殺気立つ。
俺も襟を正す。
「そう身構えるな。悪い意味じゃねぇ」
王虎が肩をすくめながら言ってくる。
「どういうことだ? なぜそこまでする?
言ってみれば部下がちょっとしたオイタをした程度だろ?
ファミリーの在り方どうこうは知らんが、言ってみれば日常茶飯事の些細な出来事だ。
悪かったなで済む話だろ?」
こいつの心底が見えない。
ただのお人好しにマフィアのボスができるわけがないんだ。
悪いことをしたから責任を取りますってのはありえない。
それではマフィアとして失格だ。
俺が王虎の心を読み取ろう目を覗き込みながら問いかけると、王虎もまた俺の目を覗き込みながら答えた。
「普通のファミリーならそうだ。
ウチだって普段なら業腹だが、リロの野郎をシメたらそれで終いだな」
どうでもない事のように言う王虎に、ソニー兄さんが気色ばむが俺が手で制すと
「だが今回は違う。リロが手を出したのは子供で、しかもお前のチームの人間だった。
だからお前に対し、最大限の謝意を持って俺が立場を降りる」
王虎が視線をそらさぬまま俺に告げてくる。
その奥に見えるのは……期待?
大の男が幼女に向けるものではないな。
「なぜそこまで、俺を特別視する? ただの幼女に。もしかして変態か?」
ますます分からなくなってきたので、少し煽りながらといかけると、
「お前には悪いが俺の好みはもっとグラマラスな大人の女だよ」
あちらも煽り返してくる。
こいつ。真面目に話しているのになんてやつだ。
俺からの心象を悪くしたらどうするつもりだ。
『鏡を見たほうがいい。彼の同類が映ると思うよ』
俺が睨みつけてやると、王虎はまたも肩をすくめながら続ける。
「表にいるあいつら……。あれ奈落にいた奴らだろ?」
言いなりのぶっ込みに俺の息が止まる。
またも、衝撃の発言をかましてくれたなぁ。
これは腰をすえないといけないようだ。
お読みいただき誠にありがとうございます!
ちょっとこの辺の話は唐突感があるかも……。
この後の話で埋めていきます。
引き続き頑張っていきます!




