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23話「強面が実は……なんてのは良くある話」

今日からお仕事だぁ。

本文長いです。

 

 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 前世ではヒーロー達が寄ってたかって敵を倒すことに疑問を感じませんでしたが、

 実際に強敵に相対してみると、確かにタイマンなんて貼ってられないなと感じました。

 子供番組はいつでも俺たちに教訓をくれるのです。



 目の前には虎男の尻が突き出ているわけです。

 これで我々の完全勝利が確定したわけだが、……まぁ華を持たされた感が否めない。

 このまま色々と話し合いをしたいところだが、ビンゴの時間が差し迫っているんだよなぁ。

 でも、初の開催をしくじるわけにもいかない。

 かといってこの件を後回しにはできんし……。


 俺は突き出したままの尻を眺めながら考える。

 ついでにその尻を棒でペシペシ叩く。

 叩くたびにビクビクしてちょっと面白い。


「いやいや! このままかよ?!

 こいつらに退くように言ってくれ!」


 未だソニー兄さんとゴロッリオがだっこちゃん状態で這いつくばっている虎男が叫ぶ。


「えぇ〜。なんかすごく怖い顔で睨まれたからぁ〜わたしぃ〜すごく怖いしぃ〜。

 また目があったらぁ〜キキ泣いちゃうかもぉ〜」


 未だかつてない猫なで声でぶりっ子(絶滅危惧種)ムーブをかますと、ソニー兄さんが限界まで目を見開いて俺を見てくる。


 こっち見んな。


『……君が女の子らしくなるのは僕の望むところだが、なにか腑に落ちない感情が湧き上がるね。なんだろうねぇ?』


 ルナが不服を申し立ててくるが、もう一人不服のあるやつがいるらしい。


「ぬかせ! お前がそんなタマかよ!」


 虎男の言である。


「ふんぬぅ!」


 奴はそう気合を入れると、ソニー兄さんとゴロッリオをくっつけたまま背筋の力だけで膝立ちになりそのまま立ち上がる。

 奴の筋肉がミシミシと縄を引きしぼるような音を立てているのが恐ろしい。


「うおぉ?!」


「うぅ?!」


 兄さんとゴロッリオも驚愕で唸っている。

 ……なんつう力してんだよ。


 周りの観衆もまたざわめき出した。

 流石は獣人だとかなんとか聞こえてくる。


 虎男は完全に立ち上がるとそのまま振り返り俺を見下ろしてくる。

 3m近いんじゃないか身長。でけぇからってこの野郎見下ろしやがって。

 俺だっていつかデカくなるんだぜ。


『いやぁ。ここまで大きくはならないんじゃぁないかなぁ?』


 未来の可能性を信じられない悪魔からチャチャが入るが、無視して俺は虎男を睨めあげる。


「へっ。何が泣いちゃうかもだ。

 こっちが泣いちまいそうな眼で睨みやがって」


 何が楽しいのか虎男が口角を上げてのたまう。

 その不敵な発言にだっこちゃん二人が虎男から離れて俺をかばう位置に立つ。


「二人とも大丈夫だ(・・・・)下がってくれ」


「おい! 何言ってんだ!」


「いいから」


 ソニー兄さんが異議を申し立ててくるが俺は虎男から目を離さず言う。


「虎男がその気ならもう終わってる。そうじゃないから大丈夫だ」


 その言葉に虎男がますます笑みを増す。

 なんかそれだけで強そう感でてる。

 ……強者ムーブが板についててジェラシーだぜ。

 ということでずっと俺のターン!!


「へっ!よく分かってるじゃねぇか。やっぱりお前は___」


 虎男が引き続き強者ムーブをかましてくるがそうはさせじ!!


 俺は大きく息を吸って父親譲りの大声を放つ!


「名を名乗れ!!」


「え?あぁ……名前?」


 突然セリフをぶった切られて、困惑する虎男。


「木石にあらねば名ぐらいあろう!!」


「ぬ。俺の名前は___」


 だが、困惑するもすぐに立て直すところはさすがだな。

 まぁ、更に引っ掻き回しますけど。


「いや! 人に名前を聞くときはこちらからであった!

 俺の名前はキアーラ・カサッア! 幼女である!!」


「お、おう……。俺の名前は___」


「聞きたくない! 知らない人とお話ししてはいけないってお母さんに言われてるから!」


 耳を塞いで激しく被りを振る俺。


「えぇ……? どういうこと?」


「考えるな! 感じるんだ!」


 できる奴同士の会話をお望みだった虎男は益々混迷を極める会話に混乱している。


 ふっ。お前みたいな奴はこんな小粋なトークについてはこれまいて。


『誰でもついてこれないんじゃぁないかなぁ?』


 確かに虎男だけでなく周りの人たちも目を白黒させているが、この世界はトークセンスが遅れていると見える。


『君が先取りしすぎなんだと思うよ?』


「あぁ〜。え? なに?」


 首をかしげる虎男。

 可愛くない!

 だから! さらなる追撃!


「好きな果物はなんですか?!」


「え? おう? なんだろう……?」


 混乱しているところで突然の質問に虚空を見つめ素直に考え始める虎男。


 隙あり!!!

 すかさず俺は持っている木材をフルスイング!

 椅子の足を虎男の弁慶の泣き所にシュゥウウウウウウウト!


「子供達の恨みを喰らえ!!」


「あいたー!」


 油断しているところに脛への一撃。

 タンスの角に小指をぶつける次くらいに痛いはず!

 その証拠に虎男は蹲って脛をさすっている。


 しゃがんだことで丁度いい位置に頭が来たので、俺は椅子の足を捨て虎男の顔を両手で挟み込む。


「さて。あんたからの(・・・・・・)謝罪を聞こうか」


 俺は虎男の瞳を覗き込みながらそう告げる。


「お前は……。どこまでわかってた?」


 虎男が告げてくる。


「あんたが今日来た理由か? それとも守っているものか?

 何がしたいかまでは薄っすらとしかわからんよ」


 俺が答えると虎男はしばらく目をつぶって何かを考えるかのように動かなくなる。


 どれくらい経ったろうか?

 数秒だったかもしれないし数分だったかもしれない。

 みなが固唾を飲んで見守るなか、ゆっくりと虎男が目を開けるとそこには決意のようなものが見て取れ……


「はぁ……」


 一言虎男はため息をつくと立ち上がり


「すまなかった」


 そう言って頭を下げた。


 ……マジか。頭まで下げるのかよ。

 ちょっと悪かったなって言わせるくらいのつもりだったのに。

 そこからお取引をするくらいのつもりだったのに。


「なっ?!」


「どういうことだ?!」


「うぅ? うう?」


 旧移民が新移民に頭を下げる。

 そのありえない光景に周りの野次馬がざわめき、ソニー兄さんやゴロッリオも驚いている。


 急展開に次ぐ急展開。


 狼男が因縁つける。

 狼男が吹き飛ばされる。

 虎男が襲ってくる。

 虎男が組み倒されてケツに棒を突きつけられる。

 虎男が負けを認める。

 幼女がよくわからないことを叫んだ後、虎男の脛を強打する。

 虎男が謝る。←イマココ


 うん。よくわからんな。

 ちょっと俺も震えてきやがりました。


「ど、どういうことだキキ……?」


 全くついてこられていないソニー兄さんが尋ねてくる。


「ようするにさ。この虎男はスラムの子供達を他のマフィアやチンピラから守るためにマフィアやってんだよ」


「はぁ?!」


 ソニー兄さんの顎が限界までオープン状態。

 虎男は苦虫を噛み潰したようなツラをしている。


「だ、だって狼男はこいつを兄貴って! あいつはみんなに酷いことをしてたんだぞ!

 ゴロッリオだって! ずっと暴力を振るわれて金を巻き上げられて!」


「でも生きてる」


「なんだって……?」


「そもそもがおかしいんだ。うちのチームの界隈の子供達は狼男以外にちょっかいをかけられない。

 金は奪われるが子供は売り払われない。

 殴られるが殺されない。決定的なのは金を奪い返されているのになんの報復もない」


「そりゃ……あの狼男が馬鹿だからってキキも言ってたじゃないか」


 俺の話が信じられないソニー兄さんがなお反論してくる。


「確かに狼男は馬鹿だが、上にいるマフィアが馬鹿で務まるはずがない。

 俺も最初はあいつが馬鹿だからと思ったが、何度も何度も奪い返せるのは出来過ぎだ。

 まずは狼男のピンハネが疑われる。マフィアなんてのは疑わしいってだけで制裁の対象だ。

 普通は別のやつが来る。だが、現実に狼男がずっとやってくる。」


「……狼男が馬鹿だからどこかで落としたと思っていたのかもしれない」


 そんなわけあるか。

 しかし馬鹿だけどこんなに馬鹿馬鹿言われてしまう狼男は本当に馬鹿なんだなぁ……。

 虎男も何も言わないし。


「最近は全部奪い返してたのに? 虎男さんや、そこんところどうなんだい?

 空の袋を持てって行った時は狼男はなんて言ってたんだ?」


「ワンフーだ」


「おん?」


 どういう意味だ?


「虎男じゃねぇ。俺の名前はワンフーだ。

 師匠からもらった大事な名前だ。覚えとけ」


 おっと。突然のツンデレムーブ。

 しかし王虎(ワンフー)か。旧移民の名前じゃねぇな。

 師匠からもらったねぇ。親からもらった名前じゃないってことはこいつもスラムの出か?

 そうなら辻褄も合う。


「オーケー、ワンフーさん。それで? 狼男はなんて?」


 ワンフーはまた、ため息を一つつくとうんざりしたように言った。


「なくなっちまった、消えちまったって騒いでたよ。

 落としちまったんだって探しに行ってたなぁ。

 そんなわけあるかと思ったけどよ。いや、もしかしたらコイツならとも思った」


 あ、少しは落としたかもって思ったんだ。

 どんだけだ狼男。


「狼男がピンハネしたとは思わなかったのかい?」


「あいつは馬鹿だからな。そんなこと思いもつかないだろうよ。

 言われた通りに持ってきて、分け前もらってそれで終いだ」


「じゃあ、どうしてなくなったと?」


「誰かに盗られたに決まってんだろ。

 そしてあの馬鹿から金を盗る奴はこの街にはいねぇ。

 あれでも腕っ節はあんだ。わざわざ揉めそうなことをするわけがねぇ。……お前ら以外はな」


 そういってワンフーは俺たちを見回す。

 強面に睨まれたチームの女の子たちが短く悲鳴をあげる。


「おい。女の子を睨むな」


 そう言って俺はワンフーの脛を蹴る。


「お、おい。キキ」


 ソニー兄さんがたしなめてくるが


「大丈夫だって言ったろ。多分コイツは子供を殺さない。

 なんなら殴らないまである」


「はぁ?! どういうことだよ?!」


 ちょっとは考えなさいよソニー兄さん。

 あんたイケメンなのに完全にモブ役ですよ。


「反撃しなかったろ。一回も。

 組み伏せた時だって全力でやれば俺を蹴り飛ばして殺せたんだよ。

 でもやらなかった。やれなかったかな?」


 俺の問いかけにワンフーは舌打ち一つ。


「ちっ。俺をゲロくせーあいつら(・・・・)と一緒にすんな。ガキは殴らねぇ」


 またもツンデレムーブ。

 もう流行らないよそういうの。

 あいつらとか意味深なこと言うし。

 聞かないよ? サイドストーリはいりません。


「ふざけんな! だったらなんで狼男に好き勝手させた!

 あいつに殴られて危なかった奴だっているんだ!

 死んじまいそうな奴だっていたんだ!!」


 納得がいかないソニー兄さんが叫ぶ。

 ワンフーは何も答えない。

 ソニー兄さんが言うに任せている。


「だからだよ」


 ワンフーの代わりに俺が答える。


「だからこいつは今日来たんだ。

 子供達のことは多分、狼男とか一部の下っ端の暴走だったんだろう?

 それを確かめるため、そして本当にそうだった場合に落とし前をつけるために」


 途中で殺気なんか出すもんだから俺もちょっと内なる自分が出ちゃったが、概ね間違ってないはずだ。

 狼男のこと睨んでたし。

 違ったらワザと狼男が来るように仕向けた俺が馬鹿みたいだし。

 まぁここまでの落とし前とは思わなかったけど。


 俺の推理を聞いたソニー兄さんは唖然としている。

 チームの子供達も唖然としている。


 安全だと言うことがわかったからか、店の方でクルクル回り出したフレド兄さんが見える。

 ……あの人何やってんだ。


「……落とし前ってなんだよ」


 ソニー兄さんが唸るように言う。


「マフィアが観衆の前で頭を下げる。対等だって認めたと同じだ。

 そして新移民なんかに頭を下げたコイツは今後、他のマフィアに舐められる。

 もうやっていけないかもな」


 俺がそう言うとソニー兄さんは俯いてしまった。


 そうか。だから謝る前に決意したみたいな顔になったのか。

 コイツが落とし前として差し出してきたのはファミリー。

 自分のファミリーだ。

 破格すぎるだろ。なんだそれ。


 俺が改めてことの重大さに気づいて黙っていると


「この後なんかここでなんかやんだろ?

 いつまでも立ち話してたら問題があるんじゃねぇか?」


 肩をすくめながらワンフーが言ってくる。


 ……確かにそろそろ始めないと。

 だが、ソニー兄さんがこんな状態では始めるに始められない。

 俺もだけど。


 俺が迷っていると後ろから声がする。


「じゃあ、ここは僕に任せてキキとソニー兄さんは店で話をしてきなよ!」


 振り向くとフレド兄さんが回転しながら迫ってくる。

 ブレないなおい。


「そうだね。準備なら事前に打ち合わせしてるから私たちでもできるよ!」


「あ、でもスタートまでには戻ってきてよね!」


「ガチムチとソニー様。尊い……」


 チームの女の子たちも言ってくる。

 もう最後の子はいいや。


「じゃあ……お言葉に甘えようかな?」


「ああ! 存分に甘えておくれよ!

 何と言っても僕はキキのお兄さんなのだから!」


 さらに回転速度をあげたフレド兄さんに促され店に入る。

 ……ポーラさんはいないな。


 俺とソニー兄さんとゴロッリオとワンフーので奥の席に着く。

 四人の間にしばらく沈黙が続いた。


 最初に沈黙を破ったのはやはりワンフーだった。


「薄々わかってたんだ。リロの野郎が返り血をつけて帰ってきてたからな。

 最初は他の奴らとやりあってるのかと思った。

 あいつは馬鹿だが俺の言うことは聞いたからな。ガキに手を出すなってさ」


 ワンフーが告解するように言う。


「だがよ。他の奴らとやりあったならいくらあいつでも、無傷ってことはねぇ。

 そんなにこの街は甘くない。じゃあよ。誰の血だって話だ」


 だんだんと拳を握りしめながら続ける。


「俺も聞いたよ。誰の血だってな。奴はゴロツキと喧嘩したって言ってたよ。

 アイツもファミリーだ。信じるさ」


 目をぎゅっと瞑るワンフーは吐き出すように言う。


「だがよ、うちのファミリーのやつが見たと言ってきた。

 リロの野郎が子供に手を上げているところをよ。

 俺は両方信じたいさ、だから自分の目で確かめることにした。

 ちょうどリロの野郎がお前らがなんかやるって言ってたからな」


 ドンッと握った拳をテーブルに叩きつけてワンフーは


「後は前らも見ていた通りだ。どうやら、あの馬鹿に入れ知恵した奴がいるんだろうな。

 そんな奴が俺のファミリーにいるってことだ……」


 ギリギリと王虎の歯をくいしばる音が聞こえてくる。

 俺の(・・)ファミリーね。


「俺らファミリーは煽られようが何しようが、ガキに手を出しちゃならねぇ。

 それだけはダメなんだ。それだけは俺たちファミリーがやっちまったらおしまいだ」


「……なぜだ? なぜおしまいなんだ?」


 それまで黙って聞いていたソニー兄さんが問いかける。


「お嬢ちゃんにはわかってるみたいだけどな。俺らファミリーもスラムの出だ。

 クソみたいな奴らに殴られて奪われて犯されて。殺されて。

 そうやってどんどん減っていった仲間たちの生き残りが俺たちファミリーだ。

 生き残った奴らでのし上がって、同じ境遇のろくでなしどもを集めて作ったファミリーだ」


 珍しくもない話だ。

 そうどこにでもある話。

 弱ければ旧移民だってその立場になる。


「言うなればスラムの奴らはファミリーの卵さ。

 ファミリーの奴らに手を上げる奴が出てきたなら、昔の痛みを忘れちまう奴が出てきたなら。

 他のマフィアと変わらない。アイツらと同じになっちまったならおしまいさ」


 ワンフーは椅子に深く沈み込みながら長いため息をつく。


「おしまいなら、筋を通してから終わらせる。

 それが頭をやってるもんの責任ってもんだ。

 それが……マフィアってもんだろ?」


 ワンフーは確かにマフィアのボスだったんだろう威厳を持って言うのだった。






お読みいただき誠にありがとうございます!


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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