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22話 『強い敵を寄ってたかって倒す話』

先日は夜中に挿絵を投稿して申し訳ございませんでした。

投稿してすぐにご覧になった方がいたようで、

がっかりさせてしまったかもと反省しております。


お詫びになるかわかりませんが、本日2話目の投稿です。

お楽しみいただければと思います。

こんにちはキアーラ・カサッツァです。

強大な敵と相対する前には前哨戦がつきものです。

世間では前哨戦の敵をかませ犬と言ったりもします。

今回の相手は狼でしたが、キャンキャンうるさかったので大きな括りでは犬という事で。


さてさて。

周りの観衆の度肝を抜いた事で聞こえてくるざわめきが心地よい。

だが、いつまでも浸っていることはできない。

手早く現状を把握せねばな。


そう思い周りを見渡すと、通りの向こうまでぶっ飛んだ狼男がぶつかった事で、向かいの店の椅子がぶっ壊れて、その椅子の破片がここまで飛んできいる。

いやぁ、どんなパワーだよほんとに。

俺は折れた足が尖って槍の穂先のようになっている物を拾いながらゴロッリオの方を向く。


「ゴロッリオ。助かったよ、ありがとう。それとすまないな」


暴力が嫌いで人を傷つけることが嫌いな心優しいゴロッリオ。

そんな彼にそれを行使させたのは俺だ。

彼の流儀に反する事をやらせている罪悪感。

そんな罪悪感から、謝罪が溢れちまう。


例えそれがゴロッリオが望んだ事だとしても申し訳なさが先立つ。

俺がやれるなら俺がやるが、この身体ではあの狼男をぶん殴れない。

だから代わりにやってもらう。


___情けない限りだ。


仲間だなんだと言っても都合よく利用しているクソ野郎が俺だ。

奴らをとやかく言うことはできないな。


俺が謝るとふいに頭に手が置かれる。

ゴロッリオのデカイ手だ。


「問題ない。俺が好きでやっていること。謝るの要らない」


そう言って頭を撫でてくる。


おいおい、イケメンかよ。

俺がヒロインならナデポもんだぜおい。


『やっぱりBL路線で行くのかい?』


いかねぇよ!


撫でられているためルナの姿は見ることができないが、ニヤニヤしているのはわかる。

BLはありませんと公言していると言うのに。

むしろ百合ならいけたら行くと言う心算(こころづもり)です。


年下の少年から頭を撫でられると言う、えも言われぬ感情が沸き起こってくるが、罪悪感がまだ晴れていないため、撫でられている手を払うこともできぬ。

視線を(ヤツ)から切りたくないんで困っていると、思わぬところからのインターセプト。


「ゴロッリオ。キキの頭を撫でていいのは兄である俺だけだぜ」


ソニー兄さんのシスコンが発動。

ゴロッリオの手をはたき落とす。


いや兄さんもダメだけどね?


「だが、キキを守ってくれたことには礼を言うぜ。ありがとう」


流れるように90度の最高礼。

……思っちゃいけないんだろうけど。

愛がキモい。


「う?……う」


ほらぁ。ゴロッリオがどうすればいいのか困惑しちゃってるじゃん。

周りもドン引きですよ?

まぁ、引いていないメンツもいるようで、うちのメンバーの女子から声が上がる。


「妹のためにしっかり頭を下げられるなんて素敵!」


「女の子を大切にしてくれてる感あるよねぇ」


「ソニー様とゴロッリオ……尊い」


……あばたもえくぼか。

チームの女の子にはご好評いただいているようだ。

最後のは聞かなかったことにする。

断固戦っていく所存です。


だが今は他に戦わなくてはいけない奴がいる。

俺たちから距離を置き、やり取りをずっとただ見ていた虎男。

狼男がぶっ飛ばされたと言うのに、楽しそうな表情は変わらず。

文字通り腕をこまねいている。


彼我の距離は大体50m。

人間なら早いやつで6秒の距離。

獣人でも2、3秒かかる。

何か仕掛けてきてもゴロッリオが対応可能だ。

……言っている側から頼るのも重ね重ね申し訳無いが。


俺が奴を注視していると、虎男がゆっくりと片足をあげた。

なんだ? 何をするつもりだ?

何かの合図か?

そう思い、俺が周りに注意を促そうとした瞬間。


爆発音。

花火が打ち上げられて炸裂したかの如き音と、空気を伝ってくるその重い振動。


「あぶな___!」


ゴロッリオとソニー兄さんがそちらを振り向ききるよりも早く。

俺が危険を知らせる声を上げ切るよりも早く。


虎男が俺の目の前に到達する!

奴は振りかぶった手を俺の顔面に叩きつけ___


ざけんな___

クソが___


ポン。

そんな音が聞こえたかと思うと、俺の頭にまた手が乗せられていた。

とっさに俺が掴んだ虎男の腕は大型トレーラーのタイヤのような質量を伴っている。

ゴロッリオよりもはるかに硬く、そしてデカイ手。

触れられているだけでわかる。

こいつはそのまま俺の頭を握りつぶすことだってできるだろう。


「へぇ。今度は反応するんだな。お嬢ちゃん。

リロの時は瞬きすらできなかったのに」


ガタイに見合った腹から響くような重厚な声。

そこには少なからず、驚きの声が混じっている。


「な?!」


「うぅ!」


ソニー兄さんとゴロッリオが驚愕の声を上げ、それでも虎男に掴みかからんとする。


「おっと。動くんじゃ無いぞ兄さんたち。

このお嬢ちゃんの可愛いお顔が潰れたトマトみたいになっちまうぜ?」


そう言いながら先ほどとは違う、獰猛な笑みを浮かべる。

途端に虎男から質量を伴ったかのような威圧感が放たれ、二人は動きを止めてしまう。


___こりゃ、音に聞こえる殺気ってやつかね?


そうか。こいつは俺を殺そうと思っているのか……。


「お嬢ちゃんがキアーラ・カサッツァで間違いないかね?」


虎男が訪ねてくる。

嘘は許さぬと言わんばかりだ。

この威圧感の前では誰だってビビって、正直にゲロっちまうだろう。


俺だっていきなりだったらビビっちまう。さっきの狼男の時みたいに。


だが___敵となれば別だ。


「人に名前を聞くときは、自分から名乗るってママに教わらなかったか?」


その言葉とともに、頭の上に乗っている奴の手、その小指を空いている手で掴んで思いっきりぶら下がってやる。


「ぬおっ?」


今までブルっちまわなかった奴なんていなかったんだろう。

ましてやこんな子供に反撃されたことで一瞬奴は驚く。


小指を取られてもこいつはなんら痛痒を感じないだろう。

だがそれでも隙はできる。

そしたら可愛い妹のためにこの人が動かないはずがない。


「気安くさわんなクソが! 俺んだぜ!」


ソニー兄さん。俺は兄さんのものではありません。

ソニー兄さんが俺に引っ張られて少し頭が下がった奴の顎に拳を叩き込む。


ナイス脳震盪狙い!

だが奴はダメージを受けたそぶりも見せず兄さんの腕を掴む。


「「「きゃぁ!!」」」


チームの女の子の悲鳴が聞こえる。


「なるほど。いいセンスだ」


ニヤリと奴が笑う。

さっきと同じ楽しそうな(・・・・・)笑み。


……それ癖なのか? ニヤリと笑うの。

そのまま奴は腕を握りつぶさんと力を込めるが


「うっほ!」


ゴロッリオのメガトンパンチ!

うっほって言ったよこの人。


その拳が奴の顔面を捉えゴムを叩きつけるような大きな音を発するが、やはりやつには通用せず。

だがゴロッリオは怯まず、のど輪をかます!


ゴロッリオの腕が奴の首に到達すると同時に腕を掴まれてしまう。

しかし、ソニー兄さんが腕を掴まれたまま飛び上がり延髄斬りでフォロー!


流石に超重級のゴロッリオとわりとタッパのあるソニー兄さんの連撃で重心が下がり両足が肩幅まで開く。


「効かんな?」


それでも奴は余裕の強者ムーブ!

だが目線はこちらから外れたぜ!


俺が男のままだったら躊躇(ブル)っちまうこの攻撃。

二人が攻撃してくれたから俺の目の前にさらされる弱点。


俺は大きく屈伸して伸び上がるように、ソコ(・・)に頭突きをぶちかます!

脳天直撃ムスコサーン!


「ぐぬぅ?!」


頭の上から間の抜けたうめき声が聞こえる。

うへぇ。なんか感触が……。

そのままへっぴりごしになった奴の股下をくぐり抜けて後ろに回る。


振り向きざま膝の後ろに蹴りを入れる!


ぺち。


おう……。

残念。パワーと体重が足りない……。


しかし俺のしようとするところは兄さんとゴロッリオには伝わったらしく、

先の俺と同じように掴まれた腕に体重を乗せ綱引きの要領で引く。

腕を取られたままなので、満足に受け身も取れず尻を突き出した形で虎男が倒れる。


二人が腕を抱きしめるように、足はカニバサミの要領で固めてくれる。

……以心伝心。パーフェクトコミュニケーションだ。


さて。

お気づきだろうか?

俺はさっきからずっとあるものを手に持っているのだ。

そう。狼男が吹き飛ばしてくれた、尖った椅子の脚だ。


「なぁ? 虎男さんよ?

この尖った椅子の脚を俺はどうすると思う?」


俺はそう言いながら、奴のとある場所にその尖った穂先をピタリと当てる。


「……危ないから片付けるんじゃねぇかな?」


こいつも俺がずっとこの尖った物を持っていたのは見ていたからな。

今自分がどういう状態なのかは察しているだろう。

震える声で答えてくる。


「どうかなぁ?正解かなぁ?ドゥルルルルルルル……ブッブー!

不正解です。一段階進みます」


そう言いながら切っ先を数ミリだけ虎男に刺す。


「「「きゃぁー!」」」


「アッー! ちょっと待とうぜ! な?!」


チームの女の子たちのさっきとは違う黄色い悲鳴が聞こえる。

そして虎男の野太い悲鳴も心地よい。


「第2問! 人体の急所って喉とか顎先とか後頭部とか色々ありますが、

どうしても鍛えることができない筋肉はなんでしょう!」


「それ正解したら刺さないでくれるのかよ?! なぁ?!」


「前向きに善処します」


「それ善処してくれないだろ!」


虎男が益々焦っていく。

きっと毛皮の下は脂汗でギトギトに違いない。

ばっちぃ。


「ケツの穴! 正解はケツの穴だ!!」


うぁ……デカイ声でなんか叫んでるよ。

セクハラだな。


「こんな幼気な幼女の前でなんてことを叫ぶんだ。これはペナルティが必要だな」


「なんでだよ! 正解したろ!」


必死かよ。


「いいえ。問題は筋肉は? という問いかけなので正解は括約筋です。

よって不正解! 一輪挿しの罰ゲーム!!」


「いや、そんなのわからねぇよ! ホントまてって!」


まぁ、俺も途中から気づいたので許してやってもいいけど、殺気を向けたのは事実なので、それはそれこれはこれという事で。


「あんたら獣人はさぁ、筋肉でそれらをカバーしちゃうじゃん?

でもさぁ、ここはどうしても無理なんだよなぁ。

鍛えられないの。同じ筋肉なのに不思議だね?」


俺は奴に穂先を更にぶっ刺さんとゆっくり(・・・・)と体重をかけていくと


「わかった! 俺が悪かった! 降参だ! 俺の負けだぁ!」


俺の思った通り(・・・・)降参の声が虎男から上がった。


『やっぱりBL路線で行くんだねぇ?』


だから違うって言ってんだろうが。

ルナをひと睨みしながら、俺は賭けに勝ったことに安堵のため息をつくのだった。

お読みいただき誠にありがとうございます!


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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