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20話 『なんかすごく認められる話』

本日2本目です。

 

 どうもこんにちはキアーラ・カサッツァです。

 自分の知らないところで、自分の知名度が上がっているとこそばゆい気持ちがしますね。



「キキ! やっときたのかいッ?」


 そう呼ぶ声で我に返った俺は声のする方へと向き直った。

 そこにいたのは迎え入れるように両手を広げて、シャツの前をはだけて鎖骨を強調したフレド兄さんだった。


 肩のあたりまで伸ばした金髪はパーマを当てたわけではないのにウェービーで、儚げな雰囲気を醸し出す兄さんに似合っている。

 華奢な体は手足がすらりと長く、実際にはソニー兄さんの方が長身だが、背が高いイメージを抱かせる。

 昔はソニー兄さんの陰に隠れていたイメージしかなかったけど、最近はイケメンキャラが立ってきたな。


「やぁフレド兄さん。みんな連れてきたよ。

 先に準備をさせて悪かったね」


 そう俺がフレド兄さんにいうと、彼はなぜか広げていた手を真上で交差させるとクルクル回転しながらこちらに向かってくる。

 トリプルアクセルどころではないな。


 そのまま俺の前までくるとピタリと止まり胸に手を置き優雅にお辞儀する。


「可愛い妹の助けになれたのなら、この上ない僥倖さッ!」


 キランという効果音が聞こえてきそうなスマイルでウィンクしてくる。


 うぜー。


 いや。いかんいかん。

 アンチイケメン遺伝子が反応してしまった。


 フレド兄さんがこんな感じになってしまったのにはちゃんとわけがあるのだ。

 家からあまりでられないポーのためだ。

 外の話を伝えるために、そして色々なところから話題を集めて面白おかしく伝えるためにこのキャラが出来上がったのだ。


 だからオーバーリアクションがうざいとか一々キランキランさせるスマイルがうざいとか、話題集めの手段だったお姉様方との語らいが最近は目的に変わっているんじゃないか、リア充爆発しろとか思ってはいけない。


『彼は男だけどバカで面白いねぇ?』


 おい人の兄貴にバカとはなんだ。

 もっとオブラートに包め。


『彼は男だけど道化じみてて面白いねぇ?』


 包みきれてねぇよ。オブラート突き破って悪意の片鱗が見え隠れしちゃってるよ。

 まぁしかしフレド兄さんに道化は褒め言葉だ。

 なんせポーのために道化になる宣言をした男だからな。


「今回は本当にフレド兄さんに助けられたよ。ありがとうフレドおにいちゃん」


 俺がそう礼をいうとフレド兄さんはいつものキランキランスマイルではない、ニッコリとした優しげな笑みを浮かべるのだった。


 きっとこういうのがモテるんだろうなぁ。

 妹を好きすぎるけど。


 さて、もう一人礼を述べるべき人がいる。

 フレド兄さんの横に立っていた横幅に定評のある未亡人ポーラさんだ。

 俺はポーラさんの前まで行くと丁寧に頭を下げた。


「この度は私どものためにこのような機会を下さり誠にありがとうございます。

 ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします」


 俺の後ろに控えていたソニー兄さんとゴロッリオのいっしょに頭を下げる。

 ほかの子供達は外で設営するように指示を出した。


「あらあらご丁寧にどうもぉ。気にしなくてもいいのよぉ。フレドクンには日頃からよく(・・)してもらってるんだから、これくらいどうって事ないわぁ」


 よくしてもらっていると言うのは、良好な待遇という意味なのか、度々してもらっていると言う意味なのか。

 どちらか分かりにくいニュアンスだったな……。

 だが、気にしたら負けだ。多分両方だろうけど。


「良くしてもらってるのは僕の方さぁ!」


 またもクルクルしながらこちらにフレド兄さんがやってくると、ポーラさんの手を取るとその手にキスする。


「可愛い人。僕からも改めてお礼を」


「あらまぁ〜。フレドクンたらぁ〜」


 ポーラさんが頬に手を当てクネクネしフレド兄さんがクルクルしだしたので、俺は先ほどカウンターに座っていた傾国の美女が気になってそちらに目を向けた。


 おや? いない。

 ルナさっきそこに座っていた綺麗な人はどこに行った?


『フレド君のクルクルが面白くて見てないねぇ?』


 つっかえ。

 まぁいい。仕事を始めよう!


「ではポーラさん。そろそろビンゴ大会を始めたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


 クネクネポーラさんはピタリと止まると、こちらを見てくる。

 その表情は若いツバメに浮かれるお姉さんから、やり手の実業家の顔に変わっていた。


「ええ。始めましょう。配分は相談した通り。

 上がりはウチが4でそちらが6でいいわね?」


「……本当にその取り分でいいのでしょうか? こちらに利がありすぎるのでは?」


「おいキキ! せっかく多めにもらえるんだから余計なことを言うなよ!」


 ソニー兄さんが耳元で囁いてくるが肘打ちを入れてからのスルー。

 クライアントの前で内緒話するんじゃないよ。


 それにこういう事はきちんと確認しなければならない。

 俺はポーラさんが商売のことをしっかりとする人だと感じた。

 フレド兄さんと一緒の時は分かりにくいが、情に流されて利益を不意にするような人ではないとみた。


 話しているときに時折見せる眼光が物語っている。

 前世での山千海千のクセ者たちと同じ眼差し。

 昼行燈に見えるのに商談となると途端に油断ならなくなるおっさんがいたもんだ。

 ポーラさんはその人と同じ匂いがする。

 筋は通してくれるだろうが、甘い商売をするなら勉強させられてしまうだろう。


 売れるものはなんでも売って、手に入られられる利益はなんでも手に入れる。

 そういう商人(あきんど)のプレッシャーがある。


 だがしかし。だがしかしだ。自分で言うのもなんだが、俺たちは新移民だ。

 こういう場合9対1くらいが普通で場合によっては10:0だってありえる。

 そうしたって誰に咎められるものでもない。

 それがこの世界。ある意味合法なのだ。

 こっちが3であちらが7でも十分なくらいなのだ。

 それをわからない人ではあるまい。


 ___何故そうしないのか? 確認する必要がある。


 この前の挨拶時にはフレド兄さんと早々にいなくなっちゃったから確認できなかったからな。


 俺が訝しげな眼差しで見ていたのに気づいたのだろう。

 ポーラさんはニッコリと笑う。


「これでも商機を見るのに自信があってね?

 それでも十分利益がでると見ているのよ。

 あなたの考えたビンゴは遊びとしてはとても単純だけれど、だからこそ受け入れられる。

 きっと多くのお金が動くことでしょう」


 実績と経験に裏打ちされた確信があると断言してくる。


 なんだか能力のある人に評価されるのは素直に嬉しい。

 だが能力があるからこそ先もまた見えている。


「でも単純だからこそ他に真似をされる。そうね?」


 俺が分かっていることも当然の事として聞いてくる。


 ……ポーラさんの言う通りだ。

 娯楽の少ないこの街ではビンゴは流行る。これは間違いない。

 だが金が動くとなったらそこかしこで真似をするものが増えるだろう。

 なんせ必要なものはビンゴカードと抽選箱だけだ。


「そうですね。ビンゴが動かす金は多くなるでしょう。

 しかし我々が掴む金は時間とともに少なくなっていく」


 俺たちが大金を掴むのは最初だけだ。


「だからこそ、取れるときにとっておいた方がいいでしょう?」


 真意を聞くために俺は敢えてたずねる。


「そうね。その場限りの商売ならそうでしょう。

 取るだけとって軌道に乗ったあたりで自分でビンゴをやればいい。

 それが一番実入りがいいでしょう」


 自然と俺の目つきが悪くなるのがわかる。


 そうだ。誰でもできるならポーラさんでももちろんできる。

 商法表登録なんてないんだ。あってもこんなガキどもなんてどうとでもなる。

 問題があるとすればフレド兄さんの印象が悪くなるくらいだ。

 そして彼女は商売とフレド兄さんなら前者を取る。

 腕力が物言うこの世界ではそういう人でなければ成功者たり得ない。

 彼女が女手ひとつでこの店をやっていることこそがその証左となる。


 それぐらい(したた)かでなければこの世界は生きられない。

 金もまたこの世界では力で、力があるものが正義なのだから。


「でも。それはビンゴだけのことを見た場合よね?」


 ___?


「どう言うことでしょう?」


 俺の問いにしてやったりと言う笑みを浮かべてポーラさんは言う。


「あなたよ」


「私?」


「そう。あなた」


 ますますわからない。


「私がフレドクンに頼まれたから今回の話に乗ったと思った?」


 違うのだろうか?


「ふふ。違うわ。甘く見ないで頂戴。色事と商売は別。

 見込みがなければフレドクンの頼みでも乗ったりはしなかったわ」


 顔に出てしまっていたようだ。ポーラさんの表情が硬くなる。


「なぁ? 色事ってなんだ? まさかフレドって……」


 アホなことを聞いてくるソニー兄さんに再び肘を入れつつ再度尋ねる。


「では私に見込みがあると?」


 ポーラさんは俺の問いにしっかりと頷くと


「ええ。間違いなく。貴方にはそれだけの価値がある」


 断言するように言った。


 ___俺に……価値がある?


「ずっと見てきたわ。あなたがスラムの子供達を束ねていく様を。

 そして食べ物を与え水浴びをさせ、センスの良い服を与えていくところを」


 言葉を失う俺にポーラさんは一つずつ諭すように俺がやってきたことを上げていく。


「後ろ盾のない新移民の___失礼。気を悪くしないでね?

 貶す意味じゃないわ。ましてや子供がやるには大それたことをなしていく様を見てきた」


「大それたこと……?」


「わからないかしら? 貴方達のような新移民と私達では明確に差がある。

 これは貴方達もそういうものだと思っているはずよ」


 確かに……。新移民だから仕方がない。

 そういうものだと、そういう世界だと思っていることは否めない。


「普通はそれを受け入れて生きていく。

 そうするしかないから。他の生き方を知らないから」


 ……そうだ。前世の俺もそうだった。

 どうすればいいか分からないまま流されて生きてきた。


「何故そうするしかないのか?……それは、現状を打破する方法が分からないからよ。

 変えないんじゃない。変えるということすら思いつかない」


 ゴロッリオもそうだった。

 そういうものだと疑問も抱かず受け入れていた。


「でも貴方は違う。変えようと思った。

 思うだけではなく現実可能な手段で実行すらした」


 彼女の弁にも心なしか熱がこもってくる。


「いい? 貴方のしたことは何もないところから価値を創造したに等しい。

 スラムの子供達だけで町の人達から信頼を得て、商売を始めて、そしてそれは成功が約束されている。いったい他に誰がそんな事を出来るというの?」


 全面的な肯定。

 自身の中に湧き上がる感情を制御できずに息がつまる。


「気づく人は気づいてる。

 何もないところから商機を生み出せるならそれは金の卵を産む鶏と同じ。

 そしてそんな鶏を逃す商人は存在しないわ。

 ……それが今回の話に乗った理由よ」


 何というか。……驚いた。

 ただパメーラのためにどうにかしなくてはと思ってやってきた事だが、これ程までに評価されるとは夢にも思わなかった。


 こんなにも俺のやった事を認めてもらえるとは……。


「わかってもらえたかしら?」


 目を白黒させている俺をみて面白げに問いかけるポーラさんに俺は情けないことに頷くことしかできなかった。声を出したらなんだか目から汗が出てしまいそうだったから。


『涙目の幼女だと絵になるけど、

 中身が中年男性だと考えるとアレだよねぇ?』


 ……お前今はそういう感じの空気じゃないだろ。

 俺のトータル人生で比類ない感動シーンだよこれは?


『いや、次のイベントまで間もないから巻いて行こうかと思ってね?』


 無能極まりないディレクターだなお前は。

 まったく。目ん玉の汗も引っ込むってもんだよ……。


 突然げんなりし始めた俺にポーラさんが小首を傾げたじゃないか。

 誤魔化すためにも質問をひとつしておくとするかね。


「一連の行動がなぜ私の行ったものだと?

 二人の兄さんが考えたのかもしれない」


 冷静に考えるとずっと見てきたと言ってたが、ソニー兄さんだってフレド兄さんだってチームのみんなと一緒に行動してきた。

 むしろこの二人が表側から見たらメインで動いていたように見えるはずだ。


「言ったでしょ。気づく人は気づく。

 もっとも偉そうに言っているけど、私も言われて気づいた口だけどね?」


 そういうとポーラさんはコロコロ笑った。


「誰に……ですか?」


「マダム」


 ___マダム?


「私は本当の名前を知らない。

 だけどこの街でマダムと言えば彼女のことだとみんなわかる」


 その時俺の脳裏には、なぜかさっきカウンターに座っていた女性のことがよぎった。


「あなたもすぐに会うことになるでしょう。

 あの方が認めるあなたなら、それだけで長く付き合う価値がある。

 今回のことはそのための先行投資だと思って頂戴」


 ___俺自身の価値と言うよりも、マダムとやらの言うことだからってことか。


 ちっとばっかり浮かれすぎたな。

 どこのどいつだか知らんがやんごとない人が俺に注目しておられるらしい。

 普通、俺みたいな新移民の幼女に注目するか?

 まだ派手に動いていないと自分では思っていたが、どうやら手放しに喜べるわけでもなさそうだ。


「もちろんマダムに貴方のことを言われた後、私もあなたを見させてもらった上で今回のことを判断したわ」


 ポーラさんが表情を引き締めた俺をフォローをするかのように慌てて言葉を重ねる。


「それに使えるなら兄弟でも使うっていうところなんか商人に向いていると思うし、無軌道な子供達を統率する手腕もなかなかだわ。

 それにこのビンゴに関してもただの賭け事で終わらない。

 私の勘はそう告げているわ」


 俺が警戒し出したのが見て取れたのだろうか?

 なんだか言い訳じみたことを言われたけれども。


 それでもその言葉には嘘はなさそうだ。

 騙そうとするやつ特有の濁った感じがしない。


 はぁ……。

 そこまで言われちゃ何が何でも今回のビンゴは失敗できないな。

 もとから失敗するつもりなんざかけらもないが、気合が入るってもんだ。


 モチベーション管理ってのは大事だとつくずく思わされるね。

 そして俺がいかにチョロいかも。

 ゴロッリオのことは言えないな。


 自分の価値を認めてもらえてこんなに嬉しいなんてのは。


「買い被りすぎですよ」


「ふふふ! そういうところは子供っぽいのねぇ」


 照れ隠しを見抜かれちまったようだ。

 しかし子供っぽいって……中身おっさんだぞ?


『精神的に成長できてなかったんじゃないかい?』


 うっせ! お前はうっせ!


 仕切りなおすために周りを見渡すと、俺が褒められたのだけはわかったのかソニー兄さんのドヤ顔が見えるし、ゴロッリオの得意そうな顔も見える。


 なんでお前らがドヤ顔するんだよ。


 俺がため息をつきかけたところで外から聞いたことがある声が聞こえてくる。


「おう? おうおうおう!

 スラムのガキどもが綺麗なおべべきてなんお冗談だこりゃぁ?! あぁ?!」


 はぁ〜。

 今度こそ大きなため息が俺の口から漏れ出た。


 ゴロッリオはしかめっ面で、ソニー兄さんはうんざり顔だ。

 毎度おなじみ狼男の登場だ。


「なぁ! なぁなぁなぁ! 兄貴よぅ!

 このおべべを売っぱらったら金になるんじゃねぇかよお?!」


 今日は連れがいるらしい。


『ほら。次のイベントだよ巻きで良かっただろう?』


 ふぅ〜む。

 転生ものであんまりこのセリフは言いたくないんだけどなぁ……。

 まったく……


「やれやれだぜ」


お読みいただき誠にありがとうございます!


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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