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17,5話 『ソニーとフレドがイチャイチャしている話』

 

 喧嘩が強い上に男前であるこの俺。

 サンティノ・カサッツァの妹であるキアーラ・カサッツァはちょっとおかしいと思う。

 いや、ちょっとじゃないかもしれない。


 俺よりも7歳年下のキアーラは生まれた直後は普通の赤ん坊だったと思う。

 おかしいと思ったのはいつだったかな?


 2ヶ月もしないうちに、こっちの言っている事をわかっているような反応をするようになったときだったか?

 どういうことかと言うと、オシメかおっぱいかを聞いたら、頷いたり首を横に振ったりして意思表示するんだぜ。


 それとも親父に対する反応が変だった時だったか?

 うちの親父は声がでかい。

 それはもうデカいんだが、いつもそのデカい声で喋るもんだから小さい子供はビビって泣いたりする。十人いたら十人が泣く。


 だけどキキは違った。

 泣きもしないで、うるさいなぁという顔をするんだぜ。


 そしてその時の表情がおかしい。

 あれはクレア母さんが隠れて酒を飲んでいる親父を見つけた時と同じなんだぜ。

 無表情とも違うなんか怖いやつ。


 あと親父がキキを抱っこして頬ずりしている時のキキの目もおかしい。


 親父は気づいていなかったが、もはやアレは年頃の娘が父親に向けるものじゃないだろうか?

 年頃の娘は一度は父親が嫌いになるという伝承を近所のウワサ製造機ヴォーチェ婆さんから聞いたからあっていると思う。


 だがまぁ、これくらいならギリギリあることかもしれない。

 史上最速の思春期みたいな。

 最強の俺の妹だしありえるんだぜ。


 最強のサンティノ・カサッツァ。

 最速のキアーラ・カサッツァ。

 うん。ありだぜ。


 フレドは……なんだろう?

 最高潮のフレデリコ・カサッツァ?

 なんかテンション高いし。


 まぁいいぜ。


 今でこそ最高潮のフレデリコだけど、もう一人の妹パメーラが生まれるまでは影の薄いやつだった。全然喋らないし気をつけていないと見失う。


 そうそう、そのフレドに対するキキの反応も変だった。


 フレドが本当にたまに喋ると、キキがビックリした表情でフレドを見るんだ。

 ありゃセリフをつけるとしたら、いたの?! って顔だったぜ。

 そのあとばつが悪そうに目をそらすんだだぜ。


 赤ちゃんが突然の声に驚くのは普通。

 だけど、気まずそうにするのは普通じゃない気がするんだぜ。


 まぁ最近のフレドも普通じゃないけど。

 なんかクルクル回るし。

 いちいちカッコイイポーズするし。


 カッコイイから俺もやってみたが、親父に爆笑されたからもうしない。


 それよりもキキはその他にも色々変なんだぜ。


 オシメがすぐ取れたのも、ハイハイをすっ飛ばして歩き出したのも、生まれて半年くらいで喋り出したのも天才だからどこもおかしくないが、問題はそこじゃない。


 ときたま空を見上げて何かを見ているような仕草をするんだ。

 その間も無表情でぼーっとしているんじゃなくて、コロコロと表情が変わるんだぜ。

 まるで誰かと会話をしているみたいに。


 ヴォーチェ婆さんに聞いたら赤ん坊はそういうものらしい。

 赤ん坊にだけ見える妖精さんが飛んでるんだって。

 クレア母さんが言うには俺もフレドもそうことがあったらしい。


 でも、ときたま空に向かってうるせー! って言うのも妖精さん相手になんだろうか?


 ちなみにキキが最初に喋った言葉はマンマでもなくママでもなくパパでもなく、うるせーだ。

 親父もクレア母さんもその場にいなかったが、俺は確かに聞いたんだぜ。


 それを両親に言ったら信じてもらえず、そのあとはかったようにキキがママって言うもんだから、有耶無耶になっちまった。ありゃぁ誤魔化したに違いないぜ。


 キキの空に向かって話す癖は大きくなった今でも続いている。


 だから俺は妖精が見えるのか? と聞いたんだが、そしたらものすごく嫌そうな顔をしながら言うんだ。


「は? ありえないんですけど?」


 って。

 あれはヴーチェ婆さんから伝え聞いた、兄貴ウゼーの眼差しで間違いないぜ。

 それ以来俺はそのことには触れないようにしている。

 もうあんな目で見られるのは嫌だぜ。


「ソニー兄さん、何をしているんだい?」


 俺が呼びかけに振り向くと、そこにはクルクル回るフレドがいた。

 ……目が回らないのか? いつも思うぜ。

 あとシャツがはだけすぎ。

 まったく。だらしないぜ。

 男たるものビシッと決めた方がいいといつも言っているんだが。


 決して俺がやったらチンピラみたいだってキキに言われて妬んでいる訳ではないぜ?


 フレドがクルクル回りながら俺の下までくる。

 俺たち兄弟は同じ部屋だからここはフレドの部屋でもあるんだが、フレドがクルクル回りやすいようにいつも部屋を綺麗にせにゃならないのが面倒だぜ。


「いや、ちょっと考え事をな」


 俺がそう答えるとフレドがクルクル回るのをピタリとやめて深刻そうな顔で聞いてくる。


「兄さんが考え事……? 熱が……あるんだね?」


「熱なんかない! 俺をなんだと思っているんだぜ!」


「脳筋?」


 俺はフレドの頭をポカリとやる。


「誰が脳筋だ!」


「痛いじゃないか。そう言うとこだよ?」


 ぬぅ。キキが俺のことを家族の前で脳筋と言ったのが定着しつつあるぜ。

 キキが言うには脳みそまで筋肉でできている奴のことを脳筋というらしい。

 筋肉は漢らしくていいが、脳みそがないと思われるのは癪だぜ。


 俺が唸っていると


「冗談さ! 兄さんだって考え事の一つや二つするだろうさ!」


 そう言ってまたクルクル回り出す。


「そうだろうそうだろう。俺だって考えているんだ。脳筋なんかじゃないんだぜ?」


「うん。兄さんが何を考えているかもわかるよ!

 晩御飯は兄さんの好きなシチューさ!」


「お! いいな! 母さんの作るシチューは大好きだぜ!

 って誰が晩御飯のことを考えているか!」


 俺はまたポカリとやってやる。


「痛いじゃないか」


「お前が兄貴をうまやわない……うままわない……うま……ま?」


「うやまわない?」


「そう! うやままないからいけないんだぜ!」


 フレドは最近俺をうままう気持ちが足りないんだぜ。


「……ごめんよ兄さん。僕が悪かったよ」


 そう謝るフレドはなぜか生暖かい眼差しを向けてくる。

 解せぬ。

 あ、解せぬってのは分からんという意味のカッコイイ言い方らしい。

 キキに教えてもらった。


 そうだキキのことだ。


「なぁフレド。キキってさ、なんか普通じゃないよな?」


「……まぁすごく頭がいいよね。僕たちが知らないことも知っているし。

 小さい子とは思えないほど行動力もある。なにより凄い魔術が使えるしね?」


 そうなんだ! キキはクレア母さんみたいな魔術が使えないが特別な魔術が使える!

 すごいんだぜぇ?


「そうだな! なんせ何もないところから金が出せるもんな!」


 キキが言うには大人にバレると、なんか色々不味いらしく母さんたちには秘密にしているが金が出せるんだぜ!

 まぁそんなにたくさんじゃないのと、月に1回(・・)だけだけど。


「……そうだね。確かに何もないところから出しているね」


 なぜかフレドはこの話をすると表情が曇る。


「なぁ? なんでお前この話すると悲しそうなんだ?」


 たまらず俺が問いかけると


「そうだね……きっと僕が臆病で卑怯者だからだよ」


「……どういう意味だ?」


「そのままの意味さ」


 そういうフレドの表情は昔のオドオドしていた頃に戻ったみたいで、いつものキラキラした雰囲気のかけらもない。


「なぁ。なんかあるなら俺が相談に乗るぜ?」


 俺がフレドの肩を組みながらそういうと一瞬泣きそうな顔をして


「いや。大丈夫さ。問題ないよ」


「……俺じゃ役に立てないか?」


 あんまり俺は賢くないからな。

 頼りないだろう。


「そんなことはない!」


 突然フレドが大きな声で言ってくる。

 俺がビックリしていると


「……兄さんが役に立たないとかじゃなくて、僕の問題なんだ。いつか必ず話すから……」


 そう言って俯いてしまったフレドを見て、なんだかガキの頃を思い出してつい頭をクシャりと撫でてしまった。


 驚いて顔を上げたフレドに俺は


「わかった。だけどヤバくなったら言えよ?

 俺は兄貴だからよ。弟の面倒くらい見れるんだぜ?」


 兄貴らしくビシッと決めてやったんだぜ。


「……でも最近は僕が面倒見ているよね?

 この前洗濯婦のお姉さんを紹介したのは誰だっけ?」


「それは言わないお約束だぜフレドよぉ」


 恥ずかしそうにはにかむフレドはまだぎこちないけど、いつものフレドだ。


「さぁ!それじゃぁキキのところに行くか!

 なんかスラムのガキどもとやるらしいからな!

 兄貴として手伝ってやらにゃあいかんぜ! 急ぐぞフレド!」


 うちの天才妹がなんかやらかすらしいからな。

 遅刻するとうるさいんだこれが。

 社会人はどうしたこうしたとか、時は金なりとか難しいこと言ってくるから急がんと。


「もともと僕が兄さんを呼びにきたんだよ……」


「そうだったのか、わるいわるい!」


 そのまま俺が部屋を出ると、後ろから聞き逃しちまうくらいの声が耳に届く。


「……ありがとう兄さん」


 だけど俺は聞こえないふりをするぜ。

 キキが言うには難聴系主人公?だったか。

 呟きは聞こえないふりをした方がモテるらしいからな!


 さて今日はどんなことが起こるんだろうな!

いつもお読みいただきありがとうございます!

読んでいただけていると言うだけで感謝感激です!

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