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SS 『ポーの生誕祭』

メリークリスマス!

と言うことでちょっと未来のお話。

特別編のSSです。


SSですが最長の8000文字オーバーとなっております。


SSとはいったい……?うごごごご

 

「ポーの生誕祭を行います」


「生誕祭?」


 俺の突然の宣言にドルネオ父さんが家族を代表して疑問の声を上げる。

 クレア母さんもソニー兄さんもフレド兄さんも口には出さなかったが、初めて聞く言葉に怪訝な顔だ。


「それは誕生日会とは違うのか?」


「全然違う」


 全くわかっていないドルネオ父さんに俺は即答する。


 だがまぁ無理もない。

 ポー生誕祭がどういうものかを知っていたなら、ポーが生まれた直後から行っていたはずだからな。


 ポー生誕祭。


 それは我が妹であるポーという三千世界においても唯一無二の存在が生まれたことを、あまねく人類に知らしめ、共に祝わうというものだ。

 神に定められた掟。それがポー生誕祭だ。


『生誕っていう言葉は、亡くなった偉人などに用いられることが多いようだね?』


 ポーは存在が偉大だからそう言ったことは超越しているのだ。


 俺の頭上を浮遊しながら無粋なことを言ってくるルナに心の中で応える。


 しかしながら、狭い我が家のリビングに大人一人が浮いていると圧迫感がすごい。

 つり天井の罠もかくやと言うほどだ。

 まぁ、つり天井の罠にかかったこともないし、こいつは俺にしか見えないが。


 頭上にルナがいると思うと憂鬱だが、おっぱいが浮遊していると考えれば幸せな気持ちになれる。


 ポーの生誕祭は幸せな気持ちで迎えねばならぬからな。ちょうどいいだろう。

 皆も浮遊おっぱいで幸せを噛みしめるが良い。


『おっぱいが浮遊していたら普通の人は怖いんじゃないかな?』


 そんな訳はないので、早くもこの質問は終了ですね。


 俺はこの場に揃った家族を一通り確認し、いかにポー生誕祭が重要であるかを説明する。

 家族は一様に微妙な顔をしているが、ポーの喜ぶ顔が見れると言うと俄然やる気になり始めた。


 ちなみに大天使であり超絶良い子のポーはこの場におらず、お隣のお部屋でおねむです。


 我ら貧民街に住む者にとって、家に複数部屋があるのは珍しいことで、それだけで大変な贅沢だと言える。


 うちの住まいは煉瓦造りの安普請。

 貧困層御用達アパートメントのだが、何故か3Kで暖炉もあると言うハイパー贅沢な物件となっております。


 最初は他の貧困層と同じように狭いワンルームに住んでいた。

 だが、ポーを取り上げてくれた産婆さんが、ポーの体が弱い事を知ると俺たちをこの家にねじ込んでくれたのだ。


 なぜそこまでしてくれたのかは分からないが、俺にとってはポーのおかげで贅沢な家に住めていると言う事実があればいい。

 つまりポーは幸運の女神だと言う事実が大事と言うことだな。


 ちなみに流石に無償ではなく、このアパートメントの管理人さんが足を悪くし管理ができなくなったから、貧民なのに何故か元気でガタイのいい父さんが代わりに管理人をするとう言うのが条件だ。

 その報酬として管理人さんが住んでいた場所に住まわせてもらっている。


 だが俺は父さんが貧民の割にガタイがいいことを話題にするのは好きではない。

 何故ならルナがドヤってウザくなるからだ。


『ウザいとはお言葉だねぇ? 誰のお陰で君の父さんが健康なんだと思っているんだい?』


 いやぁ、とんと見当もつきませぬ。


『いや、前にも説明しただろう?』


 ふん! どうだかな! それが真実とは決まっていない!


 呆れた顔で言うルナに俺は吐き捨てる。


 ルナが言うには父さんが健康体で、貧民の割にガタイがいいのは自分のお陰だと言うのだ。

 曰く、親がいないと俺がこの世界で生きていけないので、ゲームが始まるまでは親が健康である様にしていると。

 そして健在であるためには栄養失調などが大敵だから、食べ物から摂取できる栄養の吸収率が向上するようにしてあると。


 なんだその風が吹けば桶屋が儲かる的な発想は!

 そんな遠回りするなら金を出すなり食べ物を出すなり出来る能力を俺によこさんかい!


『ダメに決まっているだろう? 何を言っているんだ君は?』


 ますます呆れ顔をするルナに、俺は無言でメンチをきる。


「なぁ、フレド。なんでキキはあんなに怒った顔をしてるんだぜ?」


「多分、僕らのやる気度が低いと思っているんじゃないかな? 歌でやる気を表現したほうがよかったかもしれないね」


「突然お腹がすいたのかもしれないわね」


 はたから見たら虚空に向かってガンをつけている俺を不思議そうな顔のソニー兄さんとフレド兄さんが見てくる。

 そしてクレア母さんがズレたことを言っている。


「怒ってないよ」


「怒ってないならそれはそれで、さっきの表情には問題があると思うんだぜ」


 ルナを睨みつけていたとは言えない俺がは適当にソニー兄さんに弁解する。


「怒ってなくてもやる気を歌で表現しようと思うんだけど、どうだろうか?」


「うるさいからやめなさい。ポーが起きちゃうでしょ」


 もう、歌いたいだけになったフレド兄さんをクレア母さんが諌める。

 平和なやりとりだ。みんなニコニコ笑顔で素晴らしい一家団欒だと言えるな。

 ドルネオ父さんは、そのやりとりに参加できず顔をしかめているけど。


「んっん! それで? 具体的にはどんなことをやるんだ?」


 寂しくなったドルネオ父さんがわざとらしい咳払いとともに聞いてくる。


「まず、大前提として民はポーの誕生を祝わなければならない。それはわかるよね?」


「……民って」


「さっぱり分からないんだぜ」


 理解が追いつかない兄二人。


 なぜ分からないんだ……。


『逆になぜわかると思うんだい?』


 だってポーが誕生したことは人類にとって喜ぶべきことだから……。


「わかるよね?」


 俺が皆にもう一度念を押すと、今度はみんな頷いてくれた。

 ちょっと顔が引きつっているが、わかってくれて俺も嬉しい。


『君のサイコパスの多様性はとどまることを知らないね?』


 はぁ?サイコパスじゃないですけど。

 意味わからないんですけど?


「祝うと言ってもどうするんだ? みんなを集めてポーに贈り物でもしてもらうのか? 」


 ドルネオ父さんが聞いてくる。皆が父さんに目配せをしていたのはどう言う意味だろう?


「いや、ポーは民草にプレゼントをもらったら全力で喜んでお礼をすると思うんだ。

 天使だから。でもそれだと祝う人が増えれば増えるほどポーの体に負担がかかる。

 それは良くない」


「民草……」


 父さんの表情が俺を心配しているかの様に見えるが気のせいだろう。

 今の会話に俺を心配をする要素などなかったはずだからな。


 父さんの考えもいいところまで行っていると思う。

 俺も最初はみんなに贈り物をしてもらおうと考えたからな。

 しかしポーは必ず贈り物をしてくれた人のところに行ってお礼をすると思い、考え直したのだ。


 それにポーは贈り物は物品をもらったほうが喜ぶと言う様な、例えばブランドのバックが欲しいだの、人をダメにするソファが欲しいだのといった即物的な娘ではない。


「要するに祝う気持ちが大事なんだ。ということで!」


 俺は懐にしまっていた今回のプロジェクトが書かれた紙を取り出した。


「題して!街をイルミネーションで彩ることでポーの誕生を祝いつつも楽しい気持ちになってしまおう大作戦!」


 説明しよう!

 街をイルミネーションで彩ることでポーの誕生を祝いつつも楽しい気持ちになってしまおう大作戦とは?


『いや、説明はいらない気がするよ?』


 まず、人々にポーの誕生日を告げる。


『もう無視なんだね?』


 そして一緒にお祝いしてもらいたい旨を伝えて、その気持ちをイルミネーションという形で表現してもらう。そういった祭りにしてしまうのだ。


 誕生日当日はポーをさりげなく外に誘い、このイルミネーションはポーの誕生を祝うためにみんながやってくれたんだよと告げる。


 そうするとイルミネーションが(きらび)やかであればあるほど沢山の人に祝福してもらったことになり、ポーも大喜びという算段だ。


 祝う側も煌びやかな街並みを見て楽しい気分になりWin―Winここに極まれりといった感じだな!


 俺の大作戦に感銘を受けたのか、家族はみんな言葉を失っている様だ。

 うんうん。我ながら素晴らしい作戦を考えたと感心する。


「あぁ〜それはどれくらいの人に頼むんだ?」


 父さんが聞いてくる。いい質問だ。


「本当は国中の人に頼みたいところだけど、流石に難しいだろうからね。今回は近隣の人達に頼むつもりだよ」


 皆も不服だろうと思うがここは我慢をして欲しい。

 俺だって苦渋の決断なんだ。


近隣(スラム)の人たちに頼むんだな?」


 父さんが念を押してくる。

 ……何か問題があるだろうか?


「うん。そのつもりだけど?」


「そうか……。まぁ、頑張ってみなさい」


 ドルネオ父さんが他人事の様に言う。


「何言ってるの。父さんも頼むんだよ?」


「え?! 俺も頼むのか?!」


「当たり前じゃない。父さんだけじゃなくて母さんも兄さんたちも頼むんだよ?」


 なぜ驚くのか。家族の祝い事なんだから当然じゃないか。


 俺が不思議に思って家族を見渡すと、父さんは渋面で母さんは微笑んでいる。

 兄さん二人はそれは楽しそうだなと息混んでいる。


 うむ。父さんだけが微妙な反応だったな。

 父さんは面倒くさがりなところがあるから、たくさんの人に頼むのが億劫だったのだろう。

 しかし今回はポーのためだ。頑張ってもらおう。


「では、ポー生誕祭に向けて頑張るぞっ。おー!」


「「おー!」」


「お、おー」


 兄さん二人は元気よく、父さんは歯切れ悪く。

 各々の大作戦の幕が上がったのだ。


 クレア母さんはなんか温かい眼差しで俺をみている。

 母さんもおーってしてよ!


「おー」


 ちょっとお上品な感じだがまぁよし!

 さぁ!やるぞ!!


 俺は熱い想いを胸に家を飛び出したのだった。




 ……あれから数日が経った。今日がポーの誕生日当日だ。


 あれから俺は目につく人にポー生誕祭の事を告げ協力を仰いだ。

 たくさんの人に声をかけた。


 結論から言うと壊滅的だった。


 スラムの人には街をイルミネーションに彩る暇もなければ金もなかった。

 当たり前だ。生きる事で精一杯の俺たちにそんな余裕はない。

 そんな事をするなら今日の飯を買う。


 冷静に考えればその通りだと納得した。


『馬鹿だねぇ?』


 うるさいよ……。

 考えついた時はポーの喜ぶ顔が見れる妙案だと思ったんだよ。


 はぁ。


 俺は重い石が頭と両肩に乗ったかの様な思いでうなだれつつ帰路へと向かっている。


 ことここに至っては俺だけでもと思い、アパートの屋上から見える場所に生えている木を飾り付けた。だが飾り付けも小学校で作る様な、折り紙で作ったチェーンや紙で作った花などだ。イルミネーションには程遠い。申し訳程度の陳腐なものだ。


 今はそれを作った帰りというわけだ。

 ___足が重い。リストラにあった世のお父さんもこのような思いで家路につくのではなかろうか?


『リストラされたお父さんと思いを同じくするのは失礼な案件だと思うよ?』


 お前リストラされたことあんのかよ?ないならわかんないだろ黙ってろ……。はぁ。


 ルナと下らない話をしていたら家に着いてしまった。


 俺は重い腕を上げてドアを開ける。


「ただいまぁ〜」


「おかえりなさい」


 俺がうつむきながら帰るとクレア母さんが出迎えてくれた。


「その調子だと大作戦は失敗だったみたいね?」


 うぐぅ。そんな直球で言わなくても。


 クレア母さんは微笑みながら俺に言葉のデットボールを当ててきた。


「たくさんの人に祝ってもらうのは無理だったけど、その分俺がポーを祝うために飾り付けを頑張ってきた……」


 いたたまれなくなった俺は、言い訳する様にクレア母さんに言う。


「まぁ、だったらそんな顔をしてたらいけないわね。ポーをお祝いするなら笑顔じゃなきゃ!」


 ……そうだ。その通りだ。失敗して落ち込んでいる場合ではない。

 ポーは俺が自分のために落ち込んでいると知ったら悲しむだろう。


 それでは……本末転倒!

 ならば俺は、全力でポーを祝うまでっ!!

 クレア母さんに喝を入れてもらった俺は、しょぼくれた自分に蹴りを入れ全身に力を入れる。


「うん。その顔なら大丈夫。……女の子にしては男らしすぎる表情だけど。

 ポーはキキのそういうところが好きだから、まぁいいでしょ」


 ポーが俺を好き?!

 なんてことだ。ポーが俺を大好きだなんて!


『そこまで言っていないし、日頃から言われている事だよね?』


 馬鹿が。この馬鹿が。

 毎日言われても、初めて言われたかの様な衝撃を持ってして俺の心に届くのがポーの大好きだろうが。


 何もわかっていないルナに当然の事を教えてやりながら、俺はポーの元へと向かう。


 ……やっぱり喜んでもらえないかも。


『どっちでもいいから早くしたらどうだい?』


 ドアの前で俺がもじもじしていたらルナに言われてしまう。

 心の準備ってものがあるんだよ!


 ルナに呆れられるのもシャクなので俺はドアを開ける。


「あ、キキねーちゃ!おかえりなさい!」


 そこには俺を見て微笑む天使がいた。

 いや天使という表現ですら生ぬるい、ポーがいた。


『そのままだねぇ?』


「ポー今日もいい子にしていたかい?」


 俺はポーの柔らかい紙を撫でながら、当たり前のことを聞く。


「うん!ポーはきょうもえらい子だから、ちゃんとねてた!」


「そうかぁ、えらいなぁポーは」


 今日もいい子だったポーに俺は感動の念を覚え、ポーの頭をもっと撫でてやる。

 このままずっと撫でていたい。


「えへへぇ。きょうは、はなさかじぃじのえほんをよんでたんだぁ」


 そう言って嬉しそうに絵本を見せてくれる。

 かわいいなぁ。

 俺がポーのために作った絵本をそれは大事そうに抱えているところも、同じ本を何度も読んでいるのに楽しそうなところも可愛いなぁ。

 なんで子供って同じもの何回も見るんだろう。可愛いなぁ。


「そうかぁ。よかったなぁ?」


「うん!」


 はわわ~。浄化されてしまう。汚れた俺の心が浄化されてしまうよ。


『気持ちが悪いね?』


 なんでお前は浄化されん。

 この笑顔をみたら悪魔なんて一瞬で浄化されてしかるべきだろう。


『どういう理屈さ』


 理屈ではない。真理だ。


「ポー。今日はポーに見せたいものがあるんだけど、お外に出れそうか?」


 俺は体の弱いポーに調子を聞いてみる。

 ポーは幼いのに自分の体調が把握できるとても賢い子なのだ。


「でれる!ポーおそとにでれる!」


 外に出られることが嬉しいのか即答してくるポー。


「そうか、でも階段を上るから途中までは抱っこな?」


「……ポーあるけるよ?」


 おずおずと上目遣いでポーが言ってくる。

 はぁあん!かっわいい!


「そうかぁ、ポーはえらいなぁ。でも姉ちゃんがポーを抱っこしたいんだけどなぁ?ダメかなぁ?」


 俺がチラチラとポーを横目でみると、ポーは腕を腰に当てて言ってくる。


「もう、キキねーちゃはしかたないから、ポーをだっこさせてあげる!」


 ふんす!とお姉さんぶって言ってくるポーに俺は鼻血が出そうになる。


「ありがとなぁ、じゃあ抱っこだ」


 手を伸ばして俺が抱っこしやすい様にしてくれるポーを抱えると、俺はそのままアパートの屋上まで連れて行った。


「ほら、あそこに木があるのが見えるか?」


 俺は飾り付けをした木の場所を指差してポーに教える。


「おぉ!なんかいろいろ、くっついているのがみえる!ふしぎな木だ!」


 ポーが興奮気味に答える。


「あれはな、姉ちゃんがポーの為に飾り付けしてきたんだぞ?」


「ん〜。ポーのため?」

 ポーが小首を傾げる。


「そうだ。ポー。お誕生日おめでとう」


 俺が誕生を祝う言葉を言うとパァッと花が咲いた様にポーが笑顔になった。


「おぉ!ポーのたんじょうびか!ポーしってるポーが、うまれた日だ!」


「うんうん。ポーが生まれた日だ。姉ちゃんが一年で一番好きな日だぞ?」


「そっかぁ〜。キキねーちゃが、いちばんすきな日かぁ。ねーちゃはかわってるなぁ」


 ポーに変わっていると言われてちょっとショックだったが、勇気を持って聞いてみる。


「なんで変わってるんだ?」


「だって、ふつういちばんすきな日は、キキねーちゃのうまれた日だからなぁ」


 嬉しすぎて背骨が折れるかと思った。


『どういう表現だい?』


「じゃあ、二人の誕生日を一番好きな日にしちゃうか?」


「んー?ふたつもいちばんがあっても、いいのか?」


「あぁ、一番はいくつあってもいいんだ。沢山あってどれもいい。みんな一番だ」


 ポーには順列をつけて差別をする様な子にはなって欲しくない。

 物事の良いところ見つけられるそんな子になってほしい。


「うん!わかった!そういえばキキねーちゃも、おかあさんもいちばんだった!いちばんすき!」


 ルナ今回のゲームは俺の勝ちだったな。俺は人生を幸福のままやりきったぞ。

 半分くらい口から魂を出しながら俺はルナに心の中でいう。


『うわ! 本当に魂が出かかってるじゃないか! やめてくれよそういうのは!』


 ルナが必死に俺の魂を押し込んでいるのを見ながらポーを撫でる。


「実はな、本当はもっと一杯飾り付けしてもらう予定だったんだけど、ダメになっちゃったんだ。ごめんな」


 ふと、予定通りにことが進んでいればもっとポーが喜んでくれたのではないかと思いそんな事を言ってしまった。


「ううん。ポーはキキねーちゃに、おいわいされて、ちょーうれしいです。いちばんうれしいです!」


 あぁ、なんか鼻がツーンとしてきて視界が滲んできた。

 目ん玉壊れたか?


 不甲斐ない姉ちゃんにはほんとうにもったいない子だよ。


「そっか、姉ちゃんもポーがうれしいと超嬉しいな」


「いちばん?」


「あぁ、一番だ」


 そう俺がいうとポーはにへぇと笑い俺の胸に頭を擦り付けてきた。

 尊い。


「さぁ、そろそろ部屋に戻るか。寒くなってきたしな」


「うん。さむいとゴホゴホでるから、もどるのがいいです」


「そうだな、ポーはなんでも知っててえらいなぁ」


 真面目な顔で言うポーを眺めながら、俺は階段を降りて家へと戻る。


 家に戻ってみて俺は驚いた。

 さっきは気づかなかったが部屋が飾り付けられている。


「やぁ、お帰りキキ、ポー」


 今度、出迎えてくれたのはフレド兄さんだ。


「フレド兄さん、この飾りは?」


 俺は居ても立っても居られず挨拶もそこそこにフレド兄さんにたずねる。


「うん。別に飾り付けるのは街だけじゃなく、部屋でも良いんじゃないかと思ってね。ボクが飾り付けたのさ!」


 そう言ってフレド兄さんはクルクル回り出す。

 それをみてポーは大喜びだ。


「おかえりなさいキキ、ポー」


 今度はクレア母さん。


「ポー、キキお姉ちゃんの贈り物は気に入った?」


「はい。ポーはとてもきにいりました!」


 クレア母さんの問いかけに元気よく頷くポー。


「そう。よかったわね。私からのお祝いはポーが大好きなタマゴサンド。たくさん用意したからね」


「タマゴサンド!よいとおもう!きにいりました!」


「ポー。ボクの贈り物は気に入ってくれたかい?」


「はい!きにいりました!でもキキねーちゃとおなじだなとおもいました。じかいは、そーいくふうをおねがいします」

 どんどんボルテージの上がっていくポー。

 それを嬉しそうにみるクレア母さん。

 ダメ出しをくらい肩を落とすフレド兄さんは悲しみの回転をしている。


「もどったんだぜ!」


 玄関から入ってきたのはソニー兄さん。


「お!ポーにプレゼントがあるんだぜ!」


 そう言ってソニー兄さんはポケットからリボンを取り出すとそれをポーに渡す。


「物じゃなくていいって言ってたけど、物でもいいと思うんだぜ!」


 得意げにソニー兄さんは言いながら指で鼻をこする。


「りぼん!たいへんきにいりました!いちばんきにいりました!」


 なん……だと……?

 ポー、物につられるなんてっ!


『小さくても女の子という事だねぇ?』


 馬鹿な!ポーはそんな子じゃ……!


「お、そろってるな?」


 奥の部屋から顔を出したのはドルネオ父さん。


「父さんからのプレゼントはこれだ!」


 バッと背中に隠していたものを広げて見せるとそれは洋服だった。


「かわいい!ポーのふく?それポーのふく?!」


 今日一の喜び様。

 うん。やっぱりプレゼントは形のあるものの方が良いよね。

 ずっと俺もそう思ってた。


『あぁ。ショックすぎて記憶の改ざんをしてしまったんだね?……笑えるね?』


 なんのことか分からないなルナ。


 俺はルナが言っていることが分からず首を傾げてしまう。


「ポーはおくりものが、とてもうれしくおもいます!でもみんないっしょがいちばんうれしいです!」


 ……これが家族の団欒なんだなぁ。


 こんなに幸せなことはないじゃないか。

 祭りだとか他の人からのお祝いだとかは全然いらなかった。

 家族がいればそれで良いんだな。


 初めて知ったよ。


 俺は楽しそうにする家族を見て、少しだけ、ほんの少しだけこの世界に転生させてくれたルナに感謝の気持ちを抱くのだった。


『ん? 僕の顔に何かついているのかい?』


 小首を傾げるルナ。


 なんもついてねぇよ。アホめ。


『なんだい突然不条理だねぇ君は。悪魔よりも不条理だとおもうよ?』


 うるせーよ。

 要するにメリークリスマスってことだよ馬鹿野郎が。


 俺はルナの顔を見ることなく家族の輪に飛び込んでいくのだった。

お読みいただき誠にありがとうございます!


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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