九八話 帝国壊滅
皆様お休みして申し訳ありません!
一先ず帰還したのですが、暫くは向こうの片付けなどもあるので、度々お休みをせねばならないかもです…
またお休みするときは、早めに言うようにします!
あの戦いから数週間の時が流れた。
「ルーシェ様がおるぞぉ!!」
「ホントだ!英雄様だ!」
「ヤバい!さっさと逃げるわよ」
エリスに腕を引かれ街を走り抜ける。
それを待ってとばかりに追いかける人々。
「どこにいったのじゃ!」
「まだ近くにいるはずよ!」
そんな人々の姿を、屋根の上から見下ろすルーシェ。
「面倒なことになっちゃったなぁ…」
大きく溜息を吐く二人。
厄災を倒したあと、ルーシェ達を取り巻く環境は激変していた。
帝国の内乱。
国軍と反乱軍、その衝突を止め、更に双方にお仕置きをするために、あれこれ準備をしていたのだが、双方共に壊滅してしまったのだ。
理由は厄災の攻撃の流れ弾である。
自分達の住む国のトップが崩れ去った。
これにより他国からの侵略も起こりうる危険な状態に陥る。
当然土地は荒れ狂い飢餓の危機に。
帝国民は不安のどん底へと落ちていった。
ルーシェ達は元々あちこちで被害を最小限に抑えるため、救援活動を行っていた。
その流れでシリウスや大精霊の力を使い、荒れた土地の修復や水の調達を。
「戦闘をしないのであれば、これくらいは軽いもんじゃ。アクエリアスよ、少し力を貸すのじゃ」
というシリウスの言葉により、修復だけでなく、農作物を一気に収穫できる状態に。
文字通り神の御業だ。
飢餓問題はこうして解決された。
他には怪我人に対する治療も行っていく。
此度のことによる外傷だけでなく、物はついでとばかりに、ルーシェは片っ端から文字通りの全快治療を行っていった。
不治の病。
余命宣告を受けた者。
呪い。……etc。
この二つだけでも、十分過ぎる英雄。神の扱いを受けることになったのだが、これが極めつけである。
他国からの侵略をルーシェの功績によって、封じ切ったのだ。
「とりあえず、ことが大き過ぎるから、相談してくるよ」
そう言って仲間の元を離れ、ルーシェはルナマリアのところへ来ていた。
「大他所の情報は掴んでおります」
相談をするため、執務室へ入った瞬間に言われた言葉だ。
すでにどうするべきか対応を考えていたようで、ニコニコと微笑んでいる。
「丸く収めますよ」
その言葉を鵜呑みにしたのが間違いだった。
ルナマリアが取った行動。
帝国周辺の国々へ、ウォーター・ガーデンの王と連盟で、書簡を送ったのだ。
詳しい内容については教えてもらえなかったが、どうやら厄災に関すること。
魔族に関すること。
それらを討伐。撃退した存在がいることを、大々的に伝えたのだ。
幾らギルドマスターと他国の王からの書簡とはいえ、俄には信じられぬ。
各国からルナマリアの元へ、それがどうした!証拠はなかろう!と、返書が届いた。
それに対して、ルナマリアは秘蔵の道具を使い、それらの国々を黙らせたのだ。
「まぁ私にも色々とありますから」
具体的にどうしたのかは、教えてもらえなかった。
そこはどうでもいい。
その各国へ送られた書簡には、帝国は一度亡くなり、今回魔族を討ち、厄災すらも撃退したルーシェが、その国を治めること。
それを各国が認めよという内容だ。
「ルーシェさん。あなた程の実力者が治めるならば、どこの国も手を出しては来ないでしょう?人々も早急な安寧を求めている。ならこうするしかないんですよ」
「いやいやいや!世界中を回らなきゃ行けないんですよ?国なんてそんなこと無理です!」
「国政に関しては、こちらから人を派遣するので、そこへ丸投げで大丈夫です。それに国王ともなれば、どこへ行くにしてもその肩書きが、あなたを助けてくれます」
言いたいことはわかるが、話が飛躍し過ぎている。
しかも、国王な肩書きとか、どう考えても足を引っ張るだろ!
内心そうツッコミを入れた。
「この話を受けてくれませんと、帝国領を巡った争いが勃発します。そうなれば、更に多くの血が流れます。倒した魔族同様に、それを利用する輩がいるかもしれませんし…」
そこは確かにありえる。
そんなわけで不承不承ながら、帝国をルーシェが治めることになってしまった。
実際にそれはすぐに各国から承認を受けることになる。
ルナマリアからの派遣により、実際に何も国政をする必要はなかった。
重税により、苦しい生活を送らされた人々は喜んだ。
それだけではない。
ルーシェが王になったことで、この国ではハーフを問題なく受け入れるという法律も作ったのだ。
これにより、ハーフの問題は万事解決…とは、すぐにはならないだろう。
昔から根付く差別の心はすぐには変えられないからだ。
しかし、ここからは大きく変わっていくことになるだろう。
変えられるように、努力していくしかないのだ。
そんなわけで、普通はルーシェ達がわざわざ街を行き交う必要はないのだが、一つ気掛かりなことがあり、ルーシェ達は定期的に巡回をしている。
厄災は死んでいないからだ。
奴の首を斬り落とした。
地に落ちるその瞬間ら空間が大きく割れたのだ。
そこには厄災の下半身が。
無数の触手がそこから生え、伸び、そして落ちる頭部を掴み、自身の中へと取り込む。
空間の裂け目が閉じ始める。
その中ではウニョウニョと体を再生し始める厄災の姿が。
また空を裂いて現れるかもしれない。
しかし、その地へ奴が再臨することはなかった。
何処とも知れぬ世界の間。
奴はただただ自身の回復と進化へと力を注いでいた。
次に双剣と杖を持つ奴と出会ったときのために。
体は泡のように、ガスのように、集まってはまた離れ、歪な動きを繰り返している。
怒りと恐怖。
それらを上回る飢餓感を混ぜ込みながら。
我は厄災…暴食の悪鬼【グリトニー】。
あのご馳走を全て平らげるために…
いつもご拝読頂き、誠にありがとうございます!
休んでる間にブックマークが増えていて、びっくりしております!
ブックマークと高評価、本当にやる気が上がります!
是非皆様、登録まだの方は登録を!
そして高評価の方、よろしくお願いします!




