九五話 ジークのブレス
3月ですねぇ。
卒業式のシーズン。
卒業される皆様はおめでとうございます!
コ〇ナでそういったことも、うまく出来なく、寂しい思いをしている方、多いのではないでしょうか?
少しでも作品で、気を紛らわせればと思い、粉骨砕身がんばります!
手にした杖は初めて握ったはずなのに、驚くほど手に馴染む。
宝石などが散りばめられたわけでもない、酷く簡素に見える杖。
自分でも何故かはわからないが、そうすべきなのだと、自然に杖を正面に翳す。
杖の先がポワンと優しい光を灯し、その先から一滴、透明な液体が流れ落ちる。
『ポチョン』と、優しい音が響き、渇いたはずの足元のはずが、何故か波紋を起こしていく。
その波紋の中へと、ルーシェは飲み込まれていく。
飲み込まれてどうなるのか知らないはずなのに、握ると何故か大丈夫だと思えた。
シリウス達三人は、その頃不毛な消耗戦を強いられていた。
「たく…この大食らいめっ!」
「全くじゃのぉ〜。我よりも大食らいじゃな」
「大食らいな自覚はあるんですね」
シルフィのツッコミは物の見事にスルーされつつ、アクエリアスが忌々しげに水流弾を放つ。
わかったことは、とにかくこの大食らいには、量が必要ということだ。
咀嚼や嚥下にかかる時間は、威力や込めた魔力量の云々は関係ない。
とにかく量なのだ。
量が多ければそれだけ時間が稼げることに気付いて
から、低消費で量や範囲の広い魔法に切り替えて戦闘を続けていた。
「流石に…ちと疲れてて来たのぉ」
地を司るシリウスにとって、エアリアスの治める風の地であるここは、酷く相性が悪い。
いつもならどうということのない戦闘であっても、地を使役するのに、どうしてもいつもより消耗がデカく、そればかりはどうしようもない。
しかも神である分その力は大きく、その分腕にはご馳走に感じ、大精霊の二人よりも執拗に狙われてしまう。
「たく…人気者は辛いのぉ〜」
と、原因を知ってか知らずか、そんな軽口を叩きながら、動きの鈍った自身体に鞭を打つのだった。
打開策が見つからない。
光の見えない状況というのは、体力だけでなく精神も大きく削り取っていく。
かれこれ戦闘を開始して、三時間が経とうとしていた。
「っ!ととっ!」
シリウスが悪くなった足場に躓く。
それを待っていたとばかりに、双腕が逃げ場を塞ぐように多い、待ちに待った御馳走を貪ろうと、無数の口から涎を垂らしながら開く。
「これでも喰らえーーーーーーーっ!」
そのピンチを救ったのはジークとシルフィだった。
荷台を降ろし、全速で動けるようになった翼竜は、大きくその顎を開き、渾身の火炎ブレスを放つ。
その動きに気付いたシルフィは、風を操りブレスに風を送り、威力を上げつつ、更に風の道を形成し、全ての力を一点に集中させる。
一度に食らえる量を大きく越えるその風炎に、無理矢理双腕は、地から引き剥がされる。
「あぁ…し、死ぬかと思った!というか、上からのヤツの涎がドバドバ…き、気持悪いのじゃぁ!」
どうやら無事そうで何より。
しかし、本当に涎地獄だったのだろう。
引き剥がされたそこには、大量の涎が溜まっていたのだろう、ビシャビシャになっている。
「とにかく助かったのじゃ!」
そのまま戦闘へ戻ろうと、足に力を込めるも、シリウスは動くことが出来なかった。
涎にはどうも粘着成分が多く含まれているようで、体を拘束して放さないのだ。
双腕が戻ってくる。
食事を邪魔されたことに腹がたったようで、動けないシリウスは放置。
まずは狙いやすい巨体のジークへと、襲いかかる。
「ちょっ!流石に無傷過ぎやしないかな!?」
言葉では焦りを表現しつつも、枷となる荷台がない今、ジークは全力で空を自由に翔る。
その全方位への全力機動により、ジークは辛くも死線から身を引いた。
「言った通り、あのブレスはすぐには使えないからね!」
前以ての打ち合わせの際、あのブレスは切札の一つで、一度使うと暫くは使えないことを聞いていた。
戦線を離脱したジークは、念押しでそう大声を上げた。
動けないシリウスを助けるために、ジークへ攻撃が集中しているうちに、大精霊二人は動く。
「この粘性…一度凍らせて砕く方が早いわ」
アクエリアスの判断で、有無を言わさず凍らせ始める。
「ちょっ!寒い!寒い!腹が冷えるのじゃ!」
元々露出の多い服を着ているシリウス。
唾液が冷えて張り付くことで、余計に冷えてしまう。
「あぁ…さ…寒いのじゃ…」
そう言いつつ、凍った瞬間に気合を入れて、凍った涎を粉砕した。
「ふぅ…これで動けるのじゃ。すまぬ…なっ!?」
言い終わる前に、戻ってきた双腕がそこを目掛け、拳を振り下ろしてきた。
皆様いつもご拝読頂き、誠にありがとうございます!
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さて、4月から新生活が自分も始まる予定です!
まだまだ大変な時期は続きますが、頑張って行きましょう!




