九三話 おぞましいそれら
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両の腕を相手に、三人は離れた位置取りを取る。
ただただ本能の赴くままに、その欲望を満たすべく、その腕は暴れ続ける。
近いところにいる獲物を目指し、その腕は襲いかかる。
「また我か!」
大振りな動きのため、避けること自体はシリウスには難しくはない。
その腕の醜悪さと、危険を訴える本能の叫びにより、かなり大きく飛び避け、それを回避をした。
「何じゃあれは!?」
先程までシリウスが立っていた地面を見ると、完全にくり抜かれているのだ。
腕の先を見ると、文字通り掌が『バキボキバリバリ』と、何かを咀嚼している。
「これでもくらえ!」
咀嚼のため、動きを止めた腕に向かって、アクエリアスが水刃を放つ。
「うそっ!」
その水刃は腕に触れる瞬間、まるでストローでジュースを飲み干すかのように『ズ…ゾゾゾゾ…』と、腕に生えた口に吸い取られてしまう。
水刃が吸われる空きに、これならどうだとシリウスが地に触れ、石礫をマシンガンの如く乱射するも、水刃同様に口へと吸い込まれていく。
「タハハ…これではどうしようもないのぉ〜」
「私の水刃が美味しく飲まれちゃうなんて…」
二人して呆れ顔半分に、引きつり笑いを浮かべる。
「二人共無駄ではありません。アレの動き…咀嚼中は止まるようです」
「そう言えばそうじゃの…」
「つまりは時間稼ぎにはなるということね」
そう結論に至ったところで、ちょうど咀嚼が終わり、また獲物を求めて三人へ迫り来る。
「とりあえず時間稼ぎをしつつ、もっと探るしかないのぉ〜」
シリウスは飛び退りながら、地を蹴り石礫をまた放った。
少し離れた空の上。
ジーク達はその光景を見ていた。
「何あの腕口オバケは…?」
「…気持ち悪すぎます…」
「ははは…まさか腕だけで僕より大きいなんて」
姉妹とジークはその異形の姿に、畏怖と吐き気を覚えていた。
そんな中、セレナスだけはどうも様子が違う。
離れているにも関わらず体を自ら抱き、ガクガクと震えている。
怖くて震えているのかと、エリスはその背を擦る。
異様に冷たい汗が手についた。
「ちょっと!大丈夫っ!?」
「……あれは…何…?あの異様な…渇き…飢え…孤独…?あの禍々しい…まで…の…本能は……?」
「ちょっ!セレナス!ねぇ!セレナス!」
そこでセレナスの意識は途切れた。
気絶したにも関わらず、その体は震え続け、何かをブツブツと呟き続けていた。
セレナスは姉に任せ、イリスは荷台から出て、ジークにへと問いかける。
「ジークさん。どうしましょうか?」
「うーん…正直あれはどうにもできないよ。それに…どうもアレが、エアリアスの敵を食べちゃったあとみたいだし」
「わかるんですか?」
「うん。あと口の何箇所かから、別々の魔族の臭いがするんだ。しかもごく最近…食べた直後とでも言えばいいかな?」
酷い口臭を想像してしまい、ウッとした顔になるイリス。
「あの暴走ぶりと臭いからして、召喚したのはいいけど、手に負えずに飲まれたと考えるのが、妥当だと思うよ」
淡々とした口ぶり。
その言葉の端々から、本当は自分の手で事をなしたかったであろうというのが見て取れる。
「とりあえず、今はシリウスさん達を信じるしかありませんね」
「そういうことだね。というか、行けば僕でもあの腕に食べられちゃうよ。流石にお腹の中で奴らとご対面ってのは、僕も勘弁願いたいよ」
茶化したような言葉だが、ほとんどそれは本心のようだ。
僅かに震える体がそれを物語っていた。
その頃ルーシェはラミューテを斬り伏せ、仲間の元へ駆け付けるべく足を踏み出した瞬間、別世界へと飲まれていた。
「うわぁ…何これ…」
視界には薄暗い闇が広がっている。
そして怨嗟の声が鳴り響かせながら、赤く暗い何かが蠢いている。
「ククク…ようこそ我が魂の世界へ…」
「その声はラミューテ…?何をした?どこにいる!?」
「お前は我を斬り殺してくれた。そのお礼をせねばなるまいて…」
蠢いている何かが激しい胎動を始め、やがて型をなした。
それは先程戦ったハーピィ姿のラミューテを、より禍々しく、醜悪なフォルムへと変貌したかのような姿。
地を蹴り、瞬時に距離を詰めてくる。
速度が半端なく上がっている。
「さっきより早いけど…グッ!」
一番は速度よりも、パワーが桁外れに上がっている。
受けたところ、半端ない力のため、後方へ飛ぶことでその威力を殺す。
「それは我ではない…我ではない者が討つというのはちと物足りぬが…まぁよい。お前の苦しむ姿を、存分に楽しませて貰おうぞ!」
「お前ではない?どういうことだ…」
その問いに応える者はおらず、返ってくるのは重く鋭い攻撃の嵐。
「考える暇もない!」
悪態を吐きながらも、頭は冷静に、冷徹に冷めていくのを感じる。
空間の外で苦労しているであろう仲間達のことは、頭の中から締め出した。
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