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森育ちの天然ドルイド  作者: 食欲のアキ
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九一話 無明を使い切る

 日中と朝晩だと、気温差ありますが、体調崩してませんか?

 また、花粉も酷いみたいなので、皆様お体お大事に〜

 ルーシェは自身を襲い来る爪に苦戦を強いられていた。


(流石にエアリアスからの情報でも、ラミューテの変身後の能力まではわからなかったからな…)


 それ自体は仕方のないことと割り切るも、体には傷が増えていく。


 対象的にラミューテの顔には嫌らしい笑みが。

 その笑みには、背筋に嫌な寒気を感じてしまうほどの、おぞましさが込められていた。

 

(楽しんでるなぁ…でも今に見てろよ…あれ…?でも寒気?何でだろう?)


 確かに今のルーシェには打つ手はないのだが、それにしても今の寒気には違和感がある。

 

(殺気も実際の力も、他にもっと凄いのと対峙したときも、こんな感じはなかったのに)


 思案で出来た空きに、ラミューテの蹴りが飛び込んでくる。

 

「クッ…」


 やはり視認とは別方向からの攻撃がルーシェを襲う。


「ククク……ユックリナブリゴロシテヤロウ」


 また爪を構え、上空から飛び降りて来る。




 その頃暗い西の空にて、二人の魔族が魔法陣を展開していた。


「予定ほど火の手が上がっておらぬが…」

「人間なんて脆いんだし、さっさとくたばったんじゃないの〜?」


 地上の様子を見下ろし、計画に支障が出たのではと、ラミューテの心配をする一人と、さっさと終わらせて、帰りたいオーラを全開に出している相方。


「どっちにしても、やることやるのは変わらないんだから、ちゃっちゃとやっちゃいましょうか」


 その二人の後ろから、新たに現れた一人が、二人にそう声をかけた。


「ほら!サーチェスもこう言ってるんだし!」


 後から現れた者は自分に取っての上官である。

 相方だけでなく、上にまで言われたのならば異論は言えぬ。


「わかりました」


 そう言って、それぞれ配置に付き、魔法陣を起動させる。

 上官に当たるそいつは、起動した魔法陣から出て来るであろうそれを想像し、ニヤリと口角を上げた。


「さぁ!思う存分に暴れるがいい!ククク…ふははははははははっ!」


 魔法陣からドス黒い何かが這い出て来る。




 西の空を警戒していたジークは、仲間と決めていた大咆哮を上げる。

 

「あのバカでかい鳴き声は…」

「来たみたいですね」


 家屋をぶち破り、被災者を担ぎながら出てきた姉妹。

 

「もうこの当たりに危険な人はいません!行きましょう!」


 思ったよりも大きな咆哮に驚きつつも、冷静に最後まで役割を全うするセレナスは、二人にそう声をかけた。

 町の外へと急ぐ三人。

 外へ出てすぐにジークが待ち構えていた。


「お姉さん達。急ごう」


 ジークの首に掛かった荷台へ急ぎ乗り込んだ。



 シリウス達も大声に反応し、西の空を睨む。


「彼処じゃのぉ…シルフィ!」


 シリウスの声が響くと同時に、シルフィはすでに二人を連れて、空へと飛び出していた。




 ルーシェの耳にもその咆哮は届いていた。

 

「時間がない…か…」

「ナニヲヒトリゴトヲ…?」


 ルーシェが咆哮へと意識を向けた瞬間に、また例の攻撃を仕掛けて来るラミューテ。

 だが、今度はラミューテの方が驚くことになった。

 自身の攻撃が当たらないどころか、反撃を受けてしまった。

 その驚いた表情に、ほくそ笑むルーシェ。


「もう手品の種はわかりました」

「ワカッタトコロデ…」

「わかれば対処くらいわけない」


 相手が空へ飛び上がる前に、背に隠していた弓で羽を射抜いた。


「グ…」

「その羽が幻覚を見せてるんだろ?」


 そう。

 衝突の直前、羽から一瞬だけ幻惑効果のある風を起こし、誤認させることで攻撃を仕掛けて来ていたのだ。

 

 この攻撃の厄介なところは二つ。

 一つはその速度。

 一定以上の実力者であればある程、条件反射でその攻撃を防いでしまう。

 そして実力者であるほどに、攻撃の速度が早過ぎないことから、反撃をするために回避は紙一重となる。そのため瞬間的な幻覚とはいえ、攻撃を回避する術はない。


 幻覚だとバレたとき。もしくは疑われ、あえてその攻撃を受けようとすると、そのときはそのまま攻撃をすればいいだけというところが、実に嫌らしいのだ。


「と、こんなところでネタばらしはこれでいいよね」


 全く以て厄介な能力だったが、原因がわかればそこはルーシェの得意分野だ。


「…どうやって幻惑を打ち破った…?」


 観念したのか、姿を戻したラミューテが、問い掛けてきた。


「答えるとでも?」

「ククク…そうよなぁ」


 再度首元に刃を添えられているにも関わらず、その禍々しい笑みは消えることはない。


「何がおかしい?」

「ククク…ハハハ。そうさな…勝者たるお前に褒美として一つ教えてやろうぞ」

「っ!なにっ!」


 ラミューテは隠し持っていた石を掌から出した瞬間、その体は自身の影の中へと消えていった。


「まだまだ詰めが甘いよのぉ」


 その言葉だけを残し、ラミューテは逃走した。


「甘いのはそっちだ」


 そう言ったルーシェは、自身の黒剣に霊力を込めて、何もないはずの『そこ』を切り裂いた。


 全てを断ち切るその力を、霊力にて完全に活かし切った瞬間である。


「なっ!?」


 切り裂かれた空間から、一刀のもとに斬られたラミューテの上半身が、その中からポトリと落ちてきた。


「しまったな…どうしようか?」


 空間だけを切るつもりが、予定外にラミューテまで斬り殺してしまったのだ。


「情報を更に引き出そうと思ってたのにな…まぁ仕方ないか」


 もっとうまくコントロール出来る様に、精進しなくてはと思いつつ、仲間の元へと駆け出していった。


 斬られたラミューテは、その背中を虚ろな目で見ていた。

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