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森育ちの天然ドルイド  作者: 食欲のアキ
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八話 初めての仕事中に

今朝見たらブックマーク登録が増えていたようで、凄く嬉しかったです!

ありがとうございます!

「バイト…ですか?」

「おう!つっても何も冒険者を辞めろってことじゃあないんだ。空いてるときだけとか、忙しいときだけでいい。何せ冒険者の依頼で護衛や討伐、モノによっては採取なんかでも、数日王都から出っ放しなんてのは、ザラなのは知ってるからよ」と親父さん。

「うちも忙しいときに、ちょくちょくヘルプでギルドに依頼することは今までもあったのよ。でも、こんなに手際の良い人なんていなかったから、うちとしては可能な時に来てもらえるだけでも、多助かりなのよ!」とマリル。

(うーん…シルフィはどう思う?)

(そうねぇ…世界を回れって言われてるんだし、ずっとここに居続けるわけにはいかないのよねぇ…)

「悩んでるみたいだなぁ…まぁ冒険者っても、そこに腰を落ち着けてってのは少ないからな。それに色々回ってみたいって気持ちもわかるからなぁ…」と、髭を擦る親父さん。

「それなら…王都にいるときだけ、住み込みでってのはどうかな?それならあちこち回るにしても、王都にいるときの拠点の確保にはなるんだし、そのときだけでも手伝ってもらえれば、助かることには変わらないんだし。お客さん的にも毎回宿探ししなくて済むから、楽でいいんじゃないかな?」

「いえ…そこまで甘えるわけには…」と、やんわり断ろうとすると…

「当然手伝ってくれるんだから、宿代と3食はこっちで持つぞ?」

 親父さんのこの一言に、一も二もなくよろしくお願い致します!と、頭を下げたルーシェだったのだ。

 うん。胃袋掴まれると人間なんて弱いものだ。

「改めてよろしくな!俺はダービットってんだ!」

「私はマリルね!」と、接客モードから変わり、砕けた口調になったマリル。

「ルーシェといいます。よろしくお願い致します!」


 店内の清掃作業が終わり、店舗2階へ案内された。そこのリビングでは犬の獣人女性が算盤を弾いていた。

「おつかれ〜。今日も忙しいみたいで何よりね〜」と、こちらを見ずに、間延びした声をかけてきた。

「おうよ!これが今日の売上全部な!」

「もうクタクタよ〜。お母さんの方は?」

「こっちもそろそろ終わるわよ〜。だからルーシェくんも、もうちょっと待っててね〜」

「はい。あれ?自己紹介まだですよね…?」

「私は獣人だからね〜。普通の人より五感が強いのよ〜…と、これで今日の分は終わりだね〜」と、帳簿を片付ける。

「改めてルーシェくん。私はマリィっていうの〜。よろしくね〜。下から声聞こえてたから、どんな子かなぁ〜?って思ってたんだけど、優しそうな子でよかったわ〜」と、ぽわんとした笑顔を向けてくれる。

「マリィさんですね!こちらこそよろしくお願い致します!」

「お茶煎れるわね〜」と、立ち上がった姿を見てビックリした。マリィさんは190cmくらいの高身長だったのだ。

「クスクス…驚くわよね〜。私元が狼よりなのよ〜。だから身長高めなのよね〜」

「すみません…」

「いいのいいの〜。初見はみんな同じような反応なんだから〜」

「ルーシェ…気ぃつけろよ…?うちのかぁちゃんも元冒険者で、怒ると俺より恐ぇからな…?」と、小声ダービットが耳打ちしてきた。

「あんた〜?聞こえてるわよ〜?」とマリィ。

「な、何でもありませんっ!」と、体をビクつかせる。それを見て笑うマリル。仲の良い家族の団欒を見て、微笑ましくも少し羨ましさも感じるルーシェであった。


「さて、ところでルーシェは明日は何か依頼受けてんのか?」

「初めてなので、薬草採取をしてこようかと」

「なるほどな。ならもし野生の鳥か鹿か、何かいたらついでに獲って来てくれねぇか?もちろん買取はさせてもらうからよ?」

「ギルドから初心者は、複数の依頼は同時に受けれないと言われたのですが…」

「どのみち薬草採りに行けば、獣にゃあだいたい遭遇するもんだ。依頼外ってのと、ただの獣じゃあギルドでは買い叩かれるのが落ちだからよ。それならうちのが多少色つけてやれるしよ?普通の仕入れよりこっちも安くなるしな」と、そこはしっかり商売人な親父さんであった。

「話も済んだし、ほんじゃあ風呂にいこうか!」と、近くの銭湯へ。ただ一つ言えることは、ダービットさんの体は逞し過ぎました。

 

 そして翌朝。

「では行ってきます!」

「おう!気ぃつけてな!」と、朝市で仕入れがあるため、早起きの親父さんに見送られる。

 ちなみにマリィ&マリルは朝は苦手らしく、まだ寝ているので、小声での見送りだった。


「門番さん!おはようございます!」

「おはようございます!調度今から開門するところなので、もう少しお待ち下さい!」と、門番が大きな角笛を抱え、勢いよく吹き鳴らす。

「暗くなると門を閉めますので、ご注意下さい!それではお気をつけて!」

「わかりました!行ってきます!」と、初依頼にウキウキしながら駆け出していくルーシェであった。


 薬草は簡単な物だと、水が使い放題な王都だと栽培していたりもする。

 ギルドではこれが必須依頼として出ているのにも、ちゃんとした理由がある。

 冒険初心者にちゃんとした判別技術と採取技術、最低限の戦闘技術を持ってもらうこと。

 よく似た物で、毒草があるので、間違って採取して、王都と外を何往復もしてしまう者が、ちょくちょくいたりする。

 走ることで体力強化にもなるので、トレーニングとしても有用だと、ギルドでは考えている。

 採取技術の方は、薬草もあえて一つに絞らないところが、実はいやらしいところ。

 薬草によって、花、葉、茎、根、または茎より上全部必要など、かなり違いが多いのである。

 最初に見せてくれる採取リストにも、必要な採取部位が細かく書分けられているので、当然違うところを採取してしまうと、言うまでもない。

 また採取にも手で引きちぎるなどは、当然品質が落ちるので御法度だ。

 最後に戦闘の苦手な者を鍛える目的。

 薬草を食べに野生動物が結構いてるので、それらと戦うことで、自然と戦う術を向上。

 ちなみに初心者の中でゴロツキの様な者が、ギルドで駄々を捏ねることがある。

 職員の殆どが元第一線の冒険者だったりするので、そういった初心者は手痛い(むしろ死んだ方がマシなときも…)洗礼を受ける。

 案外冒険者ギルドの仕事はシビアであり、だからこそ現在世界の各所にギルドが設置されるほどの地位を獲得している。

 だからこそ後進の育成へに関しても、しっかり力を入れている。


 さて、ルーシェの方はというと、王都から少し離れたところの森まで薬草採取に来ている。

 自分で生薬を作れるほど、薬草には慣れている。そして狩りも元々行っていたので、どちらも全く問題ない。

 予定分の10倍以上を採取し、親父さんに頼まれていた獣(仔鹿が3等)も仕留め、血抜きしてる間に、昨日採取した材料で生薬を順に作っていた。

 シルフィの方は野生の花の蜜を吸って御満悦モードで、食後の惰眠を貪っている。

(さてと…だいたいこれで終わりかな?ん…?何か変な音がする…)

「シルフィ起きて!」

「むぅ…せっかく気持ちよく寝てたのにぃ…どうしたのよ?」

「変な音と気配がするんだ!」

「ちょっと待ってね………森を駆ける音がする…馬車かな?商人っぽいわね。魔獣に襲われているみたいね」

「急いで助けなきゃ!」

「OK〜」と、飛び出した二人である。


「ヒィッ!く、来るなぁ!」

「グモォ…グモォ!」

「親方ぁ!やばいですよ!」

「わかってる!とにかく急げぇ!」

「急いでますよ!でも積荷が重くてこれ以上は速度が出せねぇです!」

「何とかしろぉっ!この積荷は何としても王都へ届けねばならんのだぁ!」

 商人達の馬車は必死で逃げる。が、相手がかなり悪かった。

 下半身は馬。上半身は牛の頭部を持ち、手には巨斧を握るミノケンタである。

 パワーも速度も持久力もある、討伐ランクBの魔獣である。

 ミノケンタが斧を振るい、馬車の幌が吹き飛ぶ。

「クソッたれめ!このままでは…」

「もう荷物を捨てましょう!」

「やむを得ないか…しかし…」

 僅かな逡巡。そのときミノケンタは斧を何と投擲してきたのである。

 馬車を引く馬は二頭。一頭の胴体を見事に真っ二つにする。

 馬車はバランスを崩し倒れ、吹き飛ぶ商人達。

「っ…つぅ…」

「がはっ」

「グモォ…ブルル…」

 獲物を捕らえたと、ミノケンタが口角をニタリと歪ませる。

「こ、ここまでか…」

 商人達が諦めたそのとき、ミノケンタが膝をつき、横倒れしたのである。

「い…一体…な…に…」

 そこで商人の意識も途切れたのである。


「間に合ってよかった」と、汗を拭うルーシェ。

「そうね〜。この人達、生き運あったのね〜」と、ケタケタ笑うシルフィ。

 調度先程作成した物の一つで、強制睡眠のお香を使ったのだが、普通だと距離が遠くて届かない。

 シルフィの協力により、風で煙だけを送り、睡眠香の結界を張ったような状態にしたのだ。

「さて…助けたはいいけど…どうしようか?」

 吹き飛んだ馬車の惨状を見て、どうするか悩みつつ、とりあえず商人の怪我を治していくルーシェだった。 

 

まさかの初魔獣の倒し方が睡眠薬。

まぁこういうのもあり…ですよね?笑

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