八一話 竜巻きの中で
小説書くことに対して、日に日に難しさを噛みしめる今日この頃。
うん。もっと頑張ろう!
町から無事に脱出を果したルーシェ達。
「いや〜。秘薬の改良をしていてよかった」
「本当にね〜」
全員で体を伸ばしながら話し合っていた。
ルーシェが手渡したのは、魔女の秘薬シリーズの一つ、変化の薬であった。
密かに改良を重ねていたおかげで、以前とは違い、一度服用すれば、12時間はいつでも自由に姿を変えられるようになっている。
「でも怪我の功名だったね」
「そうですね。ないと私達、ジーク様に乗れませんでしたからね」
「様は付けなくていいから〜」
町へ入るに当たって、ジークの翼竜状態では、町に近付けないため、離れたところから歩いて町へ来たのだが、子竜状態で馬車を運ぶのは難しいため、岩陰に偽装して隠しておいた。
それを取りに来たのだ。
「さて、それじゃあジーク。凄風の谷を目指してもらえるかな?」
「そのことで相談というか話があるんだけど、走って行ったらだめかな?」
「ん?走る?」
「待っててね。見てもらう方が早いから〜」
そう言うと、体を七色の光が包み込む。
光がジークの姿を形成し直し、光が収まった。
その姿に翼はなく、鎧トカゲの様に姿を変えた。
掌からは棘が生えており、スパイクよろしく地面に噛み付く。
「この姿なら、荷台も引いていけるよ〜」
「なるほどね。でも竜巻こ中で、大丈夫なのかな?」
エリスが荷台を見ながら呟いた。
「それならお兄さんが何とかしてくれるよ!ね?」
「え?あのでっかい竜巻に耐えられるの??」
ジークとエリスの視線が飛んできた。
「こっちに向かうときのアレをやれってことだね?」
「アレを見なかったら、僕も竜巻に入るなんて言う気はなかったんだけどね〜」
「ジーク様。危険を冒してまで何故に竜巻きの中へ?」
「様はいらないってば。…上から見た時なんだけど、ちょっと気付いたことがあってね」
気になったことに関しては、ジークは教えてはくれなかった。
「うーん…凄風の谷も砂嵐のせいで、今すぐはいけないし、ジークの言うそっちを調査してみようか」
というわけで、無謀な竜巻き突入大作戦を決行することになった。
地を走り進む一行。
「あ…空が急に暗くなってきました」
外を警戒していたセレナスからの報告だ。
竜巻の兆候である。
「そういえば、竜巻にはどのタイミングで入るつもり?」
「大きくなってからだよ〜。大きいときじゃないと、たぶん意味がないと思うんだよね」
わざわざ危険になってからなのかと、エリスは渋い顔をしていた。
暫くすると、目的の竜巻が天から伸びてきた。
そして見る見る太く育っていく。
「さぁいくよ〜!」
「あぁっ!行こう!」
ジークが鼻息荒く馬車を引く。
ルーシェが霊力と魔力を使用し、荷台の補強を行う。
ズザーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
中に入った瞬間、視界が黒く染まる。
「思ったよりキツイな…でも…前へ!」
ジークはゆっくりと確実に前へとその歩みを進める。
そして次の瞬間、竜巻の力で荷台が舞い上がり始める。
「えっ!?やばっ!!」
ジークがそう叫んだときには、完全に浮き上がり、宙を回り始めるのた。
「ど、どうしよう!?」
より踏ん張り、何とか荷台を着地させようと動いた次の瞬間、荷台が急に向きを変えて地に降りる。
そのまま少し、地にめり込んだ。
「えっ?えっ?えっ?なに?」
混乱しながらも荷台を引こうとする。
ジークはここでかなり驚いた。
先程までと重さが雲泥の差だからである。
「お…も…い……風より…こっちのがキツいかも…」
竜巻きよりも荷台を引く方が辛くなるとは思ってなかったのだが、そこは七竜王としての威厳を保つためと、結構無理して牽引したのだった。
ちなみに荷台の中はと言うと、
「きゃーーーーーっ」
と、絶叫のセレナス。
「わっ!とと!」
と、バランスを取るべく対応するエリス。
「はははははっ!」
と、楽しげなシリウス。
女性陣は三者三様なリアクションの中、ルーシェは予想外の出来事の中、何とか荷台を保護し続けている。
数瞬の荷台シェイキング状態に、
「流石に危ないからのぉ〜」
と、笑いながらシリウスが荷台に触れ、加重の付加をかけることで、着地させたのだった。
セレナスが本気で死ぬかと思ったと、胸を撫で下ろしていたのだが、このとき一番脂汗を出していたのはルーシェだったりする。
ルーシェは荷台の保護と強化に力を使っているため、必要最低限の回避行動すら取れない状態だったため、何かあったとき、諦めるしかなかったりする。
ホッとする暇もなく、気を引き締め竜巻き内部へと向かっていく。
「中へ行けば行くほどに強くなってる…」
ジークの歩みは、進むほどに遅くなっていく。
凶悪な砂の礫に、鎧のような鱗を削られながら。
しかし、歩みとは反比例に、やる気はモリモリ上がっていく。
「まぁけぇてぇ…たっまっるっかぁっ!」
力を溜め、一歩。更に一歩と、歩みに自身の熱を込めながら。
「光が見える…!後ぉ…ちょっ…とぉぉぉぉぉぉぉ!」
黒く染まる景色に、僅かに差し込む光を見付け、一気に加速すし、分厚い風壁をぶち破ったのだった。
「はぁ…はぁ…はぁ…抜けたよぉ…」
安心したジークがその場にへたり込みながら、荷台の皆に伝えた。
しかし、ルーシェは保護をやめなかった。
外には出ずに、窓から外の様子伺うセレナス。
「あれは…?」
セレナスが竜巻きの中心で見たもの。
それは、黒い何かに包み込まれた、羽根の生えた女性だった。
「この波動は…もしかして!」
ルーシェの胸元から、突如アクエリアスが出現する。
「この波動…やっぱりよ!あれは…風の大精霊だわ!」
その声に反応し、全員がそっちに目を向ける。
「やっぱり…エアリアスで合ってたのか…」
ジークがひっそりと呟いた。
その言葉に気付いたのか、黒衣の大精霊がジークを見る。
「ソノコエハ…シチリュウオウ…?」
「うん。そうだよ。その姿はどうしたの?」
「ウ…ウウゥ…ウワァァァァァァァァァァァァァァァ!」
頭を抱えながら、全身を震わせる。
「お、落ち着いて!」
「タ…タス…ケ…テ…ケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケ…けぇーーーーーーーっきゃっきやっきゃっきゃっ!ははははは!その姿は七竜王だな…つまり奴らは失敗したということだな!まぁよい!今この場でその魂を頂戴するとしよう」
壊れた操り人形の様な状態から、急に口調が変わり、竜巻きによりへばっているジークの首を狙い、手をかざした次の瞬間。
「くっ!まだ抵抗しおるか!大人しくその体を!命を寄越すのだぁ!グゥゥゥゥゥゥゥ…クソぉ…次こそは……………イマノウチニ…コレヲ…………モゥ………………」
ジークに向かって、何かを投げ寄こした黒衣のそれは、その体を光の粒子に変えて、消えていったのだった。
粒子が消えた途端、竜巻きも消え去ってしまった。
「絶対に助けるよ…待ってて…」
ジークは投げられたそれを口に咥えながら、そう呟いていた。
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