八十話 キナ臭い話
朝起きたらブックマークが増えて嬉しかったです!
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高速移動中。
「ロウさん。この筒での封印状態って、いつまで続くのかな?」
「………」
駄目だ。放心状態で返事がない。
「向こうへ着いてから、改めて聞くしかないか」
馬車の中にはジークのご機嫌な鼻歌が響いていた。
王都付近に着陸。
飛行中にした質問を改めて尋ねた。
「封印は解除するか筒を壊すまで解けないな。中では時間停止もかかっているから、いつまでも封印された時のままだな」
その回答にふむふむと頷いたルーシェは、ジークとロウには少しここで待つように伝え、ギルドへと向かった。
「ルーシェさん?あれ?凄風の谷へ向かったのでは?」
「色々ありまして。あ、受けていた依頼に関してですが」
「そちらはアルさんから報告を受けております。ありがとうございます」
戻るには早過ぎないかと思ったが、どうも伝書鳩にて早くに報告だけ飛ばしたそうだ。
「それより、私へ何の相談でしょうか?」
「わかります?」
「それは勿論」
話が早くて助かるとばかりに、ルナマリアにロウのことと、戦争の準備に関する話をした。
「なるほど…向こうのギルドへ、一時撤退するように連絡をしなければ。あと、ロウさんですね。わかりました。彼は一時的にウチで預かりましょう。封印状態の他のハーフの方々、申し訳ないのですが、暫くそのままで預からせて頂きます。場所から何から、今のままでは不足してしまいますし、その人数になると、どうしても人目に付いてしまいますからね」
「ありがとうございます。それで大丈夫です。では、早速連れて来ますね」
「お待ち下さい。うちの馬車と人を何人か出しますね。荷物を運ぶのも、馬車がなければ大変でしょうから」
「あれ?何でそのことが?」
「クスクス。私のスキルですね」
「…至れり付くせりで助かります。」
深くは聞かずに、お礼を言い、その申し出を受け入れた。
馬車に乗せてもらい、ジークの元へ。
「でっけぇなぁ…こぇぇ…」
ジークを見たギルド職員は驚いきながら、そう溢していた。
ロウと封印筒を職員へ任せ、ルーシェはまた荷台に。
「何度もごめんね。向こうまで頼むよ」
「まっかせてよ〜。これくらい余裕余裕〜」
「あ、さっきよりも速度は上げられるかな?」
「僕は大丈夫だけど、荷台の方が保たないんじゃない?」
「そこはちょっと考えがあるんだ」
ジークはほぼ全速力で空を泳いでいた。
「あはは!すごいすごい!」
荷台の中のルーシェに声をかけるが、返事はなかった。
というより、返事をする余裕がなかった。
霊力を展開し、更には魔力も活用し、中から荷台の補強を行っている
荷台の木材部分や、金具、幌の部分と、かけるべきパワーバランスが、全くの別物のため、かなり緻密なコントロールを要しているからだ。
仲間の待つ町まで到着した。
「うん。ジークはすごいね」
そう言って、子竜化したジークを撫でる。
嬉しそうに尻尾を振る姿は、ワンコの様だった。
「着いたのはいいけど、中に入れないね」
暗くなると門は閉まり、出入りが出来なくなる。
また、ここいら辺の町や村は、砂嵐や竜巻の被害から守るために、ドーム状こ形状をしている。
そのため、他のところのように、上からこっそり入ることが出来ないのだ。
仕方がないので門が開くまでの間、ジークに飛んでもらいながら、周辺の地理確認や、他の町村の位置を確認したりなど、やるべきことを先に始めた。
「ごめんね。付き合わせちゃって」
「後で馬食べさせてよ〜」
「どんだけ馬が食べたいのさ?」
言いながら涎を垂らすジーク。
翼竜姿のため、半端ない量が落ちていく。
下に人がいたならごめんなさい。
朝日が登り始める。
青い闇から薄紫のグラディエーションに染まる空。
まだまだ星の煌めきも、その存在感を示している。
徐々に白い光が伸び始め、薄紫がオレンジに変わっていく。
「朝かぁ…」
「封印される前と、この景色は変わらないんだね」
「ジークは空の景色が好きなんだね」
「うん」
それ以上は何も言わず、景色を楽しんだ。
「みんなおまたせ〜」
「おかえりなさいませルーシェ様」
「「おかえり〜」」
「情報収集の結果はどうだった?」
「こちらに箇条書きにて、まとめておきました」
セレナスが紙を渡してくれた。
・竜巻は最近になり、規模や持続時間が、日増しに伸びている。
・発生前に謎の地鳴りがする。
・数年前から凄風の谷の付近は、常に砂嵐状態のため、近付くことが出来ないでいる。
・戦争に関して、国境の封鎖と人員の配備の兼ね合いから、数日中に起こると噂。
「補足の噂ですが、どうもこの戦争は、国外へ向けてではないのでは?という話もありました」
「?というと?」
「内乱ですね。他国へ攻め入る名目で、堂々と準備を進め、一気に帝都に転進するという噂です」
「なるほど…巻き込まれないように、気を付けないとね。ところで、謀反の理由はなんだろ?」
「ここ数年の天災で、国内が疲弊し切っていることのようですね。王族はそれにも関わらず、自身が贅沢をするために、税をより上げているようです。反対派の貴族達が、秘密裏に動いているとか。ただ、どうも色々裏があるように思えて」
「というと?」
「これらの話が町のあちこちで聞けたのです。おかしいと思いませんか?情報統制が全くされていないのですよ?」
確かにその通りである。
「確かに。何が起こるかわからないので、常に注意しておこう」
他のハーフやセレナスの親のこともあるが、そこには触れられなかった。
セレナスもわかっているため何も言えない。
「準備。というか対策用に、防塵用のアレコレは買って来たわ。あとは移動に関してなんだかど、普通の馬車は厳しいみたいね」
「移動はジーク頼みってことろだね。防塵用道具は後で見せて」
色々確認をしていると、外が騒がしくなってきた。
「ふむ…ゆっくりはしていられぬようじゃの。みんな。すぐにここを離れるのじゃ」
「?どういうこと?」
「いいから早く動くのじゃ」
突如ルーシェ達の部屋に、兵士が飛び込んできた。
「強制徴兵だ!喜べ!帝国のため、その身を捧げるがいい!」
入ると同時に雄弁に語ろうとするが、既に蛻の殻だった。
「窓が開いている。クソ!逃すな!」
シリウスの言葉に従い部屋から脱出。
面倒事に巻き込まれずに済んだのだった。
「よくわかったね」
「なぁに。昔とった杵柄というやつじゃ」
「??どういうこと?」
「まぁそんなに気にするでない。それよりも今は門も封鎖されておるようじゃ。どうするかのぉ?」
「壊していいなら問題なく出れるけど、得策じゃないからね」
「ルーシェ。向こうの道にも兵士がいたわ」
「あちらにも同じく」
少し悩んでからシリウスの方を見る。
「ん?どうしたのじゃ?はっは〜ん。穴を掘ってということじゃな?しかし同じ手というのは味気ないから嫌なのじゃ」
当てが外れてしまった。
変なところで気まぐれであるが、無理強いしても無意味なことは理解しているため、何も言わなかった。
「うーん。仕方ないか」
ルーシェは袋からゴソゴソと何かを取り出し、皆に手渡していった。
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