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森育ちの天然ドルイド  作者: 食欲のアキ
80/124

七九話 竜巻

 冷えますねぇ…

 河豚のひれ酒飲みたいな…

 空の旅は順調に過ぎていった。

 

「みんな〜。ついたよ〜」

「どれどれ?」


 広がる景色。

 そこは荒涼とした風景。


「緑がないわね」

「空気が砂っぽい」

「ケホケホ…喉に来ます」


 口に布を当て、防塵準備をしながら、空の上から目的地を探す。

 

「あれは…!みんなしっかり捕まって!」


 ジークは何かに気付いた用で、上空へ急浮上していく。

 幸い荷物に関しては、ジークの気まぐれ急降下を何度か経験したため、しっかり固定していたため、問題はなかったのだが、急過ぎたため、反応出来なかったセレナスだけ、人間シェイク状態になりかけた。


「あっぶなっ!…ジーク、何があったの?」

「外を見て」

「なっ!」


 飛び込んだ景色。

 それは地を削り、空を裂かんと天まで届く、巨大な…それは巨大な竜巻だ。


「あの竜巻が急に空から伸びてきて、一気にあそこまで大きくなって、それで慌てて飛び上がったんだよ!」


 まだ慌てた感の残った、捲し立てるような口調。

 よっぽど焦ったのだろう。


「ごめんね。中は大丈夫だった?怪我してない?」

「あぁ。大丈夫。あれに巻き込まれていた方が大変だったからね。いい判断だったよ」


 竜巻発生から一時間ほど立ったが、、今だに猛威を奮っている。

 有用な対処方など情報が少なすぎるため、先ずは情報をと。

 ジークに頼み人里を探してもらうことにした。


「お兄さん。人里かはわからないけど、あそこに何人かいるみたいだよ?」

「ん?どの辺だろ?」

「ほら!あそこだよ!」


 指を指し示すジークだが、ルーシェの目では判断のつかない距離。


「僕には視認出来ないから、近付いてもらえるかな?」

「おっけ〜」


 ジークは風を掴み、流れるように空を滑る。


「あれは…ジーク。気付かれないように高度を保って」

「?何かあったのかな?」


 疑問に思いながらも、素直に飛行を変えるジーク。


「理由を聞いても?」

「動きが変なんだ。真っ直ぐ進んでない」


 馬が落ち着かずに、蛇行しながら進む。


「少し様子を見よう。中の皆にも伝えてくるね」




「くっ!言うこと聞いてくれよ!頼むから!なぁ!」


 ボロボロの服を着た男が、慣れない手綱を握りながら、馬に懇願している。


「あれは!くっ!」


 男の目の前に現れたのは、武装された騎兵団だ。

 手綱を引き無理矢理進路を変えさせる。


「止まれぇ!逃がすと思うてかぁ!」


 騎士団の先頭の男が叫び手を上げる。

 隠れていた騎士達が現れ、馬車を取り囲む。


「二度は言わない。大人しく馬車から降りて来い」


 槍を向けながら、そう告げる騎士。

 ボロの服の男は、手に食事用のナイフを握り、精一杯の抵抗の意思を示していた。


「無駄な抵抗はやめろ」

「い、嫌だ!俺達は自由になりたいんだ!」

「まぁ気持ちもわからんではないが、奴隷に生まれた境遇を呪え。俺達だってこんなところまで無駄な行軍をさせられて、イライラしているんだ」


 そう言って槍を構えたまま近付こうとする。


「来るなぁ!これが目に入らねぇかっ!」


 男の手には何かが、握られている。


「それは…!?」

「逃げるときに掻っ払ってきた、魔石爆弾だ。捕まるくらいなら、まとめて死んでやる!」

「ま、待て!それは洒落にならん!」


 魔石の力を利用した爆弾。

 その威力は、半径500m内の物を破壊し尽くす。


「み、皆!すまねぇ!」


 男がそれを使う前に、馬車の荷台へ声をかけ、使おうとしたその瞬間。


「ギャオォォォォォォォォォォォッ!」


 突如として現れた巨大な翼竜。

 その強い羽ばたきにより、囲む騎士団の一部が吹き飛ばされる。


「グルゥゥゥゥゥゥ…ガァァァァァァァァァァァ!」


 騎士団の目の前に、火炎弾が放たれる。


「て!撤退!撤退だっ!」


 翼竜の襲来により、騎士団は散り散りになっていく。

 そして残されたのは、ブレスの余波でボロボロになった馬車だけだった。


「ハ…ハハハ…何だよこれ…なぁ…」


 竜に驚き腰を抜かした男。

 衝撃波で持っていた魔石爆弾も、何処かへ行ってしまった。

 

「大丈夫ですか?」


 竜から降りてきて、声を掛けてきた若い男。


「僕はルーシェと言います。緊急そうでしたので、助けさせていただきました」

「へ?は?た、助け?」


 男の混乱は半端じゃなかった。


「先程の会話から、逃亡奴隷と見受けますが…あれ?」

「く、来るんじゃねぇ!てめぇは何もんだ!?どうして助ける必要なんてある!お前みたいな怪しい奴、し、しし、信じねぇぞ!それ以上近づくんじゃねぇ!」


 まだ握っていたナイフを向け、威嚇する男。

 どうしたものかと悩んでいたところ、セレナスが降りて来た。


「その声…もしかしてロウさんですか?」

「あぁ!?何で俺の名前何て知ってやがる!」

「わ、私です!セレナスです!ちょっと待ってください」


 そう言いながら、砂対策のロープと口布を取る。


「そ、その顔は…セレナス!?本当にセレナスか!?」

「そうです!ロウさん!お久しぶりです!」


 ロウと呼ばれた男はセレナスの姿を見て、手にしたナイフを落としたのだった。



「というわけで、私はルーシェ様に助けて頂き、今に至ります」

「なるほどなぁ…色々大変だったんだな。お前に買い手が付いて、いなくなってからずっと心配してたんだ」

「それより、何でこんなところに?」

「あ、あぁ…お前なら話しても大丈夫だよな。しかし、そのご主人様に聞かせても大丈夫なのか?」

「信頼出来ます。私が保証します」


(ご主人様じゃないから!)

 というツッコミを内心入れるのだが、話が進まなさそうなので、飲み込んだルーシェ。


「そう言うなら…実は…」


 今この国は戦争を起こそうと準備していた。

 しかし、兵の数には限界がある。

 そのため、それの補充名目で、ウェジア伯爵の所有するハーフが大量投入されることに。

 ロウ達は大量の引き取り先が出来たとだけ言われ、筒に封印され、出荷されることになったのだ。

 その時、筒の数が多過ぎるため、力だけはあるロウが、荷物運びとして唯一封印されずに、働かされることになった。

 そして二日前の夜、戦争への強制参加の話をたまたま盗み聞き。

 皆で一緒の奴隷先なら、まだ安心と思っていたはずが、物の見事に打ち砕かれてしまった。


「それで、俺は皆を連れて逃げなきゃって、二日前に逃げ出したってわけなんだ。そしてさっきの状況だ。その…すまねぇな…そして、助けてくれてありがとう」 


 ルーシェに頭を下げた。


「事情はわかりました。それなら早く国外へ逃げた方が安全ですね」

「それはそうだが、馬車があぁなっちまったし…皆を運ぶことも出来ねぇ…」


 ブレスや炎弾の余波で、積荷自体は無事なものの、荷台は壊れ、馬は逃げ出してしまっているのだ。


「問題ないです。ジークに運んで貰いましょう。ジーク。重さ的にどうだろ?」

「問題ないよ〜」


 いつの間にか子竜姿に戻り、エリスに抱っこされた状態で、のほほんとした声を出して応えて来た。


「というわけで、移動しようか?」

「移動自体は賛成なんですが、どこへ向かいますか?」

「うん。ロウさん。近くに村か町はないですか?」

「確か逃げる途中で見かけた気がする」

「ではそこへ案内して下さい。そこで皆は情報収集や準備をお願い。僕はジークとウォーターガーデンへ行って、蜻蛉返りするからさ」


 そんなわけで、早速動くことに。

 積荷を移動させ、ジークの炎弾で、荷台をバラバラに崩してもらう。

 翼竜に殺されたと思わせる偽装だ。


 そしてロウの案内で町へ向かう。

 案内のため、荷台の中ではなく手の上に乗っているため、ガクブル状態だ。


 そして町から離れたところに三人を降ろして、ルーシェはウォーターガーデンを目指す。


「ジーク。速力上げ目で頼むね」

「おっけぇ〜」


 飛び上がったジークが、一気に加速する。


「そぉ〜れぇ〜〜!ビューーーーーン!」


 来たときに比べて、かなり速度を上げている。

 ルーシェの全力戦闘と、ほぼ同じ速度だ。

 人外の速度に、荷台の中で顔を青どころか白くしたロウが、少し漏らしていたことは、彼の名誉のために、内緒にしておこう。 

 皆様いつもご拝読ありがとう御座います!

 ブックマークと高評価して頂けると、作者はめっちゃ励みになりますので、皆様是非ともよろしくお願い申し上げます!

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