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森育ちの天然ドルイド  作者: 食欲のアキ
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七話 王都での晩餐

読んで下さる皆様、いつもありがとうございます!

まだまだ拙いレベルで申し訳ないのですが、とてもありがたいです!

感想などもありましたら、励みになりますので、よろしくお願い致します!

「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」と、元気な声で出迎えてくれたのは、エプロン姿の犬耳少女であった。

(同い年くらいかな?)

「はい、一人ですがいけますか?」

「大丈夫ですよ!カウンター席へご案内します!」

 席に着くと、おしぼりとお冷がさっと出てきた。お店は結構賑わっているようで、カウンター以外は満席だった。

「お?お客さん初顔だね!いらっしゃい!これがメニューだよ!」と、カウンター越しに熊みたいな体型、髭面強面の中年男性が、顔を歪めて(本人的には精一杯の営業スマイル)メニュー表を差し出してくる。

「あ、ありがとうございます」(ビビった!かなりビックリした!)

 これがカウンター席がいつも空いている理由である。

 店の味は良く、料金も手頃。かわいい看板娘である店の実娘。流行るのも無理はない。が、カウンターだけがいつも寂しげ。

 カウンターに座ってもらえるのが嬉しくてたまらないため、必要以上に頑張ろうとする結果、カウンターから更に人が減るという悲しいループを繰り返す親父さんの店である。

「今夜は何がオススメですか?」と、女将さんの料理をある程度食べさせてもらったおかげで、多少料理名などは覚えてはいるものの、まだ全部が把握出来てないルーシェは、

「初めてのところでわからないなら、オススメを聞くか、金額を伝えてお任せにしてみな!」というアドバイスを聞いていたので、素直にオススメを聞くことにした。

「オススメかい?そうだなぁ…肉料理なら今日はレッドテイルビーフのステーキかな?魚ならクイーンサーモンが地域の名物だから、何しても旨いよ!野菜も豊富な水のおかげで、シャキシャキでさ………」と、いつもは親父さんにビビった客は、出の早い物とビールで!としか言われないため、聞かれたのが嬉しく、饒舌に話していく。

(顔は怖いけど、中身は優しそうでよかったよ…)と、思いながら、話でより刺激され、空腹感がより強くなったため、

「すいません。どれも美味しそうなんですが、それなら2〜3000フィルで、見繕って頂いてもいいですか?お腹が空きすぎて…」

「おっと!悪かったなお兄さん!ちょっと待ってなよ!すぐかかるから!」と、上機嫌に厨房へ向っていった。

 奥の厨房から声が響く。

「おーいマリル!カウンターさんにこれを先に出しといてくれ!」

「はーい!お客様、こちらをお先にお出ししますね!」と言って、いい匂いのするスープと、彩り良く盛られたサラダ。そしてビールが出てきた。

「南瓜のポタージュに蒸し鶏と野菜のサラダ。ビールはうちのお父さんからのオマケだそうです!」と、柔らかな笑顔で出してくれた。

「えぇ!ビールまで…ありがとうございます。料理も凄く美味しそうです!」

「あんな上機嫌な父は久々ですよ!父と話て下さり、ありがとうございます」と、少し小声で耳打ちしてきたのである。

「マリルちゃーん!注文良い?」

「はーい!ただいまぁ!すみません!失礼しますね!」と、早足で向かって行くマリル。

 注文をしたグループや他のテーブルからも、何故か殺気の入り混じった視線送られたルーシェであったが、里での狩りのとき、野生の殺気に触れることは日常茶飯事だったため、気にせず食事へと邁進していくのであった。

 ちなみに余談ではあるが、この世界で15歳から基本成人扱いなので、飲酒も15歳から大丈夫である。

「美味しい!滑らかな口当たり…自然な甘さ!ポタージュ美味しい!サラダの肉もしっとり柔らかいし、野菜が新鮮だ!」そしてサービスのビールが、スパイスフレーバーの効いた味である。水が良く、良い麦やホップが入ってくるため、美味しいビールが何種類もあるそうな。

「はいよ!おまっとさん!」と、親父さんがステーキと魚の揚げ物を出してくれる。

「さっき話してたレッドテイルビーフのステーキと、クイーンサーモンのフライだ。ビールとも良く合うぜ!」

「ありがとうございます!」と、目をキラキラさせるルーシェであった。

 実は明らかに予算オーバーな料理であったのだが、テンションの上がった親父さんは、嬉々として他にも何品か出してくれたのであった。


「あぁ…美味しかった…ご馳走さまでした…」と、恍惚気味なルーシェ。

「良い食いっぷりだったなお兄さん!」

「いやぁ…本当に美味しかったです!あ、お会計お願いします!」

「あいよ!2500フィル頂戴します!」と言う親父さんに、ルーシェは5000フィルを渡したのである。

「いや、お兄さん貰いすぎだよ!」

「メニュー表の値段だと、こっちが正規料金ですよね?」と、ルーシェ。

「いやいや、こっちで勝手にしたことなんだから、お客さんが気にすることじゃあないよ!」

「いえ。それにこれだけ美味しかったのに、ちゃんとお支払いしておかないと、次から来にくくなってしまいますので」と、微笑むルーシェ。

「そ、そうかい…?何か申し訳ないねぇ…ほんとにすまねぇ…」と、恐縮する親父さん。

「はい!きっちり受け取って下さい!あ…そうだ!ちょっとお聞きしたいのですが、この辺で手頃な宿はありませんか?」

「宿かい?この時間じゃ大体どこも埋まってるだろうし…何だいお兄さん。もしかして王都は初めてだったのかい?」

「そうなんですよ。さっき冒険者登録して、その後宿を探したら近くはいっぱいみたいで、先にお腹が空いて、ここの匂いに誘われてしまいまして…」

「ありゃぁ…お兄さんも洗礼を見事受けちまった口かぁ…この時間からじゃどこも厳しいなぁ…あ、ならよかったらうちの空き部屋に今夜は泊まってくかい?」

「いや、そんな迷惑では…」

「なぁに!構うこたぁねぇよ!マリル!かぁちゃんにそう伝えて来てもらえるか?」

「相変わらず強引なんだから…はいはい!わかったわよ!」と、店の奥へ向かうマリル。

「何かすみません…やっぱりご迷惑では?」

「なぁに!駆け出しの冒険者は金もなくて大変だろうしな!俺も元冒険者だからわかるしよ!気にすんなって!」と、顔を歪めて(本人的には200%の笑顔)肩を叩かれる。

「あ、ありがとうございます…」(こ…怖過ぎて逆らえない…)と、冷や汗をかいたのであった。

 ちなみにルーシェに殺気を送っていた常連客達は、

(何だよあいつ…初めて来たってのに…)

(今晩マリルちゃんと同じ屋根の下だと…ゆ…許せんっ!)

(爆死しろ!もげろっ!)といった、殺気より濃い怨念を、血涙を流しながら睨んでいた。

 睨んだところで、親父さんが怖過ぎて、何も言えないし出来ないヘタレばかりである。


「お母さんもイイってさ〜」

「よしっ!じゃあ部屋に案内してやれ!」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。ただ、泊めてもらうのに何もしないのはアレなので、お店のお手伝いさせてもらえませんか?」

「何言ってんだよ!お客さんなんだから気にするこたぁねぇよ!」

「いえ。せめて洗い物くらいはさせて下さい!」と頭を下げる。

「良いんじゃない?お父さん。今日も洗い物多いことだしさ?」

「うぅーん…仕方ねぇなぁ…わりぃが頼めるかい?」

「はい!頑張ります!」と、勇んで洗い場へ。


(おぉ…予想の10倍くらいの凄さだ…)と、目の前には食器の山が。

 腕まくりして洗い物を捌いていく。自給自足。自分のことは自分でするのが当たり前の里生活のおかげで、家事スキルが高いおかげもあり、瞬く間に洗い終わる。

 時間があるからと、棚や倉庫の清掃作業もちゃっかりやっていたりもする。

「手伝いましょうか?…って、早い!お客さん慣れてるのね…どこかでこういった仕事とかしてきたんですか?」と、様子を見に来たマリルに聞かれる。

「田舎の出で、何でも出来るようにならないといけなかっただけですよ。普通です」

「いや、それにしても手際が凄くいいわ…私なんか何個グラスをわったことか…」と、遠い目をしているマリル。

「お疲れ〜。いやぁ…今日も忙しかったなぁ…そっちはどうだい?」と、親父さんもやってくる。

「見てよお父さん!すっごく手慣れる!」

「おぉ!すげぇな!まだだいぶ残ってるもんとばかり…」

「勝手ですが、棚と倉庫の掃除もしておきました!…あ、やったら駄目でしたか…?」と、ルーシェの言葉で固まる二人に、恐る恐る聞いた。

「いや、駄目なんてこたぁねぇ。むしろありがたいことだ。が、それにしても早過ぎるだろ!」

「本当に!どうやったの?」

「いや…普通に洗っただけなんですが…」

 からくりとしてはこうである。水の小精霊の力を借りて、シンクの中で自動洗浄状態にする。乾かすのも風と火の小精霊の力で数瞬である。

 ちなみに小精霊的にはルーシェと遊んでる感覚なので、嬉々として力を貸してくれる。

「お兄さん、よかったらうちでバイトするかい?」

「お客さんなら大歓迎よ!」

 と、二人から勧誘されるルーシェであった。


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