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森育ちの天然ドルイド  作者: 食欲のアキ
76/124

七五話 七竜王

 2月も半分が過ぎてしまった…

 早い…

 本当に早い…

 へたり込むシリウスに駆け寄る。

 

「だ!大丈夫 (ですか)!?」

「大丈夫…大丈夫じゃ…ふぅ…それよりエリス、今の技…ちゃんと見たかの?」


 コクリと頷きで応える。


「あれは魔力と気を、ピッタリと均一に混ぜて使う合技の一つじゃ。扱いが難しいのが難点じゃの…久々にしたら我も大分消費してこの様じゃ」


 確かにシリウスは今までにない消耗を見せていた。

 しかし、消耗に見合う以上の威力。


「まだエリスには使えんが…もう少し気の訓練をしたら、徐々に教えていく。しかし…我も鈍ったものじゃのぉ…たかだかあの程度を使うのに、これほど時間とエネルギーを消耗してしまうとはのぉ…」

「なっ!」

「カカカ。何をそんなに驚いておるのじゃ?まだまだ上はある。しかも使い慣れれば、無駄がなくなる分、当然今みたいにへたることもないのじゃ。と、話はここまでにして…すまんが上まで運んでもらえるかの?上の状況も気になるのじゃ」


 そう。まだ全部が終わったわけではない。

 急いで二人の元へ駆け付けねば。


「そうね!シリウスは担ぐわ。イリス。行くわよ。あれ?イリス?」

「…あ、ごめんなさい…聞いてなかったです…」

「…大丈夫?上に急がなきゃって話よ。シリウスは私が運ぶから」

「そ…そうですね。急ぎましょう」


 上へ向かう三人。

 どうにも妹に気が入っていないのが心配になる姉。

 妹は妹で、今回も役立つ事が出来なかったことを悔やんでいた。


(どうすれば…あの速さと威力についていけるの…?このままじゃ…)



 二本剣を握り、踊るようにそれを振るう。

 巨体を相手に怯むことは一切ない。


「力を貸して」

「まかせて!」


 アクエリアスの力で、水面を走り出す。

 水竜を中心に、円を描くように歩を進める。

 その姿はまさしく剣舞踊ブレイドダンサーと呼ぶべき代物だった。

 しかし、どうにも火力が足りない。

 決定打がないのだ。


「私が力を貸そうか?」

「いや…前のアレを使うと、殺しちゃうだろ」


 アレとは魔族を倒した水剣のことである。

 確かにあれなら斬れるが、今は殺すことではなく、止めることが目的なのだ。


「クギャアァァァァァァァァッ!」


 猛る水竜の咆哮と猛攻。

 水弾は更に威力をあげる。

 剣でその攻撃を切り裂く。

 先程までと違い、突進や尻尾、鉤爪なども攻撃に混ぜ合わせてくる。


(白刃剥落で何度も合わせたのに…まだ足りないのか…)


 その耐久性を奪い取る能力を持ってしても、削り切れない。

 理由は水竜の再生能力の高さ。

 それを上回る速度が必須なのだが、ルーシェはすでに、現在一人で出せる限界速度に達していた。

 ほとほとこの水竜には驚かされてしまう。


(でも…そのことは途中でわかっていたこと…だから途中から仕込んでいたんだ…あともうちょっと!)


 途中から攻撃ではなく、回避に比重を置いていたルーシェ。

 

「ここだぁ!」


 ちょうど一周した足元に、二本の剣を突き立てる。


 白と黒の光が、ルーシェの足跡をなぞるように、左右に別れて走り出す。

 水竜の巨体を囲み、光の膜を形成する。

 やがて完全な球体となり、水竜を中に捕らえた。


「クギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 そんな薄い膜が何になると言わんばかりに、水弾を放つ。

 膜に当たった瞬間、それがそのまま水竜に跳ね返る。


「…ッ!」


 自身の攻撃が自身へと還る。


「ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…」


 予想外のことに驚き、ダメージを受ける。


「成功してよかった…」

 

 剣を見て呟くルーシェ。

 

「今のは何?」

「精霊式の結界術だよ。剣の精霊が昔見せてくれたことがあってね。ぶっつけ本番で試してみたんだ」

「はぁ!?ぶっつけ本番って!」

「うん」

「何その自信満々の顔は…ぷ…くくく…アハハハハ!あなた面白過ぎね!」


 爆笑し出すアクエリアスは実体化し、ルーシェの背中を何度もパシパシとはたいたのだった。


「クギャァァァ!」

 

 水弾が反射したことにより、今度は何度も突進。更には尻尾や鉤爪を。

 しかしそれは全て跳ね返る。

 自身が傷付くことも省みず、ただただ暴れ回る。

 自身の回復力により傷もすぐ治るため、本当の意味でお構いなしである。


 しかし、それも限界を迎えた様だ。


「クギュウゥゥゥゥ…」


 力のない声。

 傷の治りが遅くなり、動きも遅くなっている。


「ルーシェ様っ!」

 

 そんなとき、穴から飛び出てきたセレナス。


「セレナス。無事だったんだね。目的の物は?」

「ルーシェ様もご無事で何よりです!こちらです!」


 七色の珠をルーシェに見せる。


「綺麗だね…それに…凄い力を感じる」

「それより…ルーシェ様。あの膜は?」

「あぁ、水竜を結界で閉じ込めてます」

「解いてもらえませんか?」

「危険だ。弱ったとはいえ…まだ危険過ぎる」

「大丈夫です。信じて下さい」


 その目には力が籠っている。

 

「わかった。でも…危ないと思ったら…」

「大丈夫です」


 最後まで言わせなかったセレナス。

 今までにない彼女の姿に驚きつつも、絶対大丈夫と信じさせる何かを感じた。


 突き立てていた剣を抜く。

 結界が消えた瞬間に、セレナス目掛けて突撃をする水竜。

 

(危ないっ!)


 ルーシェは剣に手をかけたが、水竜は激突することなく、セレナスの前で止まり、その頭を垂れていた。


「貴方の魂です」

 

 セレナスは飛び、その珠を水竜の額に触れさせると、自然にそれが溶け込んでいった。


 水竜の体が光を発し、当時に爆ぜた。


「きゃーーーーーーっ!」


 至近距離で衝撃を受け吹き飛ぶセレナス。

 それを抱き止めるルーシェ。


 やがて光は一つに集まり、小さな体を再整形。いや…再構築していった。


「クゥ〜クゥ〜」


 小さな子供サイズの竜がそこにはいた。


「あれは…?ん…?セレナス!セレナス!…気絶しちゃったか…」


 セレナスはどうも爆発の衝撃で、気絶してしまったようだ。


「クゥー…そのお姉さん…寝ちゃった?」

「あなたは…さっきまでの水竜でいいのかな?」

「半分はそうだね。お兄さんの戦っていたのは、身体だけで、言わば抜け殻だね」

「抜け殻…つまり、その魂に当たるものが、さっきの七色の?」

「そうそう!理解が早くて助かるよ〜。助けてくれてありがとうね」

「仮にそうだとしても…姿が違いすぎない?」

「あぁ。さっきの姿にもなれるよ」


 そう言うと、水竜の姿に変化する。


「な…なるほど。納得」

「わかってもらえたなら何より」


 そしてまた子竜の姿に戻る。


「改めて、僕は七竜王【セブンスドラグーン】。助けてくれてありがとう」


 礼儀正しく頭を下げる。

 子竜の姿も相俟って、かなり愛らしい姿だ。


「永きに渡り封印されていたんだ。いやぁ。お姉さんみたいに声が届く人がいて助かった」

「どういうこと?」

「いやぁ。魔族が僕の魂である七竜の宝玉を狙っててさ。あいつらかなり強引だったから、宝玉が壊れて、死んじゃうところだったよ。まぁ魔族が何をする気だったのかも、だいたいわかるから、本当にありがとう」

「魔族!?今も下にいるの?」

「魔族なら倒したのじゃ〜」


 穴から出てきた三人。

 背負われたシリウスが、そう声をかけてきた。

 三人の無事を確認し、胸を撫で下ろしたルーシェだった。

 皆様いつもご拝読ありがとうございます!

 今月中に目指せ150P!

 残り14Pです!

 皆様ご協力、何卒平に平にお願いいたします!

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