七四話 オーガ戦 決着
そろそろ今の話もクライマックスです。
あと2話くらいで、次の章かな?
と、本当に毎日書いてるので、正確に報告できないのが辛かったり苦笑
猛るオーガ。
先程は捉えることの出来た動きが、今はかなり速度が上がっている。
姉妹目掛け拳を振るう。
エリスは妹を抱えて後方へ跳ぶ。
ギリギリその拳を回避した。
「ゴフッ」
エリスが吐血する。
避けたはずの攻撃が、何故か脇腹に拳のめり込んだ跡。
「お姉ちゃん!」
「だ…い…じょうぶ…よ…」
「今のは…確かに避けたはずじゃのぉ?何をしおった?」
「コタエルワケナイダロウ…サァツギダ」
姉妹にトドメを刺すべく、オーガが動き出す。
間に飛び込み、オーガの動を止める。
「?ドウシテオレガトメラレル?」
「教えてやるわけないのじゃ」
不敵に笑いながら応える。
そこからオーガは、拳を繰り出そうと動くが、何故か体が動かないのだ。
(ナゼダ?ナゼオレノカラダガウゴカナイノダ?)
拳打だけでなく、蹴りも放てないどころか、何故か足を一歩踏み出すことも出来ない。
その間にイリスは姉を支え後退する。
「お姉ちゃん…」
「大丈夫…」
エリスはルーシェの回復薬により、殆ど治りかけていた。
怪我のことよりも、シリウスの技が気になっている。
「ふむ…不思議そうなその顔…なかなかに面白いのぉ〜」
ニヤニヤしながら相手の反応を楽しみつつ、エリスの回復が済んだことを確認したシリウスは、ふぅっと息を吐気、姉妹のところまで後退した。
自身の身体の自由が戻ったことを確認するオーガ。
「今のは一体…?」
「その話は後じゃ。来るぞ」
オーガは離れた距離を活かし、地を蹴り上げ石の飛礫を飛ばしてきた。
シリウスとエリスは回避。
イリスは氷壁で防ぐ。
その間に距離を詰め、シリウスに拳を繰り出す。
先程のエリスを見たシリウスは、エリスよりも大きく躱した。
「ガハッ」
結果は先程のエリスと同じ結果。
いや、エリスより軽い分、大きく吹き飛ばされた。
ダメージを負いつつも空中で姿勢制御し、無事に着地をする。
「なるほどのぉ〜。喰らってみてよくわかったのじゃ」
腹部を擦りながら、オーガを見つめる。
「お主の技は拳圧じゃの」
「ヨクワカッタナ…ガ、ワカッタトコロデムイミ」
その鋭い撃ち込みにより、空気弾を発生させるオーガは、バレたところで関係ないと、その距離を活かし、空気弾を連発してくる。
「ふむ…なかなかの練度じゃが…」
躱しながら距離を詰める。
「ウガァーーーーー!」
さらに拳を早く撃ち込み、空気弾の密度を濃くする。
ーゴスンッー
横からの突然衝撃がオーガを襲う。
エリスの闘気を込めた飛び蹴りと、イリスの魔法【ファイア・ジャベリン】が突き刺さる。
「ほらのぉ。相手は我だけではないのじゃからのぉ」
「…ナッ!」
空気弾が止んだその僅かな時間に、シリウスはオーガの前に詰め寄っていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
連撃に次ぐ連撃。しかし…
「ククク…ドウシタ?ソノテイドカ?」
その巨体となったオーガは、防御力も上がっている。
シリウスの攻撃が通らないのだ。
「なかなかの耐久力じゃの…どうしたものか…」
言葉とは裏腹に、余裕の表情を浮かべる。
その顔がまたオーガを苛立たせる。
「ナニヲワラッテイルンダッ!」
拳を繰り出そうとした瞬間、また体が硬直する。
「クソ…クソォ!オマエハイッタイナニヲシタァァァァァァァァァァ!」
「ふむ…そうじゃのぉ。お主はなかなかに面白い攻撃に、その耐久力じゃ。それに免じてネタばらしをしてやるかのぉ。エリス。お主もついでに聞いておくのじゃ」
生物には神経節がある。
動きの拠点となる部分なのだが、そこの神経は関節部分のため薄い。
動き出す直前にそこを全て撃ち、また、顎やこめかみにも軽い衝撃を加えて、脳を僅かに揺らすことで、その動くという脳の命令を、強制遮断することができる。
「と、そんな理屈じゃの〜。簡単じゃの〜。ま、恐ろしく集中力と体力を使うから、長時間使うことは出来ぬのじゃ」
「か…簡単じゃないわよ!」
そのエリスの叫びに、思わずオーガも頷いてしまった。
「エリス!すまんが暫く頼めるかの?」
先程までと違い、真面目な顔で言うシリウス。
「流石にちょっと厳しいわね…イリスと二人であっても…」
冷静に判断をする姉。それに同意し頷く妹。
「そうか…ではこれならどうじゃ?」
指をパチンと鳴らすと、エリスの体が輝く。
「こ…これは…私の魔力が戻った!」
「一時的に封を解いてやるのじゃ。これならどうじゃ?」
久々に魔力を全身に宿す。
いや、魔力と気。その二つを全身に回し、今までにない力を感じる。
「…凄い…何これ…?本当に私…?」
「なかなかじゃろ?と言っても、今回の事が終われば、また魔力は封印するがの…いけるか?」
「これなら…いける!」
「では…時間稼ぎを頼むのじゃ」
そう言うと、先程まで使っていた技を解除。
と、同時に動き出すオーガ。
「ヤットカイホウサレタカ」
そう言いながら、シリウスに突進する。
「余所見してんじゃないわよ!」
その横っ面に拳をブチ込むエリス。
その衝撃に吹き飛ぶオーガ。
速度と力が、それまでの比ではない。
が…
「ククク…ソレガドウシタ…?」
オーガには殆ど効かなかった。
それどころか反撃とばかりに空気弾を撃ち込んでくる。
回避するも僅かに擦れ、防具の肩の部分が裂ける。
「そんなこと…最初から百も承知よ!」
怯むことなく前に出て、更に攻撃を打ち込む。
相手にスキを与えないために、密度をより濃く。
鋭く。
エリスはこのとき、力の殆どを速度と防御に振っていた。
こうすることで、耐え続けるしかない。
仲間であり師でもあるシリウスが、任せてくれたのだ。
(応えないわけにはいかない!)
イリスはいつでも魔法を放てるように構えている。
しかし放つことは出来ない。
その速度は彼女の対応範囲を大きく越えているからだ。
それでも構えることをやめない。
わざとオーガにもその姿を見せ付けている。
そうすることで、こちらにも気を割かせるのだ。
それしか今は出来ない。
何度も感じてきた歯痒さだが、それでやらないという選択にはならない。
自分の役目を。出来る事をするのだ。
シリウスはエリスの飛び蹴りを見た後、後衛のイリスよりも少し離れたところで構えて、呼吸を整えていた。
意識を集中させ、より力を…気と魔力を集め、それを均一に練り上げていく。
(久々にやるから…少し時間がかかるのぉ…)
数十年ぶりに使う技のため、準備に時間がかかり、そのことに僅かに苛立ちを覚えるが…
(と…危ない危ない…もっと集中するのじゃ)
そう。一つ間違えればその力が暴走し、爆発してしまう。
それほどまてまに繊細なコントロールが必要とされる。
オーガは苛立ってはいたが、待っていた変化が起こったことを確認する。
エリスが蹴りを繰り出した瞬間、防ぐだけでなく、全く予期しない方向から拳を放ってきた。
「お姉ちゃん!」
離れていた分、イリスにはよく見えていたため、危険を知らせる。
その声に反射神経のみ反応。
その攻撃を躱すも指がかかり、吹き飛ばされる。
「クッ…!何のこれしき!」
何とか受け身を取り、その反動で立ち上がる。
上半身を守っていた防具は、完全にボロボロになってしまった。
そして見た相手の姿は、異形のものと化していた。
背中から対の腕が生えている。
それだけではない、オーガの後頭部にも顔が。
あれは…
「アァー…カイフクニスゲェジカンガカカッチマッタ…スマネェナ」
「ヨウヤクオメザメカ」
「サァ…ココカガハァ!!!!!」
話の途中で、オーガが血を吹き出した。
その腹部には大穴が空いており、辛うじて薄皮一枚で繋がっているといった状態だ。
「すまんな。スキだらけじゃったからのぉ」
そう声をかけたシリウスの腕が、キラキラと不思議な輝きを放っている。
その拳を無慈悲にオーガの頭部に叩き込み、完全に破壊したのだ。
「ふぅ…時間がかかってすまんのじゃ。久々過ぎて準備に時間が…」
言い終わる前に、その場にへたり込んだシリウスだった。
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