七三話 VSオーガ
e-Tax初めて使うので、やり方がなれない…
スマホで打ち込むのが慣れない…
が、やるしかない…
猛り吠えるオーガ。
その猛突進は、以前見た魔族と比較して、遜色ないレベルのものだった。
その拳は文字通り岩を粉砕する。
ギリギリで躱すエリス。
「チッ!運はいいようだなぁ?おい?いや?俺らと出会って殺されちまうんだから…不運か?」
余裕のためか、ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべている。
そんな強者相手を無言で見つめるエリス。
彼女は何も恐怖で無言だったわけではない。
驚きのため、言葉が出なかったのだ。
(ほ…本当に…見える…!凄い…!)
そう思いながら、目端でもう一体のオーガを相手取るシリウスを捉える。
「良いかのエリス。短期間とはいえ、主は我の特訓を受けておる。安心して戦うのじゃ。何?前の魔族の速度が?なぁにを言っておるのじゃ!我より早かったか?そう思うなら、教えた気を目に集中してみるがいいのぉ。なぁに!やってみればわかるのじゃ」
シリウスから戦闘開始前に、そう言われていたのだが…本当に見えるのだ。
さっきのギリギリに見える回避は、目に気を集中させた分、身体能力は下がる。そこを勘案した、無駄な動作は一切省いた、最小にして最速の躱しなのだ。
「これなら…いける!」
自信を胸に小さく呟いた。
「何がいけるだってぇ!?こぉんの雑魚がぁ!」
連打で襲いかかるオーガ。
全て紙一重で回避。
当たらない攻撃に苛立ちに、大振りの一撃を放つ。
(そこよっ!)
大振りの強力無慈悲な一撃。その腕を取り、勢いのままぶん投げる。
「でぇりゃぁあああああっ!」
自身の勢いも加算され、空中で姿勢制御も出来ずに、背中から壁に激突。
「ゴブッ」
薄っすらと吐血するオーガ。
激突する瞬間、壁から鋭い氷柱が幾つも出現し、それが刺さったのだ。
「私もいること…お忘れなく」
追加とばかりに氷の飛礫が、幾重も襲いかかる。
油断なく杖を構えるイリス。
彼女がずっと修練していた魔法。
遅滞詠唱の応用、魔法貯蔵だ。
通常の魔法はその場で魔力を詠唱にて変質させ、放つ物だ。
遅滞詠唱は基本その場で構築し、発動を遅らせて使用する。
練度が上がれば、かなりの魔法を長期間保存することが可能であり、最初はこの魔法を練習してきていた。
しかし、この魔法には欠点がある。
いくら長期間とはいえ、数日で切れるし、発動時に現存の魔力を消費するため、速射性は上がるのだが、その日に使える魔法数が増えるわけではないのだ。
そこで悩み、考え抜いた別アプローチ。
魔導書やスクロールを作る方法に着目した。
あれは作成時に魔力を込め、長期間その力を発動せずに、留めているのだ。
なら、それと同じことを自身の体で行なえないか?
その概念により生まれたのが、イリスオリジナルの、魔法貯蔵。
考えたのはいいが、開発には相当の苦労があった。
最初は遅滞詠唱の様に、体に留めたのだが、どうにも定着せずに、数日で切れてしまう。
更にはストック出来る数にも限度があったのだ。
前回の魔族戦において、未熟ながらもこの力は、かなり役に立つことがわかったのだが、より長期間保存する方法はないのかと考えた。
そのときに浮かんだ疑問。
何故スクロールや魔導書には長期間保存が出来るのか。
作る際の用紙とインクに、それぞれ特殊な魔石を混ぜ込むことで、それを可能にしていることがわかった。
王都で杖を新調するときに、たまたまその魔石を使った杖を見つけていたイリスはそれを購入。
そして定着実験を繰り返していたのだ。
つい先日、その努力は実った。
これにより、ストックする日数が足りなかったため、まだ数日間分ではあるが、ストック分に関しては、魔法を詠唱なしに、選択するだけで放つことができる。
特筆すべきはそれだけではない。
「焔よ集え。我を欺きし愚者に裁きの御志を。イフリートフレア」
宙に焔に包まれた巨大な手が現れる。
そこに杖から同威力の風魔法を混ぜ込む。
「火風合成!ハンズオブフレアーズ!」
風魔法により空気を取込み、更に巨大化。より高温帯となり、赤から白へと発光を変えた手がオーガを襲った。
そう。
これこそが最大の利点、同時に二種類の魔法が、発動できるということ。
当然合成せずに、別々で使用することも可能なのだが、別々では起こせない高威力。
また、二人の魔道士で合体させることは不可能ではないのだが、どうしても魔力の構成比にムラが生じることもあるため、コンフリクトしてしまい、ここまでこ威力にはならないのだが、一人での行っているため、その心配はない。
オーガは断末魔をあげることすら出来ずに、オーガは焼き殺されてしまった。
「イリス…加減しなきゃ…生け捕りにしないと、情報も聞き出せない…」
驚きなりながらも、妹を咎める姉。
「ご…ごめんなさい…ここまでの威力になるとは思わなくて…」
使った本人ですら、この驚きようなのだ。
実際初級魔法同士で組み合わせた際も、なかなかの威力だったのだが、中級以上の魔法を組合せたら、ここまでになるとは思わなかったのだ。
「よっぽどのことがない限り、威力調整が出来るようになるまでは封印しますね…」
そう応えるのが精一杯だった。
その威力を横目に、冷静なオーガを相手に、特に手を出すでもなく、踊るように攻撃をさばくシリウス。
「何故手を出して来ないのだ…?」
拳を振りながら、シリウスに問い掛けた。
このオーガは、今のままの自分では、シリウスに勝てないことを悟っていた。
だからこその疑問だ。
圧倒的な強者のはずが何故こんな無駄なことをするのか?
「ん?我では即殺してしまうからのぉ〜。まぁ余興みたいなものじゃ」
この言葉は相手を完全に見下した物だ。
口の悪い方が言われた場合は、ブチギレて安易に手を出していただろうが、このオーガは冷静だった。
いや、言われても仕方ない実力差なのだ。
「なるほど…ならば仕方ない」
オーガのとった行動は、攻撃と見せかけたフェイント。
そのまま方向転換し、姉妹の方へと突撃を。
「お主の相手は我じゃというに…のぉ!」
急なことで、一歩反応が遅れたシリウス。
「気を付けるのじゃ!」
その声が届く前に、姉妹は立っていた場所から移動していた。
が、オーガの狙いは姉妹ではなかったのだ。
「む…なるほど…これなら」
そう言うと、オーガは焼け焦げたオーガを丸呑みに。
「あ…あなた!何してるのよ」
同族を喰らうその姿に、吐気と嫌悪を覚えるエリスが叫ぶ。
「ククク…見ていれば…ワ…カ…ル…ゥ…ゥ…ウガァーーーーーーーーーーーッ!」
先程より大きくなったオーガ。
「ククク…クハハハハハハハ!ヒサビサニコノスガタトナッタ…サァニラウンド…イクゾ!」
巨大化したオーガが、三人へ襲いかかった。
一方その頃。
たぶん皆に忘れられたであろうギャバンは、苦虫を噛み潰した顔をしていた。
「クソ…クソ…クソが…」
悪態にもいつものキレがない。
飛竜の群れは何とか退けたのだが、自身も含め、生き残った数人の部下全員が、満身創痍のボロボロなのだ。
辛くも生き残ったのだが、どうしようもない状態。
自慢の馬車は飛竜に潰され、回復薬も食料も、水すらも満足にないのだ。
「俺たちどうなるんだ…?」
「シッ…黙ってろよ…」
「そうそう…聞こえて当たられたらどうするよ?」
「でも…こんな状態じゃあなぁ…腹減ったぁ…」
部下たちの不満も限界に来ているが、地獄の行軍はそんな中でも続いていく。
少し進んだところ、音が聞こえてくる…これは…水の音…?
その音を頼りにさらに奥へ。
進む足も早くなる。
川が見えてきた。
「あ、ありがてぇ!助かった!野郎共!水だ!あそこで休むぞ!」
「「「うぉーーーーーー!」」」
水の発見により、全員に生気が戻る。
全員で駆け寄る。
そう。不用意に近付いたのだ。
この先に待つ不幸を知らずに…
いつもご拝読、ありがとうございます!
ブックマーク登録と高評価、して頂けるととても励みになります!
昨日の高評価、ありがとうございます!
目指さ今月中に150P!
皆様ご協力、よろしくお願いします!




