六九話 忌避剤
急に冷えましたね…
間違って2話投稿したため、昨日は投稿出来ずに、申し訳ありませんでした。
アル達は無事に村へ。
「おっし!じゃあチャチャッと仕事すんぞ!野郎共!」
仲間達からの合いの手はなかった。
「気合いはいってるところ悪いけど…別に私もパルコも女だしね」
「ヨ〜」
もう一人の仲間に至っては、着いて早々既に救援活動を黙々と行っていたりする。
「たく…まぁいい。とにかく急ぐぞ。っと、ちょっとすまねぇな。村長さんはどこだ?ギルドからの依頼で、俺ら来たんだが」
「おぉ!待っていたよ!村長のところだな!案内するよ!」
「ありがとよ!そんじゃあネオンとパルコは、先に救援頼まぁな!」
「「いってらっしゃ~い(ヨ〜)」」
案内されたのは家ではなく畑。村長は畑作業をしていた。
「村長〜!冒険者達が来てくれたよ〜」
「おぉ〜!よぉ来てくださったなぁ!私は村長のファーです。よろしくお願いします」
物腰の柔らかな好好爺といった風体。
「俺はアルだ。今回は大変なことになったな。早速だがすぐ仕事に取り掛かりたい。対飛竜様に、忌避剤を撒きたいんだが、許可をもらえるか?」
「なるほど。畑に何か害が出ることはありませんか?今回の騒動で、畜産の被害が多くてなぁ…畑までやられてしもぉたら、例え飛竜が何とかなっても、みんな飢え死にしてしまう…」
「それなら大丈夫だ。作った奴曰く『天然素材100%!飛竜以外も魔獣が嫌がる臭いで、その他の魔獣からも簡易結界に!さらに窒素リン酸カリウムという、畑の三大栄養素もバッチリ網羅!土壌もアルカリ化させて、より畑が元気に!もう豊作間違いなしです!』と言ってたからな」
「な、何やら聞き慣れない…というか、初めて聞く言葉が過分に含まれてますが…貴方の眼から、その者を信頼しているのが伝わります。信じましょう」
「わかった。早速仕事してくるわ」
綺麗なお辞儀で見送る村長。
実はこの村長、村長オブ・ザ・イヤーで、5年連続一位を獲得し、今では村長審議会の会長だったりする。
今畑仕事をしていたところも、村長の畑ではなく、村人の畑なのだ。
飛竜に家畜が襲われた際、そこの住人が怪我をした。
その人の代わりに、無償で手伝っている。
「普段村人達の税で食わせてもらっとるからの。お返し出来るときにしとかんと」
と、本人談。
ちなみに自宅はというと、怪我人の治療所として開放していたりする。
また、治療費やギルドへの依頼料なども、税金からコツコツと貯めて来たものだ。
「村人達の税なのだ。村が困ったときに使わんでどうする?」
と、これまた本人談。
この人が貴族だったら良かったのに…という声が巻き起こるほどの人気だ。
そのせいで貴族に狙われたこともあったりするのだが…それはまた別のお話。
村長から許可が取れたので、早速撒き始める。
「特にエゲツねぇ臭いとかはねぇんだな」
撒いていく後を付いていくように、ネオンとパルコがスコップで軽く土を掘り起こし、解しては元に戻していく。
最初こそ薬の方が重かったため、アルが薬を担いでいたが、途中からパルコと代わり、更に軽くなってからはネオンが。
「よし。じゃああとはネオン」
「はいはい!火よ灯れ。導きの導べ。トーチ」
洞窟内などで使う、攻撃性のない火系の照明魔法。
それを指先に灯し、村をグルっと囲む様に掘り返した土に向ける。
ルーシェの薬に反応し、ゆっくりと火が伝わっていく。
強い火ではなく、仄かに煙が上がる。
「ん…?思ってたような酷い臭いはしねぇんだな」
「本当ね。少し煙たいくらい?」
「二人は平気そうで羨ましいヨー…」
獣人のため鼻が効くパルコは、不調を訴えるほどではないが、少し顔を顰めていた。
程なくして、一匹の飛竜が村へ。
「グギャーーーーーーーーーッ!」(腹減ったー!)
「ひ!飛竜が来たぞー!」
「逃げろぉ!」
村人達が逃げ惑う。
その姿を見下ろしながら、飛竜は何も感じてはいなかった。
ただ先日食べた牛が旨かったこと。
魔獣よりハントしやすかったこと。
つまりこの飛竜にとっては、ただの都合の良い狩場…いや、餌場でしかなかった。
しかしそれも昨日までの話だったのだ。
飛竜が獲物を定め、上空から掻っ攫うために滑空。
ある程度近付いときに、慣れない臭いが…いや、これはそんなものではない。
この臭いは…
全ての防衛本能が刺激され、その場には留まってはいられないと、一目散に飛竜は方向を変え、飛び去ってしまった。
その飛び方は何処か萎縮しているのか、ガクガクと震え怯えているかの様だった。
「ふぅー…ルーシェの言った通りで、一安心したぜ」
「確かに…一匹だけだったから、倒せないこともないけど、こちらも損害が大きくなるから、出来れば戦いたくないわ」
と、仲間内でほっとし合う。
ダンジョンワームの皮膚をベースに作った特製の薬。
それにサラマンダーの鱗粉をなどを混ぜた臭いは、上位竜種の臭いと同じになる。
つまり飛竜からすれば上位種の縄張りに入ったも同然となる。
あの萎縮した動きは、人で言うところの小便チビったみたいなものだ。
更に上位の竜種の臭いだ、わざわざそんな臭いのするところに近付く、馬鹿な魔獣はいない。
結果、飛竜及び魔獣にとっては、究極の忌避剤なのだ。
「とりあえずこっちはこれで大丈夫そうだが、ギャバンの奴はこっちに来るかね?」
「どうかしらね?と、そんなことより村長さんに説明してきなさいよ?」
「そうだったな。さっさと済ませてくる」
アルは駆け足で村長の元へと向かっていった。
一方そのころルーシェ達はというと、忌避剤を馬車に設置することにより、一切魔獣や飛竜と遭遇することなく、素早く移動していた。
「この薬、凄く便利ね」
「より強い魔獣には効きませんし、素材が素材だけになかなか作れません。それに調香するのが難しいので、量産出来ないのが難点…でしたよね?」
姉妹の会話に頷いて答える。
「だいぶ時間は稼げたはず。と…見えてきた」
焔の洞穴が見えてきた。
飛竜に食われたであろう魔獣の残骸と、上空をギャーギャー鳴きながら、飛び回る飛竜達。
馬車を見付けた何匹かが、目掛けて滑空をしてくる。が、ある程度近付くと、村を襲った飛竜同様に、何処かへ飛び去って行く。
「これで馬車の安全は確認できましたね」
飛び去る飛竜を見ながら、セレナスが呟いた。
馬車から降り、洞穴をサクサク進んでいく。
前回来ているお陰で探索する必要はなく、更にはメンバー数と各々のレベルアップをした現在において、ここの魔獣では取るに足らない相手なのだ。
「ここの魔獣、こんなに弱かったっけ?」
「確かに…以前程の脅威は感じません」
「それだけ二人も強くなったってことかと」
「ふむ…この程度では児戯と変わらんのじゃ」
「いえ…皆さんが強過ぎるだけでは…?」
セレナスだけがおっかなびっくりの様子で進んでいるが、通常のリアクションはこれが普通だ。
少し進むと、崩落により通れなくなった通路が。
「ここ、通れなくなってますね」
「そうだね…仕方ない、少し遠回りになるけど、あっちから迂回…」
言い終わる前に、シリウスが前に出て、通路の岩に手を翳す。
「螺旋浸透掌ッ!」
足腰の捻りによる力を背筋で倍増。
肩から掌にその力を伝え、捻じりながら内部に向け闘気を打ち出す。
ーーーーードゴーーーーーーン!ーーーーー
凄まじい爆発音。
巻き上がる土埃。
天井からパラパラと欠片が落ちてくる。
暫くし、視界が落ち着いてきた。
道を塞いでいた瓦礫が、吹き飛びなくなっていた。
「これで問題なく進めるのじゃ」
そう言って、軽い足取りで先へ進むシリウス。
「おぉ。言い忘れておったのじゃ。エリスも早く、これくらいは出来るようになるのじゃ」
わざわざ戻って来て、エリスの肩をぽんと叩きながら、そう言い放った。
え?私にもこれ出来るようになれと…?と、ポカーンとなるエリス。
その姿を三人が憐れんだ目で見ていた。
「と、とにかく進もうか」
「そ、そうですね」
「急ぎましょう」
ルーシェの言葉に反応し、全員で先に向かったシリウスを追ったのだった。
一方そこから暫く後、迂回し焔の洞穴を目指すギャバン。
「クソっ!なんでこんなに飛竜が多いんだ!」
馬車を守りながら、必死に飛竜と戦うギャバン達。
対竜種装備のため、何とかなってはいるが、飛竜の数が多過ぎるのだ。
飛び交う怒号と悲鳴。
かなり苦しい戦いを強いられている。
この飛竜達はルーシェの馬車を襲おうとし、逃げ出した奴らだった。
これに関しては全くの偶然なのだが、予想外の妨害行為になっていたりする。
「ふっざっけんなぁーーーー!」
理不尽な展開にキレ、その怒りを自慢の戦斧に宿し、振り下ろすギャバンだった。
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