五話 初めて適性を知る
うーん…久々に二日酔いだ…
辛い…
と、そんなことは置いといて、早速のブックマーク登録して下さった方がいるようで、ありがとうございます。
とても嬉しいです!
他の皆様も、もしよかったらブックマーク登録してください!
「では登録しますので、こちらに必要事項をご記入下さい!何かわからないことなどありましたら、遠慮なくお聞き下さい。書くのに少し時間がかかると思いますので、横にずれてお願い致します。書き終わりましたら声をかけて下さい!はい!次の方どうぞ!」
受付の女性は物凄く忙しそうだ。
記入事項は名前。年齢。過去の犯罪履歴の有無。得意な武具。特殊技能(魔法の有無や野草に茸などの判別。剣術など武術の流派など)。自己分析判断の欄まである。存外に記入事項は多い。
最後の欄には職業適性と書いてあった。
「すみません。この職業適性っていうのは?」
「まだ適性診断を受けたことがないのですね。かしこまりました。それではその紙を持って、そこの奥の部屋、3番の部屋へ行って下さい。そこで調べてもらえますので!」
(今どき適性診断もしたことないって…大丈夫かしら?)と、受付は思いつつも、鉄壁の営業スマイルで隠し切る。
「3番ですね。わかりました」
ノックをすると扉が開く。
「おや?適性診断ですか?珍しいですね。どうぞこちらへ」と、白髪の高身長の男性が現れる。
「失礼します。よろしくお願いします」(人混みじゃなくて助かった…)
部屋の中央には台座があり、その上には大きめの水晶球と、横には何かの装置らしき物。壁には大量の本が、水晶球を覆うかの様に並んでいる。
「では水晶に触れて下さい」
「はい」
水晶球が最初は淡く弱い光を。そのうち少しずつ輝きが増していき、強く発光したあと、元の透明な状態に戻った。
「はい。もう離してもらって大丈夫ですよ」というと、水晶球の隣の装置から紙が出てくる。
「ふむ…?貴方相当に若く見えますが…どこかで相当に修行されたのですか?それなら適性診断しなくてもわかりそうなものですが…誰か師匠や先生などがいたことは?」
「特にこれといっては…」(里のみんなや自然が先生みたいなものだったのかな?どっちかというと、友達って感じで違うと思うんだけどなぁ…)
「おかしいですね…通常ドルイドになるためには、僧侶の修行をした上で、森の深くで自然と一体になる修行も数年は必要な、上級職なんですが…」
この世界にはルーシェの他にも当然のドルイドは存在する。通常ドルイドになるためには、上記の方法だと早くて10年。遅い人だと20年くらいの時間がかかるとされている。
他の方法としては、ドルイドになった者に直接指導してもらう方法である。そもそもドルイドになる人種は、自然派の個人主義が多く、人里から離れた森の中に住んでいることが多いので、弟子にしてもらうこと自体が難しい。
これらのことから、診断担当は困惑したのだ。
「ドルイドの他には…弓師…狩人…採取士…調合士もありますね。おや?刀剣類の適性もありますし…なかなかに多才ですね…本当に珍しい…」と、男は紙を読み進むにつれて、トーンが小さくなっていく。
(何だこの子…?15歳でこれはありえないだろ…)
適性診断をすると、一番高い適性のある物から順に並んで出てくる。
通常だと一つか二つくらいしか適性のあるものは書かれない。有能な人で色々な経験を長年続けた者で、ようやく四つというものだ。
そもそも適性のあるものに絞って鍛えるのが普通。そこから派生職や上級職に変わるのである。その方が手っ取り早く強くなれるから。
(だというのに…何だこの適性の多さは…20近く適性があるぞ…)
「あのぉ…すみません。適性診断の結果は?」と、待ちきれなくなったシルフィに急かされて、おずおず聞いたのである。
「おっとすまない。適性診断書をどうぞ。これらをそこの記入欄に書いて、受付に渡してもらえるかな?」
「わかりました。ありがとうございます!では!」と、部屋を出て行くルーシェ。その後ろ姿を追うように手を伸ばそうとするも、颯爽と出て行かれてしまった。
(久々に研究のやりがいのある者やもしれない…)と、男は考えていた。
ルーシェの方はというと、全部だと書くことがあまりに多過ぎて、一番上にあったドルイドだけを書くことにした。
(別に…大丈夫だよね?)
(まぁ何とかなるんじゃない?)
「受付のお姉さん、お待たせしました!」
「あ、書けましたか?書類をお預かりしますね。と、適性がドルイドですか?その歳で珍しい…よっぽど厳しい修行をされてきたのですね…」と、憐れんだ目を向けられてしまった。
「いえ…あのぅ…それよりこれで手続きは終わりですか?」
「すみません。このあと戦闘能力の実力試験を受けて頂きます。その試験中に貴方専用のカードを作りますので、用紙を持ってこちらの奥へ向かって下さい。訓練場に出ますので、そこにいてる男性が試験官ですので、用紙をお渡し下さい」
「わかりました」(うぅ…また人混みで気持ち悪くなってきた…)
「頑張って下さい!」と、受付のお姉さんにエールを送られた。
「すみません。試験官さんですか?」
「おぉ!来たか!俺はダグってもんだ!よろしくな!」
「よろしくお願いします」と、用紙を渡す。
「しっかし…お前さん大丈夫か?顔色悪いが…実力試験は後日にするか?」
「いえ…大丈夫です…」
「無理するなよ?じゃあ始めるか。ここにある模擬戦用の武器、どれか一つ選んで来い。俺と模擬戦やって、それで実力を見るからよ?」
「わかりました…」と、ルーシェが選んだのは軽めの木刀だ。
(適性診断のところにも特殊技能欄にも、剣士や剣術に関する記載はなしと…なのに木刀か…一応腰にはショートソードは備えているみたいだが…戦闘は素人か?せっかくのドルイドが泣くぞ…)と、ダグが脳内で評価を少し下げた。
一般的なドルイドは、妖精や精霊の力を借りて、特殊な魔法を使って戦うのだ。その力を高めるために、杖を使うことが多い。杖の代わりに使える魔石を使った装備をしているならまだしも、そういった物を所持しているようには見えない。
(こりゃあしっかり教えてやらなきゃ、冒険者になってもすぐお陀仏だぞ…キツめのお灸を据えてやるか…)と、ダグが考えていると、
「すみません。準備出来ました」と、まだ少し顔色の良くないルーシェである。
「よし!始めるか!好きに打ち込んで来いっ!」
「えっと…本当にいいんですか?」
「いいからさっさとかかってこい!適当に手加減はしてやるから!多少打ち身や打撲くらいは覚悟してもらわんとだがな!」
「わかりました…いきます!」
次の瞬間、ルーシェの姿がダグ視界から消える。
「アイツどこに消え…げふっ!」とダグが吹っ飛び、訓練場の石壁に、背中から突っ込んだ。
「あれ?やり過ぎちゃったかな…?だ、大丈夫ですか?」と、慌てて回復魔法をかけたのであった。
「すまねぇ…もう大丈夫だ」
「こちらこそすみません…」
「いや、こっちは試験官なんだ、謝ることはない。みっともない姿を晒しちまって、こっちこそすまねぇな…ところでお前さん、どこかで剣術とかやってたのか?」
「………えーと…住んでたところで剣術が好きな人がいて、その人に遊びで色々してたくらいですね…」
「遊びってレベルじゃねぇだろあれは…」と、苦笑するダグ。
里にいた剣精に、チャンバラごっこと言われ、遊んでいただけであるが、相手はやはり剣の精霊なので、本人達はただの遊びのつもりが、所謂達人レベルの域だったのだが、それを指摘できる者は、里には誰もいなかったという。
先程の試験において、ルーシェがしたのは、呼吸と瞬きの合間に、縮地で一気に距離を詰めて、相手の武器に木刀を合わせただけだったのだが…結果はさもありなん。
「ところで試験結果は…?」
「あぁ。そんなもん合格に決まってるだろ。文句なしにな!」と、ニカッと笑うダグ。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「ほれ、用紙にはサインしたからよ。受付行ってカードもらってこいよ!」と、ルーシェの背中を軽く叩く。
「はいっ!行ってきます!」
(しっかし…俺が一撃でヤラれるって…あいつぁ一体何モンだ?これでも元一流の冒険者やってたってのに…)