五七話 セレナス
昨日またブックマークが増えてました!
ありがとうございます!
ブックマークだとあと2名様で、100ポイントになります!
あとちょっとです!
夢魔が指を鳴らすと、視界がガラッと変わる。
「ここは…?」
ルーシェには見覚えのない景色だ。
仄暗い部屋。
壁紙は薄ピンク。
丸いベッドには大きな枕が二つ。
壁紙に合わせた天蓋が付いている。
夢魔からだけでなく、部屋全体が何か蜜の様な甘い香りが漂っている。
暫くルーシェは夢魔と無言で見つめ合う。
「あら…?何で聞かないんのかしら…?」
「?何のこと?」
ずっとチャームを使いながら、催淫効果のある匂いを再現しているのだが、ルーシェには何故か効果がないようで、驚いてしまう。
「うーん…これでは恩返しができません…はぁ…やっぱり私はダメダメなんですね…」
そう呟き、泣き出してしまう夢魔。
泣き出す相手に慌て、何とか宥めた。暫く…いや、そこそこに時間がかかった気がする。
「取り乱してすみません…」
「いえ…ところであなたは…?」
「あなたに助けて頂いた夢魔…同じ部屋で眠らせて頂いていると言えば…わかりますか?」
「あぁ!ハーフの!怪我はないですか?大丈夫ですか?」
最初ハーフと言われたときに、顔を青くし、身を固くしたのだが、心配する言葉に少し警戒を緩める。
「ハーフということ…知ってらしたんですね…なのに…何故お助けに…?」
「んー…ハーフだって教えてくれたのは、家族みたいな友達みたいな…なんて言ったらいいだろ…まぁそれは置いといて、そもそもハーフ云々も、全然知らないので…ただ、状況的に見捨てるのは気が引けて…」
端切れの悪い言葉ではあるが、優しい人なのだと伝わる。
「改めまして。夢魔とのハーフで、セレナスと申します。お助け頂き、誠にありがとうございます」
そう言って頭を下げた。
「ところで…倒れてるときの姿と、今の姿が違うんですが、どういうことでしょうか?」
ルーシェが最初、助けたハーフだと気付けなかったのは、そのためである。
「あぁ…夢魔はまだ子どもの間だと、どちらの性別かは決まっていません。成長の途中で、どちらかを選択するのですが、私はまだ決められていなくて…」
「なるほど…でも、何で女性の姿で?」
「もう…言わせないで下さい…」
頬を赤らめてそっぽを向く。
その後少し考え、恐る恐る聞いてきたセレナス。
「あ…もしかしてルーシェ様は…その…男色趣味だったとか…?もしそうでしたら、今からでもぉ…」
と、体をくねらせながら呟いた。
「ダンショク…?って何ですか?」
素で返されて、男色ではないことはわかった。
「何故…瓶の中に封印されていたのか、伺っても大丈夫でしょうか?」
「そうですね…うーん…」
「あ…もし言いにくいことでしたら、言わなくても大丈夫ですから!」
「いえ…言うことで、ルーシェ様が気分を害されたり、危険が降りかからないか心配で…」
「うーん…夢の中でのことなので、特に周りに聞かれる心配はないですし、僕の方から聞いたことで、気分を害するような馬鹿な真似はしませんよ」
自分の方から尋ねたのに、、自分の納得がいかないことだからと、怒ったり取り乱すことは愚か者のすることだ。
と、長老達からの教えである。
その言葉を聞き、ポツポツと話し始めるセレナス。
「…私は…いえ、私の親はどちらも奴隷なんです…夢魔である母は、毎夜毎夜男を虜にし、精を貪っていました。ある時襲った男…相手が悪かったんですね…その男はチャームの効果を反射する装備をしていて、逆に囚われてしまいました。普通の魔族とは違い、夢魔は力は弱いですからね…封魔石により力を封印され、娼館へ売られたのです。元々夢魔は美人ですからね。そちらに特化した成長もしてますし…そして、そこに来た貴族に買われていきました。そこでの生活は悲惨でした…ただ、そこで母は、同じ奴隷である男と出会ったのです。優しい男に、初めて心を助けられたと、母はよく言ってました。そして、奴隷同士で愛し合い、子どもが出来ました。最初貴族は恐ろしく怒り、男は殺されました…そして、何とか懇願し、生まれた子どもはハーフ。普通では忌み子として、即処分されるのですが、夢魔の子どもは皆容姿がよく、その貴族は私達を育て、売物にし始めたのです…そして、私も売られたのです…」
辛く重過ぎる話しに、思わず息を飲んだ。
「すみません…やっぱり重過ぎますよね…すみません…」
辛い顔をしつつ、無理矢理に笑うセレナス。
「いや。そうじゃないんです…こちらこそすみません…辛いことを思い出させてしまいました…」
そう言ったルーシェの顔を覗き込む。
「あなたは…ルーシェ様は、私の話を聞いても、汚い物を見る目は向けて来ないのですね…」
「え?そんな目はしませんよ。それを向けるなら、その貴族に対してですね…」
また泣き出してしまうセレナス。
泣き止むのをゆっくりと待った。
「取り乱して申し訳ありません…」
「いえ。事情はわかりました。とりあえず…今後どうしましょうか?セレナスはもう自由の身。あの襲撃により、一緒に魔獣に殺されたと思われているはずです。好きに生きていいんですよ?」
「うーん…好きに…ですか…ルーシェさんに付いていくことは駄目でしょうか…?」
「えーと…ダメではないんですが、現在冒険者として、危険なところへ向かっています。死ぬことも普通にあるのですが、それでも?」
「私はルーシェ様に命を救われました。まだ何も返せておりません。私は非力ではありますが、何かしらお返しをさせて下さい。お願い致します。死ぬところを救って頂いたのです。なら、弾除けでも何でも構いません。恩返しをするために、ご一緒させて下さい」
そう言って土下座を始めたので、慌てて体を起こした。
「気持ちはわかりましたから。ただ、僕には仲間がいます。なので、仲間の許可がなければ、返事が出来ません。みんながノーと言えば、駄目になりますが、それでもいいですか?」
「はい。それで構いません!何卒よろしくお願い致します!」
「じゃあ起きてみんなに相談をします。先に僕を起こしてもらえませんか?」
「わかりました。それではまた後程…」
耳にリーンと鈴の音が聞こえる。
意識が遠ざかっていく…
そしてルーシェは起きた。
「おはようございますルーシェさん」
「おはようイリス。みんなは?」
「二人は外へ。小腹が空いたからと、お菓子を買いにいきました。もうそろそろ戻ってくる時間ですが…」
ドタバタドタバタと、走る音が聞こえる。
「ただいま戻ったのじゃ!」
「ただいま!美味しいお菓子見つけたわよ!って、ルーシェも起きたのね!おはよう!」
「本当にイリスの言った通りだね」
「でしょ?」
イリスとルーシェは小さく笑いあった。
「少しいいかな?この子のことで、話があるんだ」
「ん?どうしたの?」
「その前に聞きたいんだけど、エリスとイリスは、この子が魔族とのハーフなのに、何で…その…嫌悪とかしないの?」
先に二人の反応を見たいのもあり、気になっていたことを尋ねた。
二人の両親は、魔族に殺されたのだ。
忌み子など関係なく、魔族というだけで怒りを持っていないか、心配になったのだ。
「ん?そんなこと?だって、別にこの子が何かしたわけじゃないでしょ?」
「そういうことです。私達の親を襲った魔族と、この子のことは、別に考えています。それに、魔族側も私達人間に殺された者もいてますよね?仮にですが、旅路で襲ってきた野盗は人間でしたよね?野盗に殺されたから、人間全部を敵と見るなんてこと、しませんよね?」
そう話す二人を見て、ホッとしたルーシェ。
夢の中で出会ったセレナスのことを、みんなに話した。
「それは…辛い思いを思いをしてきましたね…」
「その貴族…今から潰しに行くわよ」
「権力者とは…いつの世も…憐れじゃ…」
「そういうわけで、一緒に旅に同行したいと言ってたんだけど、どうだろみんな?」
直接本人の言葉を聞いて、覚悟を確かめたいとのことで、ルーシェは睡眠薬でもう一度寝て、セレナスを夢の世界から起こしてきた。
「セレナスと申します。助けて頂き、皆様誠にありがとうございます」
と、頭をまずは下げた。
「助けたのはルーシェだし、看病したのはイリスよ。私にお礼はいらないわ」
「我もじゃ」
「それでも、黙って匿って下さったことには変わりません。ありがとうございます」
セレナスはかなり律儀な性格のようだ。
「…セレナスさん。君?どっちがいいですかね?」
「呼び捨てで構いません。イリス様」
「あぁ…様はいりません」
「いえ…そんなわけには…」
「いいですから。セレナス。かなり危険な旅です。それでも付いてきますか?」
「…はい。私はルーシェ様に助けて頂きました。命に換えても恩返しをせねばなりません…何卒どうが、皆様にご同行させて下さい」
熱意の籠もった目でみんなを見たあと、また土下座をした。
「顔を上げて下さい。条件としては、自分の身は自分で守ること。危ないところへ率先して進み、命を無駄にするようなことはしないこと。そして、様付けはやめること。どうですか?」
「そ…そんな…それでは皆様を何とお呼びすれば…」
慌てふためくセレナス。
賑やかなパーティに、同行者が増えた。
セレナス
少年モード:身長158cm 体重41kg。美形で少し儚げな雰囲気。
少女モード:身長155cm 体重39kg。美形ではあるが、可愛さが強くなる。同じく儚げに見える。
夢の中では年齢や見た目など、自在に変更可能。
また、夢魔とのハーフのため、羽を出して空を飛ぶことも可能。
角と尻尾も出し入れ可能。
魔族にしては非力である。
チャームなど、精神系の魔法が得意。
それ以外も戦闘系に属する魔法なら多少使える。
新キャラ紹介でした!
今後も皆様よろしくお願い致します!
セレナス「ご紹介に預かりましたセレナスです。皆様よろしくお願い致します。ついでに宣伝をするようにと、御用命頂きましたので、僭越ながら失礼致します。皆様いつもご拝読、誠にありがとうございます。ブックマークや高評価、本当にお待ち申し上げておりますので、何卒よろしくお願い致します」




