五十話 帰還
プロローグは除いたとして、記念すべき第50話です!
まさかこんなに、話数書き続けられるとは…びっくりです。
崩れ落ちるルーシェに、慌てて駆け寄るパーティの二人。
ルナマリアの方は緊張の糸が切れたのか、その場に座り込んでしまった。
「ルーシェさん!」
イリスがルーシェの体を起こし、脈や息の確認をする。
「よかった…ちゃんと生きてます…」
エリスの方はその声に安堵しつつ、自分のポケットをごそごそしている。
「お姉ちゃん。何をしてるんですか?」
「ちょっと待ってね…あ、これだこれだ。無事でよかったわ」
普段からルーシェは、自作の薬を色々用意してくれている。
渡された殆どの薬が、最初吹き飛ばされたときに、ぐちゃぐちゃになってしまっていたのだが、この回復薬は無事だったようだ。
それをルーシェの口へ。
無理矢理飲み込ませた。
それを見たエリスは、間抜けな顔をしてしまった。
慌て過ぎていたため、薬を色々渡されていたことを、すっかり忘れてしまっていたのだ。
「イリス…忘れてたの?」
そんな妹を見て、苦笑いするしかないエリスだった。
イリスが渡されていた薬で、この場にいる全員の傷はとりあえず治ったのだが、まだルーシェは起きないようだ。
心配しつつも、シリウスのことが気になると、エリスが迎えにいった。
その間にルナマリアは、先に室内を調べ始めた。
「アイツらが持って出たわけではなさそうなんですが…結晶石はどこに…?」
台座を調べたり、あれこれ調べまわっている。
その目はかなり生き生きとしていた。
元々遺跡などの調査が好きだったのだ。
久々にこの手の調べ物だ。
興奮しないわけがない。
調べ始めてすぐに、エリスがシリウスを抱えて戻ってきた。
抱えられた姿を見て、心配になり駆け寄るイリス。
「敵は倒したのじゃが…油断して呪われてしまってのぉ…体が鉛のように重くて、思うように動けんのじゃ。まぁ我であれば、時間をかければ解ける故、そこまで心配せんでも大丈夫じゃ」
そう言いながら笑うシリウスの顔に、どこかホッとしつつも、呪いという言葉で、やはり心配してしまう。
師匠であるフォルンのことを、思い出してしまうからだ。
とりあえずルーシェの隣で、シリウスを横にさせた。
戦闘後、回復させたのに起きないということを、エリスから聞いていたので、ルーシェの方を見るシリウス。
「なんじゃ。起きぬというから心配していたが、ただの霊力切れじゃのぉ。もう少し寝れば起きるはずじゃ。心配はいらぬ」
その言葉に姉妹は揃って、安堵の溜め息を漏らした。
シリウスの言葉通り、だいたい30分後、ルーシェは目を覚ました。
「う…うーん…テテテ…頭が痛い…」
体を起こそうとしたが、変な痛みが頭に響いた。
「起きたかのぉルーシェ。霊力切れを起こした反動じゃ。もう少しそのまま休んでおるのじゃ」
隣で寝転んでいるシリウスに、そう教えてもらった。
「霊力切れ…カロンでの訓練で、何度か経験したけど…ここまで酷いことになったのは、初めてだな…」
「仕方あるまい。戦闘での霊力消費は、製薬補助のそれとは、桁が違うでのお…」
「そうなんだ…それより、シリウスは何で寝転んでるの?」
「…実はのぉ…」
どんな相手だったのか。
どのように戦っていたのか。
決着。
そしてベリアルから呪いを受けたことを話す。
「…というわけじゃ…」
「油断したってことだね…」
「ぐ…耳が痛いのぉ…」
見るからにしょんぼりするシリウスを見て苦笑する。
「そういえば…シルフィは…?」
慌てて体を起こす。
激しい戦闘で、気にする余裕が全くなかったルーシェは、慌てて懐を探すがいない。
嫌な汗が背中を流れる。
もしかして…吹き飛ばされたときに、巻き添えで死んでしまったのでは…?
そう思ったとき。
「私ならここにいるわよ」
と、言いながら、頭の上にちょこんと座るシルフィ。
「あぁ!よかった!無事だったんだね!」
「無事じゃないわよ!ほら!こんな大きなタンコブが!」
そう言いながら、指で頭を指し示す。
「生きててよかった…」
元気そうな姿に、そう言葉を溢すルーシェ。
「ま、生きてるから安心なさいな?」
そう言いながら、ルーシェの頭を撫でるシルフィ。
ルナマリアに指示を受けながら、調査の手伝いをしていた姉妹。
ルーシェが起きたことに気付いて、近付いてきた。
「ルーシェさん!大丈夫ですか?痛いところはありませんか?」
「大丈夫?まだ痛むところとかない?」
それぞれ同時に心配されてしまった。
それが少し照れくさくもあり、嬉しく感じるルーシェだった。
「僕は大丈夫だよ。二人の方こそ大丈夫なの?」
「私達は大丈夫ですよ!その…ルーシェさんにまた守って貰いましたし…」
「そういうことね…」
二人とも顔を赤く染めながら、言葉を呟いた。
「いや、助けてもらったのは僕の方だ。だって、気絶している間、3人で戦ってくれてたから…だから死なずに生きてる。ありがとう」
がむしゃらに気持ちの全てを…それこそ魂すらぶつけるように戦ったのだ。
みんな必死だった。
だからみんなで生き抜くことが出来た。
その気持ちを伝えたくて、素直に出たお礼の言葉だった。
3人で頷き合い、そのあと照れたように笑った。
それを見たシリウスが、
「一応我も一人で頑張ったのじゃ…仲間はずれにせぬようにな」
という言葉で、パーティ全員が、ドッと笑い出したのだった。
調査がうまく行かず、一旦休憩に戻ってきたルナマリアとも挨拶を済ませた。
「台座には端末がありましたので、スライムはもう大丈夫なんですが…肝心の結晶石がどこにも…」
と、ルナマリアからの報告だった。
物は試しにと、ルーシェが端末の回りを調べる。
下の方をしゃがんで確認をするとき、台座の上部に掌を置いて、バランスを取ろうとしたときである。
台座が青く光を放ち、脈動し始めたのだ。
「何これ…綺麗…」
「本当に」
「これは…凄いです…これ程とは…」
三人が上方を見て、そう呟いている。
その声に反応して、立ち上がって見上げるルーシェ。
そこには青く輝く大きな大きな宝珠が浮かんでいた。
「これが…結晶石ですか?」
そう口にするのがやっと。
他の言葉がすぐには浮かんで来なかった。
それほどに美しく輝いているのだ。
「ここにあるのですから、そういうことですね…それより何故ルーシェさんが触ったら、台座が反応して、出て来たのでしょうか?」
気になったため、再度台座を調べ始めるルナマリア。
「なるほど…なるほど…」
ぶつぶつ何かを呟きながら、端末をあれこれカタカタと弄くる。
調べるルナマリアを見ていると、ルーシェは何で自分に反応したのかが、ふと思い付いたのだ。
「もしかすると…」
皆に声をかけて、気絶している間のことを話した。
水の大精霊に会ったこと。
助けてもらったこと。
何かを体に与えられた。
いや、あれは精神世界だから、精神に何かを渡されたのだ。
その何か…パスとか言っていたものが、原因なのでは?
ということを話した。
「間違いなくそれですね…ただ、大精霊に喚ばれるとは凄い話ですね…」
話を聞きながらも、ずっと調べていたルナマリアはそう言葉を溢した。
「次は…大精霊に会いに行くことになるのね…」
「お姉ちゃん…大変そうですが…頑張りましょう…」
姉妹は事の大きさ…会いにいく相手の強大さに、少し引きつつ、それに伴ってくるであろう、さらなる困難を予想して、思わず二人で慰めあった。
「我の眷族ではないが…大精霊か…楽しみじゃのぉ〜」
と、一人ご機嫌なシリウス。
そこから暫くカタカタぶつぶつしていたルナマリア。
「お待たせしました。水が止まった原因はわかりませんでしたが、修理自体は可能です。すぐに終わりますので、もう暫くお待ち下さい」
そう言いながら、更に端末を操作し始めるルナマリア。
「原因は不明…だけど修理は出来るって、変な話ですね」
ルーシェは頭に疑問符を掲げていた。
「そうですね…正確に言うと、水が止まった原因ならわかるけど、止めるに至った、根本がわからない。ということですね」
「?どういうことですか?」
「水が止まったのは、いくつかの可能性があるので、その理由は断定出来ません。ですが、その何らかの原因によって、結晶石が保護モードになって、隠されていたってことね。元々有事の際には、結晶石が封印されるように、プログラムされてるみたいですから」
「なるほど…そういうことですか…」
「あと、ルーシェさんがパスと言っていたものは、恐らく管理者権限。またはその一部と思われます。ちょっとここを触ってもらっても?」
管理者権限?と、疑問に思いながら、端末の指示された場所に触れる。
何か読めない文字が、そこに浮かんできた。
「これは…?」
「思った通りですね。これでかけられていたロックが解除されました。パスというのは、何かこういった古代の端末や遺跡に多いのですが、それらは封印されていることが多いのです。その封印を解く鍵。それがパスです。勿論モノによっては、一部しか開けられないなどの、制限があることも多いですね」
今後も遺跡には行くこともあるだろう。
良い事を教えてもらった。
と思うルーシェだった。
「よし…これで修理は終了。あとは端末で、再度全部の部屋にロックをかけて…うん。助かりました。そこに転移装置があるようです。城まで一瞬で戻ることができますね」
「疲れてたから、帰りは楽そうで助かるわ」
姉の言葉に、激しく頷いて同意する妹。
「我も助かったのぉ」
と、エリスに抱えられて、そう言うしかないシリウス。
「何か忘れてる気がするんですが…」
一人神妙な顔をするルーシェ。
しかし、みんなの早く戻ろうという声に押されたのと、自身が疲れていたこともあり、深くは考えずに、さっさと城へと戻ったのであった。
5つ目の端末の部屋にて、ガチガチにに固められ、見動き一つ取れずに、スライムにサンドされてた魔族が一人。
上の二人に言われ、ロックを強引に解除したのは良いのだが、スライムの数が多過ぎる。
暫くすると、そこにとんでもない量のスライムを抱き込みながら、部屋に横に進む竜巻が、入ってくる。少し進んだ足も、部屋まで送り返されてしまった。
それだけならばよかったのだが、粘着成分なのか何なのか、大量のスライムの死骸が固まり、体に貼り付き、一切何も動けない状態にされてしまった。
変身によって、この縛を解こうとしたのだが、狭過ぎて、角が大気中から必要量のマナを集めることができなかったのだ。
そんな訳で、ここにこの先死ぬまで、ずっと固め続けられるハメになった、哀れ過ぎる魔族。
魔族であるため、食事を取らずとも数十年以上の生き続けれるのだ。
そのためガチガチに固められてしまい、自害すら出来ぬ生き地獄を味わうハメになったという。
作者「前書きにも書きましたが…祝50話です!」
シルフィ「塵も積もれば何とやらって感じね」
作者「本当にね。ここまで続けられたのも、読者の方がいて下さるからです」
シルフィ「ヤケに殊勝な態度ね…」
作者「いや、本当のことだからね?てなわけで、作者を応援になりますので、ブックマークがまだの方はそちらを。そして高評価の方も、どしどしお願いします!あとちょっとで、100ポイントに届きますから!」
シルフィ「結局宣伝かーいっ!」




