四八話 シリウスの決着ともう一つの戦い
最近Swi○chの○鉄にハマリ中。
ネット対戦楽しいですな〜
額の血を気にも止めず、シリウスは眼前の敵をぼんやりと見ていた。
凝視すると逆に見えなくなることがある。
あえてぼぉーと見ることにより、全体をより捉えるとこができる。
観の眼というものだ。
全身の無駄な力は抜き、無構えになる。
見て動くのではなく、感じて動くために、頭の中も空っぽになっている。
「……どうした?時間がないのじゃろ?」
「………」
その問いにべリアルは応えない。
べリアルは無構えのシリウスを見て、逆に動けなくなっていたからだ。
先程まであった、傲慢なまでの慢心が、一切消えてなくなっているのを、肌で感じ取っていたからだ。
暫し無言のまま時が過ぎる。
時間としては数秒のことだが、お互いにとっては数時間に感じている。
砕けた天井から、二人の間に岩が落ちてくる。
それを合図に同時に動き出す二人。
速度も力もほぼ互角。
お互いに突き出した拳が弾け、その反動を利用した二の手は受け流し合う。
方や幼女。
方や幼女の三倍はあろうサイズの悪魔。
そのアンバランスな二人の織成す輪舞。
無言で打ち合い、響くのはお互いの激しい衝突音のみ。
最初のうちこそ均衡していた力も、時間が立つに連れ、差が如実に現れてくる。
命を燃やすべリアルのタイムリミットが迫り、力と速度が落ちてきているのだ。
逆にシリウスの方は、更に力と速度が伸びている。
拮抗した力とぶつかることにより、より早く体が馴染んでいるのだ。
このときべリアルは己の負けを悟り、その時に備え始めた。
そしてそこから数分後、べリアルはシリウスの掌打に体を吹き飛ばされる。
「グッ…ガハッ」
壁にめり込む体。
もう動く力も残ってはいなかった。
「はぁ…はぁ…ふぅ…いやぁ。良い戦いであった。感謝するのじゃ」
息を整え、感謝の言葉を口にするシリウス。
「オ…マエ…ニ…カンシャ…ナン…テ…サレタ…ク…モ…ナ…イ…」
最後まで悪態を付くべリアル。
「まぁそうじゃろうなぁ…さてと…」
とどめを刺すために、歩いて近付いていく。
「せめてもの情けじゃ。力尽きる前に、我が直接送り、弔うてやるのじゃ」
シリウスの拳が発光し始め、何かの力をドンドン溜めていく。
振り上げた拳。
「何か言い残す言葉ないかのぉ?」
「……」
あえて何も応えない。
怨敵にそんなものを残しては、一族に顔向けなぞ出来ようものか。
(やれることはもう決まっている…さぁこいっ!殺せ!)
応えないことこそ応え。
そう受け取り、べリアルの胸に拳を叩き込む。
狙うは一点、魔族の心臓であるコアを叩き潰すこと。
何かが割れるような鈍い音。
命を狩り取る音。
その瞬間、べリアルの体から闇が溢れ、シリウスの体を飲み込んだ。
シリウスは全身を全身を削られるような痛みを受ける。
「くっ…ぐぐぐ…これは…?」
全身に黒い紋様が刻まれていく。
辛うじて残るべリアルの頭部が動いた。
「ククク…ワレデ…ハタオ…セナ…ンダガ…セ…メテ…ワ…ルア…ガ…キサセ…テ……ノ…ロ…イ…ヲ…ウ…ケ………」
黒い粒子となり、言葉の途中で消えてたしまった。
負けを悟ったときから力のほとんどを、呪術を発動するために、溜めていたのだ。
「敵ながらやってくれるのぉ…誠遖としか言えんのぉ…」
呆れながらも褒めるより他はない。
自身の結果を捨てて、一族の為にその命を散らしたのだ。
まったく大したものだ。
「しかし…困ったのぉ…」
呪いによって、せっかく戻ってきた力の殆どが、封印されてしまったのだ。
「そう言えば…ルーシェ達は大丈夫かのぉ?」
今更ながらに思い出したシリウス。
しかし…体が鉛の様に重くて動きたくても動けないのだ。
「はぁ…まぁあやつであれば、いらぬ心配と言うものじゃの…それより…我はどうしたものか…」
援護に行くことは諦めて、その場に横たわる。
自分にかけられた呪いは、所詮元下級の魔族がかけたもの。
時間をかければ解けないことはない。
しかし、手解きをしたこと。
角を折ったことにより、中級以上の力で呪われてしまったため、より強力な呪いとなってしまった。
「手解きなどするんじゃなかったのぉ…」
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
シリウスVSベリアル。
勝負には買ったシリウス。
一矢報いたベリアル。
一勝一敗という結果に終わった。
時は少し戻ってルーシェサイド。
早々と鬼の姿となったギュドーを相手取る。
ルナマリアに回復魔法をかけてもらうエリスは未だ気絶中。
姉に寄り添うイリスは、戦うルーシェを見守るしかない。
下手に援護魔法が打てないのだ。
こっちが下手に動くと、守りながら戦うルーシェの邪魔をしかねないのだ。
レベルが違い過ぎるのだ。
見ていると、どうも変身してからルーシェの方が押され気味なように思える…
いつもの全力戦闘に比べ、明らかに動きが悪いのだ。
理由は明白である。
シルフィの協力がないからだ。
ここへ来る途中、シルフィの力を使えば、もっと早くにここに来ることは可能だった。
しかしそれをすぐにせず、出し渋っていたのはこういう事態を懸念していたからだ。
ルーシェ自身も内心かなり焦っていた。
正直いって、このままだとジリ貧なのだ。
今はまだ防御に比重をおいているため、何とかなってはいるが、状況を一転させる決定打がないのだ。
「どうしたどうしたぁ?えぇおい?最初の威勢はどこいったんだぁおい?」
自分の優勢に傲りつつも、その攻撃の手は一切止めない。
緩めない。
「油断させて一気にいくつもりなだけだ」
「ハッハッ!まだそんだけ強がりが言えるたぁてぇしたもんだぜまったくよぉ!だが…言葉に負けてるぜぇおいコラ!」
力を更に込めて、型もへったくれもない一撃を放ってくる。
「くっ…」
後ろに飛んで威力を殺しつつ、その一撃を凌いだ。
しかし…
「はぁ喰い縛れよ?」
いつの間にか背後に回っていたギュドーが、ルーシェの背中に回し蹴りを叩き込んだ。
「ガハッ」
顔面から壁にぶっ飛ばされる。
ルーシェの意識はそこで途切れた。
激しい衝突音のでエリスは目覚めた。
「な…んの音?煩いわね…」
まだ少し霞む視界。
頭を振って戻そうとする。
隣には口を両手で押さえて泣く妹の姿が。
一体何が?と、イリスの視線の方を向く。
ルーシェが倒れ、ピクリとも動かない。
「え…?ルーシェ…?」
「いやぁーーーーーーーーーーーーーっ」
叫び声をあげる妹。
動かないルーシェと、ルーシェに近付く鬼。
その鬼がピタリと動きを止めて振り返る。
「あぁ?うっせぇなこのアマァ…良いとこなんだ…邪魔すんじゃあねぇ…それともテメェが先にあの世へ行くかぁ?たかだか数分違うだけだがなぁ?えぇおい?」
ギュドーから放たれる禍々しい殺意に、三人はその身を震わせる。
「あぁそうだぁ…大人しく待っていやがれぇ…」
そう言って、ギュドーは倒れたルーシェの胸ぐらを掴み上げる。
エリスはこのとき、師匠であるフォルンの話を思い出していた。
自分の両親を魔族に殺されたことを。
師匠の祖父母を殺されたことを。
自分は無力だ。
大事な恩人が…初めて好きになった人が、今殺されようとしている。
何もしなくていいのか?
やるだけ無駄だから?
嫌だ…そんなの嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…………絶対に嫌だ!
殺意がなんだ。
負けることがなんだ。
何もしないで死ぬなんて嫌だ!
そこからは頭が真っ白になった。
考えるより先に体が動いた。
「あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁあああああっ!」
全てを振り絞った叫びだった。
エリスは完全にリミッターが外れた。
「あぁ?やっぱてめぇの方が先に死にてぇよう…ガッ!」
ギュドーは死角から飛んできた蹴りで、顎を打ち上げられた。
追撃は終わらない。
数多の属性による、バインドロックでギュドーの体がガチガチに固められる。
そして連続で巻き起こる攻撃魔法の乱舞。
切れたのはエリスだけではなかった。
イリスも同様だ。
「あ…あなた達…」
ギルマスであるルナマリアは、この時に酷く自身を恥じていた。
この状況下で容易く死を受け入れてしまったことに。
自分よりも遥かに若い娘達が抗っているのだ。
ギルマスの座について久しく、冒険者として活動を長くして来なかったがために、すっかりその生き汚さを。
生への執着を忘れていた。
例え無理だとわかっていても…やるんだ。
せめてこの若い芽を活かす事を。
強大な力を持つギュドーと、美少女三人による死闘。
その最中ルーシェの意識はどこか別のところに呼ばれていた。
作者「今朝起きたら更にブックマーク増えてました!ありがたいやぁ!」
ドルマ「あら…本当に五体投地されてるんですね」
作者「そりゃあやっぱり嬉しいですからねぇ…こんな素人作品、楽しみにして頂けてるんですから!」
ドルマ「そうなんですね。では今日は、若くなった私が宣伝の方を…」
作者「文脈おかしくないですか?それ?」
ドルマ「まぁまぁ。細かいことは気にしないことですよ。それより…いつも読者の皆様、本当にありがとうございます。まだまだブックマークに高評価、お待ちしておりますので、よろしくお願い致します!」
作者「えー…ドルマさんはカテーシーできっちり挨拶しておりますことを、報告させていただきます。」




