四七話 シリウスVSべリアル
もう今月も半分…
時間の流れが早すぎる…
べリアルの行動を観察しながら、自身がそう呼称したタイプの特徴を思い出していた。
(しかし…懐かしいのぉ…当時のモノとは多少違う部分もあるが…極端な変化があるわけではないのぉ…)
魔族が訓練を行い、一定以上の能力を身につけると、自身のDNAに刻まれた力を開放することが出来る。
それはまさに本能を開放するのと同じ。
そこからさらに訓練を積むことで、理性と自我を保ったまま、戦うことが可能になるのだが…
(こやつは完全に飲まれておるな…情けないのぉ…)
「まぁだからと言って、やることは変わらんのじゃが」
シリウスはあえて自分から攻め込むことはせず、攻撃により生まれる空きを突き抜く。
(やはり…攻撃のパターンとしても、昔のものと然程差はないのぉ…つまらん)
赤子のように弄ばれるべリアルは、その忌々しい状況に切れた。
「ウロッ!ウロロォォォォォォォォォオッ!」
自身を中心に、大爆発を起こす。
「なっ!?」
間近で後の先を取り続けていたシリウスは、諸にその爆発を浴びた。
爆発により通路の壁は無惨に破壊され、周囲には破壊された壁や天井だけでなく、突き抜け落ちてきた岩や土砂が散乱している。
破壊された影響で、近場の照明は消えた。
遠くからの光で、薄暗く見えるだけの状態。
「ウロォ…ウロォ…」
まだ生きているであろう怨敵を探すため、辺りを見回しながら、匂いを探るべリアル。
『どごぉーーーーーーーーーーんっ!』
少し離れた場所から、激しい音が上がり、大岩が四散する。
音の発生源の中から、髪の一部が焦げ、衣服も爆発でボロボロになったシリウスが出てきた。
「くっくっくっ…あーーーーーはっはっはっ!そうだ!昔と同じではつまらん!いやぁ!今のは驚いたぞ?褒めてやろう!」
感極まったとばかりに、大声で笑い続けるシリウス。
その怨敵の姿に、べリアルもグニャリと醜い笑みを浮かべた。
「ウロォッ!」
激しい突進攻撃を繰り出すべリアル。
その勢いを利用して、ぶん投げるシリウス。
「良いのぉ!良いのぉ!他はもうないのか?もっと見せてみよ!」
挑発的な笑みの中、瞳は狂気に満ち満ちている。
「ウロォ…ロォッ!」
空中で姿勢制御をしながら、べリアルは両方の角にエネルギーを溜めて、怨敵がいたであろう場所に、レーザーを撃ちまくる。
デタラメな攻撃なため、逆に避け辛く、厄介なその攻撃を、まるでダンスパーティーを楽しむかの如く、軽やかに、ミリ単位で交わしていく。
「もっとだ!もっと来るのじゃ!」
激しい攻撃の最中、シリウスはより体の感覚が馴染むのを感じる。
そして、久しく錆び付いていた、自身の内に眠る本能が、目覚めていく。
先程の嬉々とした笑い声は一切鳴りを潜め、無言で二人は撃ち合っていく。
べリアル自身もこの戦いの最中、シリウスに導かれていくように強くなっていく。
そして…
「ウロォ……ム…ワレハ…?」
「やっと自我を取り戻したのか?情けないのぉ…」
まるで朝寝坊した子供に言うかのように、声をかけたシリウス。
「ナニ…ヲ…シタ?」
「なぁに。大したことではない。本能に飲まれるようなお主に、ちと手解きをしてやったまでじゃ」
「ナゼ…?ワレハ…オマエノテキ…」
より警戒心を強め、手に魔力を溜めるべリアル。
「なぁに…言ってみれば気まぐれじゃのぉ。それに…飲まれ獣に落ちた者を狩りとっても、何も面白くはないから
…のお!」
シリウスの言葉の最後を合図に両者が動き出す。
激しい魔力を解き放つべリアル。
先だっての爆発よりも更に大きな爆発が、意思を持ったようにシリウスを襲いかかる。
シリウス地面に掌手を叩き込むと、爆発から身を守るように、地面が隆起して壁が生まれる。
それを予想していたのか、べリアルは頭上から魔力を込めた拳を降り落として来た。
「ムンッ!」
「まぁそう来るであろうのぉ」
衝突直前に壁の上部が、まるでその顎を閉じる様に動く。
「グヌワァ!」
閉じた顎はその牙をべリアルの腕に突刺し、容易く腕を捻り切った。
切られた腕から血がボタボタと垂れ落ちる。
「何だ?存外に脆い腕じゃのぉ」
シリウスはその腕を投げて渡した。
「どうせ放っておいてもすぐ生えてくるのじゃろ?無駄な力を使わずとも、その腕を付ければすぐ戻るのも知っておる。早ぉいたせ」
「ナンノツモリダ…?」
腕を掴みながらべリアルは呟いた。
「なぁに…我も楽しみたいのじゃ」
「ヌグゥ…グワァ!」
その声に腕を叩きつけ、自力で腕を生やし、再生させるべリアル。
「ハァハァ…オマエノナサケナドイラヌ…」
「…そうじゃの…流石に今のは失礼過ぎたな…しかとその覚悟…見させてもろうた…我も本気を出すのが礼儀というものじゃの…」
そう言って構えを取るシリウス。
「ソウダ…コイ…クルノ…ダァァァァァァァァッ!」
激しい咆哮。
その咆哮に向い、走り出すシリウス。
向かい打つべリアルは、文字通り全力を持って、突撃してくるシリウスに拳を穿つ。
その拳には今までにない力の凝縮。
そしてシリウスの放つと拳と接触の瞬間、視界が真っ白に染まる。
自身もその爆発により、瀕死のダメージを追うべリアル。
眼前には憎き怨敵の姿はなかった。
「グヌゥ…これなら…」
力を使い過ぎたのか、べリアルの姿から、元の姿に戻り始めていた。
「…何じゃ?その方がイケメンじゃぞ?」
「なっ!」
背後から声をかけるシリウス。
「お主の負けじゃ」
振り返ることも逃げることも叶わない。
背中そっと手を添え、螺旋を描く様に掌手を放つ。
吹き飛び壁にめり込むべリアル。
背中には螺旋状の激しい裂傷が。
外傷だけに留まらず、内臓までズタズタに捻りつぶされた。
「ガッ…ゲボ…ゴボッ…」
激しく吐血するべリアル。
「苦しかろう…せめてもの情けじゃ。今楽にしてやる」
そう言いながらべリアルに近付くシリウス。
「くっくっくっ…まだ…まだ死なぬ!」
そう言うと自ら二つの角をバキリと折った。
「なっ!お主何を!」
「確…かに…もう時期…死ぬ…が…ただでは死ぬまい…シヌマイ!」
体から闇が溢れ出す。
それが身を包み、瞬時に傷が塞がっていく。
そして、解けかけていたべリアルの姿に戻った。
いや、角はないが、体に異様な紋様が浮かび上がっている。
「まだ粘るというのか」
呆れた声を漏らすシリウス。
「モウ…ジカンガナイ…ドウセシヌ…ナラ…セメテ…イチゾ…ク…ノ…オ…ンテキ…ヲ…」
「まったく…しつこい男は嫌われるものじゃぞ?」
そう言った瞬間、シリウスは壁に叩きつけられ、地面に崩れ落ちる。
「ガハッ!」
受身を取る暇もない速度と力。
赤く染まる視界に、頭部が切れたことに気付くシリウス。
「なるほど…自身の命を全て燃やしておるのか…」
「ドノミ…チナ…ガク…ハナイ…」
魔族に取っての角は、大気中に含まれる魔力の供給機関であり、コントロールするための重要な機関。
それを破壊するということは、エネルギーの暴走を意味する。
角が破壊された魔族は、短時間の間強力無比のな存在になる代わり、確実に死ぬ。
シリウスとべリアルの最後の死闘が幕を開けたのだ。
作者「さて…なかなかの死闘が巻き起こってますね」
シリウス「こんな美少女を傷だらけにしおって…傷が残ったらどうするのじゃ?」
作者「いやぁ〜。どうせながら格好良い姿も見てもらいたくて!ファンの数も鰻登りかもですよ!」
シリウス「ほ?本当かのぉ?」
作者「さぁ!ファンに向けて、いっちょ宣伝を!」
シリウス「し…仕方ないのぉ!コホン。えー…いつもみんな読んでくれてありがとうなのじゃ!まだまだブックマーク登録に、高評価も待っておるからのぉ!よろしくお願いするのじゃ!」
舞台裏にて
作者「ククク…ちょろいのぉ〜」




