四三話 日常 そして新たな事件
今回より、新章突入です!
よろしくお願い致します!
王都へ帰還してから数日、みんな王都での生活には慣れてきていた。
そんな中のルーシェのとある一日。
朝一に起きて、ダービットが店主を務めるここ、“今夜もやすらぎ亭”の掃除から始まる。
朝市へ買い出しに出ている強面の店主と、毎朝一番最初に挨拶をするのが日課である。
「おはようございます」
「おぅ。おはよう」
まだ寝ている人が多いので、小声での挨拶だ。
前日のうちに殆ど掃除は終わってはいるが、玄関前はどうしても酔っ払いに粗相をされる後などがあるため、今日もバケツにブラシ。そして掃き掃除のセットを担いでいく。
「おはよ〜。今朝も早くからせいが出るなぁ〜」
「おはようございます。オジサンも毎朝ご苦労様です」
「おや?ルーシェ坊やじゃあないか。毎朝頑張るねぇ。これ、いつものだよ」
「おはようございます。お婆さんも毎朝ありがとうございます」
朝刊の配達のおじさんや、ダービットと昔からの馴染みである農家のお婆さんからの、野菜の受け取りなどもこなしている。
おかげで街の色んな人と仲良くなった。
そんなこんなで朝の仕事を終わらせた頃、店の中に戻ると、ちょうどマリィとマリルによる、朝食の準備が終わる頃である。
昼夜はダービットの担当だが、朝は市場に行く都合で、朝食のみは二人の担当なのだ。
「おはようございます」
「おはようルーシェ!」
「おはようねぇルーシェくん。もぉ出来るさかい、先にテーブルの準備頼めるかぁ?」
「わかりました」
そうこうしていると、きっちり身なりを整えたエリスとイリスの姉妹に、寝惚け眼のシリウスがやってくる。
いつも通りの朝の挨拶だ。
一度シリウスは朝寝坊をして、朝食を食べそこねたことがあった。
それから絶対に起こすようにと、姉妹に頼み込んでいたりする。
やはりの食いしん坊だ。
朝食の時間が始まって、少し立った頃、荷物を引っ提げたダービットが帰宅する。
挨拶もそこそこに、食材の仕分けに入り、みんなが食べ終わる頃に、ダービットの朝ご飯は開始される。
いつも先に食べるのが申し訳なかったので、マリィにそのことで聞いたことがある。
昔はちゃんと一緒に食べていたそうだが、仕入れの都合で時間がずれることも多く、待たせるのも悪いし、非効率だという結論が、新婚時代に決定したらしく、今更気にすることはないとのことだった。
朝食の片付けは姉妹が担当している。
ここをホームに決めた当初は、お客さんなのだからと、マリィやマリルがしてくれていたのだが、元々カロンにいるときから、片付けでも何でもやっていたため、何も手伝わないのは、どうも落ち着かないとのことで、片付けをすることになった。
片付けが終わると、ルーシェ、エリス、イリス、シリウスの四人は、各自装備を整えて、ギルドへと向かう。
帰って来てから、なるべく簡単な依頼をこなしているのだが、主な理由としてはシリウスの戦闘訓練。
弱いからではない。
むしろ強過ぎるレベルである。
ただ、強いが故に攻撃が大雑把過ぎる。
そして個人戦に特化し過ぎているため、パーティ戦には不慣れだった。
周囲を確認せずに動いて、前衛同士でぶつかる。
後衛から見て敵とシリウスがちょうど重なってしまい、攻撃魔法が使えなかったり。
一度アルパーティの戦闘を、参考に見せてもらったことがある。
流れる様な動き。
アイコンタクトによる意思の伝達。
音による仲間と敵の位置把握。
誰も声に出さずとも動ける。
話すにしても、最終の念押しのためだけだ。
アルパーティの個々の戦闘能力は、ルーシェ達よりも低い。
ただし、パーティ戦闘という形で見た場合は、明らかにルーシェ達よりも高いのだ。
ルーシェ達のパーティ戦闘は、個々の力がマイナスになってしまっている。
アル達のパーティ戦闘は、足算ではなく掛算。
お互いの持ち味を活かし、足りないところも熟知しているからこそ、先回りでの支援。
一度模擬戦闘をお願いしたことがあるのだが、
「お前たちと模擬戦とか…下手したらこっちが誰か死ぬじゃねぇか!」
と、怒られてしまった。
理由としては、興奮状態のミノケンタに追われた商談を助けたとき、シリウスが素手で頭にそっと手を触れただけで、頭部を文字通り消し飛ばしている姿を、アル達も目の当たりにしたからだ。
確かに触れただけで、強固な頭部が消し飛ぶのだ。
それを避け続ける。
捌き続けるなど、盾メインの前衛であるアルからすれば、無理ゲーというものである。
そんな訳で、戻ってきてからは手加減とパーティ戦闘をシリウスに覚えてもらうために、かなりの時間を費やしてきた。
勿論ただシリウスのために、全てを費やしているわけではない。
エリスはとイリスは新しい技の練習を。
ルーシェは霊力を戦闘に活かす方法を。
思い思いに修練していたのだった。
昼前になると訓練を中断し、ルーシェ以外の三人は王都へと戻るのだ。
依頼の達成報告と昼食のためだ。
ルーシェはいつもマリル手製の弁当を渡されている。
表向きの理由としては、ダービット達に頼まれている獣の狩りや、山の天然食材の入手のためである。
裏の意味としては、マリルの両親からの、娘への援護射撃だったりもするのだが、鈍感なルーシェには、今ひとつ効果が薄かったりする。
ちなみに王都に戻ってからは、相方のシルフィは毎日の様にルーシェとは別行動をとっている。
例のガーデニングが凄いところへ、花の蜜を食べに行っているのだ。
ある程度狩りを終えて、血抜きしていると、エリス達はフォルンがくれた馬車に乗って、ルーシェのところへ戻ってくる。
流れとしては、朝ギルドへ行ったときに、依頼を朝の分と昼の分、2つを決めてから行動をしている。
朝、依頼と訓練のときに、狩りの場所や血抜きをする場所も決めて、エリス達が戻る前に伝える。
これで合流するのも用意である。
朝の受けた依頼の達成報告をしてから、決めていた昼からの依頼を受けて、エリス達は戻ってくる。
基本ルーシェ一人でこなせる依頼にしてあるため、合流したときには、すでに依頼は達成済みという流れである。
朝一から馬車で行くと、森の奥へ入れないから、狩りや依頼の邪魔になってしまうので、トレーニングを兼ねてのランニングで来るようにしていたりもする。
別れてから狩った大漁の獲物を馬車に乗せて、王都へと戻ると二班に別れる。
一班はギルドにて討伐報告や、素材などの査定と買取を。
もう一班はダービットへの食材の受け渡しである。
それらを済ませたあと、個々の動きに別れるのだ。
姉妹とシリウスは、街中で出来る、手紙などの運搬の依頼をすることが多い。
シリウスが街を見て回りたいからというので、その保護者として、姉妹が同行している。
一方のルーシェは、ギルドマスターに用意してもらった一室に、こっそりと来ていることが殆どだ。
ルーシェが調合した薬は、普通のポーションなどよりも効果が高い。
ギルマスであるルナマリアに、お願いがあって尋ねたところ、ルーシェが帰還する前に起こった、スタンピード(魔獣の暴走大行進)を含む、いくつかの騒動に際して、怪我人が多く出て、常備されていた薬が底を付いたと相談をされた。
いくつか手製の薬を譲った翌日、ルナマリアに呼び出されたルーシェ。
ギルドからの製薬依頼であった。
当初は大量の発注のため、流石に一人で作るのは限界があるので、ギルドから人員を借りることになった。
しかし、ルーシェ以外の手が入ると、効果がどうも下がる。
そのため、一定数緊急用の備蓄品として、数がそろうまでは、ここに作りに来ている。
ちなみにルーシェは製薬をする代わりに、一つお願いをしている。
シリウスの冒険者登録だ。
人に属する種族であれば、誰でも冒険者にはなれる。
しかし、人ではないシリウスは、そのままでは冒険者登録が出来ないのだ。
ましてや神が冒険者登録など、前代未聞の事件。
大騒ぎが起こってしまう。
なので、ギルマスであるルナマリアに、シリウスの登録をお願いしたのだ。
事情を聞いたルナマリアはかなり驚いていたが、確かにルナマリアでないと、どうにもならないことであったので、苦笑いをしながらも、承諾してくれた。
そんなこんなで、王都での日々はバタバタと過ぎていった。
そんなある日。
王都では突如として大事件が勃発した。
水の都であるはずの、ここウォーターガーデンから、水がなくなった。
作者「昨日またブックマーク登録してくださった方が!ほんにありがとうございます!」
シルフィ「よかったね〜。でも…もしかして賄賂とか渡したんじゃないのぉ?」
作者「読者の方に失礼なことを言う出ない!てく賄賂渡せるほど金ないわい!」
財布を開いて見せる。
シルフィ「…ごめん…私が悪かったわ…」
作者「クソぉ…自分でやってて自尊心が…」
シルフィ「こんな作者ですが、今後ともよろしくお願い致します。ブックマークや評価、押してあげてね。いやマジで…財布の中身見たら…」
作者「ありがとうシルフィ…」
 




