四一話 久々の王都
気付けばもう40話越えてました!
びっくりです!
翌朝、フォルンが用意してくれた馬車が、カロンの出入り口である門の前に用意されていた。
「それじゃあ…言ってくるね!師匠!ドルばぁちゃん!」
「二人とも…行ってまいります!」
「これエリス!ドル姉さんと呼びなさい!まったく…二人とも、気を付けて行くのよ?」
「二人とも気を付けて行って来てね…それとここはあなた達の故郷で実家なの…いつでも帰ってきたらいいからね」
見送る二人を祖母役と母役の二人は、涙ぐみながら見送りの挨拶をした。
「お二人とも…お世話になりました。本当においしいお食事、ありがとうございました。このお弁当も楽しみです」
馬車に荷物を積んだルーシェも、二人へ別れの挨拶を。
やはり食いしん坊万歳な言葉に、思わずみんな笑ってしまった
「いつでも来てくださいね!腕によりをかけて、おもてなしさせて頂きますから!」
「二人のことを…よろしくお願い致します」
ドルマとフォルンは、目頭を赤く染めながら頭を下げた。
「我もおる故、万事心配はないぞ〜」
先に馬車に乗り込んだシリウスが、横になりながらのだらしない姿で、そう言いながら手を振っていた。
街を離れてから暫く立った頃、ルーシェは連日ほぼ徹夜だったため、よく眠っていた。
シリウスは外の景色を楽しみながら、のんびりと鼻歌を。
イリスは本を読みながら、新しい魔法の勉強中。
エリスが御者をしている。
特にこれといったトラブルもなく、馬車は王都へと進んでいた。
そして平和に進み、時間はお昼時のこと。
「ん〜!流石に疲れたわ!お尻が痛いわ」
休憩に入り、それまで御者をしていたエリスが、体を伸ばしながら呟いた。
「お姉ちゃんお疲れ様!でも…お尻とかルーシェさんもいるんですから…聞かれても大丈夫ですか?」
途中からエリスに耳打ちに変えて、茶化すように喋るイリス。
「お昼〜お昼〜おっひるごは〜ん♪」
ドルマ作のお弁当を、今か今かと包みを抱えながらの幼女の姿。
「う〜ん…よく寝た〜…でも、やっぱり馬車で寝ると、体が固まるなぁ…」
伸びをしながら、馬車から降りてくるルーシェ。
仲良くドルマ特製のサンドイッチを食べた。
食後の一時。
「ところで…ルーシェは何故その妖精の力で、馬車を動かさんのじゃ?」
シリウスがお茶で一服しつつ、ルーシェに声をかけた。
「え…?シリウスは…シルフィのことが見えるの…?」
「これでも神の端くれじゃからのぉ。それくらい見えぬわけないのじゃ」
元々精霊を使役するのが神。
その下位に位置する妖精が、見えるのは当たり前のことであった。
「妖精って?」
「ルーシェさん?」
話に食い付く姉妹。
「えーと…まぁ知られたんだし…話すか…うん。僕の親友…かな?で、風の妖精のシルフィっていうんだけど…」
二人の前で飛ぶが、やはり見えないらしい。
「何じゃ…二人には見えんのか…我はシリウスじゃ。よろしくのぉ」
「シリウス様。挨拶が遅れ…申し訳ありません。何分神と会うのは初めてのことで、姿が見えているとは露知らず…」
いつになく緊張した様子で、普段は絶対に使わないであろう敬語で話すシルフィ。
その姿に思わず噴き出すルーシェ。
「ちょっと!もぉ!ルーシェ…何よもぉ!」
いつもの調子になるシルフィ。
「よいよい。普通に楽に話してくれ。お主は確かに妖精ではあるが、我は地を司る者。直接の関係にはあらぬでな」
そう言いながらカカと笑ったシリウス。
「うーん…どう思うイリス…?」
「まぁドルイドなんですし、ありえますよね…」
見えない何かを見て話す二人を見て、困惑しつつ、相談する二人だった。
「とりあえずシルフィのことだけど、みんなには見えないから、ずっと黙ってたんだ。シルフィからも見えない私と話してると、変に思われると言われてたからさ」
頭を掻きながら話した。
「そうだったんですね。確かに何もないところで話してると…怪しい…というより、危ない人になってしまいますよね…」
「でも私達といるとき、どうやってそのシルフィと話していたの?」
「あぁ、それは念話だね。声に出さなくても、直接脳内でやり取りできるんだ。だから焔の洞穴でも手伝ってくれたし、この間の二人の家の地下に降りるときも、先行偵察してくれたりね」
見えていないとわかっていても、えっへんと胸を張るシルフィ。
「シルフィは胸を張っておるのぉ〜」
様子を伝えるシリウス。
「見えてはいないんのであれですが、ありがとうございます」
「ありがとう。知らなかったからって、今までお礼も言わなくてごめんね」
それぞれ言葉にするが、少しずつ視線がずれたところを向いていた。
「今後ですが…一応ドルイドのことはある程度認知はされてますが、下手にドルイドとバレると、色んなパーティに目を付けられる可能性が高いので、人目に触れるところでは、今のままの方がいいと思います」
そうイリスがアドバイスを。
「何で目を付けられるかな?」
「ドルイドって珍しいというか、なりにくいのよ。長い修行が必要だしね。回復だったり色んなこと出来るから便利なのよ。だから無理矢理にでもパーティに入れようとしてくる人もいるとか聞くわね」
「大雑把な説明ですが、そんなところですね」
「なるほど…まぁわざわざ面倒ごとに巻き込まれたくないし、シルフィもそれでよろしくね」
「まっかせて〜」
「シルフィの言葉も二人には聞こえておらぬようじゃのぉ…ただ、街にもし別のドルイドや精霊術者、それに類する者がおれば、聞こえるやもしらん。注意するのじゃぞ?」
そうみんなを見て、釘を刺したシリウスだった。
「ところで…そのシルフィの力で馬車をってことだったけど、どういうことかな?」
エリスから最初のシリウスの言葉に対する疑問が。
「これは…凄いですね!」
御者として手綱を握るイリス。
シルフィの力をで風除け。
更に車体を軽く浮かせることにより、振動も殆どないのだ。
普通では考えられない速度で進む。
自然とテンションが上がってしまうイリス。
「ルーシェ…あんたが強い理由がわかった気がするわ」
移動速度に呆気に取られながら、そう呟いたエリス。
「もしかして…前に私達を抱えて飛んだときも?」
「うん。シルフィの力も借りたね」
「なるほどねぇ…あ〜ぁ…私もそんな力があればなぁ…」
「?エリスは僕なんかより、凄い力持ってるよ?」
「本当に?例えば?」
「えぇ〜?気付いてないの?」
「もぉ〜!もったいぶらずに教えてよ!」
「内緒〜」
楽しく話す二人を横目に、シルフィはナイスラブコメ!と、サムズアップしていたりする。
シリウスに関しては満腹になったのもあり、馬車で熟睡していた。
移動速度が上がったことにで、予想よりも何倍も早さで王都へと辿り着いた。
「ここが王都…?昔と位置が変わっててびっくりじゃ…」
王都が移動する遥か昔に、封印されてしまったシリウスが、驚きの表情になった。
「そうか…シリウスは昔の姿を知ってるんだね」
シリウス相手だと、もう敬語を使う気がなくなってしまったルーシェだった。
出会ってから。
そしてここまでの道中のだらけっぷりと、見た目の幼さから、仕方ない気もする。
「うむ。昔の王都もよかったが…ここも良いのぉ…それに…何やら我の眷族の力を感じるのぉ…」
ガンちゃんは確かに地のシリウスに属するだろう。
その力の残り香を、強く感じ取っていたようだ。
(そのうち…ガンちゃんに合わせてみようかな?)
そんなことを思うルーシェだった。
みんなに先に宿を取るように伝え、ルーシェはマリルやダービットの店へ顔を出しに行った。
「ただいま戻りました!」
「お!帰ったかルーシェ!おかえり!無事だったか?」
「ルーシェおかえり〜!」
「あら〜ルーシェくんおかえりぃ〜」
「ダービットさん。マリィさん。マリル。ただいま!あ!カロンのお土産、色々買ってきましたので、皆さんどうぞ!銘菓のマカロン、美味しいですよ!」
帰って早々荷物を降ろし、それぞれに土産を手渡していった。
「おぉ!すまねぇな!早速食べさせてもらうとするか!よし、美味い紅茶淹れてくっから、ちっと待ってろ!」
キッチンへと消えていったダービット。
「とりあえず、荷物部屋に運ぼうか?私も手伝うわ」
「私も手伝うわねぇ〜」
荷物を運ぼうとするマリルとマリィ。
「あっ!ちょっと待ってもらっていいですか?」
「え?どうかしたの?」
「実は…お世話になってて申し訳ないんですが…ここを出ようかと思いまして」
「ちょっ!どうして!?」
「マリル、落ち着きなさいな?」
「でも…お母さん…」
「彼は冒険者やで?いつ出ていくのも彼の自由なんよ?ただ、理由くらいは話すんも、筋やからね?」
そう言いながら、優しい眼差しでルーシェを見つめた。
「なぁに騒いでんだ?」
そこへポットと人数分のティーカップを持って、戻ってきたダービット。
「お父さん!ルーシェがここを出るって言ってて!」
「戻ってきて早々だな?何があったってんだ?」
冷静なダービット。
「そんな大したアレコレではなくて、今回の旅で仲間が出来ました。パーティとして動くのに、一人だけこちらに厄介になるのも悪いなって…それに、今回の件でよくわかりました。不意に長くなってしまうこともある…やっぱり迷惑をかけることばかりになってしまうと…」
「そんな迷惑なことなんて!」
「マリル。ちっと黙ってろ。お前さんの気持ちはよくわかった。うちとしては迷惑なんてこたぁねぇよ?ただ、元々俺も冒険者だ。気持ちもよくわかるからよ?仲間ってのは何人だ?」
「三人ですね。とりあえずこの四人でパーティを組むことに」
それを聞いてニヤつくダービット。
「なら…うちをホーム登録してみるってのはどうだい?」
「ホーム登録ってなんですか?」
「バラけて説明するのも面倒くせぇから、うちに呼んで連れて来いよ」
「?…わかりました」
「と、言うわけで、みんな来てもらえるかな?」
ギルド近くの手頃な宿に、みんなを呼びに来たルーシェ。
「うーん…まだ荷解きの途中なのに」
「まぁまぁ。もしかしたら荷解きが無駄になるかも…というより、なると思いますよ?」
「我はどこでも問題ないのじゃ〜。荷物などないしのぉ〜」
「というわけで、彼女達が僕の仲間です」
美人姉妹に美系の犬耳幼女。
「あらあら…まぁまぁ…」
ニヤニヤしながら口を隠すマリィ。
「手が早ぇなぁ…そりゃこんなところ出ていこうとするわなぁ…お前さんも立派な男ってことか…」
「…………」
バタン。
三人の美女を見て、無言のまま昏倒したマリル。
ホームの説明前に、一同慌ててマリルの介抱に入ったのだった。
作者「ようやっと王都に帰ってこれた…」
シルフィ「いや、それはこっちの台詞よね」
作者「あ、シルフィ、久々に後書き登場だね」
シルフィ「それより現実の仕事で小説書く暇あるの?」
作者「ん…?何のことかな?」
シルフィ「確定申告…そろそろ時期よね?」
作者「代わりにやっ…」
シルフィ「いや。無理」
作者「そげなこと言わんと…」
シルフィ「はーい!皆様いつも読んで頂きありがとうございます!ブックマーク登録や作品の評価、どんどんよろしくお願いしますね!てなわけでさいなら〜」
作品「待って!せめて領収書整理手伝ってーーーー!」




