三一話 悪夢と準備
毎晩冷えますね…
皆様温かい服装して下さいね!
そして炬燵で鍋でも食べて、湿気でコロナも殺菌しつつ、自身も暖かに!
そして、そのまま炬燵に住まう眠りの神様による誘いを…
はい。
冬場の私のよくあるループです。
自白剤により、フードの男は誰なのか、会った場所や、取引をする場所なども割れた。
「やはり誰なのか知ってましたね」
「嘘をついていたってことは…やっぱり…」
どんな制裁を下すのか…と、エリスはごくりと息を飲んだ。
「あぁ…そのことでしたら、自白剤飲ませた段階で、もう済んでますよ」
「え?それはどういうことでしょうか?」
自らを抱き、少し震えているイリスが呟いた。
「さっきは脅しの為に、あえて言葉を強いモノにしました。まぁただの自白剤ではないのは確かですが…」
「待って…先を聞くのが怖いんだけど…」
エリスが顔を青くしながら吐露した。
「そんなに危ないものではないですよ?あれは反省薬と呼べる代物です。まぁ見てて下さい。そろそろです」
「??」
皆顔にクエッションマークを浮かべつつ、男を見ると、急に顔が青褪め、体が震え出す。
「ヒィ………ごめんなさい…許してくれぇ…俺が…俺が悪かった…」
「これは…どういうことですか?」
フォルンがルーシェの方を向く。
「流石にエリスさんに手を上げたりと、今回は怒りましたし、所業が所業でしたので、キツめのお灸をってことですね」
「説明になっていませんよ…」
ドルマが冷静にツッコミを入れる。
「えーとですね、自分がしてきた悪事が、全部自分に起こったら。もしくは悪事で被害を被った人達が、化けて出て、襲ってきたら…そんな夢を見ているってことですね」
「うわぁ…それは怖そう…」
「逆に善行をしている人が飲むと、その人にとっての幸せな夢が見られます。副作用もない良質の睡眠薬にもなるってことです」
「うーん…」
流石に怖いなと、ルーシェ以外が顔を見合わせた。
「よかったら誰か試してみます?」
「「「いりません!」」」
見事に全員がハモった。
「ぐぇあぁぁあ〜〜〜〜!や、やめ、やめてくれぇ〜〜〜〜!じぬぅぅぅぅぅぅ!」
男は縛られたまま、器用にのたうち回るのだった。
「しかしうるさいですね…まぁそれだけ悪事が多かったってことですね」
「…死んだりしませんか…?」
「さ…流石にこれは…同情するわね…」
「大丈夫です。恐怖で死んだ人はいませんから」
笑顔が怖い…ルーシェを見た全員が、そう悟りを開いた。
翌朝一番早くに起きるドルマは、調理場へ向かう途中に、くぐもった唸り声を聞き、道場を覗いた。
男は口に詰め物をされ、声が漏れにくいようにされて、苦しんでいたようだ。
顔には張り紙がしてあった。
“あまりに煩く近所迷惑になりそうだったので、処理しておきました。byルーシェ”
それを見て思わず苦笑いするしかないドルマだった。
朝食後、全員が道場向かい、男が起きていることを確認し、口の詰め物を外した。
「プハーッ!はぁはぁはぁ…」
「おはようございます。良い夢は見れましたか?」
そっと男の肩に手を触れながら、そう耳元に囁くルーシェ。
男は何も答えられずにガタガタと震え出す。
「さて…反省が足りないようでしたら、また同じことをしますが、どうしましょうか?」
問い掛けに震えながら首を横に振る男。
「さて…この男をどうしましょうか?」
「そうですね…裏で糸を引いているのが、ここの権力者の一人みたいですからね…普通に憲兵に突き出しても、殺されるだけでもみ消されることでしょうし」
イリス顎に指を当てながら思案していた。
「それでしたら、私めの知り合いを紹介しましょう。元々ここの騎士団長をしていた者で、たしかその子どもが現在騎士団ないの、憲兵隊の指揮をとっております。不正があれは上司でも噛み付くせいで、なかなか出世が出来ないと、よく知り合いがボヤくくらいの人なので、上部へは漏らさずに、秘密裏にこの男のことも、上手くやってくれるかと」
「流石ドルマさんですね!それでいきましょう!」
というわけで、ドルマさんの知り合いに連絡を取ってもらい、その日の夕刻には憲兵隊長がお忍びで、男を引き取っていった。
彼はギールと名乗った。
何でもわざわざ休暇申請までしてくれたようで、早馬で王都まで護送してくれるそうだ。
「わざわざすみません。色々ご迷惑をおかけしまして」
と、フォルンが頭を下げたときも、
「いやいや。悪徳貴族を叩くチャンスですからね。あの野郎はいつも悪事を働いて、貴族の権力でもみ消したり、蜥蜴の尻尾切りばかり…この機会にこれまでのことも含めて、目に物見せてくれる…あ、いや、これは失敬。これも仕事ですし。それに、手柄を回してもらったようなもんです」
とのこと。
かなり私怨も入ってそうだが、心強いことこの上ない。
「あ、そうだ!すみませんが、少しお願いしたいことが…」
ルーシェは王都へ向かうならと、アルとダービットに、まだ暫く戻れないが心配はない。と、伝言を頼んだ。
夕食の時間、みんなで集まり、食べながら話をすることになった。
「さて、明日が本来の引き渡し日ということですが、明日あの男が現れなかった場合、どうなるでしょうか?」
フォルンが議長となり、会議が幕を開けた。
「子分の方は面識がないようですし、すぐに狙われるのは、あの男の方でしょう」
食事を取り分けながら、ドルマが意見を述べる。
「私もそう思います」
イリスが同意した。
「あの男が来なかった場合、探して調べて…子分の方から、こちらのことがバレるのは、時間の問題ですね…ありがとうございます」
情報から筋書き予想。
それを述べながら、料理を受け取るルーシェ。
「この子を何でそんなに狙ってるのかな?」
エリスは根本的な疑問を投げかけた。
「うーん。それはわかりませんが、わざわざ聖獣を狙ったことには、何か良からぬことがあると思います。大人の聖獣だと、普通の人には手に負えないほどの強さだそうですし」
(だよね?シルフィ?)
と、情報源のシルフィに確認すると、頷いて返ってきた。
「わからないことは後にして、今後の対応を考えましょう」
議長が話を切り替える。
「そうですね。ギールさんとのこともあります。ここはやはり…」
ルーシェは考えを提示した。
「…たしかにそれは有効ですが…失敗したときのリスクが高いですね…」
フォルンはどうしたものかと、みんなに意見を求めた。
「私はいいと思います」
「私も賛成!」
姉妹はルーシェに賛同した。
最年長者のドルマは目を閉じ、腕を組んで考えを口にした。
「仮に動かなかった場合は…目に見えてますし…かと言って、情報収集をする時間もない…後手に回って、各個闇討ちされることも………先生。私もルーシェさんの作戦が最良かと。それに…その方が面白そうで、若いときの血が疼いてきます」
そう言って、最後にはニヤリとした笑みをこぼしていた。
「では…決定ですね。明日の夜に向けて、今から担当や準備をしっかり決めましょう」
こうして長い夜が過ぎていった。
翌朝、昨夜用意してもらった地図を確認しつつ、エリスとイリスに、買物メモを渡した。
「お二人はすみません。こちらを買ってきて下さい」
「オッケ〜!」
「いってきます!」
いそいそと地図に書き込みをしていくルーシェ。
暫くすると、そこへフォルンとドルマが顔を出した。
「私達もいってきますね」
「留守番をお願い致します」
「任されました!お二人とも、手間取らせてすみません。よろしくお願い致します」
こちらの二人も勇んで向かっていった。
フォルンもここで生活して長い。
ドルマに至っては、生まれも育ちも地元民だ。
当然ながら知り合いが多く、こういうときに協力を頼める人物も。権力者にも事欠かない。
緊急なことだからこそ、出来る限りの根回しにも余念なく動くべき。
と、今行った二人の意見により、動いてもらっている。
「シルフィの方はどう?何か怪しい会話とかない?」
風に紛れる声を拾うシルフィは横に首を振った。
「何も…あるのは日常会話ね…」
「もしわかったら教えてね?大変だろうけど、後で美味しい花を用意するから」
「まったく…妖精使いが粗いわよ…わかってるわよ」
そう言って、シルフィは気合を入れ直した。
「キューキュー…」
ルーシェの足首に首を擦り付ける聖獣の子ども。
流石にお留守番させるしかないので、ルーシェが面倒をみていた。
「どうした〜?お腹が空いたのか〜?」
「キューキュー」
「はは〜ん?さては相手する人がいないんだな?仕方ない」
そう言って、首元をカリカリしたり、顔をふちゃふちゃしたりと、気分転換に相手をするルーシェだった。
お昼時になり、フォルンとドルマが袋を抱えて帰ってきた。
「作る暇がないので、お昼買ってきました」
「流石に重たいですね」
まだリハビリ途中のフォルンと、高齢のドルマがかなりの量を買ってきていた。
「ありがとうございます。すごい量ですね…」
「夜の分もありますからね」
「まだまだ忙しいですから」
「なるほど……どうでした?」
「大丈夫です」
「むしろ乗り気という感じでした」
「たっだいま〜!」
「ただいま戻りました!」
「「「おかえりなさい」」」
「これで大丈夫かな?」
買って来た物を並べる二人。
ルーシェが頼んだのは、薬の材料だった。
今回の薬に使う材料は、ちょうどドルマさんのところだと使い切っていたので、予備も含めて多めに買って来てもらった。
「ありがとうございます。僕は先に製薬作業に入りますから、先にお昼食べておいて下さい」
そう言って自室へと戻って行った。
「私も手伝えたらいいんですが、流石に今回の薬は、畑違いの物ですからねぇ…」
残念そうに呟くドルマ。
「ドルマばぁちゃんなら、作れそうな雰囲気なのにねぇ」
「エリス?それはどういうことかしら?」
「いや、なんでもないわ」
ジト目でエリスを睨むドルマだったが、ため息を一つ吐いて、お昼をテーブルに並べ始めた。
「あとでルーシェさんへ、どちらか運んで下さいませ」
そうドルマは姉妹へ言って、一人前だけお盆に乗せた。
「「私が」」
と、同時に言う二人。
気不味そうに視線合わせる姉妹を見て、ほくそ笑むドルマ。
先程のエルマの発言に対する意趣返しは、きっちり決めたのだった。
自室にてルーシェは壺や鍋を掻き混ぜていた。
火にかけていないのに、怪しげな煙や泡を生み出すその壺や鍋。
禍々しいということばがピッタリだった。
作っているものはたしかに秘薬ではあるが、精霊の秘薬ではなく、魔女の秘薬と呼ばれる代物だ。
元々は妖精や精霊の秘技。
それを太古に魔女が盗み、新しく組み上げた、魔女たちの異端な技術。
長老が遥か昔に、仲良くなったと思った魔女に、その術を盗まれたのが、原因だったりする。
元は同じ技術から生まれた物。
以前鳥の精霊が、悪戯用にとくれた薬を、成分検査していたので、何をどうしたものかはだいたいわかる。
それなら作れるだろうと、トライアンドエラーを繰り返していた。
長老「ワシの扱い…酷くね?」
作者「いやいや!うっかりは愛されキャラです!あざとさですよ!てか語尾がいつもと違いますよ!」
長老「ほっほっほっ。いや、これはすまんかったのぉ〜。ついつい素が出てしまったのぉ〜」
作者「いつものは演技だったの!そっちのが新事実過ぎてびっくりです!」
長老「ワシも伊達に長生きはしとらんからのぉ〜。計算くらいはするわいのぉ〜」
作者「怖っ!長老怖っ!」
「キューキュー」
仔聖獣が何かボードを咥えて運んできた。
“二人が話してるので代りにボクが!
いつも拝読感謝!
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