二話 初めての人助け
初投稿から三日目。
読んでいただいた方には感謝を。
ありがとうございますm(__)m
ゆるゆるとマイペースに投稿出来ればと思いますので、引き続き読んで頂けるとありがたいです。
「診るって、あんた医術や治療術は使えるのかい?」
「まぁこの程度なら何とかなるはずです」
「そういうならスピカはあんたに任せるとして…村の皆を集めなきゃ!スピカはこっちのにいちゃんに任せて、あんたは…」と、言い切る前に、
「俺はまた入口で少しでも時間を稼いでくる!女将さんはみんなに知らせて、女子供は逃げる準備を、野郎はちょっとでもこっちを手伝わせてくれ!」と、言いながら暖簾を潜って行ってしまった。
二人が話してる間に、ルーシェは森にいるときに覚えた、地霊術による治療と、持っていた痛み止め。回復薬などの生薬を使っていく。
治療を開始してから、1分もしないうちに傷口は塞がった。
「とりあえずこれで大丈夫のはずです。意識もすぐ戻るかと。ただ、失くした血まで戻ったわけではないので、何処か休めるところは?」
「大した手際だねぇ…と、奥の個室で寝かせられるよ!」
「ならスピカさんはお任せしても大丈夫ですか?」
「勿論だよ!あんたはどうするんだい?」
「僕は魔獣達の方へ。他の方も心配ですから」と、言い終わるや、凄まじい速度で走り去っていった。
「気を付けておくれよっ!まだ支払いは済んでないんだからねっ!」と、女将さんなりのエールを送る。
(支払いって何のことだろ?)と、疑問に思いながら、更に速度を上げた。
(シルフィ!状況は?)
(ワイルドベアが2頭。たぶん時期的に番だったんだろうね。人の方は…全部で15人、うち5名は倒れてるみたい)と、風の音を聞けるシルフィ。
(了解!…ここからだと他の人が邪魔になることもあるし…よしっ!)
ルーシェはシルフィの力を借りて、家の屋根まで旅上がる。そこから更に助走をつけて、木に飛び付き、そのまま木を駆け上がる。木を足場に更に飛び上がりかなりの高さへ。そして空中から弓を構え、集中力を研ぎ澄ます。
(穿けぇっ!)
彼の放った矢は、シルフィの助力を受け、ショートボウでは不可能な速度と貫通力で、ワイルドベアの頭部に吸い込まれた。
ルーシェの方は、放った直後にさらに矢を抜き、もう一匹のワイルドベアへの攻撃を仕掛けていた。
突如として倒れたワイルドベアに驚く村人と冒険者達。
その近くに風を纏いながら、フワリと着地するルーシェ。
「皆さん怪我は?」と、何でもない風に声をかけるルーシェであった。
怪我人の治療を終えて、一段落付けたルーシェ。
その近くで、途中爆走するルーシェに追い抜かれた革鎧の人が、ルーシェの活躍をしきりに語っていた。
最初いきなり風を纏って降りてきた姿に、村人や冒険者は、彼を魔族か何かでは?と、強い疑いを向けたのだが、有無を言わさぬ速度で治療術を使っていくルーシェ。そして追い付いた革鎧と、村の男連中を引き連れて現れた女将さんの説明によって、疑いはすぐに晴れたのであった。
(みんな無事で何よりだったよ)
(不幸中の幸いね)
などと念話で話しているところ、意識を戻したスピカがやってきた。
「ルーシェ君!本当にありがとうございます!」
「いや、大したことはしてませんから!というか、敬語もいりませんよ!」と、微笑みかける。
「しかし自分だけでなく、村まで救って頂いた方に…」
「美味しいお店紹介頂いたので、それで十分ですよ!」
「しかし…」と、問答になりかけた時、女将さんからの、
「恩人がそう言ってるんだから!恩人を困らせるんじゃないよ!」という言葉に助けてもらった。
「そういやあんちゃんは、治療術使ってたけど、神官か僧侶なのかい?」と、一頻り話し終えた革鎧の人が声をかけてくる。
「そんな大層な者ではないですよ」と言いつつ、何と説明すべきか困ってるルーシェを見て、
「すまねぇ!まぁ恩人の詮索するってのは野暮ってもんだな!しっかし本当につぇ〜なあんちゃん!」と、ルーシェの背をバシバシと叩く。
(ガンちゃんと同じタイプだけど…ガンちゃんほど痛くなくてよかった…)と、比べる対象がおかしいことに、気付ける者も突っ込める者も、ここには一人もいなかったという。
余談ではあるが、ガンちゃんはかなり力が強く、隠れ里に住む前は、そのときのパートナーに振られ、自棄酒を煽り、酔った勢いで山を3つ、素手で更地に変えたことがあるとか…
ちなみにその地は、実は現在この国の王都がある場所だったりする。
曰く、一晩で神が起こした奇跡の地である!ここに王都を移せば、より国は発展する!という、当時の占い師(実はただの痴呆老人)の声を丸呑みした王侯貴族達によって、即座に建設。移動という運びとなったそうだ。
閑話休題。
その日の討伐されたワイルドベアを肴に、そして全員無事だったことへの感謝とで、村は全員でのどんちゃん騒ぎだったそうな。
ちなみに猟師連中は、起きてから何があったのかを聞いて、酷く落ち込んだそうなのだが、輪に加わり酒を飲むと、忘れたかのように盛り上がっていた。
一方ルーシェの方は、お酒は全然飲まずに、初めて食べる料理に感激しつつ、食べ漁っていた。
「あんちゃん楽しんでるかい?」と、酒と肉串を手に革鎧の人が現れる。
「はい!美味しいです!」と、視線を一瞬移したあと、また皿へと戻っていくルーシェ。
「そいつぁ何よりだ!」と笑う男。
「そーいやまだ名乗ってなかったな。俺はダリィってんだ。よろしくな」
「ん…ごくん…ルーシェです!」
「ルーシェか。良い名だな。ところであんちゃんは旅人って聞いたが、このあと何処に行く予定だい?」
「とりあえず王都を目指そうかと」
「なるほどね〜。あんちゃんほど腕があるなら、王都で冒険者になれば、稼ぐには困らないだろうしな〜」
「冒険者って何ですか?」
「あん?冒険者も知らねぇのか?どんなところから来たんだか…んーとだなぁ…色んな人から依頼を受けて、薬草を集めて来たり、魔獣討伐したり、はたまた護衛や配達もしたりと、まぁ言ってみたら何でも屋みたいなもんだな」
(何でも屋か…よくわからないけど、ようは人助けってことかな?)
「なるほど。僕に出来ますかね?」
「危険も多いが、そらあんちゃんほど強いなら大丈夫さ!俺が保証してやる!って、俺が保証しても何にもなんね〜か」と、笑いながら酒を煽る。
「ダリィさんが言うなら、大丈夫ですね!」と、わかってないまま返す中、王都へ向う目標が一つ生まれたことに、喜びとワクワクを持ったルーシェであった。