二六話 特訓開始
お節の準備で蕪の千枚漬け。そしてクリスマス用にお菓子作り…
うん。
師走はやることが多いですね苦笑
皆様も忙しいと思います!
よかったら息抜きに読んで下さいませ!
夕食後部屋に戻ったルーシェ。
そこにはシルフィが満腹とばかりに、ベッドの上で寝転んでいた。
「シルフィおかえり。ご機嫌そうだね」
「ただいま〜。ルーシェの方も晩御飯は満足したみたいだね〜」
少しの沈黙のあと、ルーシェは口を開いた。
「ねぇシルフィ?僕が拾われた日、星詠みはしたんだよね?そこで成人の日に旅立つことになるって出たって話てたよね?」
「そうね」
「なら…何でその部分だけ、前詩のところだけを僕に?中詩はまだしも…後詩は?」
「あぁ…星詠みのこと、誰かから聞いたのね」
「何で?」
ルーシェが悲しい顔でシルフィを見つめる。
「そんな目で見ないでよ…別に悪気があったわけじゃないわ。教えなかったんじゃなくて、言えなかったのよ」
「言えなかった?どういうこと?」
「順に説明するわね」
星詠みを行った日。
『天地巡る星々の加護を。今新たな星にその標を詠まん』
長老自ら星詠みを行った。
前詩
恒星多龍たる守護星の庇護
数多の垣根は無為
聖なる時の訪れに
世の流れを紡ぎ直す
拓き開き啓く
自らの和久を流れに掴むか
困難とはその葦の元に生まれる道
周り巡り時に流るる
全ては御思の赴くまま
『ほう…恒星とは…大物になるの…どれ中詩と後詩は…な…何じゃこれは…?』
『長老〜。早く続きを聞かせてよ?』
シルフィは急かす。
『星が見えぬのじゃ』
『どういうことよ??』
ガンちゃんが首を傾げる。
『お主らも見やれ』
『中詩は…星が多過ぎるよ…これは…?』
『一際強い星はあるわね…』
『中詩はあまりにも多く複雑で詠めぬのじゃ…』
『後詩は…これは?何も映ってないわよ…』
『恐らくじゃが…星が強すぎるのじゃ…余程のことがなければ、こんなことは…かつての魔王や勇者と呼ばれる者も、強過ぎて詠めぬことがあったそうじゃ…』
『よっぽどってことなのね…』
『…そうじゃ…恒星とは光が強い…その分闇も深く強くもなるものじゃ…正しく導いてやらねば…』
『詠めないのに導けるのでしょうか?』
剣の精霊が呟く。
『なぁに…儂らが多龍となれば問題あるまいて』
『なら…ここで面倒見てもいいの!?長老!?』
『ほっほっほっ…シルフィ、勿論じゃよ…』
シルフィはかつての事を思い出しながら語った。
「そうだね…里のみんなに守られて…僕は育ったんだもんね…」
「ううん…こっちこそ今まで黙っててごめん」
「でも…少し納得したよ」
「何が?」
「いつも僕に好きにするようにって言ってた理由だよ」
(きっとシルフィは星詠みを知った上で、あえて自分で選ばせてくれてたんだ…星詠み云々じゃない。自分がどう行きたいのか。生きていくかを。大きな運命があってもそんなの関係なく、自由に生きていいんだよって)
蟠りも無事に消え、その夜は静かに過ぎていった。
明朝5時、部屋をノックする音が響いた。
「おはよ〜ルーシェ!起きてる?」
「おはようございますエリスさん。早いですね」
「今日からルーシェ、ここで特訓なんでしょ?」
「そうでした!準備を急ぎますね!」
「朝ご飯の準備も出来てるから早くね」
エリスは早足で部屋を去っていった。
「ルーシェ?特訓って?」
「あぁ実は…」
と、シルフィに説明をした。
朝食後道場にて。
「さて、準備はいいですか?」
道着姿のフォルン。
「「「はい!よろしくお願いします!」」」
姉妹とルーシェ、三人が元気に応えた。
「二人はまず…いつも通りのメニューをしてね」
「「はい!」」
「ルーシェさんは…まずは製薬をしているところを見せて頂けますか?無意識で使っているのはどんな時か、私もこの目で確認したいので」
「わかりました」
ルーシェは慣れた手付きで、回復薬を作っていく。
「なるほど…わかりました。本当に自然に出ているので、逆に何故自由に使えないのか、疑ってしまうレベルですね」
そう言いつつ苦笑するフォルン。
「どうすればいいでしょうか?」
「そうですね…ルーシェさん、私の掌を見てください。何か見えますか?感じますか?」
「??いえ…?特には?」
「なるほど…わかりました。まずは感知するところから始めましょう。ドルマさん。お願いしますね」
「かしこまりました。ルーシェさん。こちらへ来て下さい」
ドルマに案内されたのは地下室だった。
部屋の彼方此方に不思議な文字が絵のように書かれていた。
「この部屋は?」
「ここは霊晶の間。ここでは霊力の感知を補助する文字の力で、見えない者にも見えるように、または感知しやすくする部屋にございます」
「なるほど」
「私が霊力を体の一部に集中させ、濃く見やすい状態でまずは出します。そこから徐々に薄くしていきます。霊力の波動を息吹を感じ取ってください」
ドルマの右手が光出す。
「この光は…」
「これが霊力です。どう感じますか?」
「色は薄い緑色…優しい波を感じます」
「よろしい。色はその者の命を表します。暗く病んだものが使えばドス黒い光になります。今の波も敵意をもって使えば、鋭く硬いものとなります」
「黒い霊力などもあるのですね」
「霊力とは万物に宿る力。どんな生き物でも扱うことが出来ます。それは悪人であろうと、魔獣や魔族であっても、習得出来るものであります。扱い切れるかどうかはまた別物ではありますが」
そこから暫く、ドルマは波動を硬くしたり柔らかくしたとり、様々に変化させた。
「多少なりとも見ることになれてきたと思いますので、ここから少しずつ見にくくしていきます。目だけでなく、全身を使って見るようにしてください」
徐々にさっきまで感じていた波動が弱くなったように感じる。
「目だけに頼らないことです。全身の細胞を活性化させて、全体で感じるのです」
「んぐぐぐぐっ…目が痛い…」
「ふふふ…慣れるまでは、ゆっくり頑張りましょう。元々使うことは出来るのですから、すぐに出来るようになりますよ」
「そうだといいんですが…頑張ります…」
ただ見るという訓練だけで、午前中が終わってしまった。
エリスが用意してくれたお昼を食べつつ、午後の特訓も頑張ろうと気合を入れる。
「すみませんルーシェさん。午後は私も仕事がありまして、特訓のお手伝いはできないのです」
ルーシェを見たドルマが呟いた。
「それは…仕方ないですね…では午後はどうしましょうか?」
「それでしたらルーシェさん、午後はエリスと組手をして頂けませんか?」
お茶を飲みながらフォルンの言葉。
「僕がですか?」
「私はまだ病み上がりで、組手するのはまだ体力面で不安がありますので、お願い致します」
「私もルーシェと組手してみたいわ!」
「そういうことでしたら…やってみましょうか」
思いもよらず、午後は格闘訓練をすることになった。
食休みを終えて、道場で相対する二人。
「しかし…まさかエリスさんと組手をするとは思わなかったです」
「あはは〜。私はずっとやってみたかったから、とっても楽しみよ」
「双方…準備は良いか?」
フォルンが緊張感のある声と口調を使う。
「…手加減しないからね…?」
「えぇ…怪我しない程度にお願いしますね…」
言葉とは裏腹に、ルーシェはやる気になっていた。
「…………はじめっ!」
フォルン号令に、飛び出すように動き出すエリス。
フェイントなど使う気まったくなし。
全身をバネのように使い、まさに槍の一突きというような掌打を繰り出してきた。
その手に合わせて体を回転させながら受け流し、その力を利用して投げるルーシェ。
空中で姿勢制御をし、関節を緩めて衝撃を受け流しつつ立つエリス。
「やっぱやるわね!ルーシェ!」
「エリスさんこそ!」
一合目の指し合いは両者引き分け。
そこから無言で二人は二合三合と拳を合わせていった。
作者「長老が出たいと言うから、ちょっと出番を用意してみましたよ〜」
長老「ありがとうのぅ…って、本当にちょっと…」
作者「まぁそのうちね?そのうち!」
長老「信用ならんのぉ…」
作者「あ!じゃあせっかくなので、長老が宣伝してくださいよ!」
長老「ほぇ!?ま、まぁいいじゃろう。いつも読んで頂き、ありがとうのぉ〜。ブックマークや高評価も、感想なども待っておるからのぉ〜」




