二十話 死闘
今日は朝から予定があり、更新が遅くなりました!
申し訳ないです_(._.)_
いよいよ焔の洞穴のクライマックスです!
お楽しみ下さい!
サラマンダーの燐光が一際強く輝く。
大きく口を開き地面を舐め尽くすように炎を吹き出した。
自身の卵すら巻き込む炎。普通なら卵もこんがり美味しく焼かれました。と、なりそうな状態。
堅く厚く丈夫な殻は、その炎ではビクともしない。
むしろ孵化するとき、炎で殻を外から焼き、割安くすることで、子の手助けをするほどだ。
遠慮や躊躇など一切ない炎熱地獄が吹き荒れる。
サラマンダーは辺りを軽く見回す。
自身のブレスに耐えれる者など殆どここにはいない。子を脅かす愚かな羽虫を退治したのだ。
その自信という名の慢心が。奢りが。大きな失策だったことを、まだ知らなかった。
サラマンダーが振り返り、二歩三歩と歩みを進める。
ゴスンッとサラマンダーの脳天めがけ、天井から大岩が落ちる。
「ギュピィーーーーーーーッ!」
「畳み掛けます!」
「はい!」
「いくわよ!」
三人はサラマンダーの抜け殻により、炎を無効化し、サラマンダーの視界が炎で防がれている間に、死角へ移動した。
そして振り返ったとき、シルフィの力を乗せた矢を天井に射抜き、落石させた。
衝撃で頭を揺らされ、脳震盪を起こすサラマンダー。
ダメージこそないものの、一体何が?
この場所に自分の驚異になり得る者など何もなかったはず。
いけない…子を…卵を守らねば…そう…自分しか守れる者はいないのだから。
ふらつく頭を持ち上げ、索敵する。
何処にも敵の臭いがしないのだ。
あるのは自分の臭い。
何故だ?
何処だ?
出て来い!
怒りを込めた咆哮を上げるサラマンダー。
先程よりも更に強い輝きを放ち、より強いブレスを巻き散らそうとし、上体を起こして息を吸い込んだ。
地面へ向け、怒りの業火を撒き散らそうと下を向き、その獰猛な口を開く瞬間、素早くサラマンダーに近付き、エリスがその下顎を捻じりあげる様に蹴り上げた。
「捻じり突貫ッ!」
捻りを加え、貫通力をもった蹴りが、吐こうとしたブレスを無理矢理口内に留める。
自身の最大火力の炎が口内で四散。
いくら炎を吐くため、耐性のある口内とはいえ、その爆発の衝撃には耐えきない。
しかし敵の姿は確認した。ダメージを負いながらも、視認した獲物に凶悪な爪を突き立てるのだ!
怒りの灯った瞳が歪み、エリスに爪を振り下ろす。
真っ二つに切り裂かれたエリスは、一瞬で水泡に変わる。
「させませんよ」
事前にイリスがかけた魔法。
水の身代わりだ。
常に死角へと立ち回り、姉への援護に徹するイリス。
落石後にルーシェは二人に指示を出した。
「全力で動きます。僕は気にせずエリスさんへの援護に徹して下さい」
イリスにはそう言った。
何も聞き返す間もなく、ルーシェはかつて村で見せたあの爆速状態に入った。
このときイリスは悟った。
今の自分ではルーシェの援護など出来ないのだと。
如何に背伸びをしても、あの動きの補助をするには自分では遅すぎるのだと。
当然悔しさもある。
しかし、そのとき浮かんだ一番の感情は…憧れだった。
(いつかきっと…追い付いてみせる)
イリスは自分の持ち札の魔法を駆使し、姉への援護とサラマンダーへの行動阻害などに徹した。
エリスは妹の補助を受け、地面を。時には空中を駆け回った。
撹乱しつつ、動きが鈍ったとき。空きを見せたとき。時には死角から、要所要所で打撃を加えつつ、意識を自分に向けさせる。
自身の身体強化の殆どを、速度強化に振ることにより、サラマンダーの危険な攻撃を交わし続ける。
自分は前衛なのだ。
妹へ奴の気を向けさせるわけにはいかない。
しかし力の殆どを速度に向けているため、こちらの打撃は殆ど効いていない。
硬い鱗により全て防がれる。
サラマンダーからすると鬱陶しい羽虫が飛び回っている、嫌がらせでしかない。
しかしそれでいい。ルーシェが言ったのだ。
「出来る限り気を引いて下さい。僕が仕留めます」
元より考えるのは苦手なのだ。
信頼できる仲間がそう言ったのだ。何も悩むことはない。
出来る事を全力で…ただ全力でやる。それだけだ!
決意を胸に死地を踊るように。舞うように。
時間がない。
ルーシェは焦りを覚えつつ、サラマンダー中心に周りを飛び回っていた。
質の悪い魔石を小瓶に入れ、そこへ魔水を注いぎ、さらに一緒にシルフィの妖力を込める。
魔水に溶け込んだ魔力とシルフィの妖力を吸うことで、魔石が強く輝いていく。
魔力と妖力は似ているが別物。相反するそれを混ぜ合わせ留めることは、最上位のドルイドにしか出来ない荒技である。
一つそれを作るのに数分の時間がかかる。
ポイントポイントへの移動は何ともないが、こればかりは集中して行わないと、大爆発を起こしてしまい、全てが無駄になってしまう。
焦る気持ちを無理矢理抑えつつ、集中力をより高めて行くのだった。
合計十二箇所にそれを設置しなければならない。
急がねば…
要所要所でエリスへの援護や攻撃を加えつつ、自身はサラマンダーの視界に入らないように気を配りつつ。
全力で動き回るエリスも。それを援護するイリスも、お互いの魔力と気力が底を付く。
鬱陶しい動きをした羽虫の動きが鈍ったのを見逃すはずのないサラマンダー。
咆哮と共に、エリスのいるところをめがけ、全力で凶刃を振り下ろした。
「イヤーーーーーーッ!お姉ちゃん!」
イリスの悲痛な叫び声が響き渡る。
「大丈夫ですよ。イリスさん。エリスさんは生きてます」
イリスの後に立ったルーシェが、エリスを抱えている。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」
「ギリギリでした。気絶しているだけです。ご安心下さい。それより…イリスも行きますよ」
イリスの手を取り、その場から離れた。
サラマンダーは勝利の余韻を…命を…刈り取ったことによる愉悦を感じつつ、先程の悲鳴を探す。
獲物はまだ他にもいるのだ。
安心は出来ない。
周囲の状況を確認しようとしたとき、自分を囲むように周囲から爆発する音を聞く。
視界が白く染まる。
自身に何が起こったのか理解する前に絶命した。
「凄い威力…」
衝撃で目を覚ますエリス。
「あれは…一体…?」
「いや〜。うまくいってよかったです」
ただ一人ルーシェだけがあっけらかんとしていた。
「あんた!一体何したのよルーシェ?」
「えーとですね。魔石を魔水とかで強化して、それを元に魔法陣を作り、結界を張りつつ内部でそのエネルギーを連鎖増幅させて、ボカンッ!という感じです」
「え…?ということは素材ごと何も残ってないのでは…?」
「ちょっ!せっかくこんな苦労したのに…無駄骨って…こと…?」
エリスの膝が崩れる。
「あぁ…たぶん大丈夫ですよ?行ってみましょう」
「え?なんで?そのまま残ってる?」
「爆発によって脳を揺らしたのと、酸素を急激に消費して、結界内部を真空にしてたんですよ。同時に気圧を下げて内部を沸騰させ…」
「あぁ!もういい!わかった!とりあえずとんでもないことしたってことはわかったから。頭が痛くなる!」
エリスは耳を塞いだ。
「ルーシェさん…ありがとうございます。これで師匠を助けられるはずです!お姉ちゃんもほら!早く素材取らなきゃ!」
「そうね…ありがとルーシェ」
「いえいえ。僕は先に卵の処理をしておきます。二人も疲れてると思うので、焦らずゆっくり作業してください」
サラマンダーとの死闘はこうして幕を閉じたのだった。
アル「おい!俺たちのことは今回なしかよ!」
作者「あ…すまねぇなアル…お前の尊い犠牲は忘れないよ…」
アル「ふざけんなっ!生きてるぞまだ!」
作者「おーい!黒子の皆さん!お願いしますね〜」
アル「待てや!こら!放しやが………」
はい。ちょっとイレギュラーがありましが、気にしないで下さいませ!
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