十九話 上層の追いかけっこ 中層の卵
雪が降った地域もあるとか…寒いですね…ほんま勘弁して欲しいです。
温かい鍋を食べたい季節ですね!
ルーシェの掌を見つめる二人。
「これは…なんですか?」
「サラマンダー…つまり蜥蜴ですよね。それの脱皮した物の一部です」
「結構分厚いのね…」
「でも…色は…なかなか不思議な色をしてますね」
蒼くもあり朱くもある。不思議なのは色だけではなく、燐光を発していた。
「なかなか不思議な性質ですね。巻いて火に触ると耐火効果が高くて、火傷とかしないんです。なのに厚くすると燃えやすくなる。しかも燃やしてもこれ自体は焦げることもなくなることもないんです」
「すごいわね…」
「単純に装備品としても良い素材になりそう…けど、これはそれだけじゃないですよね…無限の燃料になり得る…」
「そうなんですよイリスさん!他にも新しい薬の材料にもなりそうですし…しっかり回収しなきゃなんですよ!」
「で、これがあると何でモンスターを抜けられるの?」
「これにはサラマンダーの臭いが残ってるんです。その臭いで近寄って来ないので、勝手に逃げてくれるんですよ」
「マジで?」
「マジですよ。お陰でこそこそせずに、堂々とど真ん中を歩いて帰って来たので、すでに身を持って実験済みです!」
「あんた…何自殺行為なことして試してるのよ…」
(あ、それは私も思った)
「本当ですよ…」
まさかのシルフィも含めてのツッコミに、少ししょんぼりしてしまったルーシェだった。
「……まぁそれより、これで奥へ進めますね。奥はあちこち脆くなってるところがありました。念の為お二人にも抜け殻の一部を渡しておきますね」
そして三人は奥へと進んでいった。
その頃アル達は奥へと慎重に進んでいた。
「まだ下層だが…変だな…何でモンスターがいないんだ?」
「たしかに…でも奥から凄い声が聞こえるわよ」
「一匹の声じゃないヨ」
「………」
「そこにルーシェ達がいるかもしれねぇな…」
「慎重に進むわよ」
四人は慎重且つ迅速に進んでいった。そしてルーシェが爆竹でモンスター地獄を作った場所へたどり着いた。
「なんだこりゃ…」
「凄い数の魔物の死骸が…」
「酷い臭いヨ…」
「……これは…まさか…」
そこには周りの魔物を取り込んだのか、巨大化した歪な混合種とも言うべき二体が、今尚戦い続けていた。
蠱毒というものを知っているだろうか。
複数の毒虫などを壺に入れて戦わせ、喰わし合い、最後に生き残った物には強力な新しい毒素と力を持った、呪いの元となる負の凝縮体とも言うべき物だ。
ルーシェは図らずとも蠱毒を作り出す結果となってしまった。
そして今、最後の二体が死闘を繰り広げていた。
「こ…コイツぁ不味すぎるだろ…なんだこりゃ…」
アルの疑問に無口な男が応えた。
「…これは蠱毒…しかしなんでこんなところで…」
「蠱毒?それは何ヨ?」
「…呪術の一つ…倒したモノを取込み…一つとなっていく…そして…それは呪いの種になる…」
「誰が何の為にそんなことをしたのよ!」
「…それは…わからない…ただ…」
「…ただ…?」
「戦ってはいけない…勝っても負けても…取り込まれてしまう…」
「「「んなっ!?」」」
そうこうしてるうちに、二体の戦いに決着が着いた。
「な…なんだありゃ…」
勝ったモンスターの体に負けた側が吸い込まれ、溶け込む様に混じり合う。
更に巨大化で醜悪な形になった。
それは蠍であり、複数の蛇の頭を尾から生やし、足先は多脚式で鋭く重い鎌。脚の方は馬の様な筋肉質なようにも見える。腕も複数あり、鋏。棘………酷過ぎて見てるだけで吐気を覚える歪さだった。
「こんなの…どうしようもないわよ」
「に…逃げようヨ…」
「だ…だな…」
撤退を決め、下がろうとしたとき、とんがりお姉さんが、不運にも足元の石に滑ってしまった。
「キャッ!」
「バチッ!バチバチバチッ!」
ただの石に滑っただけならよかったのだが、ここの特徴たる魔石成分が含まれている。
踏んでしまった石と地面の摩擦に反応してしまい、例の爆竹状態に…
「mqajlg-phdmkg!」
声にならないような奇声をあげて、新たな獲物に気付いた混合獣。
「し…しまった…逃げるぞ!お前ら!って!」
アルが仲間に声を発した時には、仲間達はもう走り出していた。
「アル!早く逃げないと置いてくわよ!」
「この…お前ら待てや!」
洞穴内部で地獄の追いかけっこが開始されたのだった。
そんな上層の地獄など知らないルーシェ達は、問題なく奥へと進んでいた。
「これ…本当にすごいですね」
イリスがしきりに関心していた。
サラマンダーの抜け殻はかなり大きさだったので、切られてマントのように羽織る形になっていた。
「そうですね。けど…万能ではないので気を付けてくださいね」
「そうか?こんなに凄いなら、心配なんて何もなさそうよ?」
「もしサラマンダーより強い者がいれば効かないですし、もし小部屋や通路の端へ追い込むようなことになれば、流石に襲ってくるはず」
「窮鼠猫を噛む…ですね…」
「そういうことです」
そこからまた暫く進んだ。
「ここには…モンスターの姿が見えませんね」
「巣に入ったってこと?」
「そういうことですね。いつ遭遇するかわからないので、気を付けていきましょう」
「わかったわ」
暫く探索を続けると、奇妙な空間に出た。
そこは溶岩地帯の中なのに涼しいのだ。
「これは…なんでしょうか?」
そこには無数の、大きな石玉のが転がっていた。近寄り触り、耳を当てノックをしたルーシェ。
「なるほど…石に見えますが…卵のようですね…」
「え…?」
「サラマンダーの卵ってことでしょう」
「こ…これ全部…?」
軽く200はあるだろう卵にギョッとするエリス。
「これが孵化すると…なかなかに危険ですね。あとで全部破壊しときましょう」
「骨が折れそうですが…仕方ないですね」
「そうね…それより…なんでここは涼しいの?」
「恐らく…あちらですね。行ってみましょう」
更に奥へ進むと地底湖があった。
「これは…すごいですね!」
そこには自然が作り出した荘厳な景色が広がっていた。
地底湖のため、石灰成分が多いためか、水が澄み切っている。
「綺麗ですね…」
「うん…すごいわ…」
姉妹も景色に感動していた。
(ん…?もしかして…この水は…ルーシェ)
(うん。わかってる。使えるだろうから汲んでおこう)
ルーシェはその水を水筒一杯に溜めたのだった。
「その水はどうするんですか?」
「飲水ならまだあるわよ?」
「この水は恐らく飲めませんよ」
「え?こんなに綺麗なのに?」
「はい。まだ調べてないのですが…恐らく」
「何故でしょうか?」
「これは魔石に長時間触れている水なので、魔力値が高過ぎる水に変異した魔水だと思います。サラマンダーは恐らくこれを求めて、ここに卵を産んだんですね。人には毒ですが、モンスターにとっては、最高の栄養源かと」
「な…なるほど…」
「ここは巣で、尚且つ卵があるところってことなので、そろそろ離れましょうか」
「え?どうしてよ?」
「お姉ちゃんわからないの?どんな獣でも人でも、子どもを守る親は一番怖いんですよ?定期的にここへ来るってことでしょう?」
「そういうことです。戦闘のし辛いここでやり合うのは危険なので、戦いやすいところを探しましょう」
そんなときである
「シュルルルルルルルゥー………」
長い舌をしきりに動かすモンスターが、入ってきた。
「うーん…なかなか思う様にはいきませんね…」
「アレが…サラマンダー?」
「で…デカイわね…」
全長3メートルはある、カメレオンの様な姿で、鱗は蒼や朱の燐光を纏ったサラマンダーが、ルーシェ達に気付いた。
昨晩も高評価してくださった方がいて、ありがとうございます。_(._.)_
やっぱり嬉しいことですね!
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長老「昔からタダより高いものはないと言うんじゃよ?」
作者「でも長老達だって、タダで自給自足生活してるじゃないですか!」
長老「生活のためじゃからの〜」
うん。今日の茶番は落ちがうまく思いつかなかったです。すみません。




