十八話 囲まれて
朝起きたら0度…うん…寒い…風邪には気を付けてください!
奥へ進むために使えるものはないのか。構造は?モンスターの癖は?その場にある物鉱石などの採取物は…?
少しでも何かないか。ルーシェは必死に探していた。
(あんまり根を詰めすぎないでよ)
相棒のシルフィが気遣い声をかけてきた。
(うん。わかってる…でも何かあるかもしれないし…)
(ん…それならいいんだけど…)
そこからまたこっそりと進んでいく。
慣れない場所で精神的な疲労が、知らず知らずに蓄積していたのだろう。
「あっ!っとと…しまった」
なるべく音を立てずに進行していたのだが、足元の石に躓き、大きい音と声を出してしまった。
「グルルルルルルルゥ…」
近くにいたレッドウルフの群れがこちらに気付き、走り迫ってきた!
洞穴内で育ったため、個体としては普通のレッドウルフよりも小型であるが、耐熱。耐火。耐毒など、高い耐性を持ち、敏捷性もかなり高い。
鋭い爪と牙。統率の取れた連携。かなりの難敵である。
個体値で言えばミノケンタよりも弱くはあるが、その数による連携によって、同ランクからそれ以上の厄介さを持つとも言われる。
(ルーシェ!大丈夫!?)
(流石にアレ20体は…厳しいな…)
ルーシェは迫りくるレッドウルフの群れの攻撃を凌ぎつつ、後退していった。
その頃休息をしていたエリスとイリスの二人。
「流石にちょっと遅いよね…?」
「そうですね…奥の方まで確認に行ってるのかと…」
「うーん…流石にそうだとしても…」
「それにルーシェさんは私達よりも強いですから、きっと大丈夫ですよ」
「そ…そうよね。でも流石に心配になるわね」
「そう…ですね…」
「…でも…何であそこまでルーシェは頑張ってくれるんだろうね…?私達騙してここに連れて来ちゃってるのに…」
「…普通ならとっくに見捨てられてもおかしくないですよね…なのに…軟膏や丸薬…それに危険な斥候まで引き受けてくれて…」
「…終わったら…きちんと謝らないとダメね…全部話さなきゃ…」
「そう…ですね…呆れられるかもですが…償わなきゃ…ですね…」
「ねぇ?たぶん疲れて戻ってくるだろうし…何か作って待ってようよ?」
「そうですね!私も協力します!」
ルーシェのために料理を作り始める二人だった。
料理が完成したあと、あちこち破けて汚れた姿のルーシェが戻って来た。
「ちょっ!ちょっとどうしたのよ!」
「怪我は?大丈夫なんですか!?」
「遅くなってすみません。怪我はないので大丈夫ですが…流石に汚れちゃいましたね」
苦笑いで応えるルーシェだった。
「怪我がないならよかったけど…何があったの?」
「気になりますが、それより先に座って休んで下さい!」
二人に腕を取られて、引っ張られるルーシェだった。
二人のお手製料理を食べて、一心地のついたルーシェ。
「美味しかったです!いやぁ…生き返る気分ですね。御馳走様でした…」
「「お粗末様でした。」」
「で、ルーシェさん。何があったんですか?」
「いやぁ…実は…」
奥でレッドウルフの群れに襲われた。あのあとレッドウルフの統率の取れた動きで、モノの見事に挟み撃ちにあってしまった。
(ルーシェ…どうする…?吹き飛ばそうか?)
(シルフィの力だとここの洞穴が崩落して、生き埋めになっちゃうよ…)
ジリジリと躙りよるレッドウルフ。一度に四〜五体で囲う様に飛びかかって来る。
ショートソードで防ぐ。流石に多勢に無勢だ。
「くっ…!キッつい!え…?」
何度目かの攻防のあと、壁に押し込まれた。体が壁にめり込むかのように突き抜けたのだ。
「壁が薄く脆かったようで…」
「………何でそんな状況で生きてるのよ?」
「実は…ゴーストとかになってしまったんじゃ…」
「ちゃんと生きてますよ。抜けた先には、何故か入ってこなかったんですよ。どうも件の強力なモンスターの巣だったんですね」
「強運ねあんた…」
呆れた顔をされてしまった。
「そうですね。そのおかげで奥に全員で行く手段が見つかりました」
「ほ…本当ですか!?」
「これを見てください」
ルーシェは袋からある物を取り出したのだった。
一方その頃アル達。
「あぁ…クソ寝みぃ…」
「急がないと行けないんでしょ〜?しっかりしてよね〜」
「そうだヨ〜?アルだらしないヨ〜?」
「うるへーうるへー!しっかり寝やがった癖に」
「んー?あんな酷い酔覚まし受けさせといて、そんなこと言うのー…?」
三人はからの冷たい視線を受けて、引き下がるしかなかった。
「わかればよろしい。今回の終わるまでは徹夜頑張ってね〜」
「死ぬわっ!流石に死ぬわっ!殺す気か!?」
アルの言葉を無視して、さっさと進む三人。
悪態をつきながら、追いかけるアルだった。
馬車ではなく馬で移動したため、早くに焔の洞穴へとたどり着いたアル達。
「やっぱここだったみたいだな…」
「そうね。馬車が停められてるからここね」
「クンクン…この臭いは…魔物の避けしてあるヨ」
「なら俺達も馬を置いて向かうぞ」
頷いた面々は気を引き締め直し、焔の洞穴へと足を踏み入れる踏み入れた。
さぁそろそろこの洞穴もクライマックスに近付いております!
楽しんで読んで頂けると嬉しいです!
そして…まだまだ新人なので、ブックマーク登録や高評価の数が少ないので、して頂けるとありがたいです!
シルフィ「露骨な稼ぎしてるよこの人…」
作者「はい…すみません。でもして頂けると…やっぱ嬉しいんです。お見逃しくだせぇお代官様」(蜜の美味しい花を…)
シルフィ「し…仕方ないな…私は何も見てないわよ」
次回もお楽しみください!




