十三話 遠征前夜
皆様おはようございます!
今日は予定があるので、早めに更新です!
さて、週末の金曜日!気を付けて頑張りましょう!
とりあえずチンピラ冒険者は壁にもたれ掛け、起きない程度にこっそり回復魔法をかけておいた。ここで話すのもなんなので、近くの喫茶店で話を聞くことにした。
「先程は姉がいきなりすみません…」
妹さんが謝ってきた。
「あれくらい挨拶みたいなもんでしょ?怪我してないんだしさ?」
姉さんの方はあっけらかんとしている。
「とりあえず怪我はなかったのでいいですが、いきなり攻撃して、やり返されて大怪我することになったら、どうするつもりだったんですか?」
少し呆れ顔のルーシェ。
「そんな大怪我はしないわよ。さっきのじゃあわかりにくかったろうけど、私も妹も魔術師だからね」
「え?妹さん?の方は、後衛から援護魔法使ってたのでわかりますが、貴女は明らかに格闘術でしたよね?」
「………」姉さんが言いにくそうにしていると、
「私達二人とも、同じ師匠に魔術をならってたんですが、お姉ちゃんはその…見た通りでもあるのですが、かなりおバカで…初歩魔術の詠唱ならいくつか覚えたのですが、中級以上のは長くて覚えられなくて…」と、俯く…妹さん。
「おバカって言うな!…はぁ…まぁその代わり、魔力を身体の中に巡らせて、細胞を活性化させる、身体強化に特化させたのよ。んで、元々師匠は武道も収めてたので、私は前衛型の魔闘士っていう、あまり知られてない適性なのよ」
「なるほど…」(縮地と同じやり方か…便利そうだから今度練習してみよっと)
「で、さっきも言ったけど、私達と一緒に依頼受けてよ!ね?」と、前のめりな姉。
「…お姉ちゃん強引すぎるよ…すみません…」と、頭を下げる妹。
「えーと…最近冒険者になったところなので、あまりランクの高い物は受けれないのですが…それに、そもそもその依頼がどんなものか聞かないと、返答できませんよ」
「ランクの方は問題ないわ!私達と一緒なんだから!」
「??どういうこと?」
「はいはい。お姉ちゃんはちょっと黙ってて。説明とかいつも大雑把で苦手なんでしょ?」と、妹が姉を窘めた。
「私達二人とも冒険者ランクは銅です。上位ランクの人と一緒の場合、下位ランクの人も一緒に依頼を受けられるモノがいくつかあります。今回は私達が依頼主兼という形ですので、受けられるように話を通しますので、ご安心下さい」
「そうだったんですね。知らなかったです」
「初心者でソロで動いてるとあまり知らないですよね」
「それで依頼の内容は?」
「私達の師匠が病気になりまして…師匠を助けるために、一緒に焔の洞穴に行ってほしいんです」
「聞いたことがないですね。どんなところですか?」
「地図で説明しますね。王都がここです。洞穴の場所はここ。馬車で移動して2日くらいですね。」
見た感じ山脈にあるという様だ。
「正直私達二人では中のサラマンダーを討伐するのは難しいので、腕の立つ人を探していたんですよ。お願いできませんか?」
「うーん…どうしたものか…」(シルフィにも相談しなきゃだし…アルさんからも、こっちいるとき、一緒にと誘われてるしな…)
「報酬はきちんとお支払いしますので…何卒…ほら!お姉ちゃんも頭をさげて!」
「えーと…頼むよ!ね?」
「出発はいつですか?先約などもあるので、先に話して大丈夫そうでしたら…」
「できるだけ早く出たいです。いつでも出られるように、馬車の確保は済んでます。あとは人数に合わせて食料の調達を済ませるだけ。という状態です」
「なるほど…では僕も許可を取ってきます。もし無理そうでしたらすみません」
「わかりました。いつ頃わかりそうですか?」
「遅くとも夜には。」
「では18時にここで待ち合わせでもよろしいでしょうか?」
「わかりました…あ、今更ですが、自己紹介がまだでしたね。僕はルーシェといいます」
「あ…本当に…遅ればせながらすみません。私は妹のイリスといいます」
「私は姉のエリスね!よろしく!」
今更ながらの自己紹介を済ませて別れた。
「………行ったわね…大丈夫かな?」
「騙すような形にはなりますが、私達には時間がありません…急ぎませんと」
ルーシェが来てくれることを願いつつ、騙すまねをして、良心の呵責に苛まれる二人がいた。
シルフィはまぁ何とでもなるとは思うから…と、先にアルさんを探しに向かった。
とりあえずギルドに向かい、受付にアルさんのことを聞くと、ギルド直営の宿兼酒場があるらしく、そこがアルのパーティの拠点とのこと。ギルドから近くて便利なのだが、シルバーランク以上しか、使えない施設らしい。
さっさとそこへ向かった。目立つ看板が出ていた。
《ホテルあらくれ》
《BAR 虎の塒》
………なかなかに入りにくい見た目をしている……。
(これは…どうしようか…)
悩んでいるところ、明らかにオネェとわかる、筋肉質な人が出てきた。
「あら…?どうしたの坊や?坊やが来るには、ここはまだ早いと思うわよ?もぅっ!お・ま・せ・さ・ん!」と、筋肉は体をくねらせていた。
「実はアルさんという冒険者を探してまして」
ガンちゃんのおかげで、この手の見た目の人が平気なルーシェは、物怖じせずに尋ねた。
「あっらぁ〜以外と肝が据わってるのね…アルならうちで今飲んでるわよ〜。遠出予定が行かずに済んで、大金入ったからって、飲みっぱなしね。明日は二日酔いね」
(ということは、数日は仕事なさそうだね)
「なるほど…わかりました。それでは酔が覚めた頃に、依頼でルーシェは出ていると、お伝えして頂けませんか?」
「それくらいお安いご用よ〜。ちなみにどこへ向かうのかしら?」
「焔の洞穴です」
「………見た目と違ってやるのね…気を付けていってらっしゃいね?」急に真面目な雰囲気で話す筋肉さん。
「はい!ありがとうございます!伝言よろしくお願いします!」と、頭を下げてた。
自室に戻ったルーシェ。まだ惰眠を貪るシルフィを起こし、事情を説明した。案の定答えは、
「ルーシェに任せる〜」といったものだった。
起きたシルフィは、数日離れることになるなら…と、お気に入りの花畑で、また蜜を楽しんでくると、さっさと出て行ったのだった。
ルーシェは初めて行く場所へ向けて、生薬など必要なものの準備を済ませ、ダービット達にも数日遠征に出かけることを告げた。
まだ待ち合わせの時間には早いが、待ち合わせ場所へ。
二人の姉妹は既に来ていたようで、こちらに手を振っていた。
「おまたせしました。先約も大丈夫そうでしたので、依頼、ご一緒させて頂きます」
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
「マジかぁ!助かる!ありがとよ!」
((バレずにすんでよかった…))と、内心ホッとする二人。
「ところで…その焔の洞穴ってどんな場所ですか?サラマンダーはどんな魔獣で?」
「かなり暑い場所で、溶岩地帯の危険地帯ですね。色々な鉱石や特殊な植物も採れます。サラマンダーは所謂大きい炎を纏った蜥蜴と思って下さい。火吹き攻撃や尻尾による攻撃が強力。と、ギルド資料室にはありました」
「耐火薬や火傷用の薬が必要そうですね」
「ある程度の物資はこちらで用意してあります」と、大きな麻袋を見せてきた。
「ところで、さっきルーシェは私の突きを受け止めてたけど、ルーシェは前衛の壁職か何かか?」と、エリスが聞いてきた。
「いえ、基本一人(いや、シルフィ達もいるから、どう言うのがいいんだろ…)で動いてたので、特には決めてないですね。弓も使いますし、多少なら剣も」と、装備を見せた。
「先程のチンピラさん達にも、さり気なく回復魔法使ってましたよね?」と、イリスが呟く。
「あ…気付いてたんだ。起きない程度にだけどね。そのまま何もせずってのは、何か気が引けたから…でも、よく気付きましたね」
「魔力の流れを感じましたから。ね?お姉ちゃん」
「…あっうん!もちろん気づいてたぞ!」
((絶対に気付いてなかったな))と、イリスとルーシェが目を見合わせた。
「………しっかし万能型とはすげぇな!やっぱ私が目をつけただけはある!」と、話を変えようとするエリス。
暫く無言で姉を見つめたあと、改めて他に確認事項はないか?話を進めていった。
「それじゃあ明日の朝8時に門前集合で!」と、別れた後、ルーシェはダービットやマリルの店に行った。
仕事を手伝ったあと、ダービット特製の仔鹿料理を皆で楽しんだ。
仔鹿のロースト。スープ。煮込み。フライにと、どれを食べても美味しかった。
「初めての遠征だろ?気を付けていけよ?危ないと思ったら逃げる。生きて帰ることが一番大事なことだからよ」と、ダービット談。
「ルーシェさん、お土産よろしくね!」と、マリル。
「仕事に行くのにお土産はないでしょマリル…と、ルーシェくん。旦那の言った通りよ〜。無茶しちゃだめよ〜」と、マリィさん。
「ありがとうございます!ここの美味しい料理、また食べたいので絶対に帰ってきます!」という食い道楽な答えに、一堂で笑いあったのであった。
次回から冒険パートです!
頑張ります!




