十二話 やっと報告が済んだら…
昨日も読んで頂いた方々、ありがとうございます!
めっちゃ冷えてきてますが、皆さん体調に気を付けて下さい!
よかったら炬燵にでも入りながら、読んで頂けると幸いです!
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「ルーシェといったか。誠に恩に切るぞ!」と、王から大臣、途中で呼ばれた王妃など一堂揃って、改めて感謝の辞と共に頭を下げられた。
「いえ。今回はたまたま薬があったので」という体を貫くルーシェ。
城へ入る前、馬車の中でのルナマリアからの内緒話。
「薬はあくまで知り合いからの貰い物にしておいてもらえませんか?」
「何故でしょうか?」
「もし効果がなかった場合、使えない物を用意したってことで、下手な軋轢を生みたくないってとこだろ?」とアル。
「それもあります。あと、効果があった場合、今後も何かあるとルーシェさんへ。ということになります。便利屋のように使われ続けるのは、ルーシェさん的にもよろしくはないでしょ?」
「そうですね。使われるかどうかは別として、今は色んなところを見て回る途中ではあります。留まり続ける足枷になるのは困りますね…」
「ということで、あくまで貰った物ということで、よろしくお願い致します」と、再度頭を下げたルナマリア。
「しかし…ルナマリアからしたら、こいつが作ったことにした方が、得が多いんじゃねーか?」
「アルさんは相変わらず粗暴なようで鋭いですね…」
「粗暴は余計だろ」
「ぶっちゃけた話、確かにそうでしょう。王侯貴族からの仕事は利益としては大きいです。ただ、私はあくまでギルドマスターです。私個人の得やギルドの得だけでなく、有能な冒険者を守るのも、仕事のうちですね。それに…信用を失くして、今後ルーシェさんとこちらの関係が悪化すること考えたら…ということです。誠意は見せられる時に見せること。大事なことです」
「なるほどなぁ…ルーシェ気を付けろよ?こいつから搾り取られないようにな?」と、苦笑いで忠告するアル。
「うーん…ここまで話してくれるので、大丈夫とは思いますが…」と、あまり人を疑うことがないルーシェ。
「そう言って頂けると助かります」
「それに、嫌なことがあれば、こっそり他所へ行けばいいですしね」と、笑顔と天然発言で釘を刺すルーシェ。
(ルーシェの勝ちだな…)
(私の負けですね)と思う二人だった。
「さて…此度の件、何か褒美で報いねばならぬが…何か希望はあるか?」
「特に何かとかは…考えてなかったですね」と、困るルーシェ。
「ルナマリアよ。何か妙案は?」
「そうですね…彼はまだ駆け出しの冒険者にございます。単純に資金というのが、一番かと思われます」
「そうであったか。なれば元々の依頼報酬に加えて報奨金を出そう。それで良いかな?」
「特に思い浮かばないので、それでお願い致します」
「相わかった。大臣よ」
「承知しました…」と、大臣が奥から巻物を持ってきた。
「御苦労。ルーシェには以下の褒美を与える。1000万フィル。また、こちらのメダルも一緒に贈ろう」
メダルには鳳の紋章。
「こちらのメダルは何でしょうか?」
「それは王家からの感謝の印だ。今後この国のどこを出入りするにも、許可や税がなく通れる。また、何か問題があったとき、王家が後ろ盾になるという証だ。存外便利だが、あまり濫用はせぬようにな?」と言って、大臣経由で手渡された。
「有り難く頂戴致します」と、頭を下げた。
「うむ。それではの…おっと、すまぬがルナマリアに話があるので、残ってもらえるか?」
「かしこまりました。ルーシェさん。アルさん。二人は馬車で先に戻ってもらえますか?」
二人は無言で頷いて、その場を後にしたのだった。
王城内のとある一室にて。
「ルナマリアよ。此度は助かった」
「いえ。依頼でしたからね。それより話とは?」
「概ね予想はついているのであろう?此度の件である」
「石化病についてですね。普通あれは呪いを受けた場合に起こるものですから。城内にいてる姫から発症することは、ありえないことですからね…間者が紛れ込んだ…というのが、一番可能性としては高いですよね?」
「そういうことだ。早めに手を打ちたい。何か妙案は?」
「そうおっしゃると思い、アルさんを同行しておりましたが、先程の中には怪しい者は居なかった様です」
「ふむ…重鎮の中におらぬのは幸いである」
「その他使いの者の中。全てを調べるのは大掛かりになりますからね」
「そうなのじゃ。下手に動いて逃げられるだけならまだしも、すべてを巻込み自爆などされるとなれば…」
「ですね…今回の石化病も、たまたま王が国を離れていたので、王まで感染することはなかったですが、普段の状態であれば、王家壊滅の可能性が高かった。と考えれば、自爆する可能性は高そうですね…」
二人の密談はそこから暫く続いたのであった。
「ところでルーシェ、お前さんは今日この後どうするんだ?」と、帰りの馬車の中で尋ねた。
「昨日のドタバタで、結局報告出来なかったので済ませてきます。そのあと何か受けれる依頼があればと考えてます」
「なるほどな…モノは相談なんだが、よかったらうちのパーティに入らねぇか?」
「パーティにですか?」
「そうだ。お前さんドルイドなんだろ?うちのパーティにゃあ今調度回復役がいないんだ。こないだ調度寿退職しちまってな」
「そうなんですか…うーん」
「無理にとは言わねぇが…」
「少しの間はここにいる予定ではあります。が、先程城で話した通り、あちこち回る予定なので…」
「だよな…まぁ無理にとは言わねぇが、こっちに居るときだけ、都合の良い時でいいからよ?考えといてくれや?」
「そういうことならわかりました。考えておきます」(後でシルフィにも相談しなきゃだね)
その後色々雑談や冒険話を聞いて、馬車の中は賑やかだった。
「俺は仲間んとこ行くからよ!またな!」と、去っていくアル。
まだ昼間だったお陰で、依頼報告は早くに済んだ。次の依頼はどうしようかな?と、ボードを見ていたところ、
「誰か一緒に依頼を受けてくれる人はいませんか〜?」と、声を上げる女性の姿と、もう一人その女性によく似た人。どうも姉妹の様である。
「嬢ちゃん達?俺らが手伝ってやろうか?」と、下卑た目を向ける一団が。
「おじさん達強いの?」
「俺らこれでももうすぐ銀になれるんだ。少なくとも嬢ちゃん達よりはつぇ〜ぜ?」
「うーん…何か嘘くさいわねぇ…」
「お姉ちゃん…やめとこうよ…」
「妹もこう言ってるから、ごめんなさいね?」
「あぁん?せっかく声かけてやったのに、何て態度だ!どうでもいいからこっち来て酒ツゲや!」掴みかかる男。
「汚い手で触るんじゃないわよ」と、ヒラリと交わし、男を投げ飛ばす。
「おっ!?親分!大丈夫ですかい?」
「いってぇっ!てめぇ!何しやがるんだ!表んでろやっ!」
「いいわよ。身の程を教えてあげるわ」
「お姉ちゃーーーん…」
ルーシェは慌てて受付に声をかける。
「女の子二人、あれ大丈夫なんですか?」
「ギルド内で喧嘩したら、問答無用で介入しますが、もう外に出ちゃいましたからね…まぁよくあることなんで、大丈夫と思いますよ?」と、受付女性はあっけらかんとしたもんだ。
「心配なら貴方が助けて下さいね。でも…あの二人なら大丈夫と思いますがね」と、他人事だった。
仕方ないか…と、外に出たら、路地裏から喧騒が聞こえてきた。
「くっそ!このアマやりやがる!」
「お前ら囲め!」
「やっぱあんたら弱いじゃないの」と、お姉ちゃんと呼ばれた方は、どんどん投げ飛ばしていく。もう一人の方は、魔術師だったようで、後方支援に徹しているようだ。
そこから5分も立たずに、男共は全員オネンネしていた。
「さてと…さっきから見ているアンタは何の用?」
「いや、先程ギルドから出ていくのを見て、心配になって来たんですが…必要なかったですね」
「ふーん…そうなんだ…?ところでアンタ…強そうね」
「え?いや…そんなことは」と、言いかけたとき、女性は目にも止まらぬ速度で、ルーシェとの距離を詰め、腹部へ突きを放ってきた。
ルーシェは突き手で受けつつ、体をごと後ろに飛ぶことで、突きを完全に無効化した。
「いきなり危ないじゃないですか!」
「ほら!やっぱり強いじゃない。うん!貴方がいいわ!私達と一緒に依頼受けてよ!」
「人の話を聞いてない…」
変な女性に絡まれてしまった。




