百ニ一話 親子の再会と団欒
遅くなってすみません。
通勤で何とか書き上げてます(´;ω;`)
立ちっぱなしで…脚が…足が…
アーカイブスから戻ると驚いたことがある。
時間が経過していないのだ。
「アーカイブスは精神へと繋がるのじゃ。肉体と精神では流れ方が違うのはわかるかの?」
というシリウスの説明。
もっとも、完全に止まっているというわけではなく、かなり遅く、ゆっくりとした経過であるという。
期間にして、向こうでの一年は現実での一秒らしい。
「良からぬことを考えておる顔をしておるが、やめておいた方がいいのぉ」
と、ルーシェの顔を見ながらシリウスが呟く。
肉体は精神の影響を多く受ける。
過去、研究者の中で今のルーシェと同じように考えて、研究に没頭した者があとをたたなかったらしい。
結果は悲惨なものだったとだけ伝えておこう。
「はい。やめておきます」
「ふむ。それが賢明じゃ」
過去の結果を聞いたルーシェは思わず敬語で、若干震えながら答えた様子が、その凄惨さを物語っていた。
そこからシリウスの案内(という名の地中掘削最短移動)の元、二時間後に魔族の親子の元へと辿り着いた。
「シリウス様。いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ!」
大柄な魔族はシリウスに気付き、巨躯には似合わぬ速度で腰を90度に曲げ、綺麗なお辞儀をした。
娘もそれに習い、一拍遅れで同じように腰を折った。
その立ち居振る舞い。醸し出す空気の全てが、火の祭壇前でのものとは違い過ぎるため、その目を何度もゴシゴシと擦るルーシェ。
「ふむ。進捗の方はどうじゃ?」
何でもないことのように、声をかけるシリウス。
小柄な少女に向かい、慇懃無礼な大男が頭を下げる姿は、見る者によってはどこか物悲しさを感じるかもしれない。
「すみません。流石にまだ…ですが、一部わかったこともございます」
うん。おっさんのひたすらに丁寧過ぎるこの動きは、かなり来るものがある…
「一体何でこんなに丁寧なのさ…気味が悪いよ…」
流石に来るものがあり過ぎたルーシェは、耳打ちをした。
「ふむ。奴等は魔族を抜け、お主の国に亡命することにしたのじゃ。そういうわけでルーシェ、よしなに頼むぞ」
シリウスの一言に目を白黒させるルーシェ。
その一言に、『いやぁ…御世話になります』と、決定事項のように、親子揃って頭を下げる。
どうも厄介ごとが、自分の知らないところで増えていた様だ。
諸問題は後で考えるとして、魔族の親子は何故亡命したのか。
ここでシリウスに何をさせられていたのか、聞き出すことにした。
「はい王様。うちの娘はハーフでございまして、そのぉ…魔族の中でも、うちは半分村八分みたいな状態でして…」
この大柄な魔族は、たまたま捕虜として捕まえた人間の女性と色々あり、恋仲になったそうな。
端的に言うと合体○。ハーフの娘が生誕。ということらしい。
魔族の中では人間に骨抜きにされた腑抜けと、酷い扱いを受けていた。
そんな中でも、質素な生活だが家族仲良く幸せに暮らしていたそうな。
しかしそれも突如として崩れる。
最愛の妻を拉致され、脅されることになる。
「そんな訳でして、娘にも辛く当たるよう脅され、仕方なく演技をしていたんですが…」
「元々が気弱なお父ちゃんだから、なりきらないとボロが出るって、他の魔族にも強く当たるようにしてたんだってさ」
あの場にいた雰囲気とのギャップはそういうことらしい。
うん。かなり疑わしいが…まぁスイッチが入ると豹変する人もいるしと、無理矢理納得することにした。
「それで母親はどうなったの?」
「ふむ。我とジークで助けたのじゃ」
胸を張りつつ、会話に割って入ったシリウス。
ジークと親子ですぐに動いていたのはこのためらしい。
「本当にありがとうございますぅ!」
その場でジャンピング土下座を決めた父と、楽しそうに真似をして遊ぶ娘。
父親の方が嫌になるほどド丁寧な理由は、たぶんこういうことに起因するのだろう。
「助けた母親はどうしてるの?」
「他の捕虜となってた人も一緒に助けたのじゃが、栄養失調気味だったりする者が多くてな。そいつらの看病に勤めてるのじゃ」
「いやいや、うん。そういうことならすぐにそっちに連れてってよ」
というわけで、そっちへすぐに急行したルーシェは、自身の薬と魔法により、体調を崩していた者達を瞬く間に治療していった。
突如現れた謎の少年の、訳のわからない治療行為で、元気になる人達を見て、世話をしていた母親は口をあんぐりと開けていたのは印象的だ。
その後ルーシェは、『この人達の面倒は代わるから、せっかくの親子三人の再会を、思う存分満喫してくるように』と、同行していた父子共々に言った。
『それは流石に…』と、遠慮する父親に対しては、『王の勅命です』と、その一言で黙らせたのだ。
「辛い思いして再会出来たんだから、これくらいは気を使わないと」
「…そ、そうじゃな…うむ…」
ジト目をシリウスに向けつつも、作業を進めるルーシェと、その言葉に二の句が継げなり、より小さくなるシリウス。
その二人の奥には明るい笑顔を浮かべながら抱き合う家族の姿。
その目から落ちる雫とその奇跡の眩しさは、きっと明るい未来を表している。
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