十一話 石化病治療
昨日更新分、最後に違和感があり修正してます!
よかったら読んで下さい!
あと、ブックマークが少しずつ増えてて本当にありがとうございます!
今後も頑張りますので、皆様よろしくお願い致します!
「さてはて…薬作り頑張らなきゃ…あ…依頼の報告、結局出来なかったな…」と、少ししょんぼりもしつつ帰路へ着いた。
「おう!おかえり!」
「おかえりなさい!」と、ダービットとマリルに迎えられた。
挨拶をしたあと、これから頼まれごとを済ますので、今夜は手伝えないことを伝えた。
「初仕事で疲れたんだろ?こっちは気にすんな!あとで軽く食べれそうなもん持っていってやるからよ!」とのこと。
部屋に入るなり、あれこれ袋から取り出していく。
「さて…今日手に入ったミノケンタの肝、こいつが薬の元になる」
ミノケンタが好んで食べる葉。つまりは薬効成分が凝縮しているのだ。
丁寧な血抜き後、薬草で包み蒸したり、あれこれ忙しなく動いていた。
元が臭いミノケンタ。製薬過程でどうしても臭いが強く出る行程がある。そんなとき、不運にもドアを開ける者がいた。
「はーい!出前お持ちしました〜………グフゥ」
ダービットに頼まれ、スープを運んで来たマリルであった。彼女がただの人なら倒れることはなかったのだが、彼女は犬の獣人。普通の人よりも嗅覚が何倍も強い。
結果として昏倒する程のダメージを受けてしまった。幸いなことに、スープは冷めないようにと完全密閉のポットに入っていたため、ぶちまけられることはなかった。
慌ててマリルを担ぎ、ダービットの元へ。
気絶したマリルを見てルーシェに詰め寄る常連客達。流石に店内が大混乱過ぎて、その日はもう営業にはならなかった。
常連客を何とか帰したあと、ダービットがルーシェに事情を問い詰めた。
「実は…ちょっと製薬を頼まれまして、作っていたところ、マリルさんが部屋に入って…」
「もしかして…臭いのキツいやつか?」
「…そうです。一番臭いのキツいときに…」
「たぶんだが…ノックもせずに開けたんだろう…わりぃな。普段うちはノックなんてしないから、いつもの癖で開けちまったんだろうよ」と、冷静なダービットが、渋い顔をしていた。
「いえ。先にすることを伝えていなかったこちらの落ち度です。本当にすみません…」と、また頭を下げたルーシェ。
「ところで薬を作れるなら、何か気付け薬はもってないか?」
「簡単な物なら。部屋から取ってきます!」
「しかし…製薬ができるたぁ…どこぞのボンボンか?」
その後意識の戻ったマリルにも謝った。
「こっちもいきなり開けてごめんなさい…けどあんな臭いの初めてだったわ…うっ…」と、思い出すだけでクラクラになるマリルだった。
なかなかトラブルで大変だったが、製薬作業も無事に終わり、手元には小さな小瓶がある。
濃縮式抗石化薬(注︰千倍稀釈にて使用を!と貼紙をしている)
「たっだいま〜!」と、元気よく小窓から入ってくるシルフィ。
「おかえり〜。って、朝まで何してたのさ?」
「いや〜。実は飛んでたらすっごい花畑があって、もうあれこれ味見してたらとまらなくって!」と、ご機嫌モードでルーシェの回りを飛び回る。
「そうなんだ?よかったね。こっちは徹夜で大変だったよ〜」
「…そ、そうなんだ?あんまり無理しないでね?」(風の声で薬のこと聞いたから、戻らなかったのよね…あの臭い本当に無理…)
「ん?どうかした?」
「な、何でもないわよ!ちょっと蜜を吸いすぎただけよ。そ…それよりその薬どうしたの?」
「飲み過ぎには気を付けなよ?こっちはちょっと頼まれごとがあったからね。今から届けるんだ」
「そうなんだ…徹夜したから私も眠いわ。少し寝てからそっちに行くわね」
「ん。わかったよ」(これは昼までは絶対に起きないだろうな…)と、苦笑して別れた。
「おう!今朝も早いな!」
「ダービットさん!おはようございます。昨夜はすみませんでした…」
「終わったことだって。気にすんなや?な?と、今夜は仔鹿使わせてもらうからよ?晩飯楽しみにしとけ!」と、朝から相変わらずの怖い笑顔だった。
「仔鹿大好きなんですよ!どんな料理になるか…楽しみにしてます!」
「涎垂れてんぞ!こりゃあ腕によりかけなきゃな!ほんじゃあ気ぃ付けてな!」
「はい!いってきます!」
ギルド前にルナマリアとアルが立っていた。
「おう!来やがったな!おはようさん!」
「ルーシェさん。おはようございます。お待ちしておりました」
「おはようございます。薬が出来ましたのでお持ちしました。こちらです」
「こんなちっこいので足りるのか?」
「千倍に薄めて使うものなので、十分に足りると思います」
「そうなんですね。使い方を間違えるといけませんので、ルーシェさん、一緒に御登城して頂けませんか?」
「わかりました」
「アルさんもご一緒願いますね。もしが起こるかもしれませんから」
「おう。まかせろ」
ルナマリアが用意した馬車に乗り、王城へ向かった。
「そこの馬車待たれ!」と門番。
「私はギルドマスターのルナマリア。王からの依頼で参りました。こちらが書状です」
「拝見させて頂きます………失礼しました。どうぞお通り下さい!」
「まだ一般区しか入ったことはないんですが…王都は…思ったほど大きいものではないのですね」とルーシェが呟いた。
「そうですね。見える部分はそうだと思います。ここの城は、地下へ大きく出来ているんですよ。全体へ水路を繋げるために、かなり深く作られているんです」
「王都の建造してるところも、見ていましたからね」
「え?ルナマリアさん?それって確か…かなり昔のことでは?」
「だからババアって言っただろ?いってぇっ!」と、笑うアル。
「……私はエルフですので、かなり長命なんですよ。エルフの中ではまだ二十代半ばってところですね」と言いつつ、アルの爪先を踵で踏抜くルナマリア。笑ってはいるが目だけすわっている。
「ところで…いきなり王様のところのへ行くことになったのですが…その…マナーとかは大丈夫なんでしょうか?」と、一抹の不安の隠せないルーシェ。
「そのことなら心配はありませんよ。ルーシェさんでダメなら、そもそもアルさんなんて連れていけませんから」と、笑うルナマリア。それを見てお手上げなポーズをするアル。
「ところでルーシェさん…一つ相談なのですが…」と、馬車の中で内緒話が始まった。
馬車を降りて兵に案内された。通常だと待合室へ通されて、暫く待つことになるのだが、今回は王命のためそんなこともなく、すぐ謁見の間に通された。
「おはようルナマリア。しかし…昨日依頼を出したのに、随分と早かったな」
王の姿はまだ若い様で、三十代半ばくらいか。顔には立派な髭。目元は優しいが、その光の奥には力強さを感じる。
「冒険者依頼をしたところ、別の薬を持っているとのことで、その薬を試してから、向かうかどうかの判断をしようかと」
「なるほど…して、その薬はどこに?」
「ルーシェさん。お願いします」
「はい。お会い出来て光栄です王様。こちらが薬です」と、小瓶を差し出した。
「ん…?そんな小さな物では量が足りぬであろう」
「こちらは祖父が製薬したもので、千倍に薄めて使うものです」
「ふむ…薄めて使う薬とは、聞いたことがないが…物は試しであるな。誰ぞあれ」
王からの命令で、別室が用意された。
「いきなり試して何かあるといかんからな」と、ご息女に仕えて移った者が、ベッドに横たわっている。下半身が既に石化してしまっている。
「ルーシェとやら、この者で試してみよ。何か必要なものはあるか?」
「わかりました。準備しますので、台と水をお借りしたいのですが」
「持ってまいれ」
「はっ!」
濃縮瓶から数滴取り出し、専用の計量器で割る。それをよく混ぜて、刷毛で石化部分へと塗り込んでいく。
「おぉ!これは!」
通常の抗石化は塗るとひび割れる様に石が砕け、かなりの痛みを伴うものだが、痛みを伴うことなく、石化部分が溶け出すように治っていく。
「こ…これは凄いな…まさか…精霊薬か何かでは?」と、ビックリするルーシェ以外の面々。
「効いた様でよかったです」(やっぱり長老直伝の薬は効くね!)
「すまぬが他の皆も含めて、娘も治してはもらえんか?」と、頭を下げる王。
「もちろんですよ!あ、一人じゃ時間がかかるので、塗るのお手伝いお願いしてもいいですか」
「それはもちろんだ!皆の者!」
「はっ!」と、動き出す兵士達。
ルーシェは稀釈を済ませたものを、随時兵士達に渡していく。
お昼前には全員の治療が無事に済んだ。




