百一二話 決死の覚悟
すみません!
今回ちょっと短過ぎる状態です!
今回の火の大精霊編、残りは最後まで一気に書ききりたいと思います!
同族がルーシェ達へと迫る中、ゆっくりと起き上がった大柄の魔族。
それに近付く小柄な魔族の姿。
「お父ちゃん!大丈夫…?」
心底心配しているのだろう、目尻には今にも溢れ落ちそうなほど、涙が溜まっている。
大きな体を起こし、小柄の魔族を自身の背へと促す。
「お父ちゃん!?こんな時まで守ろうとしないでよ!痛いんでしょ?お父ちゃんは私が守るんだ!え…?な…んで…?」
振り返った大柄の魔族は、有無を言わさぬ速度でその子の首を打ち、気絶させたのだ。
「すまん…せめてお前だけでも…」
少女を見る目は優しく…どこまでも優しかった。
時間にして僅か数秒。いや、もっと短かったのかもしれない。
同族が暴れているおかげで、幸いにも敵の目はこちらにない。
そのことを確認し、その子を守るために再度岩壁を殴り、そこへ少女を隠した。
そこで気付いてしまったのだ…
いや、気付けたのだ。
少女を寝かしたとき、僅かに地面が揺れていることに。
「お前等ぁ!眼の前のそいつらは一旦置いとけ!瓶を…」
仲間に注意を促すも、それは時既に遅し。
突然地面が隆起したかと思うと、今度は陥没したのだ。
「人質の回収、無事に完了なのじゃ」
陥没した地面の中から現れたのは幼女だった。
新手が来たと構え、視界の外れで周囲を確認する。
(これは…もう勝ち目はない…ならば…やるか)
周囲は既に敗北を喫していた。
それは目端で捉えた状況からだけではない。
眼前で仁王立ちをする幼女に、自身が勝てる気が全くしないのだ。
足掻いても無駄なのは百も承知。
しかし、だからといって何もせずに降伏などできようものか。
三人分ともなると、流石に運ぶのが大変だった。
そのため、いくつかはポケットへと入れていた。
決死の覚悟で、懐に隠していたいくつかの瓶を地面へと叩き付けた。
もう大丈夫と気を抜いていたシリウスは勿論、陽動の観点から他を相手取り、幾分離れたところにいた他の三人も、誰もが瓶が叩きつけられるのを、阻止出来なかったのだ。
大柄の魔族にとっては、決死の行為だ。
(すまんな…あの子を残してお前等のところへ行くことなるとはな…)
割れた瞬間に、瓶から開放された人々は、充満する毒素で息絶えた。
「ク…油断したのじゃ…」
「それは仕方ない…それよりもまずい…」
そう、その行為は火の大精霊への逆鱗に触れたことを意味するのだ。
「…何も怒らんのじゃ…何故?」
待てども待てども、資料に書いてあったようなことは起きないのだ。
死ぬ覚悟で瓶を叩き割った大柄の魔族は、目を恐る恐る開き、そしてやったのとは無意味だったのだと気付かされる原因となったのだ…
そう安堵したルーシェ達とは対象的に落ち込んだ魔族。
次の瞬間、全身を炎に包まれたのだった。
まさに一瞬の出来事である。
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