百六話 魔族による人の為の結界
今日から4月!
って、もう葉桜なってきてるんですけど!?
暑くなるの早過ぎません?
もう少しゆっくりでえぇんやで?
道中せめてもう少し長く、桜を楽しませて!
ボロ雑巾と化した魔族をマホが木の棒で突く。
「あー…こら完全にいってもぉてるなぁ」
シリウスにもみくちゃにされた結界、完全に全体の骨が砕け切りっている。
触らぬ神に祟りなしとはよく言ったもんだ。
アカネを含む周りの子供たちは、爆発により壊滅した集落の参上に、膝を崩している。
「とりあえず命があるだけめっけもんやで!」
気丈に振る舞い、何とか子供たちを元気付けようと振る舞うマホ。
「土地の修繕とか色々と、三人に頼めるかな?」
現状から何とかするべく、シリウス達にここのことを任せたルーシェは、一人その場を離れた。
集落から離れ、ルーシェは野営地跡へと戻った。
それを確認したようで、空からジークが舞い降りる。
「凄い炎が上がってたみたいだけど、みんな無事そうで何よりだよ」
「集落は無事じゃないけどね」
「ん?集落?」
「まぁそれは置いといて、他の島の状況はどうだった?」
「そうだねぇ。どこぞも人は生活してるね。魔族もあちこちにいたよ」
ジークには周辺の島々の探索を、最初に頼んでいた。
その順に報告を受けていく。
「ふむ…ということは、やっぱり捕らえられてるところはそこかー…」
自白剤で聞き出した情報の裏付けを、ジークの情報でしたルーシェは、一人コクコクと頷いていた。
「他にもできる事はあるかな?」
「うーん…あ!それなら…」
集落へ案内されたジークの仕事。
それは子供たちの相手だった。
「ちょっと!お兄さん!これはどういうこと!?」
「うん。傷付いた子供たちの心のケアだね」
「イタタ…尻尾も耳も引っ張らないで!」
「かーいー!」
「貸して貸して!」
無邪気さという悪意なき悪意に晒されつつも、抵抗は許されない状況。
ルーシェは内心頑張れとエールを送りながら、マホと話す。
「とりあえず寝床や暫くの食糧なんかは大丈夫そうかな?」
「色々とホンマすまんな〜。しっかしほんまに大精霊様に神様やねんなぁ〜。凄すぎるで」
シリウス達は前回の元帝国復興の経験があるため、恐ろしい速度で再開拓してしまったのだ。
それも以前よりも肥沃で遥かに使い勝手の良いように。
前回の元帝国同様に、すぐ収穫可能な農作物のおまけ付きで。
ちなみにジークをここで子供の相手をさせたのにも、別理由がちゃんとある。
今回あの爆発のあと、魔族は仲間が帰ってこないことから、即座に大軍で攻めてくる可能性もある。
ルーシェ達がまだいるときならいいが、もし不在のタイミングで来られたら、身も蓋もない。
そんなときに彼等を守る存在として、ジークには役立ってもらいたいのだ。
更に言うなら、慣らしておくことで、翼竜やらの姿になって、子供たちに余計な混乱や不安などを起こさせないための、準備期間にもなればというのもある。
ついでに全体の守備も固めておくか…
色々と考えてのベストな選択は、常に取れるものではないが、それでもベター以上にはなるように、できる限りの手は打っていく。
「あんたも偉いな〜。そないに色々と頭回してさ?私じゃあそんなことよぉしぃひんわ」
「マホさん。貴女は十分に凄いですよ」
自分ではどこが凄いのかわからずに、首を傾げている。
その姿を見て、本当に凄いのになぁ…と、その様子を微笑むように見ていた。
実際問題、自分もいっぱいいっぱいのはずなのに、これだけの年下の子達をまとめて面倒を見ているのは、かなり凄いことだ。
幸いなことに、この日大軍が押し寄せることはなかった。
恐らくは帰ってこない仲間のことから、不用意にこちらに来るのは危険と判断してのことだろう。
その日のうちに、ジークの翼竜化した姿などを見せて、子供たちを慣れさせる時間も無事に取れた。
実際のところ、慣れさせる必要すらなかったかもしれない。
翼竜化したジークに、子供たちは背に乗せろと、我先に群がっていたからだ。
先に子竜姿のイメージを擦り込んでおいたおかげだろう。
ジークは一人微妙な、疲れた表情をしていたのは…見なかったことにした。
翌早朝、まだ皆が夢の世界にいる中、奴らはやってきた。
ちなみに見張りはあえて立てていなかった。
その甘い罠に、魔族の大軍は物の見事に釣れたのだ。
激しい衝突音に、ルーシェはゆっくりと戸を開けた。
「いや〜。大漁大漁」
集落をドーム状にすっぽりと覆う見えない結界に、魔族共がアホなポーズで引っ付いているのだ。
「な、何だこれは!?結界か!?」
「引っ付いて離れねぇぞ!」
「それだけじゃねぇ…ヤバい…力が…」
アクエリアスの力も借りて作った今回の結界は、かなり凶悪である。
見えない粘着性の高い水は、一度触れればほぼ離れない。
そして魔力などを吸収し、捕えた魔族を養分に、更に強固な結界を張る。
つまり一度引っ掛かれば、脱出不可。
動力源も敵という、素晴らしくエコな物だ。
「うん。これ、帰ったら国のあちこちに付けておこう」
結果に満足したルーシェは、一人うんうんと満足気にしていた。
皆様いつもご拝読頂き、誠に感謝です!
色々と重なった結果、筆者は弱ぎっくり腰に…
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