百二話 勾玉と剣
度々飛び飛びになってすみません。
これを書いているのは夜中の2時前…
こんな時間になるまで、自分の時間が取れないとは…
自身で回復魔法を使い、傷を癒やすルーシェ。
「とりあえず無事そうでよかったわ。いや〜しかしあんな樹ぃの上に、人が住んでるとは思わんやったわ。エライすんまんやったなぁ」
「ホンマになぁ。ねぇちゃんの馬鹿力が悪いんやで?」
「っさいわ!あんたは黙っとけ。まだお尻叩かれたりんか?」
「それはもぉ堪忍や!」
「ねぇちゃんもアンタもその変にしとき。ホンマすんませんでした」
アカネと呼ばれた娘が、姉弟の終わらない掛け合いを無理矢理収め、頭を下げた。
「いえ。もう大丈夫ですし。というか、樹の上に住んでるわけではないですし」
「何や?自分住んでるわけやなかったか。てかエライけったいな喋り方やな。服装も変わっとるし…自分この島のモンちゃうな?」
「えぇ。まぁ。旅の冒険者です。今更ですが、ルーシェと言います」
「これはご丁寧にすんまへんな。ウチはマホ。ナナカドマホ。こっちの生意気でちっこいんは、弟のアオ。賢そうなんはアカネ。よろしゅうしたってな」
「アオやで!にぃちゃんよろしくっ!」
「アカネです。よろしゅうお願いします」
そう言って握手を交した。
「ところで、樹の上で何しとったん?」
「いやぁ…実は…」
人が何かに襲われる音がしたので、様子を伺うために、樹の上にいたことを話した。
「実際見てみれば、マホさんが何かを召喚したのか、ゴブリンみたいなモノが襲ってたみたいですが」
「それはまたエライ迷惑かけたみたいで。しかし…堅っ苦しい言い方やなぁ。マホでかまへんよ」
「そうですか?マホさん。あれは何だったんですか?」
「ありゃ。結局さん付けかいな。まぁえぇわ。私はこれでも陰陽師の端くれやねん。ちょっと見ててな」
そう言うと、胸元から一枚の紙を取り出した。
紙には何かの模様や、見たこともない文字が描かれている。
「やーい!ない乳〜!色気0の洗濯板〜」
そう言い放った弟に、有無を言わさぬ速度で拳骨を落とし、気絶させたマホは、改めてルーシェに紙を突き出した。
「よぉ見とってや」
そう言い目を閉じ、指で挟み持った紙を樹に向かい投げ放つと、紙が途中で小鬼の様な姿になり、樹に拳をめり込ませる。
「私は陰陽師やならな。こんな風に霊魂を紙やらなんやらに宿して、操ることが出来るんや」
「陰陽師…初めて聞く言葉です…」
「まぁせやろなぁ。うちの家系限定の適性らしいからなぁ」
そうこう話しているとき、ルーシェは気配に気付き、急に茂みに向かって矢を放った。
「ギュァァァ…」
「「「な、何や!?」」」
茂みの中から出てきたのは、大きな虎模様をした熊だった。
「あぁー…びっくりした。いや、助かったわ…って、ルーシェ!アンタえらい強いねんなっ!」
「いや、そんなことはないですよ」
「いやいや、かなりのやり手と見たね。ほら、アオにアカネ見てみいや?」
茂みから出て来た魔獣を見て、震える様に抱き合う二人。
「今のはハンシン熊って言うてな。ここいらのボスに当たる魔獣なんよ。それを難なく倒せるって…」
直接対峙したわけではないから、強さはわからなかったが、気配の消し方から察するに、厄介な相手であることは間違いない。
「…なぁルーシェ。会ったばっかの自分に、こんなお願いするんは忍びないんやけど…一緒にうちらの両親、助けるのに力貸してくれへんやろか?」
「うーん…悪いけど、やることがあって」
「話だけでも聞いてもらわれへんかな?実はな、うちの集落の大人達みんなが、最近連れ去られてしもんたんよ」
「え?強制参加な流れ!?」
ルーシェのツッコミは虚しくスルーされ、マホ達の集落の現状を話しだした。
少し前に黒尽くめのローブ姿の怪しい者が、三人現れた。
最初は考古学の研究と称し、やってきたそいつらは、この地域の文献を集めるため、集落の大人達に話を聞いて回った。
近隣の島からの出入りはあるものの、遠い海の隔たりを越えて来る人達は、殆どいないため、珍しさもあったのだろう。
基本人の良い質というのも相俟って、何でもベラベラと話していた。
そして話をしてもらうのだからと、黒尽くめの者は自国の土産だと、珍しいお酒を配ったのだ。
せっかくの酒があるならと、みんなで宴会をし、その酒を大人は皆で楽しんだようだ。
そして翌朝起きたところ、大人達の姿は集落のどこにもなかったのだ。
その日の夕方、三人のうち一人がやってきた。
『大人達は全てこちらの手の中である。この集落に隠してある勾玉と剣、それと焔の巫女を差し出せ』と。
「それがつい昨日のことやねん」
「なるほど…でもマホさんの性格なら、そいつをぶっ飛ばしてそうに思うのですが」
「ご明察。実際ふざけんなって、すぐドツキにいったんやわ。でも…手も足も出んかったんや…」
悔しさで握った拳の先から、血がポタポタと落ちてくる。
「奴らが求めてるんは、火の大精霊様からの預かりもんやねん。代々守ってきたもんやから、渡すわけにはいかんねん。大人集からも、小さい頃からずっと言われとったんよ『例え何があっても、あれは守らなあかん。儂等を見捨てることになってもや』ってな」
「なるほど…でも、何で勾玉や剣を、直接奪って行かなかったんだろ?」
「あぁ。あれは代々巫女になれる人しか、触ることがでけ…」
言い終わる前に、ルーシェは双剣を引き抜き構える。
「よく気付いたな。しかし、ノコノコとこんなところまで、本当に運んでもらえるとはな」
樹の影から黒尽くめ姿の者が現れた。
「早速頂くとしっい!!!!!!!」
バタンッ!と、激しい音を立てて前のめりに地面にめり込む黒尽くめ。
「その気配は魔族…なら容赦はいらないですね」
文字通り目にも止まらぬ速さで動き背後を取り、無明で後頭部を峰打ちした。
「し…死んでもぉたんか?」
「いえ、峰打ちなので生きてます。さて…早速こいつから情報を聞き出しますか」
そう言ったルーシェの笑顔は怖かった。
しかしマホはその言葉に喜んだ。
「つまりは…ウチらに協力してくれるってことやね!」
「あ、しまった。ついいつもの癖で」
「どんな癖やねんっ!」
しっかりツッコミすることは忘れないマホだった。
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