表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

聞きたかった言葉、知りたかった気持ち。

作者: 植木枝森

「先輩っ、私ずっと前から先輩のことが好きです。私と付き合ってくださいっ」

 放課後の廊下。暮れる夕日が眩しいほどの緋色で、辺りを染め上げている。他に生徒の姿はなくて、外の喧騒も遠くに聞こえる。私は今、ずっと想いを寄せていた先輩に、その気持ちを伝えた。

「……俺もさ、好きな子がいるんだ」

 帰って来た返事は、私の心に深く刺さった。ショックで足元がふらつきそうになった。

 分かっていたことだ。先輩は優しいし、誰にだって親しく声をかけてくれる。部活でも毎日一生懸命頑張っていて、そんな先輩のことを周りのみんなも認めている。

 だけど私は、目立つ取り柄もなく、何をやっても上手くいかない。先輩のことだって、いつも遠くから見ていることしかできなかった。

 最初から分かっていた。私なんか先輩と釣り合うわけがない。こんな私なんか、好きになってもらえるわけがない。そう何度も自分に言い聞かせても、動揺を抑えることはできなかった。

「……先輩の好きな子って、どんな子、ですか?」

 震える唇でそうつぶやいた。こんなこと聞くの、みっともないことだって分かっている。先輩を困らせるだけだ。それでも、溢れ出る感情が抑えられなくて、聞かずにはいられなかった。

「うん、その子さ、あんまり話すことはないんだけど、いつも俺のこと応援してくれてさ。と言っても、遠くから見ているだけなんだけど」

 ああ、聞きたくなかった。

「でもそういうのってさ、結構励みになったりしてさ。あの子が見ているから、かっこ悪いところを見せられない、今日も頑張ろうって、思えるんだ」

 やっぱり聞くんじゃなかった。私じゃない他の女の子のことを話している。本当に嬉しそうに、でもどこか恥ずかしそうに話している。そんな先輩の顔を見たくなかった。

 耳を塞きたい、走って逃げたい。それでも震える足は動いてくれなくて。涙が溢れそうになるのを、その場で必死に我慢した。

「だらかさ、そんな君から、好きですって言ってもらえたのが、本当に凄く嬉しくてさ」

「……え?」

「俺も、君のことが好きです。俺と付き合ってください」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  告白することで、前に進めるのかなと思いました。
2019/10/25 08:35 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ