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第七話

お待たせしました。

    レイ・・・


 声が聞こえる。


    あなたは自由に生きなさい


 女性の声だ。


    自分の思うがままに


 その声は僕の全身に響く。


    あなたには無限の可能性がある


 包み込むような優しい声だ。


    だけど運命はあなたを放っておかないでしょう


 そして僕を慈しむようだ。


    どんなことがあっても自分を信じて


 まるで子を抱く母のよう。


    あなたは一人ではない


 いやもっと別かもしれない。


    あなたの隣にいる少女


 その言葉でリーネを思い浮かべる。


    そしてまだ見ぬ仲間たちがあなたを支えてくれます


 その言葉には確信がこもっていた。


    私もあなたたちを見守っています


 この声が懐かしいと感じる。そして、声の主に会いたいと思う。


    あなたたちの旅路と未来に祝福を


 その時の声は少し哀しげだったような気がした。

 僕も何故か胸が締め付けられるような思いがして手を伸ばす。

 それはなぜかは分からない。

 ただ会いたいと思った。

 その手は届くはずもなく最後に

    私もいつか

 と聞こえた気がした。





 眼を開けると、天幕の天井が見えた。

 そして頬に雫が流れてたことに気付く。

 左手に何かの感触があり動かせなかったため、右手で拭う。

 落ち着いてから左を向くと、綺麗なプラチナブロンドの長い髪の美しい少女があどけない寝顔をさらしていた。

 どうやら寝ている間に互いの手を握っていたようだ。まだ、僕たちが小さいころ、太陽の下、眠くなってお昼寝してしまったことを思い出し、少し頬が緩む。確か、その時も寝ている間にいつの間にか手をつないでいた。

 リーネは美しく綺麗に、大人へと成長していっているが、幼いころの面影とかわいさは、まだ、今でも残っている。

 右手を伸ばし、彼女の頭をなでる。すると、リーネは少し身じろぎするが、すぐに収まる。まだ起きてないようだ。僕はそのまま彼女の頭をなで続ける。

 少し甘い香りがする髪はさらさらとしていて柔らかい。とても気持ちの良い手触りのためずっと撫でていたくなる。

 リーネは僕の手を、心地よさそうに安心しきった寝顔で受け入れている。

 あの時も、こんなことしたなと思い返す。

 そうして撫で続け、しばらくした後、頭から手を離す。そして、握った手もそっと離す。その時リーネは少し名残惜しそうな表情をした。

 リーネを起こさないようにそっと起き上がり天幕から出る。

 外はまだ薄暗かった。

 少し冷たい空気が僕の身体に触れる。


「んーーー」


 大きく伸びをする。体がほぐれて気持ちいい。

 深呼吸をして、新鮮な森のひんやりとした空気を吸い込む。ぼんやりとした意識が覚醒していく。


 朝まで眠ることができたということは、夜の間にモンスターが来なかったということだ。やはり、このような野営地はありがたい。長時間起こされることなく眠れると、前日の疲れを次の日に持ち込まないからだ。それに何より気持ちがいい。

 少しだけぼーっとして、今日見た夢の内容について考える。

 たまに見る夢だ。いつもあの声で僕に語り掛ける。その言葉は、同じことも違うこともある。今日はほとんど違う言葉だった。

 僕はこの夢をただの夢だとは思わなかったしできなかった。今までの人生の中でこの夢に助けられたりしたことが何度あったか。そして、その声を聴くたびに感じるよく分からない感情。懐かしいような、焦がれるような、悲しいような・・・。

 終わりのない旅をしようとしたのは、この夢もその理由の一つだ。決めたのはほとんど僕たちだが、この夢が後押ししてくれた。


「レイ、おはよう」


 思考をやめ、振り向くとリーネが僕に挨拶をしながら出てきた。


「おはよう」


 僕がそう返すと、リーネは僕の隣まで歩いてきて大きく伸びをする。


「んー。空気が気持ちいいね」


「そうだね。今は春だからね。さすがに冬は寒くてきつそうだけど」


「ふふっ、そうね」


 リーネは、こんな何気ない会話も楽しいようだ。僕も、リーネと話す時はどんなことでも楽しい。


「そういえばリーネ、今日は起きるの早かったね」


 まだ日が出ていないの朝の五時前だ。


「レイのほうが早かったけどね」


「そんなに変わらないよ、僕もついさっき起きたばっかりだし。それと、久しぶりにあの声の夢を見たんだ」


 リーネには僕のあの夢について話している。予知夢のような物は一般的とは言えないがあるし、夢を用いる魔術などもあるとはいえ、そのようなものでもないこれに関しては、大抵の人がただの夢というだろう。だけど、リーネは信じてくれる。リーネ(いわ)く、「レイがそうだと思ったのなら、きっとそうなんだよ」だ。


「そうなんだね」


「運命は僕たちを放っておかないって」


「それはもともと分かっていたことだしね・・・。ほんとは放っておいてほしいけど」


「それでも隣にいる少女、リーネは僕を信じてくれるって。全くその通りだね」


 最後の言葉を聞くとリーネの顔は少し赤くなった。


「それとまだ見ぬ仲間たちもだってさ」


「仲間ね・・・。もしできたらそれはそれで楽しそうね。レイと二人旅というのも捨てがたいけど」


「僕もそう思うよ。リーネと二人ってのもいいし、仲間ができるのは多分しばらく先じゃないかな。僕たちの仲間として一緒に冒険できる人って結構条件厳しい気がするけどね。まあ、あの声が言ったからにはきっとできるんだろうけどね。それと『あなたたちの旅路と未来に祝福を』だって」


「旅路と未来ね・・・。それなら私たちの旅はきっと素晴らしいものになるね」


「そうだね」


「それと」


 リーネは一拍置いてから


「会えるといいね、その声の人と」


 僕の眼を見て笑いながら言う。

 彼女はほんとによく、僕のことを見ている。


「この旅を続けていたら会える、そんな風に思えるんだ」


「レイがそう思えるならきっとそうなんだね。私もそんな気がするよ」


 変わらぬ彼女がそう言う。いや、昔よりはるかに成長しているか。でも、僕を信じて寄り添い支えてくれることはいつまでも変わらない。これからも、いつまでも。そんな確信がある。少し傲慢な考えのようだが、その瞳を見ていたらそう思わずにはいられない。

 少し気恥しくなり、周りを見る。


「あっ、リーネ」


 僕はそれに気づき、その方向を向いてリーネに声をかける。


「うわーー」


 リーネが感嘆の声をもらす。

 暗い森の中を駆ける光。眠っていた草木は、その光に照らされいきいきと動き始めるようだ。川もその光を受け、きらきらと輝き始める。

 日の出だ。

 今、森は夜から朝へと変わった。森の夜明けだ。

 太陽は、森を、僕たちを温かな光で照らす。太陽の光は大いなる生命(いのち)の光だ。これ無くして、植物は生きられない、そして、僕たちも生きられない。

 この光景は、森の夜を知っていなければこれほど美しいと感じないだろう。だって、当たり前だから。闇があるから光は美しい。闇がなければ光は輝かない。

 この光景の美しさは、旅に出なければ知ることはなかっただろう。僕たちは一つ、世界の美しさを知った。そして何より・・・。

 僕は隣にいる少女を見る。彼女も何を思ったのか同じタイミングで僕を見た。いや、多分同じことを思ったのだろう。

 この気持ちを二人で分かち合えたこと、それが何より素晴らしいことだと思った。

 二人でしばらくその光景を眺めた。


「じゃあ、顔を洗いに行こうか」


「うん」


 リーネは笑顔でそう返した。

 小川までの短い道を二人で歩く。

読んでくれてありがとうございました。

自分なりに光景の表現頑張ってみました。こういうのをもっと書いていきたいです。後、主人公と登場人物の掛け合いや描写、戦闘も頑張っていきます。もうしばらくは、この二人の関係や掛け合いを楽しんでください。しばらくしたら一人目のサブヒロイン?がでてくるはずだから(いつになるやら)。

熱い戦闘は、北のレーリスの森でバンバン出てくるはずです。その前に次の町がありますので待ってください。

何がともあれ楽しんでくれたら嬉しいです。よかったらブックマークや評価などもよろしくお願いします。

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