第八話
生い茂る木々の中、人に何度も踏みなされてできた道を歩く。
この森を照らす太陽は、もう少しで真上だ。
生命力あふれる緑に囲まれた道をしばらく歩いていると、前方の道の先が途絶えているのが見えた。いや、道が途絶えたのではない。
僕たちは、その境界線を越える。
「うわあー」
リーネが感嘆の声を漏らす。
僕たちは森を抜けた。そして、その先には、森とはまた違う雄大な自然が広がっていた。
僕たちがいる場所は少し高くなっているため、より広く、遠くまでその自然を見ることができた。
はるか先まで続く草原。その所々に点在する木々。草木は温かな太陽の光を受け、青々と生い茂る。左方には、森から流れた水によってできた大きな川が、こちらもはるか先まで続いている。川は、太陽の光を反射しきらきらと輝く。
また、草原には見える限りでも数十匹以上の動物やモンスターが見える。草や木に隠れて、または遠くて見えないだけで、実際にはさらに多くの生物がいるだろう。
「そろそろ昼時だし、ピクニックしない?」
リーネは少し弾んだ声で言う。
たしかに春の陽気は心地よく、この景色を見ながらするピクニックは楽しそうだ。
もし、モンスターとかが襲撃してきたらと思うが、僕とリーネなら問題ない。
「いいね。そうしようか」
「うん」
僕がそう言うと、リーネは嬉しさをはらんだ声で答えた。
「あそこがいいと思うな」
リーネは少し大きな木を指さしながら言った。
「じゃあ、そこにしよう」
僕たちは、その木の下まで行って布をしいて座る。
そこからはこの広大な草原、レーリス草原がよく見えた。レーリス草原は、南北のレーリスの森に挟まれた場所のほとんど、そして、オーネスト領のほぼ全域を占める。まあ、レーリスの草原=オーネスト領と思ってくれていい。また、ここから見えるあの川は、レーリス川といい、オーネスト領で一番大きな川だ。
レーリスという言葉自体や、その言葉がつく場所には、特別な意味があったりするが、長くなるので割愛する。
リーネが自分のマジックバックから、かごを取り出す。それを開けるとたくさんのサンドイッチが入っていた。
サンドイッチには、野菜や卵などの具材や、昨日のレンボアーの肉が入ってる。どれも美味しそうで食欲をそそられる。これは全て、リーネの手作りだ。今日の朝、作ってくれていた。
リーネを見る。少し自慢げな表情を浮かべている。
「食べましょう」
「うん」
僕は、手を伸ばし猪肉のサンドイッチを手に取る。一口かじると、肉汁があふれて、豚とは違った濃い味わいが口の中に広がる。噛み応えがありとてもボリューミーだ。
「美味しいよ」
僕が食べる様子を見ていたリーネにそう声をかけると、リーネは嬉しそうに笑った。そして、リーネもサンドイッチを取って食べる。
リーネのその笑顔に少しドキッとしたのは秘密だ。
のどかにこの時間を過ごす僕らに木漏れ日は降りそそぐ。
そうして、ひと時の安らぎはゆっくりと過ぎていった。
辺りに生え咲く草花の間にある道を歩く。道といっても整備はされていない、植物があまり生えていないだけの土がむき出しになったようなところだが。
だが、比較的安全な場所であり、歩きやすい、見通しがよいなど様々な利点があり、侮れない。
「あっ、うさぎがいるよ。かわいい」
「ほんとだね」
リーネに言われて見ると、十数メートル先に茶色いうさぎがいた。
僕たちが歩いて近づくとうさぎはこちらに気付く。
「あぁー」
うさぎはその小さな体をひるがえして逃げていった。
リーネは少し残念そうにした。まあ、リーネならうさぎに追いつけないこともないけど、そこまでしてまで見たりしたいわけではないのだろう。
そんなリーネの頭に、どこからか飛んできた蝶が止まった。蝶はまるで髪飾りのように見えた。
リーネは少し驚いたような顔をしたが、その後すぐに笑顔を咲かせた。
「かわいいよ」
僕がそう声をかけると、リーネはその笑顔をさらに強くした。
僕がリーネに見とれていると、がさがさと音がした。すると、兎など何匹かの小動物やいきものたちが、僕たちの横を走って通り抜けていった。いや、逃げていったというほうが正しいか。
リーネの頭に止まっていた蝶は驚いたからか、はたまた逃げるためかどこかに飛んで行ってしまった。
そのころには、既に僕は剣を構え、リーネもいつでも戦えるよう準備をして、動物たちが逃げて行った方向とは逆の方向を見る。
すると、二匹のうさぎが現れた。
いや、うさぎというのは正しくない。たしかに形はうさぎだ。だが、大きい。おそらく60センチ以上あるだろう。体の色は黄色で、眼は赤い。そして、普通のうさぎだったら絶対に持たないであろう特徴を持っている。角だ。黒い角が生えている。
その名は、アルミラージ。モンスターだ。うさぎが進化していった結果の一つではあるが、見た目以外の大きな違いは、肉食獣だということだ。まあ、うさぎも肉を食べないこともないが。アルミラージは、逃げることに特化したうさぎとは違い、自分よりも大きな生物や人をもその自慢の角と脚力で襲う非常に好戦的な種族だ。その速さと攻撃力、小回りのきく体で攻撃も当てにくく、並のモンスターよりも強いため、手に負えない。戦闘に精通したての人には、会いたくないモンスターの上位に上がるほどだ。また、村人にとっても家畜、はたまた自分たちをも襲ってくるため村では、恐怖の対象になったりしている。
今回は、二匹(おそらく番であろう)のため、その危険度はさらに跳ね上がる。単純に数が増えただけではなく、連携をして攻撃してくるからだ。その道にある程度精通するものでも複数人いないのならば絶対に会いたくないというほどだ。
とはいえ、僕たちになら脅威にもならないが。
アルミラージたちが僕たちを認識したとき
「アイスアロー」
既に十メートルほど距離を取ったリーネが氷の矢を二本放った。
アルミラージたちはすんでのところで氷の矢を回避した。アルミラージたちはその顔に警戒の色を浮かべる。
すると、僕に向かって一匹が跳びかかってきて、もう一匹がリーネに向かって走っていった。片方が僕を止め、もう片方がリーネ(術者)を倒してから、二匹で僕を倒す作戦なのだろう。もう片方のアルミラージを止めて、二匹とも僕が相手することは可能だが、この程度の敵ならリーネは全く問題ないため、そのままいかせる。
「はっ」
ぼくは跳びかかってきたアルミラージに合わせて剣を振る。
接触。
腕に強い力がかかってくるが、僕のほうが力が強いためアルミラージは吹き飛ぶ。だが、アルミラージは空中で一回転して地面に着地する。
その間、ただ見ているだけの僕ではなく、体を低くして剣を構えて地面を蹴り、アルミラージに接近する。
あと二メートルほどで斬撃の圏内だ。アルミラージはさすがにやばいと思ったのか、僕から見て左に跳躍する。僕は体の向きを変えそれについていく。
アルミラージはまた跳躍し距離を取ろうとするが、離せない。それは数秒にも満たないやり取りだったが、アルミラージは距離をとることが無理だと悟り、僕に向かって跳んでくる。
だが、既に距離はほとんどなく、慌てて跳んできたため、最初の攻撃と比べて勢いはあまりない。
「スラッシュ」
僕はそう言い武技を発動する。
剣が淡く光る。
強く一歩踏み込んでアルミラージが間合いに入る。その踏み込みと同時に若干斜め上から剣を振り、その刃がアルミラージをとらえる。
「キー――」
断末魔をあげ、アルミラージは真っ二つに切り裂かれた。
武技とは単純明快に武術の技だ。使う武器に対応する武技名を言う、または思い浮かべ、使おうと強く思うことで発動できる。上位のものほど強力だがそのぶん使うことが難しい。また、下位だからといって弱いわけではない。魔法と違い、使うとその武器の等級に応じた体力が消費される(要するに疲れるということ)。
スラッシュは、斬撃系の武器の基本ともいわれる武技だ。強力な斬撃を放つ武技で、剣などは、その鋭さで敵を斬るよりも重量で叩くという意味合いのほうが強いが、これを使うことによって斬る力も高まる。そのため、綺麗にアルミラージを斬ることができた。また、振り下ろす、横に払うなどしっかりと剣を振れるのならどんな斬撃にも使えるため汎用性も高い。
リーネの方を見ると、もう戦いが終わるところだった。
アイスで相手を妨害して、ウインドカッターで攻撃するというように、複数の種類の魔法をほぼノータイムで発動させアルミラージを追い詰める。アルミラージが回避した後すぐに、予測したように魔法が飛んでくる。回避できない空中で魔法を放たれたら危ないということで、アルミラージは跳ぶことができない。
その後、アルミラージの回避が遅れた瞬間、次に放たれたウインドカッターによってとどめが刺された。
リーネは等級の低い魔法のみを使ってアルミラージを追い詰めていき倒した。これは、その等級の低い魔法でもしっかりとした威力、魔法を発動する速さなどの技術や、相手を追い詰める魔法の運用に関しての技術も高かったからできたことだ。並の魔法使いだったら、一対一になった瞬間、すぐに近づかれてやられただろう。
リーネはアルミラージを倒した後、僕を見て笑顔を浮かべた。その笑みは、モンスターとの戦闘後のこの場には似合わないが。相変わらずその笑顔はいつでも僕に元気をくれる。
僕たちは、戦闘後の後始末を始めた。
お久しぶりです。
前回からかなり時間が空いてしまいすいません。うまく表現できていないなと思い、たくさんの小説を読んで勉強していました。
今回は前までと比べて表現が豊かに、読みやすくできたかなと思います。特に、アルミラージの見た目や設定は詳しくわかりやすく、戦闘などは読みやすくわかりやすくなったんじゃないかなと思います。
さて、今回の話では、レイたちの強さや一般的な強さはどうなのかなどを多少は表すことができたと思います。まあ、まだ、二人の本当の強さはまだ表現できてないですが。それと、今は一方的な戦いが多いけど、もう少ししたら、手に汗握る戦いがあるはずです(当社調べ)。
何はともあれ読んでくれてありがとうございました。
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