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余所者

「だぁー! 情けねぇなあくそ!」

 海辺の拠点である洞穴に戻ったネイトは、数十分前のヒナへの発言を後悔し嘆いていた。

(せっかく話が出来る人間で、しかも子供相手にムキになりやがって大人げない……!)

 住んでいる社会の環境が違い過ぎる以上、考え方にも相違があって仕方がないというのに、彼女のロア族としての思想を真っ向から否定してしまった。

 遭難している今の事ばかりを考えて、頭の片隅に置いたままだった戦友を失った悲しみがヒナと話しているうちに蘇ってきて、その悔しさを彼女の言葉を否定する事で紛らわせようとしたのかもしれない。

 少女相手に大人げない、彼女は村の老婆ペレ以外で唯一自分と言葉を交わし、ネイトを捕らえた人物ではあるにせよ、オオトカゲに襲われ危機に陥っていたところを救ってくれた恩人でもある。そんな相手に取る言動としては最低だったと言わざるを得ない。

「……あんまり真っ直ぐだったから、なんかムカついたのかもな」

 直感ではあるが、ヒナは思った事をそのまま口に出しているような素直さが態度や声色から伝わってきた。自分の考え、自分達の思想、それが正しいのだと信じて疑わない真っ直ぐな性格が垣間見え、正直気圧されてしまったといっても良い。

 彼女の言葉を認めてしまえば、敵や仲間の死を目の当たりにし、命は呆気ないものだと思っていた自分を否定された気がして、愚直で素直な彼女の眩しさに反発してしまった。

 いくら遭難して心身共に不安定な状態とはいえ、軽率な言動だったと悔やむネイト。

「あー……野宿の準備をするか」

 色んな事が起こり過ぎて、もうネイトの頭は物事を考える事すら面倒になっていた。

 これで今度こそネイトは孤立無援の存在になった訳で、とりあえず最初の一晩をこの島で越す事が出来るよう、自身で出来る限りの手を尽くさなければならない。

 ヒナには悪い事をしたが、余所者の自分と彼女は元々相容れない存在だったのかもしれない。ならば別れる良いタイミングだったと勝手に納得して、ネイトは割り切る事にした。

「まずは、火だな。またあの化け物が近寄らないようにしねぇと……」

 この島で生き延びるために出来る限りの事をしよう、半ば空元気のように無理矢理表情を明るくして、まずは夜を超すために必要なものを探すべく行動に出た。

  

「全然つかねぇ! なんでだよ!」

 その後洞穴の中には、ネイトの苛立ちが込められたやかましい声が何度も響き渡っていた。

 サバイバル術の講習で習った通り、野宿に不可欠な火を手に入れるべく掻き集めてきた木の枝や皮、小石などを使って繰り返し火花を散らして火種を発生させようとしたが、とにかく成功する兆しが見られなかった。

 木の皮に長い木の棒を立て、両手を木で挟んで擦り合わせるようにして動かし、摩擦熱で火を起こす原始的な方法を選んだのだが、ただでさえ成功率が低い上に疲労から集中力が切れているネイトには火を発生させる事が出来る筈もなかった。

 やがて、繰り返し激しく木の皮に強い力で擦り続けた事で木の棒が折れて飛び散り、ネイトはイライラが頂点に達し、仰向けに倒れこんで天井を仰いだ。

「あー! ……こんなのも出来ねぇのかよ、俺は」

 べっとりと全身に噴き出した汗で服が肌に貼りつく気持ちの悪い感覚に顔を歪め、火を点けられない自分の無能さを嘆く。

 夜の野宿において火は必要不可欠だ、明かりの他に体が冷えないための温度調節、先程ネイトを襲ったようなる凶暴な生き物の接近を防ぐための厄除けとして、なくてはならない。

 逆を言えば、火がなければ自然の夜の中では視界も利かず体も冷えやすくなり、危険生物の襲撃を許しやすい状況にもなってしまうのだ。

 とはいえ時間は待ってはくれない、日は既にオレンジ色の夕焼けに染まり、暮れが近づいているのは明らかだ。空調もない野外で焚き火無しで夜を超すのは危険極まりない。なんとかしなければという焦りと面倒だという諦めの感情がせめぎ合い、頭の中で葛藤していると、

「根性ない、見てられない」

 ついさっき聞いた、控え目ながらも芯の通った声で発せられる片言の言葉と共に、褐色肌の少女の姿が視界の端に現れ、こちらを見下ろす姿が目に入った。

「あんた……って、うおっ!?」

 続けて視界が真っ暗になったかと思うと、大きな牙と硬そうな鱗が迫ってくるのが見え、仰向けになっていたネイトは慌てて横に体を回転するようにしてそれを回避する。

 べたりとネイトの真横に落ちてきたのは、首元に矢が刺さったまま流血の痕が肌に残る、先程ネイトを襲ってきたオオトカゲの死骸で、だらしなく口を開け広げて動かなくなっていた。

「何すんだよ! なんでここにいんだ!」

「火を点ける、簡単じゃない。ちゃんとしないと、島のもの、無駄になる」

 そう言ってヒナはその場に腰を下ろすと背負っていた木で出来た簡易なカゴから弓を取り出し地面に散乱していた木の破片の一つを拾い、それに弓弦をくぐらせるようにして触れさせ、木の破片を片手で支えつつ、弓をもう一方の手で前後に激しく動かす。

 しばらくすると木の破片からは摩擦熱によって白い煙が立ち上り始めた。

「確か、弓ぎり式って奴だっけか? 器用なもんだなぁ……」

 長い時間を費やした事が馬鹿らしく思えるくらいにあっさりと火種は発生し、ヒナは用意されたままの焚き木に枯草で火を移して焚き火を完成させてしまった。

「おぉ……暖かい」

「火、命を守るし、命を脅かす。ハウロア様から頂く神聖な力。軽い気持ちで扱う、危険」

「軽い気持ちのつもりはなかったんだが……まぁ適当にやってたかもしれねぇな」

 火は徐々に威力を増し、洞穴内を明るく照らせるくらいの大きさとなったところでネイトはようやく安心し、自分が点けた訳でもないのに溜め息が口から漏れ出た。

「助かったぜ……でも、なんで手伝ってくれたんだ? 俺は、余所者なんだろ?」

 そう、と小さく答えたヒナは弓を戻した背中をネイトに向けたままこう答える。

「お前、余所者。私達の近くにいないならどうなっても良い、そう思ってた。でも、お前、こ

 の島の人間、違う。この島で死んだ命、ハウロア様の元へ還る。お前の魂、死んだら、どこ

 へ行く? そう考えたら、見捨てるの、ダメだと思って」

「は~、そうか……そりゃあ」

 反応に困る返答だったが、都合よく解釈すればネイトが野垂れ死ぬのを放っておけなかったとも聞こえる。単にロア族の宗教観からネイトにこの島で死んでもらう訳にはいかないと思っただけなのかもしれない。

「お前、ここに住むつもりか」

「え、あぁ。とりあえずはな、日陰で雨風も過ごせそうだし、空間も広いからな」

「……いつまでも、か?」

 真意を量るように、ヒナは静かな声で尋ねてきた。それは遠まわしにさっさとこの島から出ていけと言っているのかとも思ったが、ネイトは素直に答える。

「脱出する方法が見つかれば、出ていくさ。今は出て行きたくても出来ないからな」

「そう、か」

 ネイトの意思をどう受け取ったのか、ヒナは表情をこちらに見せようとしない。

 ぎこちない会話が途切れ、気まずい沈黙が流れ出す。

(この子がいなかったら俺は今頃トカゲの餌になってたかもしれないんだよな)

 危険な生き物に襲われたところを救われ、怪我の手当もしてもらい、焚き火の点火までしてもらって、正直村から脱出して助けられたばかりだ。正直情けない。

(けど、今の俺が生き延びるには……)

 ヒナはネイトを余所者と言い切りながらも、この島で唯一協力的に接してくれる人間だ。

 協力を求めれば受け入れてくれる可能性はゼロではないかもしれないが、出会ってすぐ捕えられた分を差し引いても返しきれない恩が生まれてしまうに違いない。

「……じゃあ、行く。それ、勝手に、食べろ。勝手に、逃げろ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」 

 自分はここで死ぬつもりはない、その気持ちだけは強く持っている。

 どれだけ苦労してもどれだけ情けなくても生まれ故郷に、自分がいた世界に戻る。仲間を失い軍人という立場が意味を成さなくなった今だからこそ実感する思いに突き動かされるように、立ち上がって背中を向けたまま、立ち去ろうとしたヒナを呼び止めた。

「あんたがこの島の神様を崇拝して、あんたなりの考え方で生きてきたのは分かった。けどあ

 んたの言った通り俺は余所者だ。多分、あんた等とはどうしても分かり合えないところがあ

 ると思う……だから、気安く謝りたくはない」

 さっさと頭を下げれば良いものをと自分でも思ったが、目の前で敵や仲間が呆気なく死んでいった様を目撃した事で命の脆さを痛感したネイトには、今彼女に謝罪してもおそらく嘘だとすぐに見抜かれてしまう気がして、正直に今の思いを伝える事にしたのだ。

「何を、言いたい?」

「っ、でもお願いはさせてくれ! 俺は俺のいた世界に帰りたい、そのためにはあんたの手助

 けが絶対に必要だ! 俺一人じゃ多分、生き抜ける可能性はかなり低いと思う。だから、も

 し俺が困った時、お前に助けてもらいたいんだ! 勝手な事言ってるのは分かってる。俺だ

 けで出来る事は俺がやる、けど余所者の俺じゃ知識も能力も限界がある筈なんだ、その時あ

 んたに助けを求めたい。助けてくれるかどうかは別として、頼む事だけでもさせてくれ!」

 図々しい事は分かっている、だから否定されたとしても仕方がない。

 それでもヒナという存在との接点を失うと、今度こそ本当にネイトはこの島で頼れる者がいなくなってしまう。せめてまた彼女の力を借りる事だけは許してもらいたい、その思いでネイトは頭を深々と下げ、協力してくれるように嘆願する。

「ん……あ、おい」

 突然の事にヒナは戸惑う素振りを見せるが、しばらくの間無言で考え込むように立ち尽くした後、ゆっくりと口を開く。

「ロアの民、相手に何かを求める時、そういう事しない」

「え?」

「顔、上げろ」

 下げたままだったネイトの頭を両手で掴むと、ヒナはそのままぐいっと顔を上げさせて、互いの視線を重ね合させてきた。

 鼻先が触れ合いそうなくらいに顔が近づき、不覚にもドキリと動揺してしまうネイト。

 だがヒナの表情は真剣そのものだ、そして彼女の言葉はネイトの言葉を否定するものではない、彼女の行動に大人しく従う事にする。

「目を、見て、そして、求めろ。でないと、相手に、伝わらない」

「っ……俺が島から脱出するのを、手伝ってくれ」 

 もう一度、簡潔に確実に自分の要求がヒナに伝わるように言葉を選んで、ネイトは視線を彼女の茶色がかった眼から逸らさないまま、言葉にした。

「……二つ、約束しろ」

「約束?」

「一つ、絶対、嘘をつくな。真実を隠す事、罰。真実を語らない者、信用出来ない」

 真意を試すような、気を抜けば意識を奪われそうなくらい気迫の込められた言葉に、ネイトも下手な言葉で飾ってはダメだと、彼女の眼を見つめながら返事をする。

「つかない、あんたには絶対本当の事だけ伝えるよ」

「もう一つ……っ、これ、お前が出る時まで、私、持っておく」

 ヒナが突き出した片手に握られていたのは、取られたままのネイトのドッグタグであった。

「あ、あぁ……そりゃ別にいいけどよ……なんでだ?」

「っ、お前、勝手に、いなくなるの、許さない。そのため」

 いわゆる人質代わりとでも言いたいのだろうか、別にあんなのなくても良いのだが、離しの腰を折ってしまいそうなので黙っておく事にする。

「いいぜ、余所者らしく島から出ていく時までは、あんたに預けとくよ」

「……分かった」

 少しの間を置いてから、ヒナは強張らせていた表情を微かに緩め、ネイトの頭から手を離し、数歩後退り距離を置いて、足下に横たわっていたオオトカゲの死骸の尻尾を掴み上げる。

「お前、島を出る。それまでに死ぬ、許さない。そのための方法、教えてやる」

「お、おぉ……」

「島を出る事を諦める事も、許さない。やるなら、やり遂げろ。良いな」

 そしてオオトカゲをネイトに向けて差し出してきて、何がしたいのかと首を傾げるネイトにこう要求してきた。

「最初に、食べ物の食べ方、教える。これ、お前にやる、だからお前が捌け」

「え、これって……あんたがの獲物だろ? ロア族のしきたりならあんたのものじゃ……」

「捕まえた私、お前にやる事にした。だからお前が食べろ、自分の力で」

 どう見ても食用の生物には見えないのだが、ロア族はいつもこういうのを食べているのだろうから、一応食べても害はないのかもしれない。

 それにヒナの厚意を否定する訳にもいかず、ネイトは正直あまり触りたくないざらついた肌触りのオオトカゲの死骸を両手で受け取り、予想以上のその重さに足をすくませながらもゆっくりと地面の上に置き直した。

「捌けって、どうやってやるんだよ。ナイフの刃通るのか? これ」

「皮膚の弱い部分、教える。そこから捌けば、皮が剥げる。やりながら、教えてやる」

「……まず手本を見せてもらえねぇのか?」

「一人で生き延びたいなら、自分でしろ。私は、知識だけ、与えてやる」

 表情一つ変えずに言ってくるあたり、冗談ではないらしい。ネイトは渋々ナイフを取り出して、動物園や自然公園で飼われていそうな化け物トカゲの解体に臨む事にした。

(これ……協力してくれるって事で良いんだよな?)

 島を脱出するにはまず、脱出するまで生き延びていなければならない。ヒナはネイトがサバイバルの術をろくに持たず、普通に生活するのも危うい事を見抜いているのは明らかだ。

 ならこうして島で獲た生き物の食べ方を教えてくれるのは、ネイトが生き延びる可能性を上げる事に協力してくれていると捉えてもいいのだろうか。

 そう思いを巡らせながら作業は進み、皮を剥がされグロテスクな姿になったトカゲの肉を切り分けて木を使った串焼きにして、この島で最初の今晩のおかずが完成したのだった。

「思ったより、肉の量は少ないんだな」

「カーダル、体の殆ど、硬い皮。食べられる部分、そんなにない」

 トカゲ肉の串焼きが何本も並ぶ焚き火を挟んだ向かいに座るヒナの言うとおり、捌いた後に残ったトカゲの硬い皮膚の部分はかなり大きく、体の三分の二を占めていた。

 その割に食べられる部分は一キロのステーキと大して変りなく、苦労した割に物足りない。

「さーて、じゃあ食べてみるか……」

「待て、喜捨が先だ」

 串焼きの一本を手に取って食べようとすると、ヒナがすかさず制止してきた。

 そして両手を握るようなポーズを取ると、目を閉じて神妙な面持ちになる。

「何をしてるんだ?」

「ハウロア様への感謝、命を与えてくれた奇跡に」

 いただきますと言って食事前に合掌する国もあるという、それと同じで食べ物への感謝を表す儀式の一つなのだろう、ネイトも少し小恥ずかしながらも彼女を真似した。

「よし、食べろ」

「はいはい……うぇ、うーん……」

 空腹に任せて一口で頬張るも、とにかく弾力が強くて何度噛んでも噛みきれず、鶏肉より脂が少なくて味もとにかく薄い、長時間噛んだ後のガムと表現するのが適切かもしれない。

 お世辞にも美味いとは言えず、コメントに困っている間も、ヒナは次々と肉の刺さった串を手に取っては口に含んでいく。

「よくそんな早く食えるな、中々飲み込めないぞ、これ」

「お前、歯が弱い。食事、だらだらするもの、違う」

 出会った時ネイトを組み伏せた力もそうだが、やはり自然の中で生きているからかヒナは見た目以上に男らしい豪快な力と性格な持ち主のようだ。

 喉に詰まらせないように肉を噛みまくって飲み込む事に集中しているうちに晩餐も終わり、

ネイトは肉ばかり食べて重ったるくなった腹を擦っていると、

「今日空腹で死ぬ事、ない」

「そうだな、味はともかく、これで女子みたいにフルーツばっか食べなくて済むかもな」

「……お前、生き物捌けても、獲るのは多分、無理」

 そう言って立ち上がると、ヒナは重々しい装備を背負い直してネイトに背を向け、洞穴の出口の方へと歩き出す。

「村に帰るのか?」

「そう、少し、時間かかり過ぎた。気まぐれで行動、良くない」

 ヒナは村から抜け出してネイトの支援をしてくれたが、それは村の人間には内緒にしているのかもしれない。

「お、おいあんた……えーっと、サンキューな!」

 今更ながら申し訳なさが溢れてきて、ネイトも腰を上げ、目を逸らしながら謝辞を述べる。

「さんきゅう?」

「ありがとうって意味だ、感謝って事、俺にかまってくれた事へのな」

 ヒナはネイトの言葉の意味を考えるように立ち尽くした後、くるりと彼の方へ向き直った。

「お前、脱出しないと、私がした事、無駄。だから、死ぬな」

「あぁ……俺を捕らえたあんたの命令なら、従わねぇとな」

「……ふっ」

 ややふざけ気味の返しに、初めてネイトの前で仏頂面を変化させ、呆れるように苦笑した。

「ネイトだ! 俺の名前、俺だけあんたの名前知ってるのはフェアじゃねぇから教えとく」

「ネイト? ……そうか。言いにくい、名前だな」

 そう言い残すとヒナは身を翻して夕暮れの日差しが差し込む洞穴の出口に向かって行った。

「……あ~、とりあえず、何も出来ずに凍死や餓死するのは回避出来そうだな」

 流れ着いた島で一人、サバイバルの経験もない人間が生きていくのは難しい。島の生活に慣れた人物の協力を得られただけでも良しとすべきだろう。

 静けさを取り戻した洞穴の中で一人、ネイトは尻餅をついて天井を見上げ、間違いなく人生で一番激動の一日を頭で思い返す。

「ジャック、ブライアン、お前等がいればキャンプ気分にもなれたのかもしれねぇなぁ」

 紛らわせようとしても消え失せない孤独感、海の底に消えた戦友を想うほどそれは強まり、

これからいつまで続くかも分からない無人島生活への不安に押し潰されそうになる。

『お前、余所者』

「分かってるっての、すぐ出て行ってやる」

 ヒナの発した言葉が蘇り、嫌でもネイトは自覚する、自分はここにいつまでもいて良い人間ではないのだと。いつまでも『ただ生き延びる』だけではダメなのだと。

「どうなっちまうんだ……俺」

 ちゃんと脱出出来るのか、この島にいる間常に苛まれるであろう悩みにいつまでも苛まれるうちに、溜りきった疲れによってすぐに睡魔に襲われ、ネイトは深い眠りにつくのであった。

 いくら窮地でも時間は止まってくれない、決して有限ではないネイトの生還への挑戦の日々が幕を上げるのであった。



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