銃声と叫びと 2
「え……何、言っている。ネイト……?」
「俺とあんたは、住んでる世界が違う。異物が混じったものは元には戻らない、だからあんた
達は今、混乱してる。そうだろ?」
「それは……そんなの、」
「分かっているのなら、すぐに出ていけばいいだろぉ!」
ヒナの言葉に被せるように、ミハロイが血眼になりながら叫んでくる。
「……俺は海の藻屑にはなりたくねぇ、だから生還するための最大限の準備が出来るまでこの
島で生きる、それをあんたらが認めねぇって言っても、だ。否定して、戦ってでも、俺は絶
対にその意思を曲げない」
ネイトは動じる事なく、構えた銃を下ろす事なく、改めて決意を口にする。
「村の皆、邪魔しない! 兄さん達も説得する、だから……!」
「それが難しいって、言ってるんだよ。だから……無理するな」
村の人間に訴えかけまでして、ヒナは自分がこの島にいる事を認めるよう頼んだという。
そんな彼女の想いが嬉しいからこそ、ネイトはあえて彼女を突き放すような言葉を漏らす。
「ネイト、お前、どうして、そんな事、言う?」
「……あんた言っただろ、俺に元いた世界に戻る事を諦めるなって。なら俺はここで何をして
も生き抜く。けどそうするとあんたの兄さん達みたいな、俺を嫌ってる連中と対立は避けら
れない。あんたはロア族の人間だ。俺のせいであんたが他のロア族と対立するのを見るのは
嫌なんだよ」
自分に関わった事でヒナが仲間と対立する姿を見るのは、自分が傷つけられるよりも心苦しい事だった。彼女が心優しくて純粋な人物だと分かっているから。
「それ、ただ諦めてるだけ!」
だが、ヒナはそんなネイトの気持ちを一言で跳ね除けてきた。
「な、何をだよ」
「お前、私のせいにした! 私が村の皆と仲が悪くなるのを嫌がるから、お前はロアの民と分
かり合おうとしないって。それ、認めない!」
ヒナの怒りの矛先は完全にミハロイからネイトに変わり、鬼気迫る表情を見せつけてくる。
「そんな事言ったって、仕方ねぇだろ! 俺を受け入れられない人間はいる、あんただって村
の人間相手に辛い事言われたんだろ、それが分かっててこれ以上あんたに甘えるなんて、情
けなくて、苦しいんだよ!」
「余計な、お世話! やりたい事、言いたい事、しないと何も変わらない! お前の我慢、私
がさせた。私も、村の皆を困らせないように、お前と関わるの止めようか悩んだ。でも、出
来なかった。どれだけ考えても、お前と会いたい、話したい、そんな気持ち誤魔化せない!
だからお前も、本当の事、言え! それでも男か! オランボードー!」
力いっぱいの罵倒は、しかしネイトに本心を曝け出させるための激励をしているようにも聞こえて、胸が大きく高鳴る音が彼の耳に確かに聞こえた。
「俺は、俺だって……本当はもっとあんたと喋りてぇ、あんたに俺の世界の事もっと教えてぇ
よ! あんたは俺の命の恩人で、心の支えで……俺はあんたが好きなんだからよ!」