少年との出会い
僕は猫だ。真っ白な毛並み。
そして二足歩行で人間の言葉が話せる。
え?変だって?大丈夫。そのうち慣れる。
そして背中には糸の切れているギター。
誰のギターかはわからない。
そして僕はそのギターの「持ち主」さんを探す旅をしているんだ。
雲ひとつない晴れた日、僕はいつものように「持ち主」さんを探し歩いていた。探す旅を始めて2週間、まだなにも手がかりを掴めていない。今日は大通りで聞き込みでもしよう。
すると出会った「あれ」に。人間は面白いことに「あれ」が赤になると止まり、青になると歩き出す出す。僕は人間は「あれ」に支配されているのだと初めの頃は思っていた。しかし違ったのだ、実際にしてみると楽しい。そこで僕は人間は「あれ」に支配されているのではなく「あれ」と遊んでいたのだと理解したのだ。今では「あれ」と僕は友達だ、いや親友だ。などと考えているうちに気づけば「あれ」の間を4周ほどしていた。さすがは親友だ。よし、あと2周したらやめよう。と思い振り返った瞬間、何かとぶつかり僕は飛ばされたのだ。
「ごめん!大丈夫?え?猫がギター背負ってる!?」
僕にぶつかったのは赤いパーカーにおっきいカバンを持った男の子だった。しかしそれにしても痛かった。たぶん足の骨が折れている気がする。いやごめん、折れてはいない。少し話を盛ってしまった。ただそれぐらい痛かったのだ。まぁ謝ってるみたいだし許してやるか。
「別にいいよ、気をつけてね。このギターは僕の大切なものさ。」
「猫が喋った!?えーーーー!?」
いちいちリアクションの高いやつだ。
「喋る猫だっているのさ。僕は行くところがあるから行くね。」
「待って!待って!」
「なにさ」
「君のギター弦が切れてるよ?うちの家、楽器屋さんなんだ。よかったら来なよ。」
弦?あーこのびよーんってなってる糸のことか。
「大丈夫。僕は弾かないんだ」
「そんなこと言わずにおいでよ!家の庭に猫じゃらしたくさんあるよ!」
「猫じゃらしは1年前に卒業したよ」
「えー。じゃあ大っきいタンスあるよ!登りたいでしょ?」
「タンスぐらいじゃ僕は満足しないよ」
「なんでだよー。うーん、そうだなぁ」
なんだこの子はしつこいなぁ。
「マグロの缶詰もあるよ」
僕は彼の家に行くことにした。
そしてこれが僕と少年の出会いだ。
僕の旅が少しずつ動き出そうとしている。