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雑多な短編集

VRMMOで俺は無双したい(ほんとは異世界転移)

作者: すらぇむ

唐突に始まる物語。定番ですね。

 俺の名前は千里 隼人( ちり  はやと)


 大学に入ったばかりのナイスガイだ。


 ゲームが好きで今日もゲームをしていた気がするんだが……。


 気が付いた時には知らない世界にいた。


 辺り一面草原である。よく見ると見たことがないような植物もある。


 極め付きは空だ。月が赤いのである。


 赤い月を見たとき俺は閃いた!


 これは!!


 「あのゲームのVRMMOが出たのか!」


 空にあるあの赤い月。


 これは昔やりこんでいた、あるゲームの空に登場する、そのゲームを象徴するものだ。


 そうかー。VRMMOが発売されだしてきたから、あのゲームもVRMMOで出たんだー。


 なぜか記憶がないが、俺がそのゲームを買ってやらないはずがない!


 はっ! もしやVRMMOをやったときに記憶が飛んだのかも?


 それなら帳尻が合うな!


 風が吹き、草木がそれによって揺れ動く。まるで本当の草木のように。


 「それにしても最新のVR技術って半端ねぇ。物凄いリアルだー。まるで本物みたいだ」


 ??「まるで本物みたいだ。じゃない!!! 本物なんです!!!」


 俺の呟きに突然誰かがツッコミを入れてきた!


 「誰だ!」

 

 俺は声の主を探す。確か上の方から聞こえたよな?


 すると空からちみっこいデフォルメされた女の子が降りてきた。


 ほっほー。流石は最新のVRMMOなかなか面白い演出だなー。


 ??「私は女神の使い。貴方の手助けをするためにやってきました」


 「つまりこのゲームのヘルプ機能ってわけか。ヘルプさんと呼べばいいかな?」


 ヘルプ「ヘルプさんじゃありません! ってもう名前欄が変わってるし!?」


 「じゃあ、チュートリアルさん?」


 チュートリアル「どっちも違います! だから名前欄!?」


 「チュートリアルさんじゃ長いなぁ。やっぱりヘルプさんだな」


 ヘルプ「だからヘルプじゃ、もうっ! ヘルプでいいです」


 どことなく疲れたようなヘルプさんの様子。

 実にリアルな感情表現だ。AIの進歩ってすごいね。作りこみ半端ねぇ。


 ヘルプ「いいですか? 貴方は適正があったと見なされたため、あのゲームの元になったこの世界に転移されたのです」


 「ほうほう」


 ヘルプ「そして適正のあるプレイヤーをこの世界へ転移させることで女神様は力を使い果たしてしまいました。あの塔の最上階にいるにっくき敵である魔王を打倒して、女神様を助けてください! お願いします! 私もそのために手助けをしますから。女神様さえ助けていただければ貴方を元の世界へ戻せるはずです」


 「なるほど。今回のゲームだと、そういう物語設定なんだ!」


 ヘルプ「物語の設定の話じゃありませんっ!」


 「君の立場はわかってる。お助けAIだからそういう風に言うしかないんだろ? 大丈夫だ問題ない」


 ヘルプ「AIじゃありません。ちーがーいーまーす!」


 「わかってるわかってる」


 ヘルプ「こいつ絶対に分かってない……」


 何かヘルプさんがつぶやいたようだが、俺には聞こえなかった。


 「それにしても装備が初期装備なんだなー」


 ふと気が付いたが俺はあのゲームの初期装備をしていた。


 「以前装備していたのはリセットされたのか? ヘルプさん」


 ヘルプ「大変申し訳ありません。本当であれば以前持っていらした装備も一緒にこちらの世界へ持ってきたかったのですが、女神様の力がもうそこまで残っていなかったのです」


 ヘルプさんは残念そうにうなだれる。

 実にリアルだ。


 「なるほど。そういうことか。大丈夫だ。以前の装備があればいきなり俺ツエーだしな」


 ヘルプ「本当に申し訳ありません」


 「つまり、これは今回のVRMMOのβテスターとして俺が選ばれたってことなんだな。だから適性があるってことで以前あのゲームをやってた俺が選ばれて、装備も最初だから初期装備なんだな! 運営もなかなか考えてるね」


 ヘルプ「だからっ! 全然っ! 違いますっ!」


 「みなまで言うな。俺にはわかってるから」


 ヘルプ「まったく! これっぽっちも! 意思疎通ができていない!」


 「それよりゲームを先に進めようぜ。ヘルプさん。塔はどっちの方向だ?」


 ヘルプ「もういいです。あっちです」


 そうしてヘルプさんと一緒に数十分歩くと天高くそびえ立つ塔が見えてきた。

 昔ゲームでさんざん見たはずだが、VRMMOで見るとまた違った印象だ。


 「あれが今回クリアする塔か」


 ヘルプ「あそこではモンスター達が蠢いています。気を付けてください」


 「敵とかは以前と変わっているのか?」

 

 ヘルプ「前のゲームのベースがこの世界になっているので大きくは変わっていないかもしれません。でもゲームと現実とは違うので、その分の違いはあると思います」


 「いやだなぁヘルプさん。ゲームと現実をごっちゃにするやつなんて普通いないでしょ」


 ヘルプ「お前が言うんじゃない!」


 えー? 俺ほど常識人はいないと思うんだけどなー。


 ヘルプさんは優しくないなぁ。



 そして俺たちは塔のある街へやってきた。そこへ門番なのか、女騎士が立ちふさがった。


 女騎士「お前、ここはモンスターが現れて危険だ。速やかに立ち去るが良い」


 「おおー。これがNPCか。これも実にリアルだ! まるで本物の人間みたいだ!」


 女騎士「何を訳が分からないことを……」


 「大丈夫だ! 俺は触ったりはしない。こんなことでセクハラ認定されて、垢BANされたくないからな。このゲームは18禁じゃないんだろ?」


 女騎士「なんだ? こいつは何を言っている? 怪しいやつだ。さっさと去れ!」


 「うわ、強制排除イベントか! これじゃゲームの続きをやれないじゃないか!」


 ヘルプ「待ってください! 私は女神の使い。この方は女神に認められた方です。女神様を助けるためにここを通してください!」


 女騎士「おお、貴方が女神様の御使い様だったとは! これは大変申し訳ありませんでした。お通りください」


 ヘルプ「これで通れますよ」


 「なるほど、こんな風にイベントが起こるんだな。いやーVRMMOだと全然違う気分だなー」


 ヘルプ「だーかーらっ! 違いますって!」


 その言葉を聞くことなく、俺は駆け出して街へ入っていった。


 「これがあの街かー、昔見慣れたはずだけど、やっぱりVRMMOだと違って見えるねー」


 ヘルプ「あー。ちょっとー。待ってくださいー」


 ヘルプさんは仕方なく後を追ってきた。



 「さて、塔へ行くと戦闘だろうから、その前にいったんログアウトしておくか」


 ヘルプ「ログアウトとかできませんよ?」


 「はっはっは。何を言っている。宿屋でログアウトできるはずじゃないか」


 ヘルプ「だからここはゲームの元となった現実の世界だから、ログアウトとかできないです。死んだら終わりです」


 「ログアウトができないだとっ! 死んだら終わりだと! まさか! じゃあ、もしかしたらそういうことなのか!?」


 ヘルプ「だから私が何度も言っていたじゃないですか! やっと信じてくれたんですか?」


 ヘルプさんが希望に満ちた目をしている。



 「このVRMMOがデスゲームだったとは!」


 ヘルプ「ちっがーうっ!」



 「俺は知っているぞ。デスゲームだったら俺の本当の身体がヤバイ! 出るものが出しっぱなしになってしまってるじゃないか!」


 ヘルプ「だから違いますって」


 「ヘルプさん。女神様は俺以外にもたくさんプレイヤーを呼び出したのか!?」


 ヘルプ「あ、はい。あなた以外にも結構プレイヤーさんがいるはずです」


 「それならば集団で意識不明状態の者が増えているってことで俺の身体は病院とかに保管されてそうだな。よし、本当の身体がなまってしまわないうちに、ほかのプレイヤーと合流してパーティを組んで塔をクリアするぞ! そしてデスゲームなんてものにしてくれたやつに一言言ってやる! いくぞ! ヘルプさん! 手助けを頼む!」


 ヘルプ「まったく通じてないのに、目的だけは合ってるとか。もうそれでいいや」

 

 ヘルプさんがあきらめの表情で言ったのだった。



―――こうしてハヤト・チリの長い戦いが始まった。


 彼はゲームだと思っていたおかげで、脳内のリミッターが外れ、現実ではありえない動きをすることができたのだった。


 頑張れ! ハヤト・チリ! 君の活躍でみんなをデスゲームから解放するんだ!


 ヘルプ「だからデスゲームじゃないです!!! ゲームの元になった異世界なんです!!! ゲームじゃなくて現実なんです!!!」


 ヘルプさんの叫びは誰にも届かなかった。

人外な動きをするハヤト・チリ。それを見たヘルプさんが一言。

「もう、このままゲームだと思い込んでもらった方がいいのかも」

そう述懐したそうな。


人外なプレーの一例


ヘルプ「ちょっと何を屈伸運動を繰り返しているんですか?」

「知らないのか? 前のゲームでこれをやると移動スピードが上がるんだ」

ヘルプ「ちょっと何を言っているのか分からないですね」

「論より証拠! よし行くぞ!」

バビューン。

圧倒的な速さで移動するハヤト。

ヘルプ「な、何? 何が起こってるの?」

それを見ていたほかの転移者。

「お、おい。あいつ。めちゃくちゃな移動速度だぞ」

「あいつ屈伸を繰り返していたぜ。まさかゲームでできた技がこの世界でも使えるのか?」

「よし、試してみようぜ」

そういってみんなが屈伸運動を繰り返す。

カクカクカクカクカクカク。

バビューン。

ヘルプ「何これ……」

「すっげぇ! マジでできたぜ!」

「よし、この勢いでやってやるぜ!」

集団でカクカクバビューンする転移者たちに驚愕するモンスター達であった。

カクカクカクカクカクカク。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルがチュートリアル(全て説明出来ている)の役目を果たしている件。 [一言] 後書きまで面白かったし、ヘルプさんかわいい。(*≧з≦)
[一言] 後書きが一番ウケた件。 うむぅ。見逃してた。
[一言] 「大丈夫だ、問題ない」 ヘルプ「アイツは話を聞かないヤツだったよ」 ってくるかと...思えば、そもそも本当に話を聞かないタイプっていう。 でも、ゲームとリアルをごっちゃにしないで、ちゃ…
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