脱出!ブラックホール!!①
第4章 脱出!ブラックホール!!
『チェックメイト』
<フロンティア号>のTVモニターを見ながら、啓作がつぶやく。
「やったな、グレイ」
「こりゃ大スクープだ」
ウルトラTVのプロデューサーNは、にやけながらつぶやいた。
「<エンゼル=ヘア>がX-1で消息を絶ったら、現場に来て周波数○○で待て」
そう得体のしれない男から連絡を受けたのは一週間前だ。
眉唾物だったが、男の予言通りに客船は遭難。駆けつけたNが言われた通りの周波数で待機していたら、突然映像が送られてきたので、それを生放送した。
「放送禁止用語とか出たらとヒヤヒヤしたが」
<大企業のCEOが実は宇宙海賊。人身売買のために自分の客船を遭難に見せかけた。>
男への報酬は視聴率の二乗×1万の約束だ。いくらになるか見当もつかない。
<エンゼル=ヘア>通路。
キャプテンドレイクことレオナルド=アダムスは歯ぎしりしていた。
怒りが治まらない。その視線の先には、グレイ・ピンニョ・美理・麗子がいる。
「ドレイク様」
4人は囲まれる。集まった海賊達は15人以上いる。形勢逆転。
仕方なくグレイは両手を上げる。
アダムスが微笑みながら言う。
「まずはそのカメラを切ってもらおうか」
海賊の一人がグレイのネクタイピン型カメラをむしり取る。床に落として踏みつぶす。
「山岡麗子。助かりたければ、こちらへ来い」
麗子は首を振って拒否した。
「そうか、残念だよ。クローンで我慢するか・・・いや、お前の意志など関係ない。体さえあればいい。連れて行け!」
海賊二人が麗子を左右からかかえ、連れ去ろうとする。
「いやあ!」
麗子は抵抗するが、力ではかなわない。
「やめろ!」
そう叫ぶグレイを海賊の一人が殴る。口から血が滴り落ちる。
グレイはアダムスを睨みつける。
アダムスは笑みを浮かべつつ、去り際に命令する。
「そいつらを始末しろ!」
残った10人程の海賊達はニヤニヤ笑いながら、3人に銃を向ける。
ピンニョとグレイは顔を見合わせる。ふたりで10人を相手にするのは不可能だ。
美理は恐怖で目を閉じる。
絶体絶命。
「!」
いきなり海賊5人が倒れる。遅れて銃声。
グレイが音の方を見ると、長い通路の先に銃を構えた明がいた。
その方向から白い物体が猛スピードで迫る。ボッケンだ。
残り5人の海賊達は銃を向ける間もなく斬られる。“みねうち”。もちろん明の使ったのもパラライザーだ。
「美理ちゃん!無事か?」
美理が恐る恐る目を開けると、駆けて来る明とヨキの姿が。
「明さん!」
再会を喜ぶ間もなく、声がした。
「動くな!こいつを殺すぞ!」
離れた所にいて難を逃れた海賊3人が、倒れている女生徒に銃を突き付けていた。
「野郎!」
ヨキのチョンマゲが逆立つ、超能力を使うサインだ。
「まだだ!温存しておけ!ここは何とかする!」
明は銃を床に置き、手を上げる。ヨキも従う。明はピンニョに目で合図する。
「銃をこっちへ蹴れ」
「了か・・い!」
思いっきり銃を蹴る。
カーン。海賊の顔面に命中。言われた通りにしただけ。
明は跳ね返ってきた銃を掴み、敵に狙いを定めるが、もう決着は着いていた。
銃の当たった海賊は既に気絶。
ピンニョが羽根手裏剣を投げる。残り二人の手に命中。銃が落ちる。
すかさずヨキの頭突きが海賊の顎に決まる。
あと一人。
美理のまわし蹴りが海賊の股間に命中。
命を弄ぶ者を許せなかった。本当は別の所を狙ったのだが、手元いや足元が狂った。
柔らかい嫌~な感触。
「ご、ごめんなさい」
思わずボッケンが「痛そう」とつぶやく。麻酔代わりに蹴り飛ばす。
海賊3人はすべて失神。これで全滅。
「ふう」ピンニョがため息。
ボッケンと再会を喜びハイタッチする。
「無事でよかった」明が言う。
「助けに来てくださったの?ありがとう」美理が答える。「お願い。麗子を!」
グレイは落ちている海賊の銃を拾う。唇をかみしめて言う。
「俺がアダムスを追う!」駆け出す。
「お、おおっ。・・・どうしたんだ?あいつ」
明たちはグレイの“演説”を聞いていない。
「援護するよ」ボッケンが後を追う。
それを見送りつつ明がつぶやく。
「よし。次だ。・・・マーチンの奴、無事ブリッジに着いたかな?」
ここは男子トイレ。
マーチンが小便中。壁の<エンゼル=ヘア>船内図を見ながら、ぽつりと一言。
「やばい・・迷った」
「もれる~」海賊が飛び込んで来て、隣で用を足す。
「ふう・・・あ!」マーチンと目が合う。
マーチンはライフルを奪われ、連行される。中央船体にあるブリッジへ。
<エンゼル=ヘア>のブリッジはちょっとしたオフィス並に広い。
床には乗員らしき数名の人々が手錠をかけられ横たわっていた。まだ気絶しているようだ。オーナーが実は海賊だったとはいえ、船長以下乗員の多くはその部下ではない。
このクラスの宇宙客船は基本自動操縦で航行する。乗員が眠らされても墜落する(この場合X-1に落ちる)事は無いが、自動操縦では海賊の侵入を防げない。
マーチンは知らないが、彼ら乗員が素早く救難信号を発したため、予定より早く<銀河パトロール>が到着、要塞はこの場を離れる事が出来ずに亜空間に隠れていたのだ。
「何だ?そいつは?」
指揮官らしき海賊が怒鳴る。顎髭を生やし西部劇のガンマン風の海賊・ジャック。
「不審者を発見し連行しました」
「案内ご苦労さん」マーチンはニヤリとする。
次の瞬間、バリバリバリ・・・ 電撃!
銃から感電し海賊達が次々と倒れていく。
ただ一人、ジャックだけは無事だった。
「貴様!」
マーチンとジャックの目が合う。火花が散った気がした。
約10m離れて対峙する。
ジャックの腰にはリボルバー。昔の銃のレプリカモデル(中身はレイガン)だ。
マーチンは腹の脂肪の間に隠し持っていた拳銃をホルスターにしまい、向き直る。
ジャックはコインを取り出す。
「こいつが落ちたら抜く。いいな」早撃ちを競う気だ。
マーチンがうなずく。
ジャックはコインを親指で弾く。
コインは宙を舞い、床に落ちる・・前にジャックは銃を抜く。フライングだ。
その銃が火を噴く事はなかった。
フライングを読んでいたマーチンの電撃の方が早かった。
衝撃で飛んだ銃が床に落ちる。だがジャックは平気な顔をしている。
「!(電撃が効かない)」
「貴様の武器は電気か。俺は・・これだ!」
ジャックは右手を銃の様にして、マーチンを指差す。
強力な何かがマーチンを襲う。
風?腰の銃が剣が飛ばされる。前に。ジャックの方に。
「磁力か」
マーチンは通信機を兼ねたバイザーが持って行かれるのを押える。
ブリッジは段差のある二層構造になっている。
マーチンは下に飛び降り、死角に隠れる。
ジャックはマーチンの銃を拾い、笑みを浮かべながら前進して来る。
マーチンは帯電体質だ。故郷のブウ星は星全体が帯電しているため、移民者は生体改造されている。一方ジャックは磁力を操るサイボーグだ。
電撃のパワーを上げれば倒せるかもしれないが、ジャックだけに当てるのは難しい。海賊はともかく乗員もいる。
「やべえな。何か武器はないのか」
ズルッズルッ。何かが床を這う。
磁力に引かれ鉄アレイが動いていた。乗員が筋トレに使っていた物だろうか?
ひょいと持ち上げる。
「そうか・・えいっ!」
マーチンは鉄アレイをジャックに投げつけた。
それは磁力で速度を増し・・・
ドゴッ!「お!」
鉄アレイはジャックの股間を直撃。うずくまる。あそこは生身?
「とおっ!」
その隙にマーチンはジャンプ。
自らの体重を武器にして、ジャックの上に落下。どし~ん。ボキ。ぐしゃ。
「返してもらうぜ」
マーチンは失神したジャックから自分の銃をとり返す。
ブリッジを制圧したマーチンは、拘束されていた船長ら乗員を助ける。
「ん?」
『ピンポンポンポン・・』
船内放送が入る。
『こちらドレイクだ。次の作戦を伝えたい。全員VIPルームへ集まれ!大至急だ!急げ!』




