エンゼル=ヘア③
銀河パトロール対宇宙海賊。
銀河パトロールは戦闘ではなく捜索目的の出動だった。そのため火力のある船は少ない。海賊軍が優勢。
マーチンがが「やばいぞ。押されてる。加勢に行くか?」
「ここのアステロイドを使う!ビリヤードだ」
明の発想は時に奇抜だ。
「反重力ミサイルか?」ヨキが目を輝かせて聞く。
「いや、さすがにそれは危険だ。プロトン砲を使う」
<フロンティア号>は要塞や海賊船に比べ、ブラックホールから遠い位置(上流)にいた。
航行しながらプロトン砲を発射!
X-1に引き寄せられていたアステロイドに命中。
それは点火される様に速度を増してX-1へ向かう。
次々とプロトン砲を発射!
命中したアステロイドが動き出す。さらに別のアステロイドに衝突する。
もはや流星雨。それらは下流の海賊艦隊に襲いかかった。
「!!」
流星が降り注ぐ。
ぶつかり流される海賊船。回避しようとして味方と衝突。大破する船もある。
要塞にも流星が命中。宇宙高射砲がへしゃげる。
「要塞へ向かう!」
目前に100m程の小惑星がある。
プロトン砲発射。命中。
小惑星が動き出す。
明は<フロンティア号>をその小惑星のすぐ後につけた。盾として使う。
スターダストに紛れ要塞に接近する。
気付いた海賊船が転進する。が、遅い。
対空砲火。
こちらはブラックホールの重力の上流にいる。そのため敵砲火の威力は衰えている。それに対し、こちらは有利。
小惑星の陰からプロトン砲発射!
護衛の海賊船に命中!中破。
海賊船隊の隙間を突破。要塞が迫る。
要塞が宇宙高射砲を発射。
小惑星に命中。100m程の小惑星は粉々に四散する。
その後ろに<フロンティア号>の姿は無い。寸前に小惑星の陰から飛び出していた。
「啓作、<エンゼル=ヘア>どこにいると思う?」
「1kmを超える巨大船だ。入るとしたら・・さっき艦隊が出て来たハッチ位か」
明はうなずき、「一点集中!正面のハッチへ集中攻撃!」
一斉発射!プロトン砲・レーザー・ミサイル・側面ホーミングレーザーの束が要塞へ・・
先程海賊船が発進していたクレーターに命中。
爆発。穴が開く。
気圧(密度)は外の方が高いため、煙は漏れずに、浸水する様に、逆に濃密な星間物質が穴の中に入って行く。
その穴の奥、要塞の格納庫に<エンゼル=ヘア>の姿が!
「いた!」
「突っ込むぞ!」
<フロンティア号>は全てのエンジンを噴射。全速力で要塞に接近する。
要塞の宇宙高射砲が<フロンティア号>に狙いを定める。だが遅い。
「てえっ!」
マーチンがスイッチを押す。プロトン砲発射。
ビームは高射砲を直撃。爆発。
次々と要塞の反撃が来る。海賊船も迫る。
<フロンティア号>はその無数の砲火を掻い潜り、さらに要塞に迫る。
「閃光弾!」
発射されるミサイル・・眩い光を発する・・・
「ダミー射出!ステルス!」
<フロンティア号>はステルス化し、要塞格納庫内に侵入。
光がおさまった時、<エンゼル=ヘア>と接舷していた。
バルーン製のダミー船は敵の攻撃で爆発、四散した。
グレイは<エンゼル=ヘア>のロビーを走る。非常事態のためか海賊の姿は無い。
「精神移植?」
グレイの横を飛ぶピンニョが尋ねる。
「サイコトランスプランテーション(PT)。元々は瀕死の状態の人の精神=心・・魂と言ってもいい、それをクローンや機械に(主に一時的に)移動させる医療技術だ。ユバ星でディラノイ教授に会ったんだろ?」
「?」ピンニョはルリウス星にいたので教授に会っていない。
「とにかくその技術を悪用して、精神を他人の体に移して他人になる事が一部のセレブに流行している。服を変えるように体を変える。同意の場合もあるが、多くは人身売買だ。もちろん犯罪行為だ。だが裏社会では有名人のクローンも出回っている。で、連中の一番人気は若い女の子」
「じゃあ美理ちゃん達を?」
「そういう事だ」
「何て事を。あれ?美理ちゃん?ここにいたのに・・どこ?」
いない。ピンニョはくんくんと臭いを嗅ぐ。ボッケン程ではないが、彼女の視覚・聴覚・そして嗅覚は人類を凌駕している。
「・・こっちだ」
ふたりは再び動き出す。
「ねえ、精神移植された人はどうなるの?」
「“精神交換“というのもあるが、多くは上書きとなる」
「上書き?」
「自分の体なのに自分では何も出来なくなる・・地獄だ」
そう答えたグレイは哀しげだった。




