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ポッキーの日

作者: いさまた

11月11日、ポッキーの日。日本各地でポッキーの売り上げがかなり伸びる日。その日を逃さまいとコンビニやスーパーの店頭にはポッキーがずらりと並ぶ。そんなポッキー、一つに浮かれる人々を僕はポッキーのようにその仲が折れちまえ、とくだらないことを考えていた。


「今日、ポッキーの日だよね、ポッキー買っちゃった」


駅のホームで電車を待っていた僕はその楽しそうな女子高生の声をシャットアウトするためイヤフォンをつける。可愛らしいアニメの電波曲が耳に癒しを与える。


「1番線電車が参ります、黄色の線までお下がりください」


アナウンスがイヤフォンを通して微かに聞こえ、電車が目の前に止まる。扉が開いた瞬間人々が慌ただしく電車の乗り降りをする。僕もその波に乗り電車内に入る。電車内は暖房が効いていたため暖かい。しかし一駅止まるごとに冷たい風が電車内に入ってくる。その風を6回感じたところで僕は電車から降りた。急に全身を冷気が包み、身震いする。


「さむっ!」


言葉にしたところで何も変化は起こらない。ただ寒いということを事実として受け入れただけだ。その寒さを感じながら大学のキャンパスに向かう。



「私、抹茶味!」


大学内でもポッキーの話題で盛り上がっていた。それは講義が始まっても同じだった。


「ポッキーしまいなさい」


僕の隣の行に座っている女生徒がポッキーを机の上に出していたため注意を受ける。その女生徒はメイクでバッチリきめ、服装もミニスカと派手なコートでいかにもギャルと印象を与える。


「先生ぇ〜今日、なんの日か知らないんですかぁ?」


バカ丸出しの口調で先生に尋ねる。


「独身の日でしょ」


思わぬ返答に女生徒が狼狽える。その女生徒の隣のあまり派手ではない友だちがネットで調べたのか、ホントだと驚き、友だちに教える。


「先生〜そんな悲しいこといわないでくださいよぉ」


ポッキーを齧りながら言う。


「ほら、ポッキー片付けて授業始めるわよ」


先生が自分の言葉が恥ずかしかったのか授業を始める。女生徒はその後は真面目に授業を聞いている様子だった。(たまに黒板をスマホで撮っていたが)


「あっ」


あまり派手ではない子が落とした消しゴムが僕の足元に転がってくる。少し離れていたためどこに落としたのか辺りを見渡す。ギャルっぽい子も一緒にさがしてあげていた。


「これ?」


俺は転がってきた消しゴムを拾い、ギャルっぽい子に渡してあげた。


「ありがと」


僕は普通のことをしたので何とも思わず黒板に視線を向ける。隣のギャルっぽい子がコンビニの袋を漁る音がする。


「ねえ」


俺は呼ばれた気がして横を向くとギャルっぽい子が俺にポッキーを向けていた。状況が分からずポッキーを見つめているとそのギャルっぽい子がポッキーを俺の口元数センチまで近づける。口を開けるべきなのか悩む。


「口開けて」


指示通り口を開ける俺。その開けた口にポッキーが入る。数センチ入ったところで口を閉じポッキーを折る。サクッと音がして口の中に甘いチョコの味が広がる。もう一度口を開けると、またポッキーを口に運んでくれる。


「なんか、可愛いな」


そう言い、もう一本ポッキーを袋から取り出し僕に与える。さすがに2本目を食べたところで脳がこの行動を理解して無性に恥ずかしくなる。視線を黒板に向けると先生が僕の方を向いていた。見られたと思い、また恥ずかしくなる。

しかし、この時、僕はポッキーの日は悪くないなと思っていた。




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